【ガチ事業相談】なぜ今Podcastなのか?けんすうが語る「インターネットを良くする」ための次なる挑戦
インターネット黎明期から数々のサービスを手掛けてきたけんすう(古川健介)1981年生まれの実業家。学生時代に「したらば掲示板」の運営に携わり、その後「nanapi」を創業。現在はアル株式会社代表として、クリエイター支援やAI活用事業を展開している。氏が、起業家・高木新平1987年生まれ。ビジョニングカンパニー「NEWPEACE」代表。スタートアップのブランディングや公共プロジェクトのクリエイティブディレクションを多数手掛ける。氏がMCを務めるPodcast番組「インサイドビジョン」に登場。新サービス「Pody」を携え、深夜のガチ事業相談が繰り広げられました。アルゴリズムにハックされた現代のインターネットをどう「良く」していくのか、その核心に迫ります。
アルゴリズムに攻略されたインターネットへの危機感
けんすう氏は現在、自身の命を燃やせるテーマとして「インターネットを良くする」ことを掲げています。彼が感じる現代のインターネットの最大の問題は、プラットフォーム側のアルゴリズムコンピューターが計算や処理を行うための手順のこと。SNSでは、ユーザーの過去の行動データをもとに「次に見るべきコンテンツ」を予測して表示する仕組みを指す。がユーザーを「攻略」しすぎてしまっている点にあります。
TikTokに代表されるショート動画は、人間の本能を刺激し、反射的に次へとスワイプさせる仕組みが極限まで最適化されています。その結果、深く考えるコンテンツや理性に訴えかける情報が届きにくくなり、コンテンツの多様性が失われていると警鐘を鳴らします。
エロ、暴力、誹謗中傷、反射的に見てしまう動画(例:ペンギンの体重測定)
新たな視点を与える情報、深い知識、複雑な文脈を伴う議論
TikTokでペンギンの体重を測る動画ばかり見てしまう。これは僕の脳が完全に攻略されている証拠。何も残らないはずなのに、人間の本能が刺激されているんです。
「スマホを触らないメディア」としてのポッドキャスト
インターネットのバランスを取り戻すため、けんすう氏が注目したのがポッドキャストです。スマホを注視し、0.1秒単位でスワイプする「視覚の争奪戦」から離れ、耳で聴くポッドキャストは「スマホを触らないメディア」として機能します。
しかし、音声メディアにも課題はあります。人間は流暢に流れる音声を聴くと「理解したつもり」になる処理流暢性情報がスムーズに処理できるほど、その内容が正しく、安全であると直感的に信じてしまう認知バイアスのこと。という心理が働くため、内容が定着しにくいのです。そこで、けんすう氏の会社では、AIによる要約や復習を可能にするサービス「Pody」の開発を進めています。
情報の民主化への感動と、経済合理性のジレンマ
高木氏から「原点はどこにあるのか」と問われたけんすう氏は、2000年頃に作成した受験掲示板の体験を語りました。それまで独占されていた受験情報が、インターネットを通じて民主化されたことへの感動。それが彼の活動の根底にあります。
しかし、一方でけんすう氏は「善意だけでは続かない」という冷徹な視点も持っています。かつてのコミュニティには「3年限界説」があり、経済合理性がなければ質の高いコンテンツを維持できないと考えてきました。これに対し、高木氏は「過去の売却経験(nanapiなど)が、経済合理性の重りになっていないか」と鋭く切り込みます。
ポッドキャストは「IPの源泉」になり得るか
議論は、ポッドキャスターが継続するためのインセンティブをどこに置くかへと移ります。けんすう氏は、月額課金などのファンエコノミーを想定していましたが、高木氏は「もっと大きな夢が必要だ」と説きます。
高木氏の提案は、ポッドキャストを「IPの現役(源流)」と捉えることです。例えばコテンラジオ「歴史を面白く学ぶ」をコンセプトにした、日本で最も成功しているポッドキャストの一つ。深い調査に基づいた複雑な内容を、楽しく伝える手法で圧倒的なファンを抱える。のように、膨大なリサーチと狂気が込められたコンテンツは、単なる音声にとどまらず、書籍化、ドラマ化、映画化、さらには教科書に採用されるようなポテンシャルを持っています。
ポッドキャスト(原液)
狂気を伴う深い対話やリサーチを音声化
書籍化・メディアミックス
編集者が磨き上げ、より広い層へリーチ
社会的価値・経済的成功
ドラマ・映画・教育分野への波及
Podyの役割再定義:ポッドキャスト界の「ジャンプ」を目指して
最終的に、Podyの役割は「ポッドキャスターにお金を稼がせるためのツール」から、「ポッドキャストをIPとして最大化させるための出版社」のような存在へと再定義されました。週刊少年ジャンプが漫画家の原稿料だけで成り立っているのではなく、そこから生まれる単行本やアニメ化という大きな夢を提示しているのと同様の構造です。
ポッドキャストという手段を通じて、インターネットに良質な情報を増やし、作り手がその「狂気」を継続できるエコシステム。それこそが、けんすう氏が求めていた答えでした。
まとめ
「インターネットを良くする」という抽象的なビジョンが、ポッドキャストという具体の戦場、そして「IPの出発点」という事業軸へと結実した今回の相談。けんすう氏の豊かな知見と、高木氏の鋭いビジョニングが交差したことで、日本の音声メディアの未来を変える一歩が刻まれました。
- アルゴリズムによる「脳の攻略」が、インターネットの多様性を奪っている
- ポッドキャストは「スマホを触らない」ことで理性を保てる貴重なメディア
- 小規模なマネタイズよりも、書籍化やドラマ化を見据えた「IP展開」こそがクリエイターの夢になる
- Podyは、単なる学習支援ツールではなく「ポッドキャストをIP化するプラットフォーム」へ
