2年ぶりの再登場、今の山川咲さんはどう見えるか
高木信平さんがホストを務める「インサイドビジョン」に、山川咲さんが2年ぶりに出演しました。高木さんは冒頭で、2回目の出演はこれまで1人しかいないと紹介しています。
前回の出演は2021年11月です。山川さんは自ら創業したCRAZY WEDDING ── オーダーメイドの結婚式を手がけるブランド。山川咲さんが立ち上げ、独自の世界観で注目を集めましたを離れたばかりで、これからどう生きるかを公開相談のように語る回だったといいます。
それから2年が経ち、山川さんは神山まるごと高専のクリエイティブディレクターや、ECOMMITの取締役CBOを務めています。高木さんは、自分がトップに立つのではなく「ナンバー2、ナンバー3」として関わる今のスタイルに、山川さんらしさと社会との接続を感じて呼んだと話します。
収録の冒頭は、長年の友人らしい軽いやり取りから始まりました。山川さんは、オフィスに着くなり「こっちこっち」と迎えられたことをこう表現しています。
(信平ちゃんに)こっちこっちとか言われて。なんかあれ10年寄り連れ添った夫婦なのかカップルだろうから。
全く久しぶりな感じがしなすぎて、3日前会ったかなぐらいの気持ちで。
高木さんがこの2年の様子を尋ねると、山川さんは「楽しくなってきた」「上々ですね、多分」と答えています。
トップでなくても「トップのように振る舞える」という勝ちパターン
山川さんはこの2年で、自分の人生の「パターン」が見えてきたと語ります。振り返れば、CRAZY WEDDINGでも社長は「もりちゃん」で、山川さん自身がトップだったわけではないといいます。
私ほんとトップじゃなくても、さもトップのように振る舞えるっていう。特技あるじゃないですか。
山川さんの言う勝ちパターンは、責任を取る人、命をかけている人がいる場所に入り、同じように命をかけながら、その人とは違う「光」を引っ張ってくることです。
山川さんは、神山まるごと高専の立ち上げで苦しかった時期に高木さんへ相談したと振り返ります。クラウドファンディングやドキュメンタリー制作など、山川さんの提案は、物事を着実に進めたい人から見れば手を止めさせる「迷惑な話」にも映りかねないものでした。
その時に高木晋平はそれこそがクリエイティブの役割だみたいな。誰からも理解されないことだから意味があるんでしょみたいなことを言ってのけて、私はそれを宝物にして頑張ったんですけど。
山川さんにとって、自分の役割はビジネスに論理的に必須なものではありません。けれど、それをやると物事が飛躍的に遠くまで行く、そういう仕事を「趣味みたいに」やっているといいます。
山川さんは、その役割を以前より不安なく担えるようになった理由を「経験ができてきたから」と説明します。うまくいかなくても、現実を積み上げるだけでは届かない場所を目指しているので、やってみるだけ損はないと思えるようになったそうです。
「世界を変えたい」から「面白いことが起きる可能性」へ
高木さんは、CRAZY WEDDINGの頃と神山まるごと高専やECOMMITの今とで感覚は違うのかと尋ねます。山川さんは、今は「あるもの」にジョインしている点が違うと答えます。
山川さんによると、以前はWhat、つまり「オーダーメイドの結婚式をやりたい」という中身が大事で、自分で立ち上げていました。先月40歳を迎えた今は、「これがやりたい」という気持ち自体が、ある種儚いものだと感じているといいます。
今の山川さんが重視しているのは、自分がやるならこう進めたいとイメージできるか、自分の人生背景とテーマがどれだけ重なるかです。時代的にそのテーマがブレイクする感覚があるか、人を呼んでこられるかも判断材料になると話します。
前は世界を変えたいだったけど、今はなんか面白いことが起きる可能性に賭けてみたいみたいなことが結構強くて。
CRAZY WEDDINGは本当に楽しかったと山川さんは言います。ただ、ゼロから自分で始めるやり方で届く飛距離はこのくらいだとわかったうえで、ゼロから始めない関わり方ならどこまで行けるのかを見てみたいそうです。
山川さんの「面白いこと」と「世界を変える」の違いを、高木さんはさらに掘り下げます。山川さんは、「世界を変えたい」は結果を作りに行く言葉なので、プレッシャーを感じすぎないよう、安易に言いたくないのだと説明します。
「これがやりたい」というWhatを軸に、ゼロから自分で立ち上げる。世界を変えないと自分の価値がないというモード
すでにある場にジョインし、自分の人生背景と時代の流れが重なるテーマで、面白いことが起きる可能性に賭ける
世界変えてやるんだ。変えないと自分の価値がないんだ意味がないんだみたいなモードはちょっと一旦今休止中。
高木さんが「面白いことを起こしたいぐらいの感じ」とまとめると、山川さんは「違うかも」と返します。そういうキャラではないので、そういうニュアンスでいようと「努力してる感じ」だと、本音を明かしています。
闘牛のように突っ込む人は、組織の中で何を担うのか
山川さんは、ナンバー2として関わるこの形を、トップと自分の双方にとってハッピーなものだと話します。トップから見れば、いきなり来て命をかけてくれる人がいて、メンバーにも社会にも物を言ってくれるといいます。
トップで実質的にトップでいる必要もないし、トップでは苦手なことが私にはあって、だからトップのこともリスペクトできて。
高木さんは、山川さんの強みは「人事とイベント」だと指摘します。熱量を起こし、イベントを作り、人を採用していく力は、事業の立ち上げフェーズと非常に相性がいいと見ています。
山川さんによると、本当に難しいのはイベントをうまく作ることではありません。リソースが逼迫している経営会議で「これが大事です」と言い切り、イベントをやると決められるかどうかだといいます。
しかもそれ誰やんの?みたいになった時、私やるよって言えるもんね。それが強いよね。
山川さんは具体例として、神山まるごと高専の1期生全員が参加したインド研修を挙げます。最後の3日間だけ合流した山川さんは「そんなんじゃ甘い」と言い出し、予定になかった最終日のプレゼンを実施したそうです。
インド研修では学生から「聞いてない」と反発もあり、山川さんは泣きながらもやり切ったといいます。その姿を見た理事長の寺田さんは、山川さんをこう評したそうです。
寺田さんによれば、厳しいフィードバックは本来、信頼のクレジットが溜まっていないと言えないものです。けれど山川さんは「ゼロクレジット、もしくはマイナスクレジットでもぶっ込んじゃう」と自認しています。高木さんも富山の仕事で、関わって2年半ほどなのに言いたい放題言っていると笑います。
高木さんがもう一つ驚いたのは、山川さんが現場の仕事まで担うことでした。山川さんは、スタートアップでは社長か自分かなら自分がやって社長の時間を作るほうがいいと考え、熱量とコミットメントでほとんどの問題は解決すると思っていると話します。
一方で高木さんは、立ち上げ期を過ぎた学校ではオペレーションが最も大事になると指摘します。思い入れが強すぎて何でも世話を焼くようになると、良くないパターンになりかねないという見立てです。
これに対して山川さんは、今は「やることとやらないこと」がはっきりしてきたと答えます。少し前までは、すべてやらないと気が済まず、見ていないと怖い状態だったそうです。
パートナーの一言で揺れる、「もう一度命をかけるか」
高木さんは、山川さんが「また世界を変える企画をしなきゃいけないか」と迷っていないかを尋ねます。山川さんは「それはちょっと迷ってる」と認めつつ、まず今の働き方の心地よさを語ります。
山川さんは28歳で起業してから約10年が経ちました。起業当初は毎日キレていて、30分おきに指示を飛ばしながら十何時間も働き続けていたといいます。
今の山川さんは、すべてを自分でやらなくても、週単位や月単位で「どこを押さえるべきか」が見えるようになっています。昔のように毎日のToDoで管理しているわけではないそうです。
起業当初は全部がうまくいっていない気がして、全部を見て30分おきに指示を出し、十何時間働き続けていた
全部をやらなくてもよく、週単位・月単位で押さえるべきところが見え、心地よく仕事が進んでいる
そんな山川さんの心を揺らしたのが、夫であるもりちゃんとお茶をしたときの言葉です。山川さんはECOMMITで「ゴミをなくす社会、捨てない社会」を掲げていますが、もりちゃんはそれを、学校を1つ作るよりはるかに厳しい道だと見ていました。
(もりちゃんは)さきちゃんにけしかけたくもないし、煽りたくもないし、それやってほしいわけでもないけど、今のままのコミットメントじゃそこにはたどり着かないと思うよみたいなふうに、すごい優しいあのね、ニュアンスで伝えてくれて。
もりちゃんの言葉を聞いた山川さんは「DNAレベルで騒いじゃう」ような感覚を覚えたといいます。もりちゃんからは、命をかけられる人にしか動かせないものがあるので、どちらでもいいがちゃんと考えて決めたほうがいい、と言われたそうです。
山川さんは、自分がいずれ本気で命をかける方向に行くことは、ほぼわかっていると話します。それでもまだ踏み切れていない状態を、スタートの合図にたとえています。
何が引っかかっているのかと高木さんに問われ、山川さんは「ちょっともったいぶってる」と答えます。理由は「今の生活が楽しいから」です。
もりちゃんからは「捧げものが必要だよ」とも言われたそうです。神山まるごと高専も、寺田さんや山川さん、関わった人たちが身を削ったからこそ今の形になった、どこまで行けるかはそれに比例する、という指摘でした。
山川さんは、ECOMMITの「てるくん」が17年間環境の問題に取り組んできたことに感謝し、彼の夢が叶う一助になれると考えて参画したといいます。そのうえで、半年前に立ち上げたPastはまだ大きく広がっておらず、熱狂レベルにはなっていないと自己評価しています。
高木さんは、今の山川さんは「みんながやれるレベル」でやっているのだと整理します。山川さんは、ピストルを撃てば、やれるかやれないかに関係なく「やるんだ」というモードに入っていくのだろうと話しています。
熱狂を支えるのは、たった3人の布陣
高木さんは、神山まるごと高専が成立しているのは寺田さんが「まず狂ってるから」だと話します。寺田さんは上場企業のSansan ── 名刺管理サービスなどを提供する日本の上場企業。寺田親弘さんが創業し、代表を務めていますを経営しながら理事長を引き受け、「ダブルフルコミット」だと言い切ったそうです。
ただ、そうした速度感や体力についていける人は限られるのではないか、と高木さんは問いかけます。山川さんは、何かに熱狂して働きたいと思っている人は多く、中途半端な会社で働くより続けやすいと答えます。
一方で山川さんは、「捨てない社会」は長い闘いのテーマなので、1〜2年を超えてどう続けるかは課題だと認めます。CRAZY WEDDINGの頃はメンバーも20代でしたが、今は40歳前後のメンバーなので、成熟した違う戦い方ができるだろうと見ています。
高木さんが、熱狂の種火になる人は何人くらい必要かと尋ねます。山川さんは、基本は数人、だいたい3人ほどだと答えます。
自分がコミットするだけじゃ難しいから、この人とこの人とこの人がコミットしてミニマム行けるか行けないかぐらいだな。
山川さんにとって、新しい挑戦は論理を積み上げれば完成する世界ではありません。自分の確信と頑張りがどこまで持つかの戦いなので、それを絶やさずにいられる仲間が、物理的にも精神的にも必要だといいます。
最初の確信
この数人がいれば戦えると思える。神山では大倉さんと寺田さんと自分の3人だった
フェーズの拡大
6人が集まり、さらに必要なメンバーの解像度が上がっていく
困難の局面
大変な状況は必ず来るが、このメンツならどうにかなると思い込めるかが鍵になる
山川さんは、布陣はコミットメントだけで決まるものではなく、戦闘力やスキルも含めた総合力だとも付け加えています。
最後に高木さんは、山川さんにとって命をかけるに値するものは何かと尋ねます。山川さんは「そこにいるトップのピュアな何か」と答え、その中身は後編に続きます。
まとめ
前編では、山川咲さんがトップではなくナンバー2として命をかける働き方に心地よさを見つけた一方、ECOMMITで「捨てない社会」を目指すなかで、もう一度本気で賭けるかどうかに揺れている様子が語られました。
- 山川さんは、命をかけるトップのいる場で、違う「光」を持ち込む役割を自分の勝ちパターンと捉えている
- 「世界を変えたい」は一旦休止し、面白いことが起きる可能性に賭けるという、プレッシャーを抑えた構えに変わった
- 起業当初の全部を見る働き方から、やること・やらないことを切り分ける働き方へ成熟した
- 夫の「今のコミットメントではたどり着かない」という言葉を受け、まだ「ピストルを撃っていない」状態にある
- 熱狂を続けるには、確信を絶やさずにいられる3人ほどの布陣が必要だと考えている





