講演でよく聞く「薬を見るな、患者を見ろ」
今回のテーマは、講演会や研修会でしばしば発信される「薬を見るのではなく、患者を見ろ」というメッセージの落とし穴です。
たいぞーさんは、このメッセージが語られる背景に、薬剤師が薬ばかり見て患者を見ていない、と受け取られる仕事ぶりが実際にあったことを認めます。
僕自身の仕事を振り返ってみても、確かにそういう側面がなかったかと言われると、ちょっと嘘になるかもしれない。思い当たる節が実際にありました
その流れの中で、2015年には厚生労働省から「患者のための薬局ビジョン」が示され、患者本位の医薬分業を実現していく必要性が語られました。
「患者を見すぎる」ことに潜むリスク
「患者を見ろ」と言われると、患者が今どういう状態で、どこで生活し、誰のサポートを受けているのかを考えることが、具体的な関わり方として示されます。
ただ、たいぞーさんはそこに落とし穴があると指摘します。患者を見ることを重視するあまり、患者そのものを見すぎてしまう場合があるからです。
それを薬剤師の自分たちが見ているということの、意味や意義はどこにあるんだろうか。そこに陥っていないか、常々自問しながら患者さんを見ています
血圧が高い人を見て「血圧が高い」と捉えることも、独居で介護保険を利用し、ケアマネージャーや主治医、ヘルパー、訪問看護師が関わっているといった背景を知ることも、確かに大切だと話します。
しかし、それらをただ知って総合的に把握するだけでは、薬剤師がそこに関わる意義が見えてこなくなるのではないか、という懸念です。
鍵は「薬を飲んでいる患者」を見る視点
では薬剤師はどんな視点で患者を見ればよいのか。たいぞーさんが意識しているのは、患者をただ見るのではなく、「薬を飲んでいるその患者」を見るという視点です。
患者さんを見るということはもちろん大賛成です。ただ、ただただ見るのではなくて、薬を飲んでいるその患者さんを見ていく
この視点を持つと、患者の情報が薬剤師の専門性とつながっていきます。たとえば「この薬を飲んでいる患者がこの背景で暮らしている」と捉えることで、起こりうるリスクを防ぐために多職種とどう連携するかという発想が生まれます。
また、患者の状態を聞いたときに、その症状はこの薬の影響かもしれないと考え、切り替えや変更、中止を検討できるかもしれない、という判断につながります。
逆に、薬の影響とは考えにくいと見えてくることもあります。その場合は、多職種と連携しながらどうサポートするかへと関わり方が変わっていきます。
状態や生活背景を把握できるが、薬剤師が関わる意義が見えにくくなる
同じ情報が薬学的な判断や多職種連携の入り口になり、薬剤師の専門性が働く
メッセージの本当の意味と、薬剤師が生む価値
たいぞーさんは、「薬を見るのではなく患者を見ろ」というメッセージの本当の意味を、薬そのものを見るのではなく、薬を使っている患者を見ることだと捉えています。
患者を漠然と見るのではなく、薬も見つつ患者を見る。その視点を持って関わることで、薬剤師として意義ある関わりが生まれると話します。
患者にとっても、そして多職種にとっても、薬剤師がいてくれてよかったと感じられる価値が生まれてくる、という考えです。
まとめ
「薬を見るな、患者を見ろ」というメッセージ自体は大切な視点ですが、患者を見すぎると薬剤師が関わる意義を見失うことがあります。たいぞーさんは、その解決策として「薬を飲んでいる患者を見る」視点を提案しています。
- 「薬を見るな、患者を見ろ」は講演でよく語られるが、患者を見すぎると薬剤師の専門性が置き去りになるリスクがある
- 患者の状態や生活背景をただ把握するだけでは、薬剤師が関わる意義は見えにくい
- 鍵は「薬を飲んでいるその患者」を見る視点で、同じ情報が薬学的な判断や多職種連携の入り口になる
- この視点を持つことで、患者にも多職種にも「薬剤師がいてよかった」と感じられる価値が生まれる
