宮沢賢治の作品を辿る「停車駅」回
この番組は、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』がボードゲームになるまでの物語です。
今回は山本龍之介さんが一人で、制作の背景になったコンテンツを紹介する「停車駅」の回として進みます。
山本さんは、宮沢賢治や『銀河鉄道の夜』にまつわる作品を、出会った順番で紹介していく方針だと話します。今回のドラマは制作の割と序盤に見たもので、ルールの根幹となる着想を得た作品だといいます。
『僕たちはまだその星の校則を知らない』とは
紹介するのは、カンテレのドラマ『僕たちはまだその星の校則を知らない』です。タイトルが長いため「ぼくほし」と呼ばれることもあるといいます。
物語は、独特の感性を持つがゆえに人生にも仕事にも臆病だった弁護士が、少子化による共学化で揺れる私立高校にスクールロイヤーとして派遣されるところから始まります。
法律や校則では簡単に解決できない若者たちの青春に、不器用ながらも必死に向き合っていく学園ヒューマンドラマとして描かれます。
山本さんは、普段ほぼドラマを見ないものの、このドラマはとても面白かったと振り返ります。
こんなに面白いんだみたいな、っていうのが正直ありまして。めちゃくちゃ面白かったですね。感動もするし、考えさせられるし。
天文部と宮沢賢治、見るきっかけ
このドラマを最初に知ったきっかけは、ゲームクリエイターの米光さんのTwitterでの紹介だったといいます。
山本さんは、法律とゲームのルールには近いところがあると感じ、米光さんもその観点で語っているのだろうと受け取ったといいます。
さらに天文部が物語の中心にあり、宮沢賢治が関わっているという要素も重なり、「これは見ないといけない」と思って視聴したと話します。
ルールの根幹になったシーンと「世界全体の幸福」
山本さんが今回のルールの根幹に据えたのは、生徒が父親に熱弁するシーンです。そのシーンに出会って気づいたことが、今のルールのメインに入っているといいます。
鍵になったのは、宮沢賢治の「世界全体が幸福にならないうちは個人の幸福はありえない」という言葉です。
当初は協力ゲームにする構想がありましたが、それだけでは感覚が違うと感じたといいます。世界全体を幸福にしたうえで個人の幸福を目指すという難しさを、あえてゲームに落とし込めないかと考えたそうです。
法律で「スカッと解決しない」ドラマ設計
山本さんによると、このドラマはもともと宮沢賢治を主題に作られたものではなく、プロデューサーがスクールロイヤーの本に出会ったことが着想のきっかけだったといいます。
脚本は大森美香さん。『あさが来た』や映画『カイジ』などを手がけた人物だと紹介されています。
制作の過程で、スクールロイヤーというテーマに、あくまでフレーバーとして宮沢賢治が加わったそうです。宮沢賢治が教育者でもあり、農業の方法などを教えていた点も採用の背景にあったと山本さんは見ています。
山本さんが注目したのは、法律でスカッと解決するドラマにはしたくなかったという制作側の意図です。
どちらも悪くない、どちらが正しいのか判断がつかない状況でも、生徒の最善のために奮闘する姿を描きたかったのだといいます。この「スカッと解決しない」点が、今回の着想のメインになったと語ります。
制服問題が示す「自由と制限」
具体例として挙げられるのが、第1話の制服問題です。共学になりたての学校という設定で、制服をどうするかで揉める場面が描かれます。
生徒側は制服を撤廃して自由な私服にすればいいと主張し、学校側は学校の威厳が保たれないと反論します。学校内で模擬裁判のようなやり取りが行われます。
決着の根拠になったのが、「本当に自由なものは制限の中にしかない」という考え方でした。
山本さんは、クリエイティブの分野でよく言われる「制約の中にクリエイティビティがある」という話と同じだと重ねます。
制服を撤廃するとセンスや家庭の経済状況がそのまま反映され、いじめなどに発展しかねないという意見もあり、結論としては制服は続くことになったといいます。
制服を撤廃し、自由な私服で自分を表現したい
学校の威厳が保たれず、経済状況の差やいじめにつながりかねない
山本さんは、どちらの言い分もわかると話します。自由に表現したい立場もあれば、大多数にとっては私服がむしろ苦痛になる場合もある、というわけです。
どこに境界を引くのかは難しく、それを法律で解決するのも簡単ではありません。校則やルールも、明確な区切りを持てないままだといいます。
この「まだわからなさ」が、『まだその星の校則を知らない』というタイトルにつながっていると山本さんは受け止めています。
毎話突きつけられる「難しさ」とゲームへの接続
スクールロイヤーが中心の物語なので、こうした答えの出にくい問題が各話で繰り広げられます。視聴者としても、こういう時はどうするのだろうと毎回悩まされるといいます。
学校側の言い分も生徒側の言い分もわかる。そのなかで、世界全体が幸福にならないうちは個人の幸福はありえないという言葉の難しさを、毎話痛感させられると振り返ります。
山本さんは、この感覚が『銀河鉄道の夜』の「どう生きていったらいいのか」「僕の行動は正しかったのか」という問いと根幹で類似していると感じたそうです。
その気づきから、現行のルールの根幹が出来上がったといいます。物語として感動できるうえに、自分のゲームの着想のもとにもなった作品として取り上げたと締めくくります。
まとめ
ドラマ『僕たちはまだその星の校則を知らない』は、法律や校則で割り切れない問題を通じて、山本さんに「世界全体の幸福と個人の幸福」という難題を突きつけました。その難しさをあえてゲームの「無理ゲー」的な構造として取り込む発想が、制作中のボードゲームの根幹になっています。
- 今回はドラマ『ぼくほし』を紹介する「停車駅」回で、制作の序盤に着想を得た作品として取り上げられた
- スクールロイヤーを軸に、法律でスカッと解決しない問題を描く点が着想の中心になった
- 宮沢賢治の「世界全体が幸福にならないうちは個人の幸福はありえない」という言葉が鍵になっている
- 協力ゲームの構想から一歩進め、世界全体と個人の幸福を両立させる「無理ゲー」的な状況づくりを目指している
- 制服問題に象徴される「自由と制限」の難しさが、ルールの根幹の考え方につながった
