広告費1割未満で、なぜ世界に届いたのか
カレンダー共有アプリTimeTreeが海外に広まったきっかけの一つは、Appleによるおすすめでした。深川さんによると、Appleには品質が高く面白いアプリを探しているチームがあり、その中でTimeTreeがピックアップされたといいます。
深川さんは、TimeTree側にもある程度の狙いがあったと話しています。Appleが毎年発表する新しい技術に一番乗りで対応しており、そうするとApple側もアプリを推しやすくなるという考え方です。ごく初期にはApple Watchへの対応もしていたと振り返っています。
Appleのおすすめは日本だけでなくグローバルチームによるものだったため、TimeTreeはさまざまな国でフィーチャーされました。その結果、海外でもユーザーが増え始めたといいます。
新技術に一番乗りで対応
Appleが毎年発表する新技術にいち早く対応し、Apple側が推しやすい状態をつくる
Appleのおすすめに選ばれる
品質の高いアプリを探すチームにピックアップされる
各国でフィーチャー
グローバルチームの紹介で、さまざまな国のユーザーの目に触れる
人が人を呼ぶ
共有して使うアプリのため、ユーザーが周りの人を招いて広がる
海外のユーザーからも、日本と同じような反応が届きました。「帰ってこないなら教えておいてよ」という家庭の行き違いがTimeTreeで減り、喧嘩がなくなったという声です。ホストが「生活の課題は大体一緒だった」とまとめると、深川さんも同意しています。
TimeTreeは広告にも大きく頼ってきませんでした。ウェブ広告は回していたものの、最近のテレビCMを含めても、広告で獲得したユーザーは全体の1割にいかないだろうと深川さんは話しています。
深川さんがその理由として挙げるのは、基本的に人が人を呼んでくれるという仕組みです。TimeTreeは誰かと一緒に使うアプリなので、ホストはチャットアプリに近い広がり方だと受け止めています。
世界共通の悩みは「身近な人との時間調整」
ホストは、ユーザーの半分ほどが海外だというTimeTreeについて、時間や予定に対する感覚に国ごとの共通点や違いがあるのかを尋ねました。
深川さんは、時間の価値観にまで踏み込んだ判断はできないとしたうえで、共通点を挙げます。どの国でもスピード感が増す中で、家族や恋人など身近な人と時間を調整する難しさが上がっているように感じるといいます。その難しさがあるからこそTimeTreeが受け入れられている、という見立てです。
深川さんは、一人ひとりが紙の手帳で予定を管理していては、もう間に合わなくなっているのではないかとも話しています。ホストも「間に合わないですよね」と応じています。
その感覚がよく表れた例として、深川さんは一昨年ごろにアメリカのTikTokでTimeTreeがバズった話を紹介しました。これまでとは毛色が違い、広がったのは10代の女の子たちの間だったといいます。
女子高生や女子大生の4〜5人ほどの仲良しグループが、夏休みを充実させるためにTimeTreeでカレンダーを共有しました。みんなバイトなどで忙しい中、共有カレンダーで遊べる日を探していたそうです。
そのグループが、自分たちのカレンダーをそのままTikTokに映し、カレンダーを指さしながら「めちゃくちゃ忙しい」と見せる動画が流行りました。カップルの投稿もあり、深川さんは「ちょっと自虐風自慢みたいな感じかもしれない」と表現しています。
TikTokで共有カレンダーを使う若いユーザーは、空いている日を見て「この日はどこの街に遊びに行こう」「みんなバイトが入っていないこの日に集まろう」と決めているといいます。深川さんは、この使い方にもスピード感が表れていると見ています。
ホストは、位置情報の共有に近い感覚ではないかと投げかけました。深川さんも、若い人たちはZenyとTimeTreeを一緒に使っていると応じています。いちいちどこへ行くかを伝えていては間に合わず、常に予定を共有しておく必要があるほどのスピード感なのだろう、と二人は話しています。
グロース一本から、予定データを生かすビジネスへ
TimeTreeはこれまで、ビジネスをあまり本格的に展開できていませんでした。深川さんによると、去年から準備を進めていて、春以降に順次サービスを出していくつもりだといいます。
マネタイズに今取り組む理由をホストが尋ねると、深川さんはこれまでとにかくグロースを重視してきたと答えました。その後コロナ禍で慌ただしくなり、ビジネスづくりが得意なメンバーも少なかったものの、去年からそうしたメンバーが参加してくれたと話しています。
グロースを最優先し、ビジネスは本格展開できていなかった
ビジネスが得意なメンバーが加わり、春以降に予定データを生かしたサービスを順次展開する予定
ホストは、マネタイズよりプロダクトに振り切ってここまで伸ばしたこと自体がすごいと受け止めています。そのうえで、ユーザー体験やプロダクトのビジョンについて尋ねました。
深川さんがやりたいことの一つ目は、共有とコミュニケーションを前提に予定を考えるというTimeTreeのコンセプトを、もっと実現することです。深川さんは、これまでそれが十分にできていたかというと疑問があるとし、予定をコミュニケーションの中で決めていくとはこういうことだと実感できる形にしたいと話しています。
二つ目は、情報も選択肢も多すぎる今だからこそ、ユーザーが入れた予定データをもとに、ユーザーのやりたいことをもっと賢くサポートすることです。深川さんは、ユーザー自身も気づいていないような便利さを提案していきたいと語っています。
まとめ
TimeTreeは、Appleの新技術への素早い対応をきっかけに各国で紹介され、共有アプリならではの「人が人を呼ぶ」広がり方で世界に浸透しました。身近な人との時間調整が難しくなっているという課題は国を越えて共通で、今後は予定データを生かしたビジネスとコミュニケーション体験の強化に取り組もうとしています。
- Appleの新技術に一番乗りで対応し、グローバルでおすすめされたことが海外展開のきっかけになった
- 広告で獲得したユーザーは、テレビCMを含めても全体の1割未満だと深川さんはみている
- 身近な人との時間調整の難しさは世界共通で、アメリカでは10代のグループがTikTokで共有カレンダーを見せる使い方が流行った
- グロース重視の段階を経て、春以降に予定データを生かしたビジネスを順次展開する予定
- 今後は、予定をコミュニケーションの中で決める体験と、予定データによる賢いサポートの2つを目指している



