Xのサブスクを始めたら何が起きた?
3日ほど前、速水健朗さんのもとに宇野維正さんから「サブスクを始めたらやばいことになっている」というLINEが届きました。速水さんはその話を聞くため、急きょ宇野さんを番組に呼んでいます。
宇野さんと速水さんは、番組やポッドキャスト、イベントで10年来の付き合いがあります。2024年7月にも2人でイベントを開き、今後の予測を語り合ったそうです。
宇野さんとは今年の7月だっけ?イベントやっていろいろ未来予測をしたじゃん。これからどうなるって。俺が蓮舫入れたり。
その予測の答え合わせは後でやることにして、速水さんはまず、宇野さんの言う「サブスク」とは何なのかを尋ねます。
宇野さんの説明によると、Xのサブスクとは、イーロン・マスクによる買収後に始まった機能です。フォロワーがある程度多いユーザーが有料の登録者を募り、登録者だけにコンテンツを提供できる仕組みだといいます。
このサブスクには、始まった当初に申請した人が多かったそうです。速水さん自身も開始直後に申請しています。宇野さんの周囲では、東浩紀さんが1年以上前に承認されて盛り上がっていました。速水さんの周りでも、古市憲寿さんや箕輪厚介さん、三浦瑠麗さんが利用しているといいます。
「X」と呼ぶか、「Twitter」と呼ぶか
宇野さんがまず指摘するのは、Xとどう付き合っているかが人によって大きく違うという点です。Twitterに批判的なことを言いながら使い続ける人もいれば、イーロン・マスクの買収後は「絶対にXとは呼ばない」という人もいます。
この呼び方の問題について、速水さんは自分を「Xと呼ばない派」だと言います。一方の宇野さんは、名前が変わった瞬間からXと呼んでいたそうです。
(名前を変えなくても)NewJeansが名前変わったとしてもNewJeansって呼び続けるみたいなのに興味ないけど、そこまで。
呼び方の違いを、図にすると次のようになります。
名前が変わった瞬間からXと呼んでいる。グループ名が変わっても新しい名前で呼ぶ
Xとは呼ばない派。名前の変化にそこまでのこだわりはない
宇野さんの立場が少し変わっているのは、もともとTwitterが大嫌いだった点です。Twitterではしょっちゅう炎上していたため、プラットフォームとして最悪のものだと考えていたそうです。
そのため宇野さんは、イーロン・マスクの買収によるTwitterの変化を、むしろよいことだと受け止めていました。告知のために使わざるを得ない以上、「これより最悪はない」のだから変わったほうがいい、という考えです。
地獄がこれ以上地獄になりようはないだろうと。
話はそこから、ここ数週間話題になっていた「パーカー」にも脱線します。速水さんは、この回の前にルイジ・マンジョーニ ── 2024年12月、アメリカで医療保険会社の幹部が殺害された事件の容疑者として逮捕された人物。指名手配写真の姿が大きな話題になりましたを取り上げた回を配信する予定だと明かしました。指名手配写真でマンジョーニが着ていたパーカーが大ブレイクしているそうです。
ちょうど同じ時期、日本でも宇野さんが「パーカーおじさん」として話題になっていました。速水さんは、日本とアメリカで同時にパーカーブームが起き、その意味がまったく逆だと話しています。
すぐ課金した人と、1年待たされた人
Xとの距離感の話に戻ると、宇野さんは、速水さんの周りにいる「ノット左派」の人たちほど、ためらわずに新しい機能へ申請していくと見ています。プレミアムが始まればすぐ申し込み、サブスクが始まればまたすぐ申し込む、という動き方です。
宇野さんの周りで最も早くプレミアムに申し込んだのは、実は速水さんでした。速水さん自身も「ほぼ誤爆」だったと振り返っています。
ほぼ誤爆みたいに始まった瞬間に誤爆した俺。
一方の宇野さんは、当初は葛藤がありました。月に1000円ほど払う見返りがあるのかも疑っていたそうです。数か月後にプレミアムに加入しましたが、その頃にはサブスクの申請が殺到していて、承認がまったく下りなくなっていました。
宇野さんのサブスクが承認されたのは、1年ほど待った2024年12月10日過ぎです。その頃、一気に承認された人がたくさんいたといいます。宇野さんは、システムがある程度持つようになったことが理由ではないかと考えています。
速水さんも申請はしたものの、UIが複雑で言語の表記さえ統一されていなかったそうです。結局、承認が下りる前に有料課金をやめています。宇野さんは、スマートフォン経由だとAppleに手数料を取られるため、Twitterの有料機能はすべてパソコンから手続きしていたと話しています。
宇野さんと同じタイミングで承認された一人が、津田大介さんでした。Twitterのある時期の象徴だった津田さんでさえ、Xのやることには最初ためらいがあったのではないか、と宇野さんは見ています。
その結果、ためらいのない人だけが先に承認を受けるという状況になっていました。サブスクの承認までの流れは、次のように整理できます。
速水さんはこの違いを、プールにすぐ飛び込む人、水温を確かめてから入る人、うっかり滑って落ちる人にたとえました。宇野さんは、ためらうかどうかがXに滞在している時間とは比例しない点も面白いと話しています。この違いを生むのは、テクノロジーへの距離感ではなく、イーロン・マスクへの好き嫌いではないかという見方です。
テスラに乗るか?ガソリン、ニコチン、フィルム映画の座右の銘
イーロン・マスクへの距離感を測るため、速水さんは「テスラを1年間貸すと言われたら乗るか」と尋ねます。宇野さんの答えは「それしか乗れないのなら乗らない」でした。
速水さんは最近、フィアットのアバルト500eというEVを借りて乗っていました。その実感として、自宅に充電設備がなければほぼ詰む、近所に充電スポットがあっても行けないから駄目だ、と話しています。
宇野さんは、もともと「ガソリン、ニコチン、フィルム映画」を座右の銘にしていたといいます。速水さんは、EVシフトの失敗でガソリンに揺り戻しが来ていると応じました。
タバコについても、宇野さんは映画やテレビシリーズで反動が来ていると見ています。1度消えた後、タバコが再び欠かせない小道具になっているという指摘です。
その例として宇野さんが挙げたのが、デミ・ムーア主演のフランス映画『ザ・サブスタンス』です。舞台が現代なのに会議室でタバコを吸う場面があり、そこで「現実とは少し違う世界だ」と伝わるのだといいます。
もう1つの例が、ティモシー・シャラメがボブ・ディランを演じた『名もなき者』です。ディズニー作品なのに最初から最後までタバコを吸っていたことから、宇野さんは、これまでのような規制はさすがにやめようという雰囲気になっていると見ています。
速水さんは改めて、テスラについての質問はEVに乗りたいかどうかではないと説明しました。イーロン・マスクが作ったものに乗れるか、という問いだったのです。宇野さんは「それで言うなら乗れない」と答え、「人の命をなんとも思っていない人」だと理由を述べています。
イーロン・マスクは「ゲームとSFの世代のやばいやつ」なのか
速水さん自身は、イーロン・マスクのキャラクターが好きだといいます。おかしい人として理解したい対象であり、同世代として理解できるところがたくさんあるそうです。
宇野さんの見方は違います。イーロン・マスクが今もゲームの世界的トップランカーであることなどから、同世代でも自分とはまったく違うタイプだと感じているそうです。
速水さんは、イーロン・マスクの評伝の書き方にも、ゲーム世代らしさが表れていると話します。評伝を書いたのはアイザックソン ── ウォルター・アイザックソン。アメリカの伝記作家で、スティーブ・ジョブズの公式伝記や、2023年刊行のイーロン・マスクの伝記で知られていますです。
アイザックソンは、スティーブ・ジョブズについては、カウンターカルチャーやヒッピー文化を背景として描いていました。それに対してイーロン・マスクは、思想性のない、やばいゲームとSFのオタクとして描かれている、と速水さんは指摘しています。
カウンターカルチャーやヒッピー文化を背景にした人物として描かれる
思想性のない、ゲームとSFのオタクとして描かれる
宇野さんは最近の象徴的な出来事として、イーロン・マスクが『天気の子』をお気に入りの映画に挙げたことに触れました。2人は、宇宙が好きで自分の世界に入り込むという点で、新海誠 ── 『君の名は。』『天気の子』などで知られるアニメーション監督。緻密な風景描写と、個人の想いが世界と結びつく物語で人気を集めていますとイーロン・マスクには共通点があると話しています。
一方、宇野さんの周りのカルチャー好きの間では、イーロン・マスクはとても嫌われているそうです。ソニックマニアでは、元パートナーのグライムス ── カナダ出身のミュージシャン。イーロン・マスクとの間に子どもがいますのステージにイーロン・マスクが飛び入りしました。宇野さんによると、これにはソーシャルメディア上で99パーセント反感しかなかったといいます。
宇野さんは、カルチャー好きはもともと民主党が好きだと言います。オバマ元大統領の年間ベストリストを「さすが」と褒める人たちに笑ってしまう、とも語りました。
これに対して速水さんは、イーロン・マスクがもともと民主党支持者で、トランプと敵対していた点を挙げています。宇野さんは、転向する前から嫌われていたと返しました。速水さんの見方は、リベラルかどうかに関係なく、真っ当な人たちから嫌われているというものです。
速水さんはさらに、トランプ陣営の内情に詳しい政治評論家でさえ、イーロン・マスクの思想を調べ直しているといいます。イーロン・マスクがそれほど「政治の人ではない」からです。
宇野さんは、トランプもイーロン・マスクも理想や思想で動いているわけではない「似た者同士」だと見ています。そのうえで、これからの4年間は足並みをそろえていくだろうと予想しました。
速水さんは、テクノロジー観とエネルギー観が違いすぎるため、2人は早々に決裂するだろうと予想しています。話はさらに、イーロン・マスクとカニエ・ウェスト ── アメリカのラッパー、音楽プロデューサー。現在の名前はYe。2020年にアメリカ大統領選への出馬を表明しましたの蜜月時代にも及びました。
認証フォロワー2000人と、宇野さんのブロック術
宇野さんによると、この1年でサブスクの条件で最も大きく変わったのは、認証済みフォロワーの人数です。サブスクを始めるには、認証済みフォロワーが2000人以上必要になったそうです。
宇野さんの周りを見ていると、フォロワーが10万人ほどいなければ、認証済みフォロワーは2000人に届かないといいます。宇野さんのフォロワーは4万5000人ほどですが、条件を満たしています。宇野さんは、自分のフォロワーは「認証率が高い」と話しています。
宇野さんのフォロワーの認証率が高い理由は、業界人が多いことに加え、気に入らない人を全員ブロックしていることにあります。世の中に呪詛をポストするためだけにXを使っている人は、1人もいないそうです。
1〜2か月前から、Xではブロックした相手にも投稿が見えるようになりました。このとき、河野太郎氏の次に名前が挙がるブロッカーが宇野さんで、「宇野がこれまでブロックしてきた労力が水の泡だ」とも言われたそうです。
ただ宇野さんにとってのブロックは、見られないためのものではありません。関わらないためのものです。リポストや引用ポストをされない時点で、ブロック機能は十分に生きているといいます。
宇野さんがブロック機能で特に重視しているのは、他人の投稿をリポストするときの使い方です。過去に自分をけなした人や、けなす投稿にいいねした人を、間違えてリポストしないために役立っているそうです。
一方、速水さんのブロックの基準は宇野さんとは少し違います。自分の悪口を言った本人はブロックしません。それに同調してリツイートした人を全員ブロックするといいます。
批判してくれるやつはむしろ嬉しいというかさ、それにぬるく乗っかろうとしているやつの方を悪意として感じちゃうので。
キャンセルされたことがある人間にしか見えない世界
ブロックの話から、宇野さんは「人間には2種類いる」と切り出します。キャンセルの扇動をされたことがある人間と、されたことがない人間です。宇野さんは、キャンセルされた人にしかわからない世界があると話しています。
その例として宇野さんが挙げたのが、成田悠輔さんです。サントリーの広告をきっかけに激しく批判されたにもかかわらず、他人へのキャンセルの扇動には簡単に加わるといいます。
宇野さんによると、普通はあれほど批判された人は、どんなものであれキャンセルに関わろうとしなくなるそうです。成田さんのような人は不思議だと話し、町山智浩さんも同じタイプかもしれないと述べています。
速水さんは、自分の友人にはキャンセルされた経験のある人がとても多いといいます。宇野さんは、自分が受けたのは「ライトキャンセル」だけだと話しました。それでも、本人になってみると見え方がまったく違うそうです。
今日のワードの中で一番強いよ。今の言葉が。俺はライトキャンセルしかされてないって、こっちから見るとすごい重度のキャンセル(を受けてる人に見えてる)。
宇野さんは、三浦瑠麗さんや津田大介さんは「超ハードコア」なキャンセルを受けており、自分とは違うと話しています。津田さんの件はあいちトリエンナーレをめぐるもので、裁判にもなっています。
宇野さんは、キャンセルされた人のその後の言動や行動は、その経験に強く影響されていると見ています。その影響は、キャンセルを経験した自分には手に取るようにわかるそうです。その最たる例として、宇野さんはカニエ・ウェストを挙げました。
ママチャリ逆走と「おじさんヘイト」
宇野さんと一緒にイベントを開いているタナソウさんも、最近批判を受けました。その件は「昔悪かった自慢」として扱われ、宇野さんの知る限りでも6〜7本の記事になったそうです。
宇野さん自身は、あの件は「昔悪かった自慢」ではないと話しています。そう聞こえてしまうことはわかるとしたうえでの言い分です。
宇野さんがこの騒動にたとえたのが、今年話題になった「ママチャリ逆走」の動画です。ママチャリで逆走してきた人が、逆に車の運転手に文句を言い、その様子がドライブレコーダーに残っていたものだといいます。
宇野さんはその動画が好きで、タナソウさんにも話していました。そのため今回の騒動は、本人の言葉では「逆走ママチャリみたいなことになった」という形で語られています。そこにイデオロギーはなく、ただ悪いことをした人として扱われたという受け止めです。
宇野さんは、この件の背景に「おじさんヘイト」があると見ています。自分も「NewJeansおじさん」として3〜4回記事にされたそうです。
いろんなところでその高齢者ヘイトがあらゆる形で出てるっていう、全部共通はそれだと思っているので。
話が盛り上がったところで、30分が過ぎました。本題のサブスクの話は、後編に持ち越されます。宇野さんは「普段のイベントのように3時間半話す感覚でしゃべってしまった」と笑っていました。
まとめ
前編では、宇野維正さんがXのサブスクを始めた経緯を入り口に、Xやイーロン・マスクとの距離感の違いが語られました。話はさらに、ブロック機能の使い方や、キャンセルされる側の感覚にまで広がっています。サブスクで実際に何が起きているのかは、後編で語られる予定です。
- Xのサブスクは申請が殺到して承認が止まり、宇野さんは約1年待って2024年12月10日過ぎに承認された
- 新機能にすぐ申し込むか、ためらうかの違いは、イーロン・マスクへの好き嫌いと関係していると宇野さんは見ている
- サブスクの条件は認証済みフォロワー2000人以上で、宇野さんは積極的なブロックで認証率の高いフォロワーを保っている
- ブロックが貫通するようになっても、宇野さんにとってブロック機能は十分に機能している
- キャンセルされたことがある人間にしか見えない世界があり、その経験はその後の言動に影響すると宇野さんは語った




