髙島宏平さんから学んだ「世代のリーダー」という役回りとは?
アソビューの山野智久さんが、強く影響を受けている先輩として名前を挙げたのが、オイシックス・ラ・大地の髙島宏平さんです。
山野さんによると、髙島さんはオイシックス・ラ・大地の経営に加えて、経済同友会 ── 日本の経営者が個人の資格で参加する経済団体。企業経営者が政策提言などを行う場として知られていますの副代表幹事や車いすラグビーの理事も務め、佐々木さんの補足では地域の活動にも関わっています。
山野さんは髙島さんを、「経営者としてのキャップ」と「世代のリーダーとしてのキャップ」の両方を持ち、それをかぶり分けている人だと表現します。結果的にオフィスも同じ場所にあり、一回り上の先輩としてリーダーシップの面で影響を受けてきたといいます。
髙島さんから山野さんが教わったのは、自分の世代で社会を変えたいと思ったとき、自分だけではできないからこそ「どの仲間にどの領域を任せられるか」を考える、という視点でした。
さらに髙島さんは、世代の中にもいろいろな階層があるので、次の世代では山野さんが周りを巻き込んでいくといいのではないか、と声をかけてくれたそうです。上下関係ではなく勝手に期待されているだけだとしながらも、山野さんはそうした関係を「素敵だ」と感じたと振り返ります。
経営者が政治を語ってはいけないのか、歴史に残るのは誰か
社外の活動をしていると、山野さんは「実業をやれ」「経営者だろう」と言われることがあるといいます。社内のメンバーから、会社の代表が政治について発言するのはどうかと指摘されたこともあったそうです。
山野さんの考えは、社会を良くしたいから経営しているのであって、その要素の一つに政治がある以上、政治的な観点で考えを語るのは自然だ、というものです。その発言を制約してはいけないと話します。
聞き手の佐々木さんも、作りたい社会があり、その最短の手段として起業しているのだと応じ、山野さんは「まさに」と同意しています。
そこから話題は、知人から聞いたという「世界を変えた人は政治家か芸術家しかいない」という言葉に移ります。佐々木さんが「歴史に残るのは芸術家か科学者か政治家」と言い直すと、山野さんは「俺ら(経営者)が入っていない」と感じ、この問いを本気で考えていると明かしました。
佐々木さんの見立ては、ビジネスは取り組むもののインパクトの時間軸が比較的短い、というものです。江戸時代の士農工商で商が下に置かれていたように、商いが中心になった時代自体が短いことも理由に挙げます。
| 領域 | 残り方 | 時間軸 |
|---|---|---|
| 科学 | 発明者の名がずっと残る | 長い |
| アート | 美意識や価値観がずっと残る | 長い |
| 政治 | パラダイムや条約がなくならない | 長い |
| ビジネス | インパクトの時間軸が比較的短い | 短い |
一方で山野さんは、ビジネスの起点を作った人が語られる機会が少なかっただけではないか、と別の見方を示します。たとえば卸売業を生み出した人がいたとしても、その人を革命家として分析し語る機会は少なかった、という指摘です。
佐々木さんはこれに同意しつつ、東インド会社 ── 17世紀以降、ヨーロッパ各国がアジア貿易のために設立した特許会社。オランダ東インド会社は株式会社の起源の一つとされますは株式会社の歴史として残り、スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクもおそらく歴史に残ると話します。結局は社会のパラダイムに影響を与えれば歴史に残るのであり、プレイだけでは足りない、というのが佐々木さんの整理です。
山野さんは、自分が教科書に載るかはわからないとしたうえで、自分たちの世代で何かの流れを作ったと言えるくらいのインパクトは作りたいと語りました。佐々木さんが「ワンチャン載っていそう」と返すと、山野さんは渋沢栄一と自分の名前を並べてみせ、笑いが起きる場面もありました。
なぜ「遊び」は価値の転換点になりうるのか
佐々木さんは、資本主義や企業の存在が問われ、パーパスが語られる今の時代に、経済の考え方そのものが一定程度問われていると話します。たくさん働けば幸せになれた時代ではないとみんなが気づいているから、ウェルビーイングという言葉も広がっているという見方です。
そのうえで佐々木さんは、「遊び」という言葉は絶妙で、時代の価値の転換点になる言葉の一つになりそうだと評価します。それを12年前から仕掛けてきた山野さんはすごい、と率直に伝えました。
山野さんも同じ考えだと応じます。ビジネスは売上、利益、成長率といったビジネスの論理で勝負しなければならない一方で、それが大事だと思われていない時代の価値観もある、と整理します。
売上、利益、成長率といった定量的な指標で勝負する世界
スペックや定量ではなく、感情や感性を重んじる価値観
山野さんは、スペックや定量ではない感情や感性の価値観へ移り変わる中で、遊びは両方にまたがれる可能性を秘めていると考えています。この点について、当事者意識が強いとも話しています。
そこで山野さんが経営メンバーに伝えているのが、「ビジネスの中心で高らかに遊んでいると言おう」という言葉です。ビジネスの論理で時価総額の高いところに発言権があるのだとしたら、その中心で遊びを叫ぶことが自分たちの役割だと考えているといいます。
遊びがある世の中の理想は、リスペクトとバトン
佐々木さんが、人間関係のあり方としてどんな世の中が理想かを尋ねると、山野さんはそうした質問を受けたことがないと前置きしたうえで、2つのイメージを挙げました。
山野さんが挙げた1つ目はリスペクトです。それぞれが個性を持ち、経験年数も違う中で、その時に持っている価値観や考え方を否定せずに尊重することが大事だと話します。
2つ目は、人類という共同体は個人で終わるのではなく、共同体としてタスキを渡し合っていく、という考え方です。自分も相手もいずれ死ぬ以上、次の世代にどんなメッセージを持ってバトンを渡すかが大事になる、と山野さんは説明します。
ただし山野さんは、世代を一方向に教える関係だけを想定しているわけではありません。10歳の子どもの感性を「まだ子どもだな」と言う大人のほうが、実はすさんでいるのかもしれない、とたとえます。世代ごとの感性から学ぶことがあるので、否定ではなく肯定する関係が大事だという考えです。
山野さんは、こうした関係こそが遊びだと語ります。子どもと遊んでいるときには上も下もなく、楽しいか楽しくないかだけだから、というのが理由です。
さらに山野さんは、ホモ・ルーデンス ── オランダの歴史家ホイジンガが提唱した「遊ぶ人」を意味する人間観。遊びが文化を生み出す根源にあると論じましたという考え方にも触れ、人間はそもそも遊ぶために生まれてきたという学術的な議論があるほど、遊びは重要な起点なのだろうと話しました。
山野智久さんの思考回路はどこから来るのか
山野さんの話を聞いた佐々木さんは、なぜそうした思考回路になるのかを考えます。先輩が教えてくれた、フラットに向き合ってくれたといった自分の人間関係の経験を、大きく広げたいという欲望を持っている人なのではないか、という見立てです。
山野さんは、自分の体験を押し付けたいわけではないと断りつつ、自分の体験や学習から培った原理原則や真理のようなものを、正しいか間違っているかではなく広げていきたいという欲求はあるだろう、と認めます。
佐々木さんは、1つの関係性の中で学んだことを「これは大事だ」と見つけて広げたいと思う気持ちが、山野さんは並外れて強いのではないかと話します。そして、素直に良いと思い、自分もそうありたいとピュアに思えるところが山野さんの魅力なのかもしれない、と締めくくりました。
山野さんが「僕は結構素直でピュアなんですよ」と返すと、佐々木さんが軽く茶化し、山野さんが「いやマジでそうなんですよ」と重ねる、和やかなやり取りで回は終わります。
まとめ
この回では、髙島宏平さんから受けた影響を起点に、経営者が社会や歴史にどう関わるかが語られ、山野智久さんが「遊び」をビジネスと新しい価値観をつなぐ言葉として掲げる理由が見えてきます。
- 山野さんは髙島宏平さんから、社会を変えるには「どの仲間にどの領域を任せるか」を考える視点を学んだ
- 歴史に残るのは芸術家・科学者・政治家という問いに対し、社会のパラダイムに影響を与えればビジネスも残るという見方が示された
- 遊びは、ビジネスの論理と感性を重んじる価値観の両方にまたがれる言葉だと山野さんは考えている
- 山野さんが描く理想の関係は、世代を超えたリスペクトと、共同体としてバトンを渡していく意識にある





