三浦崇宏を「丸裸」にするコラボ回
この回は、GOが運営する「THE CREATIVE ACADEMY」とのコラボ収録として行われました。受講生が見ている前で、三浦さんをビジョニングで解剖するという趣向です。
三浦さんは冒頭から、うまくコンテンツに仕上げてしまう自分の癖を警戒していました。
YouTubeの新体制じゃないって俺自分で思ってるから。ちょっとこうコンテンツに仕上げようっていう本能があるじゃん、俺。
そういうのを絶対出さないようにしようとか。頑張らないことを頑張ろうみたいな、そういう気持ちで生きてる。
ところが、その説明自体がすでに「三浦節」になっていると高木さんに指摘されます。素の自分を出そうとするほど、いつもの三浦崇宏が出てしまう。そんな難しさから収録は始まりました。
経営者かクリエイターか、3つの「どっちつかず」
三浦さんには、明確に言語化された悩みがありました。それは大きく3つに分かれています。
現場で手を動かし、表に出て仕事を取ってくる自分
60人近い組織を運営し、社員を育てる自分
1つ目は、クリエイターとして現場で仕事をするか、経営者として組織を動かすか。2つ目は、メディアに出たいのか出たくないのか。3つ目は、自分individualを前に出すか、GOという会社を前に出すか。
これだけ課題が言語化できていれば解も出そうに思えます。しかし三浦さんは、意外に意思決定できないと打ち明けます。
100%振り切ることへのリスクを感じるんだろうね。
(メディア露出を)ゼロにしちゃうと、次来るんだっけ?みたいな恐怖心もちょっとあったりするじゃん。
一方で会社の業績は好調です。数字は前倒しで達成し、いい仕事も来ている。それでも、独立して描いた理想の状態に対しては「半分くらい」だと自己評価しています。
「クリエイティブのマッキンゼー」になりたい
三浦さんが証明したいのは、クリエイティブの力で企業や社会の課題解決ができるということ。それは博報堂1年目の論文から変わっていない主張だといいます。
ちっちゃい電通になりたいわけじゃないのよ。クリエイティブのマッキンゼーになりたいわけ。
何らかの難しい課題があった時に、その課題解決の第一想起として挙げられる存在になりたいわけ。
クリエイティビティは一部の天才だけのものではなく、誰にでも身につけられる技術であり思想である。それを広めたいというのが、GOを作った動機です。
ただ、現実にはまだ「広告の会社」「バズる企画がうまい会社」と見られることも多いと感じています。もう1つの悩みは、組織が良くなりすぎたことでした。
最初三人で始めて、やべえ奴らがいなくなっていった。その結果、今めっちゃいい組織になったわけ。それが俺はつまんないなと思ってる。
もっと競い合えよみたいな。お前何相手のこと褒めてんだよみたいに。
共同代表だった福本氏が経営を、三浦さんがクリエイティブを担う役割分担が崩れ、今はアクセルとブレーキの両方を一人で握る状態になっていると振り返ります。
なぜクリエイティブに執着するのか
高木さんは、三浦さんがクリエイティブに強くこだわる理由を掘り下げていきます。三浦さんは、その理由を3つ挙げました。
公的な理由
人は感動しないと行動が変わらない。感動は仕組みではなく表現から生まれる
個人的な理由
ダンサーの父とオペラ歌手の母から「タカヒロはクリエイターとして生きる」と言われ続けた
社会的な理由
日本が価値ある国であり続けるには、論理や資本より、クリエイティブが重要になる
特に個人的な理由について、三浦さんはきれいごとではないと語ります。
お父さんがダンサーでお母さんがオペラ歌手で、すごい親バカな二人に「タカヒロは天才で、クリエイターとして生きていくのよ」って言われ続けてきたことが普通に影響してると思う。
一方で高木さんは、1つ目と3つ目は「武装した」外向けの語りだと見抜きます。三浦さん自身も、それを認めました。核心にあるのは、小説家になれなかった挫折との関係でした。
小説家志望、博報堂クリエイティブ配属落ちという二つの挫折
三浦さんの原点には、はっきりとした挫折があります。大学時代に本気で目指した小説家の道です。
たくさん本読んでるからもうわかったわけ。あ、これを書いたやつは才能がないわって。
原稿用紙に向かう作業が苦しく、「小説を書くために小説を書いている」と感じた三浦さんは、大学3年で小説家を断念します。そして、仲間と何かを作る楽しさに気づき、テレビか広告を志望しました。
博報堂入社後も、圧倒的な自負を持ってクリエイティブ配属を狙いました。しかし、結果はクリエイティブに呼ばれず。これも一つの「負け」でした。
もう俺を決めて残りの四人を決めているだろうみたいな。審査員の目で見てたの。もうそういうやばいやつでしょ。
ただ、この二度の挫折を通じて、三浦さんは自分の勝ち筋を見定めていきます。ディテールを突き詰めるより、戦略や仕組み、コンセプト設計で勝負するクリエイティブディレクターになろうと考えました。
デザインや表現を突き詰める道。優れた才能が多く、レッドオーシャン
戦略やコンセプト設計に秀でる道。差別化できるブルーオーシャン
「認められたい」が消えたあと、敵が見つからない
話は、三浦さんが「丸くなった」という現在のテーマに移ります。かつて集団の真ん中に立ちたい、認められたいという欲求が強かった三浦さん。しかし今は、その気持ちがかなり減ったといいます。
実力はどんだけ否定されてもあるし、実績もどんだけ否定しても一応あるから、認められようみたいな気持ちはすごい減ってると思うわ。
とはいえ、嫉妬やむしゃくしゃが消えたわけではありません。この日は、ファミリーマートの新店舗でNIGOさんが起用されたことに悔しさを感じていました。
あれに近いプロジェクト俺提案してたのに。NIGOが行くとドーンと実現する感じとかはすごい悔しい。まだ広告のクリエイターって認められてないなって今日すごい思った。
高木さんは、三浦さんが亜流から本流をひっくり返そうとしていたはずが、いつの間にか業界の権威側に入ってしまったのではないかと指摘します。三浦さんはそれを認め、審査員も辞めたと語りました。
広告業界のメインストリームなんてめちゃめちゃ狭い世界のメインストリーム。もっとでかい何かに対して敵を見つけなきゃいけない。
天才ではない自分の役割は「革命家」
三浦さんが自分を「天才ではない」と自覚したのは、作家の朝井リョウさんの登場がきっかけでした。
俺は小説の才能なくて諦めて、でもいつか俺は取るかもしれないみたいに思った時に、自分よりもはるかに若い朝井リョウが賞を取って。
そこから、天才として突き抜けるのではなく、別の役割を担うという考えに至ります。それを表すのが、三浦さん自作の言葉です。
天才ではなくても成果を出せる社会を、クリエイティブという仕事において作りたい。それが「クリエイターの価値を上げた人」になりたいという願望につながっています。
「三浦崇宏事務所」構想と、正しさと気持ちよさのあいだ
高木さんは、三浦さんは会社を「最後の作品」にすることで、個人で戦う気迫の低下を言い訳しているのではないかと踏み込みます。三浦さんは、半分正しいと受け止めました。
そのうえで三浦さんは、以前から考えている構想を明かします。社長を誰かに任せ、自分は個人事務所を作って自由に暴れる、というものです。
料金体系を一億円と百万円と十万円にする。一億円で企業の仕事をやって、百万円で地方や小売の仕事をやって、十万円で友達の仕事をする。
現代アートのアーティスト支援や、企業のミュージアム作りなど、GOではやりにくい低利益率の仕事も一人ならできると、次々にアイデアが出てきます。高木さんは、この話をするときの三浦さんの熱量が全く違うと感じました。
三浦さんは、この二つの選択を「正しさ」と「気持ちよさ」で整理します。
GOを育て、未来のクリエイティブエコノミーを作ること。経営とクリエイティブ両方を一番うまくできるのは自分だと思っている
個人事務所で好き勝手にクリエイティブな仕事をすること
三浦さんは、GOを100%自分よりうまく経営できる人がいるなら任せたいとも語ります。かつての肩書き「代表取締役PRクリエイティブディレクター」に戻り、トッププレーヤーに専念できる状態が一番いいと考えていました。
たどり着いた核心。天才じゃない人間の証明
話が進む中で、高木さんは三浦さんの「クリエイターの価値の証明」というテーマの本質にたどり着きます。
クリエイターが世の中に影響力を持つということを証明することが、天才じゃない人間でも社会に影響力を与えることができるという証明になる。
三浦さんが証明したいのは、天才を引き上げることではなく、天才ではない人間がクリエイティブの技術や思想を身につけて価値を出せるということでした。それがアカデミーを運営する理由にもつながっています。
高木さんは、三浦さんの強みは、七転八倒する欲望まみれの姿をさらけ出してきたところにあると整理します。実用主義的に「ワークスだけ見てくれ」という広告業界の中で、それこそが三浦さんの切り開いた道だと語りました。
エネルギーに蓋をしている正体
では、なぜ今エネルギーが下がっているのか。高木さんは、テストステロンの低下ではなく、「大きな秘密」を隠していることが原因だと指摘します。
三浦さんはこの回で結婚したことを明かしますが、相手の都合もあり公にはしていません。高木さんは、その一つの隠しごとが全体に影響していると読み解きます。
その秘密がマジでエネルギー値を下げてる。それで全部の調整をして。
いや、それはそうかもな。隠してるのだるいよ。
コンプレックスやミーハーな気持ちをさらけ出すことを武器にしてきた人間が、それに蓋をするのはおかしい。むしろモヤモヤや悩みもさらけ出したほうがエネルギーになる、という結論に二人はたどり着きます。
三浦さんも、経営に迷っていることや、社員が仲良すぎることへの不満といった生々しい部分を、社外で口にしたのはこの日が初めてだと打ち明けました。三浦さんは、素をもっと出していくと応じます。
高木新平から三浦崇宏、そして番組への提案
最後に、立場を入れ替えて、三浦さんから番組「インサイドビジョン」への提案が行われました。三浦さんは、この番組を高木さんが見つけた最高の競技だと評価しつつ、拡大しすぎる癖を指摘します。
今すごいいいのに、うかつに人募集したりするじゃん。俺やらない方がいいと思う。
本当は出たくない人を話題性で呼ぶことや、毎週更新にこだわることをやめ、心を開いてくれる人だけを、質を重視して不定期で出す形を勧めました。
収録はしたらいいと思うんだ、毎週。でも、これがコンテンツとして本当に面白いかわかんないから出すのやめます、で全然いいと思う。
さらに三浦さんは、番組をすごいと自分でツイートするのもやめたほうがいいと助言します。周りが評価してくるのを冷めたスタンスで受けるほうが価値が上がる、という見立てです。
最終的には、年に5人だけ経営者のビジョン発掘を年間1億円で行う、という形を提案しました。
逆に高木さんは、三浦さんに、人のプロデュース能力こそ日本一に近いのではないかと投げかけます。三浦さんは、文化人やクリエイターの事務所をやりたい気持ちはあると認めました。
それはもうじゃあやります。来年、2026年から2027年にかけて、クリエイター文化人の事務所、ちょっとやりたいなと思ってて。
まとめ
好調な会社と、丸くなった自分。三浦崇宏さんが抱える経営者とクリエイターの葛藤を掘り下げると、そこには「天才ではない自分」の役割を証明したいという核心と、大きな秘密に蓋をしてエネルギーを落としている現在地がありました。
- 三浦さんの悩みは「経営者かクリエイターか」「メディアに出るか」「個人かGOか」の3つに整理される
- クリエイティブへの執着の根には、小説家になれなかった挫折と「天才ではない」という自覚がある
- 目指すのは「天才」ではなく、天才でなくても成果を出せる社会を作る「革命家」
- 正しいのはGOを育てること、気持ちいいのは個人事務所で自由に暴れることという二つの本音がある
- 結婚という秘密に蓋をしていることが、素をさらけ出す三浦さん本来のエネルギーを下げている
