読むより“作る”に価値がある。箕輪厚介が新会社「幻夏舎」で仕掛ける、時代を壊すための本づくり
幻冬舎の編集者・箕輪厚介幻冬舎の編集者。オンラインサロン「箕輪編集室」を主宰し、数々のベストセラーを世に送り出す傍ら、タレントや実業家としても活動。2024年に新会社「幻夏舎」を設立。氏と、NEWPEACE代表の高木晋平株式会社NEWPEACE代表。ビジョンニングやブランディングの専門家として、多くの企業の経営戦略やコンセプト立案に携わる。氏が、新会社「幻夏舎(げんかしゃ)」のコンセプトについて深く語り合いました。単なる情報のパッケージではない、現代における「書籍の真の価値」を問い直す対談をまとめます。
幻冬舎の「冬」を「夏」へ。見城徹の直感から生まれた新会社
箕輪厚介氏が新しく設立し、自ら社長に就任した「株式会社幻夏舎」。このユニークな社名は、幻冬舎の創業者である見城徹株式会社幻冬舎の代表取締役社長。編集者として角川書店時代から数々のミリオンセラーを創出。圧倒的な熱量を持つ出版界のカリスマとして知られる。氏の「思いつき」から始まったといいます。
「冬を夏に変えて会社を作れ」という言葉の裏には、既存の出版社の枠組みにとらわれず、箕輪氏が持つ爆発的なエネルギーを自由に解放させるための「器」を用意したいという、見城氏なりの期待が込められていました。
見城さんが幻夏舎っていいなって。冬を夏にするって。僕が幻冬舎という枠の中で、売り上げや利益を度外視して爆発できる器をくれたんだと思います。
なぜ今、本なのか?「情報効率」ではYouTubeに勝てない時代の生存戦略
情報の速報性や効率性だけを求めるなら、現代において本という媒体はすでにYouTubeやSNSにその座を譲っています。箕輪氏は「情報だったら無料のコンテンツの方が早いし安い。今、本を作る意味は本質的にはない」と断言します。
しかし、世の中にライトコンテンツ短時間で消費でき、理解のハードルが低いコンテンツ。YouTubeのショート動画、SNSの投稿、ネットニュースなどが該当する。が溢れ、人々が「ジャンクフード的な情報」ばかりを摂取するようになったからこそ、あえて非効率な「本」という形にする価値が生まれていると分析します。
YouTube / SNS
速い・安い・わかりやすい
「ジャンクフード」
長文・非効率・自分と向き合う
認識を変える「思想の原液」
「ヴィンテージ・ウイスキー」
「ハイボールではなく、ウイスキーをストレート(原液)で飲みたい人のためのもの」──。そんな認識を根底から変えるような強い思想を、年に1冊だけ世に問う。それが幻夏舎の目指すスタンスです。
読者よりも「著者」を向く。本づくりは、人生を一枚の絵に固定するアート
対談の中で、箕輪氏の「本づくり」に対する意外な本音が明かされました。それは、読者の感想よりも「著者の喜び」を最優先しているという点です。
かつて実業家の田端信太郎オンラインサロン「田端大学」学長。NTTデータ、リクルート、ライブドア、LINE、ZOZOなどで要職を歴任。著書に『ブランド人になれ!』など。氏は本を出すことを「個人のIPOIPO(新規公開株)になぞらえ、出版を通じて個人の信用や才能を世の中に公にすること。出版によって社会的な認知と信頼を一気に獲得するプロセスを指す。」と表現しましたが、箕輪氏はその「上場」のプロセスそのものに熱狂しています。
高木氏は、この箕輪氏の姿勢を「人生を作品化し、固定するアート」と表現します。デジタル情報は常に書き換え可能ですが、紙の本は印刷された瞬間に形が固定されます。その「変わらなさ」こそが、著者の価値観や人生を象徴する作品としての価値を生んでいるのです。
「逸脱」こそがコンセプト。社会の共同幻想に穴を開けるための武器
対談のハイライトは、高木氏が幻夏舎のコンセプトとして提示した「逸脱(いつだつ)」というキーワードでした。
箕輪氏が惹かれる著者は、常に世の中の倫理観や「こうあるべき」という常識から少しはみ出した人々です。例えば、宇宙事業に邁進する佐藤航陽株式会社メタップス創業者。現在は株式会社スペースデータ代表。著書に『お金2.0』などがあり、テクノロジーによる社会構造の変化を鋭く分析する。氏や、独特の角度から笑いを作るさらば青春の光・森田哲矢お笑いコンビ「さらば青春の光」のメンバー。個人事務所「ザ・森田」の社長も務める。独特の毒と観察眼を活かした企画力で高い評価を得ている。氏。彼らはSNSが生み出す共同幻想個人が抱く幻想ではなく、社会や集団が共通して抱く主観的な現実や常識。吉本隆明の思想用語としても知られる。SNSのアルゴリズムはこれを強化する側面がある。から距離を置き、自分独自の目で世界を見ています。
新しい思想を作り、社会に実装する
(IT企業のようなきれいな目標)
「逸脱」せよ。
世の中の同調圧力に穴を開け、もっと自由であることに気づくための武器を作る。
「社会を良くしたい」という正義の言葉よりも、今の窮屈な社会から抜け出す「逸脱」の瞬間。それを提供することこそが、箕輪氏が本気で熱狂できる仕事であると結論づけられました。
コミュニティは「仲良し」ではない。制作の熱狂を共有する「見習い」の場
幻夏舎では、従来のオンラインサロンのような「読者コミュニティ」を重視しません。箕輪氏が本当にやりたいのは、次世代の編集者や「逸脱者」を育てることです。
高木氏は、「著者との打ち合わせに同席し、制作のプロセスを横で見る権利」にこそ価値があると提案します。それは単なるスキルの学習ではなく、一流の表現者や経営者が持つ「メンタリティ」を肌で感じる体験です。
「読書会は嘘だと思っている。自分で考える時間こそが大事」という箕輪氏の言葉通り、束ねることよりも、個々の人間が現場から何かを感じ取り、それぞれの場所で逸脱していくことを支援する。そんな硬派な場作りが始まろうとしています。
まとめ:幻夏舎が提示する、新しい「表現の器」
対談を通じて、幻夏舎は単なる出版社ではなく、時代に穴を開けるための「プロジェクトの器」であることが明確になりました。1冊の本が出るまでの、著者と編集者の間に流れる濃密な時間と、そこから生まれる純度の高い思想。それこそが、情報が溢れかえる現代において、私たちが求めている「原液」なのかもしれません。
箕輪氏は最後に「逸脱が、するための武器が本だ。まさにそうだ」と噛み締め、高木氏を幻夏舎のCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)に任命するというジョークを交えつつ、新たな挑戦への決意を語りました。
- 本は情報の器ではなく「作品」である:デジタルにはない固定化の価値。
- 「逸脱」を肯定する:共同幻想から抜け出し、独自の視点を持つための武器。
- 読者よりも著者との熱狂を重視:人生を作品化するプロセスそのものに価値がある。
- 見習い型のコミュニティ:スキルではなく、一流の現場からメンタリティを学ぶ。
- 時代に対する「毒」と「薬」:ライトコンテンツ時代にあえて重厚な思想を提示。
