家入一真さんから学んだのは、やり方ではなく思想?
聞き手の佐光賢治さんは、鶴岡さんに、家入一真さんから何を学んだと思うかを尋ねます。鶴岡さんは「何学んだんだろう」と何度もつぶやき、すぐには答えが出ない様子でした。
考えた末に鶴岡さんが挙げたのは、信じてくれる人がいつも近くにいたことの大きさです。家入さんからは怒られることも注意されることもなく、その環境自体が大きかったと話します。
実務面では、インターネットのことを家入さんから学んだといいます。そのうえで鶴岡さんが「絶対的に」家入さんから学んだと言い切ったのが、パワートゥーザピープル ── 「人々に力を」という意味の言葉。BASEが掲げるミッションの土台にある考え方で、個人の力を引き出すことを指しますという考え方でした。
鶴岡さんは、自分には人生のバックボーンがないので、家入さんの思想を引き継いでいると説明します。鶴岡さんにとって、家入さんの思想は唯一で最大の学びだったといいます。
ただし、家入さんはその思想を言葉にして語るタイプではありません。鶴岡さんによれば、家入さんの全てのプロダクトを見ていれば、パワートゥーザピープルの考え方が自然と伝わってきたそうです。
佐光さんは、二人の関係を「師匠と弟子」のようだと表現します。やり方を教えるのではなく「見とけ」と背中で示す関係だ、という見立てです。
佐光さんによると、HowやマニュアルBで教わると弟子はいつまでも師匠を超えられません。一方で、背中を見て育つ形は時間がかかるものの、いつの間にか弟子が師匠を抜いていくといいます。Howは時代や環境で変わるが、思想は渡せる、というのが佐光さんの考えです。
すぐ形になるが、弟子はいつまでも師匠を超えられない
時間はかかるが、いつの間にか弟子が師匠を抜いていく
鶴岡さんは、この10年で一番長く一緒に過ごしたのが家入さんだと振り返ります。10年一緒にいるのはその人が好きだからで、好きということはその人の考えが好きだということだ、と話します。
鶴岡さんの見方では、パワートゥーザピープルはもともと自分の中に潜在的にあった好きな思想でした。家入さんはそれを表面化させ、世の中に発信するのは恥ずかしいことではないと教えてくれたのかもしれない、と鶴岡さんは語ります。
出会った頃の家入さんと同じ年齢になって見えたもの
鶴岡さんは、家入さんと出会ったのが、ちょうど今の鶴岡さんと同じ年齢の頃だったと明かします。二人は11歳差で、誕生日も全く同じだといいます。
当時の鶴岡さんは、360日ほど家入さんと一緒にいたそうです。今の自分と同じ年齢で、あの落ち着きやオーラ、世の中に向き合うスタンスを持っていたことに、鶴岡さんは改めて驚いています。
家入さんの思想は、誰かから教わったものでもないだろうと鶴岡さんは考えています。佐光さんも、思想は明確でオーラもありながら、社会的にはよくわからない立ち位置に居続けていた人だと振り返り、鶴岡さんは「アンチも多い」と付け加えます。
鶴岡さんは、今の自分のもとに大学3年生がいきなり来て、毎日連れ回すような状況は想像できないと話します。家入さんがそれをしていたと思うとすごいと感じ、まだ下を育てることはできていないと少し反省したそうです。
そのうえで鶴岡さんは、家入さんから受け継ぐものは受け継いでいても、人生の送り方は全然違うと語ります。
吉田松陰と伊藤博文のような役割分担とは
佐光さんは、師弟で人生の送り方が違うのは自然なことだとして、幕末の例を持ち出します。家入さんは吉田松陰 ── 幕末の思想家・教育者。松下村塾で多くの志士を育て、明治維新の思想的な源流の一人とされますのような破壊者・革命家タイプだという見立てです。
佐光さんによると、その後に続いた木戸孝允 ── 長州藩出身の幕末・明治の政治家。維新の三傑の一人に数えられ、明治政府の制度づくりを担いましたや伊藤博文 ── 長州藩出身の政治家で、日本の初代内閣総理大臣。吉田松陰の松下村塾で学びましたは、感化を受けたうえでちゃんと仕組みを作った人たちでした。鶴岡さんも「役割がね」と応じます。
佐光さんは、革命的な思想を持つことと、それを現代社会にアジャストすることは、まったく違う能力だと話します。家入さんも多くの仕組みを作っているものの、思想が特殊で、その純度を持ち続けている点が稀有だと評価します。
鶴岡さんはこれを受けて、思想を生み出した人と、それを広める人という関係性が自分たちにはあるのかもしれないと話します。佐光さんは、以前から家入さんのことを「教祖」だと思っていると語りました。
鶴岡さんが、家入さんには多くの人を育てないという特性があると指摘すると、佐光さんは「それでいいのよ」と返します。教祖として見れば人生はまだ長く、これからだという見方です。
鶴岡さんは最後に、役割分担としては十分ありだと整理します。家入さんは自分の言葉で伝える力があるから伝えている一方、鶴岡さんはそれが苦手なので、会社にしてメンバーに手伝ってもらいながら思想を広めているといいます。
思想を生み出し、自分の言葉で伝える力で発信する
言葉で伝えるのは苦手なため、会社にしてメンバーと思想を広める
まとめ
鶴岡裕太さんが家入一真さんから受け継いだのは、具体的なやり方よりも、パワートゥーザピープルという思想でした。出会った頃の家入さんと同じ年齢になった今、鶴岡さんはその偉大さを改めて感じつつ、思想を生む人と広める人という役割の違いを見出しています。
- 鶴岡さんが家入さんから最も学んだのは、パワートゥーザピープルという思想
- 家入さんは言葉で教えず、プロダクトや背中で思想を示す師匠だった
- 出会った当時の家入さんと同じ年齢になり、鶴岡さんは自分にはまだ下を育てられないと反省した
- 佐光さんは二人の関係を、吉田松陰と伊藤博文のような思想家と仕組みをつくる人の関係にたとえた
- 鶴岡さんは言葉で伝えるのが苦手なぶん、会社とメンバーの力で思想を広めている





