EVはなぜ「ただの鉄くず」と言われるのか
このおまけトークは、前のパートで宇野維正さんが「イーロン・マスクと心中だ」と話していたことを受けて始まります。速水健朗さんは、トランプは人間関係を保つのがうまく、移民・中国・関税といった予測できる政策を強めに進めるだけだろうと見ています。
前回の8年前よりは強くやるでしょう。けど、イーロン・マスク何やるの?っていう。
宇野さんは、イーロン・マスクがテスラのCEOとして世に知られた人物であることから話を始めます。宇野さんによれば、ここ数年ではっきりしたのは、EVはガソリン車より安くないと売れないという事実です。
ヨーロッパでもEVは補助金で少しずつシェアを伸ばしてきましたが、ドイツなどが補助金を打ち切ると売れなくなったと宇野さんは話します。さらに、最初に買った人が4年、5年乗った今になって、EVには下取りがほとんどつかないことがわかってきたといいます。
宇野さんは理由をスマホにたとえます。5年前のスマホのバッテリーがどうなっているかを考えればわかる話で、バッテリーを取り替えられない限り、車とバッテリーが一蓮托生になったEVは、下取りの段階ではただの鉄くずになってしまうという見方です。
速水さんが「ハイブリッドもバッテリーを積んでいるのに、下取りは安くない」と返すと、宇野さんはバッテリーにかかる負担がまったく違うと答えます。ハイブリッドはバッテリーがくたびれても走れるため、プリウスのような日本発のハイブリッドはそこが優秀だという評価です。
バッテリーは補助。くたびれても走れるため、トヨタ車などはリセール価格が高い
バッテリーが主動力で車と一蓮托生。数年乗ると下取りがほとんどつかない
トランプとイーロン・マスクはなぜ組むのか
宇野さんによれば、日本・アメリカ・ヨーロッパのガソリン車より安いEVを作れているのは中国だけで、具体的にはBYD ── 中国の自動車・電池メーカー。EVとプラグインハイブリッドを主力に急成長し、日本でも乗用車の販売を始めていますです。関税をかけなければ、EV市場は中国メーカーと、かろうじて韓国メーカーのものになってしまうと宇野さんは見ています。
速水さんは、韓国のヒョンデが世界3位規模になっていることや、BYDが日本で長澤まさみさんを起用したCMを流していることに触れます。宇野さんは、日本では中国車への偏見が強いため、日本市場は別の話だとしています。
話題は自動運転にも広がります。宇野さんは、イーロン・マスクの人命の優先順位を考えると、自動運転こそ彼に任せるのは一番危ないと話します。
速水さんは、サンフランシスコで起きたGMのロボットタクシーの事故に触れます。GMは人が亡くなったことは公表したものの詳細を隠し、それが大炎上してロボットタクシーの市場が1年ほど遅れたのではないか、という見立てです。宇野さんは、その影響でホンダとGMの自動運転の共同事業もなくなったと補足します。
速水さんは、自動運転は法律と評判の問題であり、トランプ政権にイーロン・マスクが入れば規制は撤廃され、ロボットタクシーは多少危険でもゴーになるだろうと話します。宇野さんは、自動運転の規制撤廃と中国車への関税の2点で、トランプとイーロン・マスクの利害は完全に一致していると整理します。
EVの価格競争
ガソリン車より安いEVを作れるのは中国のBYDなどだけ
関税
トランプが中国車に関税をかけ、アメリカ市場に入れない
規制撤廃
自動運転の規制がなくなり、テスラのロボットタクシーが進む
テスラの生き残り
アメリカの内需でテスラが持ちこたえる
速水さんは、関税は結局国内の消費者の負担になるという経済学者の説を挙げ、アメリカの内需でなんとかなるという見方には懐疑的です。そのうえで、テック業界出身のイーロン・マスクは発想が違うと話します。
中国のBYDの成長が1年止まったら追い越せるみたいな計算でやるんですよね、テック業界って。
速水さんは、量産とチップの値下がりで価格が急に下がる前提や、AI開発のスピード勝負と同じ感覚で、中国を一時的に抑えれば十分だという目算なのだろうと推測しています。最後は、トランプが演説で「イーロンはアメリカ生まれではないから大統領にはなれない」と笑いを取った話で、2人ともそれを予想していたと盛り上がります。
2年4ヶ月で乗り換え?宇野維正さんが選ぶ次の車
速水さんは、宇野さんが車を買い替えるのが早いと切り出します。今の車は2年4ヶ月目だと答えた宇野さんは、「車検の前に買い替える」のが昭和のお父さんの理想像だったと語り始めます。
宇野さんは、それを令和の時代にやっているのが自分だと笑います。実はすでにディーラーにも行っていて、次はトヨタ系のレクサスにしようと考えているそうです。これまでホンダやスバルには乗ったものの、トヨタ系は初めてだといいます。
宇野さんは、以前はトヨタに乗る人を社畜だと思っていたとまで話します。考えが変わったきっかけとして挙げるのが、「楽天やJCBがあってよかった」という視点です。楽天がなければ日本のEコマースはAmazon一強で、JCBがなければクレジットカードはマスターとビザだけになっていたはずで、多くの国にはそうした自国の選択肢がないという話です。
宇野さんは、日産をホンダが支える動きは国策だろうと見ており、ホンダ・日産・三菱連合の先行きは相当厳しいと話します。速水さんも、まとめて鴻海 ── 台湾の電子機器受託製造の大手。シャープを買収したことで日本でも知られ、EV事業への参入も進めていますに買われるかもしれないと応じます。
そのうえで宇野さんは、トヨタは絶対に残るので、自分もそこを支える側に回るのだと話します。トヨタを支えないとこの国が潰れるという危機感も、正直あるといいます。
トヨタはなぜ叩かれ、なぜ盗まれるのか
宇野さんは、トヨタにはまともに税金を払っていないという批判もあり、いくらでもディスれると前置きします。そのうえで注目するのが、トヨタの広告の変化です。
宇野さんによれば、トヨタは数年前にトヨタイムズ ── トヨタ自動車が自ら運営するオウンドメディア。自社の取り組みや経営者の発信を、広告代理店やマスメディアを通さずに伝える場として始まりましたを始め、香川照之さんを起用したものの、その展開は一度停滞しました。それでも、広告を外注せず内製に切り替えた動きは非常に早く、レガシーメディアを殺したのはトヨタだと宇野さんは話します。
新聞などに広告を外注。正月には自動車メーカーの大きな広告が載っていた
新聞広告をやめ、トヨタイムズなど広告を内製するようになった
宇野さんは、日経が10年ほどトヨタを叩いてきたのは、広告を出さないのがトヨタだけだったからだと見ています。さらに、SDGsやEV化の旗振りを経済界の代表としてやってきたのが日経であり、今になってみればそのトヨタ叩きは意図的で、しかも間違っていたと宇野さんは話します。
トヨタ車のもう一つの強みは、圧倒的なリセールの高さです。ただし宇野さんは、ランクルやレクサスのRX、LXといったSUV系は盗難のリスクが高く、保険も高いと指摘します。自宅のガレージに止めていても盗まれる話が多く、アルファードも同じだといいます。
速水さんは、アルファードは投資目的で買われ、1年待ちで手に入れたそばから中古の方が高くなるほどの市場になっていると話します。宇野さんは、ディーラーでは1年は転売しないという誓約書を書かされると補足しています。
宇野さん自身はミニバンもSUVも買わず、次はレクサスのセダンにするつもりです。「ガソリン、ニコチン、フィルム」を全うしたいと話し、一度電子タバコにした喫煙も元に戻したそうです。
速水さんが、海外のラッパーの間ではずっとレクサスが人気だと話を振ると、宇野さんは今はむしろ落ち着いているのではと返します。ケンドリック・ラマーの新作『GNX』がビュイックの旧車をタイトルにしているように、旧車への先祖返りも起きているという見方です。宇野さんは、今乗っているのがGM系のキャデラックであることも明かします。
車雑誌1,540円の時代に、何をすればいいのか
宇野さんと速水さんは、かつて車雑誌『NAVI CARS』で一緒に連載していた間柄です。宇野さんは、今は雑誌の値段を見ると驚くと話し、自分も書いているキネ旬 ── 『キネマ旬報』の略称。1919年創刊の映画雑誌で、毎年のベスト・テン選出でも知られていますが1,540円もすることを挙げます。
宇野さんは、車雑誌が1,000円を超えたときに買わなくなったのに、気づけば1,500円の時代になったと振り返ります。紙も高くなり部数も減る中で、雑誌に出ている自分たちもいろいろなことをやっていかなければどうにもならない、という話につながります。
速水さんは、この話を車の値上がりと重ねます。
3年に1回の昇給だと、もう車どんどん高くなってるんで間に合わなくなっていて、3年に1回転職しないとついていけないんだよね。
宇野さんは、転職というより仕事のメインを変える感覚だと応じます。速水さんは、今は係長が課長になってもクラウンは買えない時代で、フリーランスのステップアップも速くなり、方向を見失いがちだと話します。
宇野さんは、自分の特性に合ったメディアでやったときに結果が出るものだと話し、今回のサブスクの手応えを、1998年に最初の著書がAmazonで全体のトップ10に入ったとき以来だと表現します。表では悪魔のような自分は、サブスクではいい人になる「逆フワちゃん」として注目してほしい、と笑いも交えています。
ムービードライバーは週1更新へ、そして家族は聴かない
宇野さんは、YouTubeの「ムービードライバー」について、まだ最低限の土俵に上がることもできていなかったと話します。2025年からは毎週金曜日に更新し、週1更新をレギュラー化して様子を見るそうです。
毎回車で撮るとスタッフが必要でコストがかかるため、同じコストで週1本を出せるよう、会議室バージョンも加えるといいます。速水さんがAIで運転中の背景を生成できるのではと提案すると、宇野さんは「違う、フィジカルが大事なんですよ」と、実車での撮影へのこだわりを見せます。
速水さんは、ムービードライバーを見るときは話が3割で背景が7割だと冗談を言い、背景を見て編集の手間がかかっていることに気づいたと話します。宇野さんは、最近は駒沢公園のコメダばかりに行っていると明かしています。
最後に速水さんがレクサス購入を確認すると、宇野さんはまだ家族に言っていないと慌てます。ただ、2人とも家族はこのポッドキャストを聴かないと口をそろえ、宇野さんがスペースを配信していたら「夜の電話がうるさかった」と言われたエピソードで締めくくられます。
まとめ
このおまけトークでは、トランプとイーロン・マスクの関係を入り口に、EVの下取り問題や中国メーカーの台頭、そして宇野維正さんがトヨタ系のレクサスを選ぶ理由までが、2人の雑談として語られました。
- 宇野さんは、バッテリーが主動力のEVは数年で下取りがほとんどつかなくなると指摘した
- 自動運転の規制撤廃と中国車への関税で、トランプとイーロン・マスクの利害は一致していると宇野さんは見ている
- 宇野さんは、トヨタは絶対に残るとして、次の車にレクサスのセダンを考えている
- 雑誌も車も高くなる中で、仕事のメインを変えながら進む必要があると2人は話した
- 宇野さんのYouTube「ムービードライバー」は2025年から毎週金曜更新になる




