ハンドルを握ることが「罪」になる日は来るのか
Turing株式会社CEOの山本一成さんは、自動車産業の未来について3つのシナリオを想定しています。そのうち、日本にとって最も悲観的なシナリオとして挙げたのが、かつてのスマホとガラケーのような関係です。
山本さんによると、完全自動運転車が生まれれば、自動車のルールそのものが全部変わってしまう可能性があります。山本さんは、この劇的な変化が起こるシナリオも十分ありうると考えています。
ハンドルを握ってることがもはやダサいを超えて罪になるような時代が来るかもしれないなと思ってて。
ホストも、テスラに乗っていて高速道路ではほとんど自動運転を使うようになったと話します。二、三時間の長距離では「マジで楽」で、一度使うとやめられない感覚があるそうです。
ホストは、首都高では切り替えが多くて面倒な場面もあると話します。それでも、みんながこの運転になればずっと安全になるのではないかとも感じているようです。山本さんは、いずれ一般道もそうなるだろうと応じています。
完全自動運転がいつ実現するかについて、山本さんは、AIの発展は多くの人の予想より早く進むと見ています。2030年には余裕を持って完成できるのではないか、というのが山本さんの見立てです。
山本さんの見立てでは、Turingの車が世に出る頃には完全自動運転が実現しています。そのためTuring社内では「最初からハンドルがない設計でいいのでは」という話もしているそうです。
ハンドル持ってんの罪になりますよ。タバコみたいに、かつての。
ホストが「ハンドルがあると動かしてしまう」と返すと、山本さんは、人が金属の塊を手で動かしていること自体を危ういものとして語っています。
EVは政治で決まる?トヨタが勝つ第3のシナリオ
山本さんは、2つ目のシナリオを「もう少しマイルド」なものだと説明します。自動運転は部分的には実現するものの、できないことも多く残る世界です。
このシナリオの前提として、山本さんは完全自動運転とEVの相性の良さに触れています。「その辺を走って勝手に充電しておいて」と頼めれば、とても楽になるからです。
それぐらいは頭良くないと完全自動運転じゃないから。
裏を返すと、完全自動運転に届かない世界では、いまのEVの「充電がだるい」という問題が残ります。そのため山本さんは、2つ目のシナリオでは内燃機関もなかなか生き残るのではないかと見ています。
山本さんは、CO2削減が当然の課題であることを認めつつ、EV化は結構政治だと指摘します。中国でEVが発達したのは、優秀な起業家が勝負していたことに加えて、国が後押ししていたからだといいます。
山本さんは、テスラについても、カーボンクレジット ── 温室効果ガスの削減量や排出枠を取引できるようにした仕組み。排出基準を上回る削減をした企業は、余った枠を他社に売って収益にできますをうまく使い、国からさまざまな補助を受けてきたと指摘します。このため2つ目のシナリオでは、国家がEVをどう扱うかが大事になると話しています。
3つ目のシナリオについて、山本さんは「わかんない」と前置きしたうえで、「やっぱりトヨタ強かったよね」となる未来を挙げます。このパターンでは、Turingは厳しいと率直に認めています。
山本さんは社内のメンバーにも、Turingが必ず助かるわけではないとよく伝えているそうです。
ここまでに挙がった3つのシナリオを並べると、次のようになります。
| シナリオ | 起こること | ポイント |
|---|---|---|
| 1: ルールが全部変わる | 完全自動運転が実現し、スマホとガラケーのような断絶が起きる | 日本にとって最も悲観的。ハンドルを握ることが「罪」になる |
| 2: マイルドな変化 | 自動運転は部分的。充電の手間からEV化が進み切らず、内燃機関も残る | EV化は政治の要素が大きく、国家の扱い方が鍵になる |
| 3: トヨタが強いまま | 既存の構図が続く | Turingにとっては厳しいシナリオ |
文明という車を、人間が運転していて大丈夫か
ホストは、山本さんの話を受けて、運転の精度でも移動でも「人間より機械がやったほうがいい」ということなのかと問いかけます。すると山本さんは、話を車から人類の文明そのものへ広げました。
文明は今さ、人類の手にあるじゃん。やばくない?
山本さんは、人間が文明を動かしている現状を「酔っ払い運転みたいなもの」だとたとえます。みんなAIを怖がるけれど、人間への評価が高すぎるのではないか、という問題提起です。
山本さんによれば、AIの能力が人間を上回る危険性は多くの人が理解しています。一方で、人間が文明をコントロールしていることの危険性は、ナイーブな物語によって守られていると感じているそうです。
山本さんは、人々は個別の場面では人間が全然大丈夫ではないと知っているのに、大きな話になると人間を信じてしまうと指摘します。ホストに「なんでなんすかね」と聞かれると、山本さんは「人間だからじゃない?」と答えています。
まあだからほっとこうと思って。人間のその能力の疑問をずっと持っとこうと思ってる。
まとめ
山本一成さんは、自動車産業の未来を3つのシナリオに分けて語りました。完全自動運転が業界のルールを一変させる世界、EV化が政治に左右されながら部分的に進む世界、そしてトヨタが強いままの世界です。その根底には、AIを恐れる前に、人間が運転すること自体を疑うべきではないかという問いがあります。
- 最も劇的なシナリオでは、完全自動運転によってスマホとガラケーのような断絶が起き、ハンドルを握ることが「罪」になるかもしれない
- 山本さんは、完全自動運転は2030年には余裕を持って完成できると見ており、ハンドルのない設計も議論している
- マイルドなシナリオでは、充電の手間から内燃機関も残り、国家がEVをどう扱うかという政治が鍵になる
- トヨタが強いままのシナリオではTuringは厳しく、山本さんはその可能性も社内に伝えている
- 山本さんは、AIの危険性より、人間が文明という車を運転していることの危うさに目を向けている





