「必要だから作る」の落とし穴とは?
ホストから「今は悩みはないのか」と問われたピリカ代表の小嶌不二夫さんは、すぐに「悩みありますよ。もう会社大変だなと思って」と答えています。
小嶌さんが挙げた大変さの中心は、ピリカという組織、あるいは小嶌さん自身が「世の中に必要だと思うサービス」を作ってしまう傾向にあるといいます。
小嶌さんの説明では、この傾向は、世の中にニーズがあるか、売れるかどうかをある意味で無視して「あるべきだから作る」という判断に陥りやすいものです。もちろん、それでうまくいってきた部分もあると小嶌さんは認めています。
一方で、買って支えてくれる人がいない状況や、本当に大切にすべき顧客の課題を解決できていない状態が生まれ、売上が伸び悩んだり、広げたい事業が広がりきらなかったりすることが往々にしてあると話されています。
小嶌さんは、このニーズとのギャップを、自分たちがやりたい問題解決をぶらさずにどう埋めるかで日々葛藤しているといいます。小嶌さんが感じている2つの引っ張り合いは、次のように整理できます。
環境問題の解決という、自分たちが必要だと信じるテーマはぶらさない
顧客の課題を解決し、売上を伸ばし、優秀な人と働くためのお金をまかなう
小嶌さんはこの問題解決でナンバーワンを目指すなら、草野球ではなくプロスポーツチームのような組織が必要だと考えています。優秀な人たちと仕事をしようとすればたくさんのお金が出ていくため、それを成り立たせなければならないという事情です。
小嶌さんによれば、この葛藤は創業からの13年間ずっと続いており、そのあいだいろいろなトライを重ねてきたといいます。
ビジョナリーカンパニーを月1回読む経営者の、恥ずかしい失敗
ホストが「経営的なことは誰と考えているのか」と尋ねると、小嶌さんは、部長級の3人の経営陣と話し合うほか、取締役会や投資家とも議論していると答えています。
小嶌さんはもう一つの相談相手として本を挙げます。昔から読書が好きで、自らを「マニュアル人間」と呼び、本に書かれていることをひたすら実験していくスタイルだといいます。
小嶌さんは『ビジョナリーカンパニー ── ジム・コリンズらによる経営書シリーズ。長く繁栄する企業の特徴を、比較対象企業との調査をもとに分析したことで知られています』を月1回ずつ全部読み返していると話し、ホストを驚かせています。
小嶌さんがこの本を重視する理由は、誰かがよいと思っているからではなく、データで検証されたうえで「これが良い」と述べているため、数ある本の中で一番信頼できるからだといいます。そのため、できる限り書かれている通りに実践しているそうです。
自分を俯瞰して捉える方法を聞かれた小嶌さんは、本を通して先人たちの話を見ていると、油断したり調子に乗ったりした瞬間に死んでいくことがわかると答えています。小嶌さん自身は調子に乗りやすい性格なので、そこは本当に抑えなければならないと感じているそうです。
ホストが「組織も何も、同じ過ちを繰り返しがちではないか」と投げかけると、小嶌さんも「めっちゃ起こります」と同意します。同じ過ちを繰り返す理由として小嶌さんが挙げたのは、「とはいえピリカは特殊だろう」と自分たちを特別視してしまうことでした。
小嶌さんはもう一つの理由として、先人たちの教えはさまざまで結局どれかを選ばなければならず、その選択がベストでないことがある点を挙げています。
小嶌さんが今でも思い出して恥ずかしいと語る例が、松下幸之助 ── パナソニックの前身である松下電器の創業者。「経営の神様」と呼ばれ、人に仕事を任せる経営についての言葉も多く残していますさんの「任せていきなさい」という教えを、人もいない創業期に実践しようとしてうまくいかなかった経験です。
人もいない創業期に、松下幸之助さんの「任せていきなさい」を実践しようとしたが、できなかった
本当はそのフェーズでは、自分でガリガリやって実績を残し、見せてあげるべき時期だったと振り返っている
小嶌さんはこの経験から、正しいアドバイスでもタイミングが間違っていると間違いになると語ります。ホストも、組織や事業の問題はフェーズを間違えると意味がないと応じています。
小嶌さんは同じ種類の失敗として、身の丈に合わないまま体裁を整えすぎてしまうことも挙げています。
途方もない道を歩くエネルギーはどこから来る?
ホストは、壮大な夢を抱きながらゴミ問題という途方もない道をやりきるには根気がいるのではないかと問いかけます。小嶌さんも「途方もないです」と認めたうえで、頑張れるエネルギーの源を語っています。
小嶌さんにとって、これまでの人生で一番つらかったのは、完璧な道を模索して何もできなかった時期だといいます。
小嶌さんが具体例として挙げたのは世界一周をしていた時期です。旅行していて楽しそうに見えるかもしれませんが、具体的に何かをしているわけではなく探索をしているだけで、小嶌さん自身にとっては本当にきつい時期だったそうです。
その経験から小嶌さんは、完璧でなくても何もないよりは少しずつ前に進んでいる方が実感があると話しています。日々のちょっとした問題解決そのものが楽しく、それもモチベーションになっているといいます。
小嶌さんはさらに、問題解決を一つの競技として見ている部分もあると語ります。テニスには時代が変わっても必ず世界ナンバーワンの選手がいて、みんながそのポジションを取り合っています。
小嶌さんの見立てでは、ゴミ問題も解決できなければ人類が滅ぶため、ある意味で誰かが必ず解決するはずで、そのナンバーワンを争っている状態とも言えます。せっかく始めたからには、自分たちがそこに行けたらいいと考えているそうです。
ホストが「ナンバーワンへのこだわりがすごい」と感心すると、小嶌さんは昔からだと答え、功罪の両面があるとしながらも、自分はそのこだわりがすごく強い方だと思うと話しています。
まとめ
ピリカ代表の小嶌不二夫さんは、環境問題の解決という理想をぶらさずに事業を成り立たせる難しさと13年間向き合ってきました。本から学び、失敗を恥じながらも、完璧を待たずに少しずつ前に進むこと、そして問題解決を競技として捉えナンバーワンを目指すことが、小嶌さんを支えているようです。
- 「必要だから作る」姿勢は強みである一方、ニーズとのギャップで売上が伸び悩む原因にもなっている
- 『ビジョナリーカンパニー』を月1回読み返し、データに基づく教えをできる限りその通りに実践している
- 正しいアドバイスでも、創業期に「任せる」を試したように、フェーズを誤れば失敗につながる
- 完璧な道を探して何もできない時期が一番つらく、少しずつでも前に進むことに実感を持っている
- ゴミ問題の解決を競技に見立て、自分たちがナンバーワンになることを目指している





