「北欧、暮らしの道具店」とクラシコムの世界観は分けている?
高木新平さんは、クラシコムが運営する「北欧、暮らしの道具店」の世界観と、クラシコムという会社の世界観を、青木耕平さんがどう整理しているのかを尋ねました。
その北欧暮らしの道具店っていう世界観と(クラシコムの)世界観って、どういうふうにご自身の中では整理されてるんですか?
青木さんの答えは、両者をあまり分けて考えていないというものでした。そのうえで、クラシコムのミッションである「フィットする暮らし、つくろう。」の中身を説明します。
青木さんによると、フィットする暮らしとは、厳密には自分の人生を自分らしいと感じて満足できている状態のことです。
自分の人生を自分らしいと感じて満足できている状態っていうのをフィットする暮らしっていうふうに言ってるんですけど、もうこのために生きてるって感じですね。
人間の世界に混じった「ホビット」という自己認識
高木さんは続けて、「自分らしく」というフィットする暮らしの考え方がどこから芽生えたのかを聞きました。青木さんは、自分が変わり者だったからではないかと答え、映画や小説で知られるホビットにたとえます。
やっぱり変わり者だったからじゃないですかね。人間世界の中にホビットとして混じっちゃってる。
形は似てるから人間のように振る舞ってるんだけども、ホビットなんだよなみたいな。だからホビット(の)賞(=村)に帰りたいなみたいな。
高木さんは、この比喩を「周りと同じことをしろと言われて形を合わせても、自分にとって心地いい場所はそこにない」という感覚として受け止めました。青木さんは、だからこそ自分でホビットの居場所を作っているのだと応じます。
青木さんが話した「ホビット賞」は、書き起こし上の表記です。文脈からはホビットが暮らす村のような居場所を指していると考えられます。ホビット賞
お客様にも社員にも投資家にも「裏切らないアウトプット」を
青木さんは、クラシコムの事業はホビットの居場所を作るためのものだと話します。関わる人の範囲は、お客様に限りません。
お客様も社員も投資家の皆さんも、あるいはサプライヤーの皆さんも、僕らと関与することで、一歩でも二歩でもフィットする暮らしってものにそれぞれつながるようなアウトプットしか出したくない
青木さんはさらに、そうしたやり方で事業として成功することを証明できれば、同じように周囲になじめない「ホビット」にとって夢や希望になると語りました。高木さんはこれを、以前の話題にも出た「オルタナティブ」、つまり「こんな選択肢もあるんだ」という発見として受け止めます。
希望とは「新しい選択肢」のこと
青木さんは、希望をとても大事なものだと考えています。その希望を、青木さんは明確に「新しい選択肢」と定義しました。
希望というのは明確に新しい選択肢のことなんですよね。絶望ってAかBかっていう選択肢があるけど、両方嫌だって思ってて、絶望じゃないですか。
そこにCっていう違う選択肢で魅力的なものを提示されたら、それに希望が生まれると思っているので、新しい選択肢を作るっていうことが希望を作るってことだし。
青木さんの整理では、絶望と希望の違いは、選択肢の中に魅力的なものがあるかどうかにあります。
AかBかの選択肢しかなく、どちらも嫌だと感じている状態
AでもBでもない、魅力的なCという新しい選択肢が提示された状態
青木さんは、人から見れば「そのやり方はどうなんだろう」と思われる方法で事業を成功させられたら、20代半ばで子供部屋にいるかつての自分のような人が「ああいうふうにやれば自分もやれるかもしれない」と思えるはずだと話します。
ああいうふうにやれば俺もなんかやれっかもなーみたいな感じに思えるようなことができたら、すごい素敵だなと思いますよね。
正規ルートから外れた系譜と、北欧というオルタナティブ
高木さんは、青木さんが途中から正規ルートに乗らなかった歩みや、「北欧」というテーマそのものも、ある種のオルタナティブだったのではないかと指摘します。青木さんも、北欧は当時のオルタナティブだったと認めました。
高木さんは、こうした新しい選択肢が立ち上がり、上場などにつながっていくと、「こんなやり方があるんだ」「こんな人がこうなれるんだ」とイメージが広がると話します。そして、クラシコムに希望を感じている人もいるのかもしれない、と受け止めました。
事業を続ける「ほぼ唯一の動機」は希望を裏切らないこと
高木さんの言葉を受けて、青木さんは、もし誰かに希望を持たせたのだとしたら、その人を失望させたくないという思いが強くあると語ります。
あのやり方いいじゃんとかって、すごい自分希望もらったなと思うんだけど、5年後ぐらい見たらなんかしょぼくなってるみたいなことがあったら、やっぱダメじゃんってなってがっかりするじゃないですか。
青木さんが望むのは、少ない人数であっても希望を持った人が、久しぶりにクラシコムを見たときに「もっとすごくなっている。やっぱりこの方向でいいんだ」と感じられることです。希望を裏切りたくないという気持ちを、青木さんは「強烈にある」と表現しました。
新しい選択肢をつくる
人から疑問視されるやり方で事業を成功させる
希望が生まれる
同じ「ホビット」が自分もやれるかもしれないと思える
希望を守り続ける
数年後に見ても、もっとすごくなっている状態を保つ
「責任感お化け」が語る納得へのこだわり
高木さんは、その責任感はどこで育ったのかと尋ねました。青木さんは、自分には責任感が人並み外れてあると話します。
なので無責任ではないです。ただ、その自分が納得いかないことをやりたくないっていうだけで。だからそれも責任感なんだと思うんですね、ある種。
青木さんにとって、納得できないことをやらないという姿勢も責任感の一つの形です。高木さんが「できないことをできると言われたり」と応じると、青木さんは「責任感に支配されて、もう責任感の奴隷ですね」と笑いを交えて表現しました。
高木さんは最後に、「北欧、暮らしの道具店」のことも青木さんのことも深く理解できた気がすると述べ、自身の思考にも新しい選択肢をもらったと感謝を伝えて対談を締めくくりました。
まとめ
青木耕平さんは、自分を人間の世界に混じったホビットにたとえ、自分らしく満足できる「フィットする暮らし」の居場所を事業として作っていると語りました。新しい選択肢を示すことが希望を生み、その希望を裏切らないことが、今も事業を続ける最大の動機になっています。
- フィットする暮らしとは、自分の人生を自分らしいと感じて満足できている状態のこと
- 青木さんは自分を「ホビット」と表現し、その居場所を事業として作っていると話す
- 希望とは、AもBも嫌なときに現れる魅力的な新しい選択肢Cのことだと定義する
- 誰かに与えた希望を数年後に失望へ変えないことが、事業を続けるほぼ唯一の動機
- 納得できないことをやらない姿勢も、青木さんにとっては責任感の表れ





