かわいいおじさんダメですか?けんすうさんと語る「ムダじゃないムダの作り方」
いそムダに、けんすうさんがゲスト出演。「誘われたら断らない」というルールから始まり、男性のネイル効果、分割キーボードの合理性、ポイ活の本質、宝くじが売れる理由、そして「運の総量」まで、一見ムダに見えることの奥にある哲学を語り合った回です。その内容をまとめます。
「誘われたら断らない」がコミュ力を育てる
品川さんは「無駄なこと」を結構やっている自覚があるそうです。仕事につながりそうもない人との食事、一方的に相談を受けるだけの時間、挙げ句に自分が奢って終わる飲み会。正直「この時間なんだったっけ」と思う瞬間は少なくないとのこと。
しかし、そうした経験の中から「なぜこの人はこういう考え方をするのか」という気づきを拾い、経験値として蓄積してきたと言います。結果的に、それがコミュニケーション力のトレーニングになっているのかもしれません。
なんかは拾えるようにはしてます。その経験値は積まれていくので
品川さんのルールは明確です。「勧められたことは基本やってみる」。やってみたいことが見つからないという人は多いけれど、自分で思いつく「やりたいこと」は好きな領域の隣にすぎず、実は発見が少ない。人から勧められたことの方が、まったく違う世界への入口になるのだと語ります。
けんすうさんも同様のルールを持っていました。「店員さんに勧められたら全部イエスと言う」というものです。飲食店では次々と料理が運ばれてくるし、服屋に入って話しかけられたら「もう絶対買わなきゃいけない」状態になるそうです。
断るのがやっぱ気まずい。毎回モヤっとするぐらいだったら、もう全部イエスって言おうって決めてる方がいい
きっかけは「断る時の気まずさ」を毎回感じるのが嫌だったから。ルール化してしまえば判断コストがゼロになるという、ある種の合理的な発想です。品川さんはこのルールを「メンタルファーストで決まったルール」と評していました。
好きな領域の隣
発見が少ない
世界が広がりにくい
まったく違う領域
発見が多い
話のネタも増える
実際、品川さんがポールダンス縦のポールを使って回転やポーズをとるダンス・フィットネス。全身運動になるため、体幹強化やダイエット目的で始める人も増えている。にハマったのも、ロケットニュース「ロケットニュース24」。体当たりの実験・体験記事で知られるウェブメディア。の記事がきっかけ。飲み会で知り合った人を介して紹介が生まれ、実際にやってみたら面白かった。キックボクシングも、たまたまパーティーで小比類巻さん小比類巻貴之。元K-1ファイター。引退後はキックボクシングジムを運営し、一般向けのフィットネスプログラムも手がけている。に出会ったことがきっかけでした。どちらも「自発的にやろう」とは思わなかったはずの体験です。
男性のネイルという最強の会話スターター
「勧められたらやる」ルールの最新事例として品川さんが披露したのが、ネイルです。ビヨンセアメリカの歌手・女優。グラミー賞最多受賞者として知られるポップカルチャーのアイコン。などを担当するネイルアーティストの友人から「男の人もやるといいわよ」と言われてやってみたところ、驚くほどの効果があったと言います。
収録時は透明のネイルに替えていたそうですが、以前は黒で塗っていたとのこと。その黒ネイルの反響がすさまじかったそうです。
びっくりするぐらい女性に声かけられる。恐ろしいぐらい女性から話しかけられます
カフェのウェイトレスから「素敵ですね」と声をかけられるのは序の口。もっと驚いたのは企業の打ち合わせでのこと。おじさん上司と中堅社員と若手女性アシスタントという定番の三人組が来た際、会議中は一言も発言しなかったその若手女性が、帰り際にわざわざ「品川さん、その爪素敵ですね」と声をかけてきたそうです。
一方で、男性からの反応はゼロ。仲の良い友人から初対面の人に至るまで、誰一人として触れてこなかったとのこと。
めちゃくちゃ見ているが一人も言ってこなかった
「触れちゃいけない」バイアスが働く
カフェの店員から打ち合わせの同席者まで自然に声をかけてくる
自分もネイルをする文化があるのでフラットに反応
品川さんの分析では、男性は「そっち系なのか」「触れちゃいけない話題かも」というバイアスが働いてしまう。女性は自分自身がネイルにこだわりを持っているからこそ、フラットに褒められるのではないか、ということでした。けんすうさんも「女性の爪ですら褒められない」と認めており、男性側の「褒め方がわからない」問題が浮き彫りになりました。
おじさんの美容は「マイナスをゼロにする」投資
話題はおじさんの美容全般に広がります。けんすうさんは友人に勧められてシミ取りに行ったそうです。予約不要で病院に行き、3分ほどの施術を受けて薬をもらうだけ。費用も数千円程度で、あまりの手軽さに「みんなやった方がいい」と感じたとのこと。
異性としての評価が上がるとかではなくて、不快感が下がるに近い。マイナスをゼロに持っていくっていう意識でやった方がいい
ここで出た「マイナスをゼロにする」という表現が印象的です。おじさんの美容は「モテるため」ではなく「不快感を与えないため」のもの。プラスを生むというより、マイナスを消す投資だという位置づけです。
品川さんはこうした話に対して「メリットあるの?」とすぐ聞く人が多いことに触れ、「メリットデメリットで話してたら、ほとんどのことはデメリットしかない」と指摘します。そもそもメリット・デメリットを価値基準にすること自体が、体験の幅を狭めてしまうのかもしれません。
「メリットあるの?」「今さらシミ取っても…」と損得で判断
「マイナスをゼロにする」清潔感への投資として捉える。コストも時間もごくわずか
分割キーボードと「触らない」生産性
けんすうさんが次に勧めたのは分割キーボードキーボードを左右に2つに分けた形状の入力デバイス。肩を開いた自然な姿勢でタイピングできるため、肩こりや姿勢の悪化を防ぐ目的で使われる。。品川さんが「次はこれ?」と食いつくと、けんすうさんは驚くほど論理的に説明を始めます。
通常のキーボードだと肩が内側に巻き込まれ、前傾姿勢になりがちです。分割キーボードなら肩が開き、肩甲骨が寄せられて下がりやすくなる。首の周辺を通る副交感神経自律神経の一つで、リラックスや回復に関わる神経系。首・肩まわりの姿勢が影響するとされ、デスクワーカーの肩こりや睡眠の質にも関連が指摘されている。への圧迫が減ることで、リラックス効果やストレス軽減、さらに睡眠の質向上まで期待できるとのこと。
さらに面白いのは「携帯に触らずに携帯を操作する」というけんすうさんの最近のテーマです。分割キーボード+iPadの組み合わせにすると、スマートフォンを直接操作しなくなるため、TikTokなどの誘惑から自然に距離が取れる。代わりにChatGPTとの議論や文章作成がしやすくなり、生産性が上がるのだそうです。
キーボードが縦にずれている(カラムスタガード配列)のもポイントで、通常のキーボードの横ずれ配列はタイプライター19世紀に発明された機械式の文字入力装置。キーが横にずれた配列になっているのは、内部のアーム(活字棒)が絡まないようにするための構造上の制約だった。時代の名残にすぎないと語ります。人体構造的には指の長さが違うので、縦にずれている方が自然なのだとか。
一年で二キロぐらい無駄に指が動いてたってことが計算したらわかって
計算するのはすごい
けんすうさんが指の移動距離を計算して「年間2キロの無駄」を発見したというエピソードには、「無駄を省こうとして無駄なことをしている」と全員でツッコミが入っていました。しかし、そこが楽しいのだとすれば、それもまた「ムダじゃないムダ」なのかもしれません。
モノの値段に囚われると自分の価値がゼロになる
品川さんのロサンゼルスの会社の社長は、極度にケチな人物だそうです。電動ドリルを買うのに「あっちの店の方が5ドル安い」と探し回るタイプ。しかし品川さんは冷静に指摘します。探す時間、遠い店まで行く時間、ガソリン代を考えたら、絶対に5ドル払った方がいい、と。
タクシーか電車かという話も同じ構造です。電車なら200円、タクシーなら1,000円。しかし電車では拘束時間が決まっていて他のことがしにくい。タクシーなら寝てもいいし、電話もできるし、確実に座れる。その差額800円が自分の時給に換算して有益かどうか、というバランスの問題だと品川さんは指摘します。
ただし、品川さんはケチなこと自体を否定しているわけではありません。そのロサンゼルスの社長に対しても「お前、安いの探すのが楽しいんでしょ」と言ったそうです。安く買えたという達成感そのものが「楽しい無駄プレイ」であって、そこにも一つの哲学があるという捉え方です。
ポイ活という名のゲーム
けんすうさんも意外なポイ活勢でした。足立区でPayPayキャンペーンをやっている時は足立ナンバーのタクシーを探す、スタバのチャージは三井住友オリーブ三井住友フィナンシャルグループが提供する総合金融サービス「Olive」。最上位ランクのカードでチャージすると、高い還元率が適用される場合がある。の最上位ランクで2%還元を取る、といった具合です。
10円欲しいわけではなくて、それがちょっと楽しいとか
金額が目的ではなく、最適解を見つけるプロセスそのものがゲームとして楽しい。ポイ活もまた「ムダじゃないムダ」の好例といえそうです。
宝くじは「夢を考える権利」を買っている
品川さんの知り合いに、宝くじを心から楽しんでいる人がいるそうです。「交通事故に遭う確率より低いのに何が楽しいんですか?」と品川さんが聞くと、こう返ってきました。
当たったら何しようって考える時間を買ってるの
当選するかどうかが大事なのではない。「買った」という事実が、「もし当たったら」と本気で考える権利をくれる。1,000円〜2,000円で、買ってから発表までの1〜2週間ずっとワクワクできるなら、確かにコスパの良い娯楽かもしれません。
けんすうさんの「ゼロと0.0001はちょっと違う」という指摘も的確です。飲み屋で「1億あったらどうする?」と空想するのと、ほんのわずかでも実際に可能性がある状態で考えるのとでは、リアリティがまるで違います。
品川さんはこのエピソードから、神棚に手を合わせる人の気持ちも理解できるようになったと言います。その必死さも含めて「壮大な物語を買っている」のだと。信じるかどうかは別として、その行為に意味を見出せるかどうかが大事なのかもしれません。
運の総量という感覚
品川さんには独特の信念があります。「運の総量は、なんとなく決まっているような気がする」というもの。以前はギャンブルも好きだったそうですが、あるときから楽しめなくなったと言います。
勝ったら勝ったで「この運をここで使ってしまった。もっといい出会いや仕事に使えたかもしれない」と感じる。負けたら負けたでシンプルに腹が立つ。どちらに転んでも気持ちよくない状態になってしまったそうです。
だから僕くじ引きとか絶対当たらないです。で、当たらなくて良かったと思ってるんですよ
福引で八等のティッシュが出ても「ここで運を使わなくて良かった」と安堵する。Switchが欲しければ自分で買えばいい。宝くじも「当たったら困る」から買えない。一方で、券をもらったら回すし、初詣には行く。この矛盾にけんすうさんから「回すなよじゃあ」とツッコミが入り、笑いが起きていました。
けんすうさんの奥様も同じ「運の総量」の考えを持っているそうです。けんすうさんは「しょぼい悪いことがめちゃくちゃ起きるタイプ」で、お店で自分の注文だけ来ないといったことが頻発する。奥様はそれを見て「その分、大きなところで運を使ってるんだね」と言うのだとか。
科学的根拠があるかどうかはさておき、この感覚は「小さなところで運を消費せず、大事なところに取っておく」という一つの人生哲学として面白いものです。ギャンブルから自然に距離を置ける効用もあるようです。
まとめ
誘われたら断らない。勧められたら一回やってみる。そのルールの先に、ネイルから分割キーボード、ポールダンスまで、自分一人では思いつかなかったはずの体験が待っていた──というのが今回のエピソードの核心です。
「メリットあるの?」と問い続ける人は、自分の時間の価値をゼロにしてしまいがち。ポイ活も宝くじも神頼みも、一見ムダに見えるけれど、それを楽しめるかどうかが人生の豊かさを決めているのかもしれません。
けんすうさんの「聞き役の魔術」に乗せられて品川さんがどんどん語るという構図も含めて、「ムダ話」の中にこそ本質がある、ということを体現したような回でした。
- 「勧められたらやる」ルールが、好きな領域の外側にある発見をもたらす
- 男性のネイル(特に黒)は驚くほど女性からの反応が良い一方、男性はまったく触れてこない
- おじさんの美容は「プラスを作る」のではなく「マイナスをゼロにする」投資と考える
- 分割キーボードは姿勢改善・スマホ離れ・生産性向上の三拍子
- モノの値段に囚われると、自分の時間の価値をゼロにしてしまう
- 宝くじの本当の商品は「本気で夢を考える権利」と「ワクワクする時間」
- 「運の総量は決まっている」という感覚が、小さな勝ち負けへの執着を手放させてくれる
