三部作の完結編としての位置づけ
過去に配信した解糖系とクエン酸回路(TCA回路)のエネルギー回路の話が好評だったことを受け、今回はその最終形態にあたる電子伝達系が取り上げられます。
これで糖代謝の理解がひと区切りになるとされ、過去2回とあわせて聴くとエネルギーの仕組み全体がつかめると話されています。
そのため本編でも、まず全体の流れをおさらいしながら進める形が取られています。
解糖系
食べたグルコースを分解する最初の段階
クエン酸回路(TCA回路)
ミトコンドリア内でくるくる回る中核の経路
電子伝達系
大量のATPを生成する最終工程
おさらい・解糖系の役割
解糖系は糖質の代謝経路の始まりで、細胞質基質(細胞質ゾル)で起こる一連の反応です。
この段階は酸素を必要としない嫌気的反応で、1分子のグルコースが分解を経て2分子のピルビン酸になります。
この過程では2分子のATPに加え、電子運搬体であるNADHが2分子つくられます。
この解糖系で生じたNADHは、電子伝達系で大量のATPを生み出す重要な役割を果たします。キーマンだと思っといてください。
つまり解糖系は、ATP生成の第一段階であると同時に、次の段階への準備という重要なトップバッターの位置づけになります。
おさらい・クエン酸回路の流れ
解糖系でできたピルビン酸は、酸素があるとミトコンドリア内部に取り込まれ、酸化的脱炭酸を経てアセチルCoAに変換されます。
この変換でもNADHがさらに2分子つくられ、あわせて二酸化炭素が放出されます。
できたアセチルCoAはクエン酸回路のスタート地点となり、オキサロ酢酸と結合してクエン酸をつくることで回路が始まります。
回路は複数の段階を経て中間代謝物を作りながら回転し、最終的にまたオキサロ酢酸に戻ってきます。
この一連の反応を通じて、電子運搬体であるNADHとFADH2が大量に生成され、同時に二酸化炭素の排出と2分子のATPが作られます。
そしてクエン酸回路で生じたNADHとFADH2が、次の電子伝達系へ電子を供給していきます。
電子伝達系でATPが大量に作られる仕組み
解糖系やクエン酸回路で作られたNADHとFADH2は、ミトコンドリアの内膜上で行われる電子伝達系に電子を運び込みます。
運ばれた電子は、内膜に存在する複数のタンパク質複合体を経由して段階的に伝達されていきます。
この電子伝達で生じるエネルギーを利用して、水素イオンが内膜を越えて膜間腔という隙間に汲み出され、水素イオンの濃度勾配ができます。
ナカハラさんは、この状態をダムにたとえて説明しています。
ダムを隔てて水の高さが違うじゃないですか、外側と内側で。ダムが開くと、高いところから低いところにぶわーっと水が流れる。
同じように、濃度差を解消しようとする水素イオンが、ATP合成酵素という特殊な酵素を通ってマトリックス内へと流れ戻ります。
この行ったり来たりの流れで生じるエネルギーを利用して、大量のATPが作られる仕組みになっています。
電子を運び込む
NADH・FADH2がミトコンドリア内膜に電子を渡す
水素イオンを汲み出す
電子伝達のエネルギーで水素イオンが膜間腔へ移動
濃度勾配ができる
内側と外側で水素イオンの濃度差が生まれる
流れ戻る
ATP合成酵素を通って水素イオンがマトリックスへ戻る
ATP生成
この流れのエネルギーで大量のATPが作られる
このプロセスは細胞呼吸の核心とされ、細胞が最も効率よくATPを合成する重要な仕組みだと説明されています。
最終的に電子は酸素と結びついて水を形成する点も、一つのポイントとして挙げられています。
酸化的リン酸化とATPの収支
電子伝達系でATPが合成されるプロセスは、酸化的リン酸化と呼ばれます。
これはNADHやFADH2が電子を渡して酸化される際のエネルギーを使い、ADPにリン酸を付加してATPを生成する仕組みです。
具体的には、1分子のNADHから約2.5分子、1分子のFADH2から約1.5分子のATPが作り出されるとされています。
この差は、電子が渡されるタンパク質複合体の経路の違いによって生まれると説明されています。
総括すると、解糖系から電子伝達系まで合わせて、1分子のグルコースから約30〜32分子のATPが生成されます。
解糖系やクエン酸回路が2分子ずつだったのに対し、電子伝達系は桁違いに効率が高いことがわかります。
なぜミトコンドリアを元気にすると疲れにくいのか
1分子のグルコースあたりに作られるATPの数(約30〜32分子)は変わりませんが、ミトコンドリアを活性化させると、より速く回せるようになります。
回転が速くなればATPが生まれるスピードが上がり、体内でより多くのATPが回ることになります。
だからこそ、ミトコンドリアに良い生活をすると元気になる、という話につながります。
その具体策として、糖代謝だけでなくケトン体の利用、断食、心拍数を上げる運動、冷水を浴びるといった健康法が挙げられています。
一分子のグルコースあたりに作られるATPは変わんないんですよ。でも活性化させることで、よりスピーディーに回せる。より多くのATPが体内で回るってことですよね。
仕組みを理解しておくと、こうした健康法がなぜ意味を持つのかが伝わりやすくなると話されています。
同時に、根拠のないミトコンドリア活性化を謳う施術に騙されないためにも、知識は武器になるという点も語られています。
まとめ
糖代謝は解糖系からクエン酸回路、電子伝達系へと進み、最終工程で大量のATPが作られます。仕組みを理解すると、なぜミトコンドリアを元気にすると疲れにくくなるのかが見えてくる回でした。
- 解糖系・クエン酸回路・電子伝達系の三段階で、糖からATPが作られる。
- 電子伝達系では水素イオンの濃度勾配を利用し、桁違いに効率よくATPが生成される。
- 1分子のグルコースから最終的に約30〜32分子のATPが作られる。
- ミトコンドリアを活性化するとATP生成のスピードが上がり、元気につながる。
- 仕組みを知ることは、根拠のない健康法に騙されないための武器になる。
