紙に起こした試作の全体像
今回は前回話した内容を一旦紙に起こし、実際に手を動かしながら形を探っていきます。まだ「できる」と言えるほどの代物ではないと山本さんは前置きします。
盤面には自由に形を動かせるようマス目状のものが用意されています。黄色は停車駅で、作品で実際に乗り降りできる場所にあたります。
そこから奥へ、たとえば化石の発掘をしている場所まで、降りて何かを見て、また戻ってくる。そうした「駅から降りてたどりつける場所」を再現しようとしています。
ここで降りて、なんかこういうの見て、ここに行って、そこから帰ってくるみたいな。そういう停車駅と、そこから降りてたどりつける場所的なものが(あるといい)。
サイコロと駅で進むゲームの流れ
ゲームの流れはこうです。まずサイコロが振られ、その出目の分だけ銀河鉄道が進みます。
駅を通過する瞬間に「降ります」と言えば降りることができ、次のターンでその場所に止まっていればカードを一枚ゲットできます。その間も電車は進み続けます。
自分は降りて、列車はこのまま進んでいくみたいな。
最終的な目標は、獲得したカードの中から「相手が幸せだと思うもの」をプレゼンし、選ばれたらポイントを得ることです。
僕と誰かで山口さんに「どっちですか」みたいな感じでプレゼンして、選ばれたら二ポイントゲットみたいな感じですね。
山本さんは、この試作が三人以上でないと成立しないことも早い段階で確認していました。
駅ごとのテーマとカードの設計
各駅には、それぞれ物語にちなんだテーマが割り振られています。カードには本に出てきたものや出来事が書かれています。
宇宙ステーションは旅や出発のイメージ、白鳥の停留所は人の温かさ、鷲は宇宙を感じるもの。
南十字は信仰や人生、プリオシン海岸は化石など古いもの、アルビレオ観測所は宇宙の理解にまつわるものが出てきます。
テーマを設定しておくことで、「この人ならこのあたりの駅がいいのでは」と、相手の好みを予測できるようになる狙いがあります。
プレゼンから「選ぶ理由」を語るゲームへ
実際に試すと、プレゼン方式では話者のプレゼン能力に結果が依存してしまう懸念が出てきました。
そこで、幸せや幸いという言葉自体が馴染みにくいという話から、「二択で選ぶ」形が浮かびます。五点満点で聞くより、どっちかを選ぶほうが答えやすいという考えです。
「五点中何点ですか」と言われるよりは、「どっち」って聞く方が、まあ究極選べればいいから。
二択であれば、意味がわからないもの以外はどんな組み合わせでも選べます。まったく違うレイヤーの二つを並べることが、むしろ面白さになります。
さらに、プレゼンする側ではなく、選んだ側がその理由を語る形はどうかという案が出ます。上手い下手ではなく、直感の裏にある理由を聞くという発想です。
プレゼン上手い下手じゃなくて、もう直感とか。でもなんか何らかの理由あるはずだから、それを聞くみたいな。
会話ありルールと「乗客だけが話せる」仕掛け
通常のすごろくは自分の番にサイコロを振るだけで、会話が生まれにくいという課題があります。二人は、あえて会話を仕掛けとして組み込もうとします。
そこで出たのが、乗車中の人は会話できず、降りている乗客側だけが話せるというルールです。乗っている人は目を閉じ、非言語で二択を示します。
乗ってる人は目を閉じてください、で「せーの、パ」っていう。その音声なしでできるから、目を閉じてもらって。
やまぐちさんは、より複雑にせずシンプルにする方向も提案します。二枚引いて「どっちですか」と指差してもらうだけでも成立するという発想です。
例えば二枚引いてもらって、その降りてる人に。で「どっちですか」と指差してもらう。それだけでもシンプル。
作業感をどう消すか、車両という発想
一方で、サイコロを振り駒を動かす時間に「作業味」が生じることが気になっていました。会話や二択でその間を盛り上げる方向で調整したいと二人は考えます。
サイコロ自体が能動的なアクションに見えてしまう点も課題です。自分の番ではないのにサイコロを振る違和感を避けるため、一から六のカードをシャッフルして「次はこれです」と勝手に決まる形も検討されます。
サイコロって結構、能動的なアクションっぽいというか。なのにそうじゃないことに距離感を感じる気がして。
銀河鉄道を複数走らせる案も一瞬出ましたが、みんなが同じ列車に乗っていたいという理由で見送られます。代わりに「車両」という発想が生まれました。
他のすごろくとちょっと違うところを出していくと、「列車と車は違う」の一番の違いは、やっぱり車両があるということで、車両が変わっていく。
二両以上にして一両につき一人だけ乗れるようにし、車両を移ったり、余分な車両を出して動けるようにする。列車ならではの構造を面白さに変える狙いです。
自然科学と日常をつなぐカード
ゲーム性が見えてきたところで、二人は改めて『銀河鉄道の夜』らしさに立ち返ります。作品のコンセプトは、自分だけでなく他者の幸いも想像し、自己犠牲すら払うことです。
もう一つ離れているのが「センスオブワンダー」、自然に目を向けてほしいという要素です。今の試作は好き嫌いゲームとしては成立しますが、自然への興味とは距離があると指摘されます。
そこで、その日一日に見たものや食べたものと一致すれば、もう一枚引けるといった仕掛けが案として出ます。川を見た、雨が降っていた、といった日常との接点をゲームに持ち込む発想です。
雨って書いてあったから、あ、確かに。これは引いた人が雨降ってたなみたいな。で、もう一枚引けるとか。
クイズのように思考を挟むと大変になるため、イエスノーで進められる軽さがちょうどいいという結論に近づきます。
雨が降ってたらっていうのは、こっちに思考がなくてもイエスノーで進めるから、それぐらいの指示があってどうするとかが多分ちょうどよくて。
カードの取捨と誰でも遊べるチューニング
最後に議論されたのは、カードのバランスです。現状のカードはほぼ100パーセント『銀河鉄道』由来で、それをどこまで崩すかが焦点になります。
「幸せ」を問う二択としては抜け漏れも多く、イメージしにくいものは落とす方向も検討されます。黒曜石のように分かりにくい題材は、ギリギリ残せるかを見極めます。
黒曜石ってさ、バーンとあって「黒曜石どれでしょう」って(分からない)。
現状のカードは四十六枚ほどで、枚数としてはこのくらいが妥当だと二人は確認します。スポーツ的なものが一切ないなど、銀河鉄道寄りすぎる点をどこまで広げるかが課題です。
ちょっと文系すぎるみたいな。銀河鉄道寄りすぎるっていうところまで、ちょっと幅広く、ある程度誰でも(遊べるように)。
銀河鉄道らしさを保ちながら、抽象度を上げて誰でも遊べるようにする。そのチューニングを次回さらに詰めていくことで、この回は締めくくられます。
まとめ
紙の試作を動かしながら、二人はサイコロと駅で進む骨格に加え、「二択で選ぶ」「選んだ理由を語る」「乗客だけが話せる」といった仕掛けを見出していきました。他人の幸せはわからない、それでも選ぶという体験を、日常と自然への眼差しにどうつなげるかが次の課題です。
- ゲームは、サイコロで銀河鉄道が進み、駅で降りてカードを獲得する流れで組み立てられています。
- 相手の幸せを問う部分は、プレゼンより「二択で選び、選んだ理由を語る」形が自然だと合意されました。
- 乗車中は会話できず乗客側だけが話せるルールで、すごろくにない会話の面白さを狙います。
- 「車両」という列車ならではの構造を、他のすごろくとの差別化と面白さに変える案が出ました。
- 自然科学への眼差しは、その日見たもの・食べたものと一致すれば一枚引けるなど、日常との接点で表現する方向が探られました。
