芸能活動と2社経営、板野友美の現在地
番組の冒頭、板野友美さんはまず自身の経歴を語ります。14歳で芸能界デビューし、中学2年生でAKB48の1期生としてスタート。8年間活動し、22歳で卒業しました。
その後はソロ活動やタレント、女優業を経て、29歳で結婚、30歳で出産。板野さんはこのタイミングで起業したと話します。
その出産すると同時にスキンケアブランドと、あとはそこから3ヶ月後にアパレルブランドも立ち上げるという形で、今2社経営しています。
アイドルグループのプロデュースも、アパレルブランドの会社の一事業として行っています。芸能活動、2社の経営、母親業を並行する状況です。
この番組は、SHOGUNBURGERを展開する経営者ホンダさんの紹介で出演が実現しました。起業家や経営者が多く登場する番組に、芸能出身のゲストが来たかたちです。
なぜ経営者になったのか、起業のきっかけ
高木さんは、なぜこの番組に相談に来ようと思ったのかを尋ねます。板野さんは「女性をエンパワーメントしたい」というビジョンはあるものの、そこへの持っていき方に迷いがあると話します。
(どちらのブランドも)板野友美のファンビジネスみたいに最初なってきちゃうじゃないですか。それをファンビジネスから変えていかなきゃいけない。
私が離れてもブランドが一人歩きしていくようなブランドにしていきたいみたいなところがあって、ちょっと相談したいなと。
起業のきっかけは、コロナ禍での妊娠でした。もともとアパレルや美容の会社をやりたいという明確な思いはなかったといいます。
閉鎖された空間で自分と向き合う時間が長かったとき、洋服を可愛くするだけでモチベーションが維持され、前向きになれることを実感したと板野さんは振り返ります。
洋服を売りたいってよりかは、そういう女性の背中を押す何かをしたいとか、ブランドを作って言葉の発信だったり。
板野さんの根本には、実体験を通して同じ悩みを抱える女性の背中を押したいという思いがあると語られました。
AKB48の成功は「自分の力」なのか
高木さんは、社会的なメッセージだけでなく、板野さん個人の野心の部分を聞きたいと切り込みます。板野さんは「負けず嫌い」だと認めつつ、意外な本音を明かします。
アイドルで成功したのも自分の力じゃないなっていうのはすごい感じていて。
(AKB48は)グループとしての成功だから、いつもすごいって言われることがイコール自分自身じゃないなっていうのはすごい感じていて。
板野さんはいわゆる神セブンの一人でしたが、AKB48を作った秋元先生やメンバーの力があってこそだと捉えており、そこに自信を持てないと話します。
サッカー選手11人いて、もちろんメッシみたいな人はいるけど、そうじゃなくても自分たちでやったぜって思うと思うんですよ。なんで思わないですか?
高木さんは、真ん中にいた板野さんが手応えを自信に変えていないことに驚きます。板野さんは、世間から見られる感覚と、内側からグループを見ている感覚は違う気がすると答えました。
ギャルで貫いたポジションと、独自性の自覚
高木さんは、板野さんが清純派アイドルではなく「ギャル」というキャラクターを貫いてやり切ったことに、相当な根性を感じると語ります。
板野さん自身も、学校でいえばギャルポジション、窓際の後ろの方にいる人のような立ち位置がしっくりきていたと振り返ります。
最初の14歳15歳の時とかは、センターやりたいってずっと思って(いた)。
後半は、無理に一番を狙わず独自ポジションに納得していたといいます。総選挙で1位が取れなくても淡々としていられたと板野さんは話します。
一方で高木さんは、そこまで独自ポジションを築いたのに、それが自信になっていないことを不思議がります。板野さんの答えは、ポジションそのものではなく、グループの成功に自分の力がどれだけ影響したか確信が持てない、というものでした。
支えられる人生ではなく、自分で成し遂げたい
話は、板野さんの根っこにある「自分で成し遂げたい」という感覚に移ります。結婚して気づいたのは、相手に支えられるだけの人生は望んでいないということでした。
誰かについていくみたいな、相手任せの人生じゃなくて(自分の人生を確立させたい)。
その彼と別れてもこの生活水準で生きていきたいなとか、こういう自分でありたいなっていうのを考えちゃう。
高木さんは、これがAKB48の話とつながると指摘します。自分がいなくてもできたのではないか、という支えられている感覚と同じ構図だという見立てです。
(欲を)持ち続ける人って少ないと思ってて。最後は欲の強さ結構大事だなと思って。
高木さんは、多くの経営者が金銭や承認が一定満たされると満足してしまう中で、板野さんの欲の強さを前向きに評価しました。
SPEEDに憧れた4歳児が、AKB48に受かるまで
板野さんがアイドルを目指した原点は、4歳のころから毎日SPEEDのテレビを録画して踊っていたことでした。憧れは島袋寛子さんだったといいます。
小学3年生からダンスと歌を習い、AVEXのキッズアカデミーでバックダンサーや紅白歌合戦のステージも経験。そこから前に立ちたい気持ちが強くなったと語ります。
中学に入ると母は教師、父は銀行員という家庭で、一度夢を置いて勉強するよう言われます。しかし成績が落ち、家族会議で夢か勉強か選ぶよう迫られました。
最後のチャンスだと思ってオーディション受けようっていうのがAKB(48)のオーディション。
当時のAKB48は客が7人しかいない状態からのスタートでした。板野さんは「踏まれても立ち上がる」雑草精神で頑張ったと振り返ります。
成功の定義と、絞れないことへの葛藤
高木さんは、板野さんにとって「成功」がどこまで行った状態かを尋ねます。板野さんは、業界の人に認められること、女性経営者としてすごいと思われることを挙げました。
自分のむっちゃ得意なこと、ここだったら日本一だと言えることは何だと思うか。
高木新平 さんからの質問
板野さんは、専門学校で学んだわけでもなく、アパレルを長くやってきた人にはかなわないと答えます。強いて言えば「根性」だと語り、突出した得意分野はないと自己分析しました。
高木さんは、ブランドを極めるにはその領域で一番の存在、代名詞になる必要があると指摘します。複数の事業を自分起点で並行すると、ファンしか追えないものになり突き抜けないという懸念です。
何個も展開してると、なんだかんだファンビジネスに近づくと思うんですよ。何でもやってるっていう感じになっていく。
板野さんも選択と集中の必要性は理解しています。ただ、アパレルとスキンケアのどちらかに絞る決断は、今はまだ難しいと率直に語りました。
絞れない事業をどう扱うか、判断軸としてのビジョン
板野さんは、選ばなかった事業をどうするのか、経営者はどう扱うのかを高木さんに問います。高木さんの答えは明快で、中途半端に任せるより閉じるか売却する、というものでした。
始まってないものを任せるはないと思います。うまくいかないんで、大体。
成功者が複数の会社を持てるのは、突き抜けたものが形になり、それを任せてから次を始める繰り返しだからだと高木さんは説明します。うまくいったものを任せる順番だという整理です。
創業者ほどパワーを出せる人がいないため、任せてもうまくいかないことが多い
形になったものを任せ、創業者は新しいことを始める。成功者はこの順番を繰り返す
高木さんは、ビジョンとは判断軸だと語ります。「女性をエンパワーメントしたい」は大きな話としては正解でも、シビアな意思決定の場面では判断軸になりにくいと指摘しました。
終わらせないと自分のリソースを食い続けるんで。
板野さんはアパレルで50億円、スキンケアで30億円という目標を挙げます。50億円という数字は、AMERI VINTAGEなど成功しているアパレルブランドを基準にしたものでした。
ラグジュアリーブランドの戦い方と、誰が言うか
高木さんは、突き抜けたブランドは象徴的なアイテムを持つと語ります。例に挙げたのがルイ・ヴィトンの成り立ちです。
ルイ・ヴィトンは19世紀、鉄道の登場で旅をするようになった貴族のための、着た服を入れる旅のバッグから始まったといいます。今は財布やバッグが中心でも、コアは旅にあると高木さんは説明します。
旅するためだけのカバンってなんやねんみたいな。(当時は)旅を誰もしてない時代に。
高木さんは、ラグジュアリーブランドは成熟すると社会とコミュニケーションしなくなるが、最初からそれをやると「ふわっとしたもの」にしかならないと述べます。最初は好き嫌いがはっきり分かれるほうがよいという主張です。
この考え方に板野さんは共感します。誰が作っているか、その思いに共感して買う時代だからこそ、自分の色を消してはいけないという流れになりました。
ブランドは10年の戦い、揺らいだイメージ像
高木さんは、板野さんのブランドには2つの問題があると整理します。1つはファンが買う一発目は成功する一方で、その外に出る力をどう持つかです。
もう1つは、ブランドを本当に作るには10年、20年かかるという時間軸の問題です。誰がやっているかで最初は広がるが、それは消えていく前提だと高木さんは話します。
最初は絶対どんな人でも誰がやってるっていう入りではいくんだけど、消えていくわけですよ。
高木さんは、板野さんのインスタやアパレルブランドを見て、AKB48からママへの転換の中で、届けたい層のイメージ像が揺らいでいる印象を受けたと指摘しました。
自分らしさとは何か、環境に左右されないこと
板野さんが世界観のロールモデルに挙げたのが、下着ブランドのヴィクトリアシークレットです。店舗に入るとワクワクし、女性のテンションが上がる非現実的な空間に惹かれると語ります。
高木さんは、板野さんの「自分らしさ」という言葉の中身を掘り下げます。板野さんの答えは、結婚や出産、年齢といった立場に応じて自分を変えなくていい、という価値観でした。
なったから、こういう自分に変えなきゃいけないっていうのにすごいギャップを感じて。
ママでいても別にこういう服着ててもいいでしょみたいな表現の仕方(が、ロージールッチというブランド)。
高木さんは、日本では年齢に応じた服装が定義されがちだが、板野さんはそれを決めつけずに着たい服を着ようという発信をしていると理解します。花柄や派手な服は20代までという感覚への反発です。
立場に合わせすぎて、板野さんらしさが削れている
高木さんは、ここで一つの見立てを提示します。板野さんの独自性は「このスタイルでやりきる負けん気」なのに、芸能人・母・経営者という複数のアイデンティティに合わせようとして、それが削られているのではないか、というものです。
世の中こうだけど、自分はこのスタイルでいくみたいなことがちょっと若干失われてて、合わせてってる印象が板野さんらしさを削ってるんじゃないか。
板野さんはこの指摘に納得します。いろんな立場があるからこそ、自分を思い出せる瞬間を洋服で表現したいのに、実際には場面ごとに合わせてしまっていたと振り返りました。
高木さんは、コロナ禍で自分を失わないために着た服のような「自分のための戦闘服」がブランドのコアになると語ります。今はそれぞれのシーンに少し合わせているため、中途半端に見えてしまうという指摘です。
これのもっと派手なのがあるんですけど。でも私もちょっと今日、社長として(合わせてきた)。
そういうとこですよ。
板野さんが「社長として」服を選んできたことに、高木さんは即座に反応します。もっと派手な服で来たかったのでは、というやり取りに、まさに問題が象徴されていました。
知名度ゆえに失敗できない、というプレッシャー
板野さんは、経営者としては1年生でも知られているがゆえのプレッシャーを語ります。経営は失敗して学ぶものなのに、一つの失敗がニュースにされてしまうという悩みです。
本当だったら成功するまで数々の失敗を知られず、成功したところで一番の光を浴びるはずなのに、最初から知られてしまってる。
高木さんは、AKB48も客が7人の状態から仕上がっていったのに、いきなり紅白歌合戦のステージに立つような感覚でやっていないかと問いかけます。
自信ない人ほど紅白歌合戦っぽさって何だろうって考えて、この順番でこの時はこうしなきゃってなる。
板野さんは、失敗できないことが一番のプレッシャーだと認めます。経営者としてもママとしても、失敗のニュースがブランドへのダメージになるのを恐れて足踏みしてしまうといいます。
業界の非常識に張れるか、突き抜けるブランドの条件
高木さんは、多くの経営者を見てきた経験から、業界の非常識をやったブランドしか勝っていないと語ります。植物由来だけで産地を表記する化粧品や、和牛を使うSHOGUNBURGERを例に挙げます。
高木さんはナイキやアシックスの例も挙げます。ナイキはバスケのシューズが白しか許されない時代に、マイケル・ジョーダンに賭けて赤と黒の靴を作り、毎試合罰金を払いながら広げたといいます。
アシックスも総合メーカーが多い中でランニングシューズに絞って世界一に近づいたと高木さんは説明します。スタンスを切って業界の常識に張ることが突き抜ける条件だという整理です。
高木さんは、ファンビジネスの難しさは、認知があるがゆえに下手なことができず、受け入れられやすい8割のクオリティに逃げてしまう点にあると語ります。それは突き抜けたブランドから最も遠い行為だという指摘です。
万人に受けようとしたらダメみたいなことですね。
野いちご畑にイチゴはない、10年の長期戦
高木さんは、四、五十代の女性が花柄を好きなら着たいはずで、それを提案するのがまさに業界の逆を行くことだと語ります。品がないと言われても、そこに新しい価値があるという主張です。
高木さんは秋元康さんの好きな言葉を引きます。みんながいる野いちご畑にはもうイチゴはない、という言葉です。今売れているものをやっても、もうそこにイチゴはないという意味です。
高木さんは、社員やファンの声もコロコロ変わるため、自分のスタンスを貫く必要があると語ります。10年かけて成功するものだからこそ、一貫性が最も大事だという整理です。
今日知れてすごいなんか勇気づけられました。
最初のこだわりに戻る、SKUを絞る決断
板野さんは、ブランド立ち上げ当初は自分のこだわりを貫いていたと振り返ります。花柄がはっきり見えるジョーゼット生地を日本中で探し、初めてワンピースを作ったといいます。
花柄って派手だから、これをずっと続けていくのって市場としてどうなのかなと思ったりして、売れてそうな商品にちょっと寄ってっちゃった。
高木さんは、そうした寄せた商品をやめてSKUを絞ることを勧めます。展示会でワンピースが2着しかなくても、こだわりきったほうが説得力があるという考えです。
正解をなんかたどっちゃってたみたいな。みんながこうしてるからこうしなきゃ(と)。
板野さんは、この日着てきたワンピースは守りに入ったものだと認めます。高木さんは、もっと花柄のパンチがあるほうがよいと率直に伝えました。
傷を見せながら10年戦う、それがメッセージになる
高木さんは、名前が売れているからこそ失敗できない難しさを認めつつ、選択肢は2つだと語ります。名前を出さずステルスでやるか、傷を見せながらやるかです。
まず10年かかると思って。10年をうまくいかない連続の日々ですと(受け入れられるか)。
板野さんは、傷を見せながらやりたいと答えます。かっこ悪い部分や失敗も含めて成長していく姿を見せたほうが、逆に女性の背中を押せるという気づきでした。
かっこ悪い部分とか、人間だから失敗もすると思うんですけど、そういう過程も見せつつ、女性としても経営者としても成長していってる。
高木さんは、人前で失敗し、チャレンジの姿を見せられるのは才能だと語ります。ほとんどの人はできないから安牌をやるという指摘です。
板野さんは、結婚や経営者としての歩みで少しずつ評価され、アンチが減ったからこそ失敗を見せたくなくなっていたと振り返ります。それが商品にも出ていたのかもしれないと語りました。
チャレンジャーであり続ける経営者としての決意
高木さんは、一度成功した経営者も同じ悩みを抱えると語ります。成功者というイメージが一度つくと剥がせず、チャレンジしなくても死なないため、失敗しづらくなるという構図です。
チャレンジャーでいたいっていう気持ちは本当あるのに、失敗をしづらいっていう。それは結構苦しい感情だと思うんですよ。
板野さんは、裸の王様のようになった部分をぶっ壊してもう一度やる人は強いと語ります。高木さんも、それで成功したらかっこいいと応じました。
板野さんは、AKB48の話と同じで、パタンナーが優秀だったから、並べた店が良かったからと、自分の力だったのか疑いが消えないと述べます。だからこそ自分のスタンスと一致したものをやりきりたいといいます。
アイドルは引退後、何で活躍するのか
高木さんは、アイドルが卒業後に成功する例は少ないと言われることに触れます。だからこそ成功したい気持ちがあると語りました。
アイドルとしてじゃないと成功できないって思われてるっていうか。それは悔しいです。
板野さんは、アイドルという職業が幅広く、歌もダンスもグラビアも平均点は取れるが、何で評価されているのか自分でもわかりにくいという高木さんの整理に共感します。
百点満点で平均点取ってるみたいな。だからこそ、自分は何ができたんだろうみたいな。
板野さんは、人気は政治に近く世の中を動かす力があるとフォローしつつ、抽象的で自信につながりにくいことを認めます。だからこそ「これだけは負けない」と言える何かを作りたいという話に着地しました。
型にはまらない担当として生きる
番組の終盤、二人は板野さんのメッセージを「型にはめない」という言葉に集約します。ママ、経営者、年齢といった枠に囚われやすい女性ほど、それに晒されやすいという認識です。
それじゃなくていいんだよっていう自由というか。型にはまらない担当として、社会の中で。
板野さんは、型にはまらない人は強くて頑固なわけではなく、そうでなければ生きられない不器用さでもあると語ります。その弱さも含めて出していくことがメッセージになるという結論です。
型にはまらない人が別に強くて頑固なわけじゃないっていうか、そうじゃなきゃ生きれないっていうだけでもある。
高木さんは、テクニカルに絞るのではなく、軸を見つけて世の中への提案の仕方が定まれば、濃度の低いものは自然になくせると整理します。個性を貫ける人だからやりきってほしいと締めくくりました。
まとめ
この回は、国民的アイドルから経営者へ転じた板野友美さんが、ファンビジネスの外へ突き抜けるための判断軸を探る対話でした。世の中に合わせて丸くなるのではなく、自分のスタイルを貫くことこそが、板野さんらしいブランドのコアになるという方向性が見えた90分でした。
- 板野さんはAKB48の成功を「自分の力」と思えず、自分で成し遂げたいという強い欲を持っている
- 突き抜けるブランドは業界の非常識に張り、最初は「は?」と思われても10年かけて浸透していく
- 知名度ゆえに失敗できないプレッシャーが、受け入れられやすい商品への寄せを生み、板野さんらしさを削っていた
- 傷や失敗の過程を見せながら戦うことが、逆に女性の背中を押すメッセージになりうる
- 自分のスタンスと一致したものをやりきれば、成功しても「自分の表現だった」と納得できる


