アナログ時計とデジタル時計、そもそも何が違う?
この回は、レンさんがエマさんに「アナログとデジタル、どっちが好きか」と尋ねるところから始まります。エマさんはデジタルに慣れているとしつつ、紙の本や手紙、生演奏のようなアナログの良さにもうなずきます。
レンさんはさらに、キャンドルや焚き火の揺らぎ、アナログ時計とデジタル時計の好みへと話を広げます。エマさんは最初、アナログ時計を機械式時計のことだと思っていて、二人の話が少しかみ合わない場面もありました。
(時計は)壁に掛けるのとかはアナログ時計の方がパッと見てすぐわかるからいいけど。
スマホみたいに近くにあるもので、かつ正確に時間知りたい時だったらデジタル時計の方がいい。
エマさんの答えは「場合による」というもので、一方のレンさんはアナログ時計派だと明かします。そこからレンさんは、アナログという言葉の定義をエマさんに問いかけます。
アナログは「滑らか」、デジタルは「飛び飛び」
アナログの定義について、エマさんは「デジタルは電子、アナログは電子じゃない」というイメージを持っていました。レンさんが示した正解は、値が連続的に滑らかに変化するものがアナログ、区切られて飛び飛びになっているものがデジタル、というものです。
レンさんが挙げたアナログの例は、針の時計、音量をちょっとずつ変えられるボリュームのつまみ、川の水の流れなどです。照明でも、カチッと切り替えるタイプはデジタル的で、つまみで光の量をゆっくり調節できるタイプはアナログ的だといいます。
値が連続的に滑らかに変化する。針の時計、音量つまみ、川の流れなど
値が飛び飛びに区切られている。数字が出る時計、カチッと切り替える照明など
え、これ(アナログとデジタルの定義)なんか意外と知らない人多そう。てか私知らなかった。
エマさんは、デジタルとは電子的なものという意味ではなく、変化の仕方を指す言葉だったと知って驚いていました。
熱や電気、光は本当にアナログなのか?
定義を確認したうえで、レンさんは熱や電気、炎がアナログかデジタルかを尋ねます。エマさんの答えは「流動的なのでアナログなイメージ」で、自然のものはだいたいアナログに見えるというものでした。
レンさんによれば、昔の物理学もそう考えていました。物を投げたときの動きのように式で数値化できるものがある一方、アナログなものもあるという見方です。そこに、熱なども実はデジタルなのではないかと考える人たちが現れます。
なんか物に関しては結局は最終原子まで行くから、それを考えると原子1個、2個、3個みたいな感じで区切りはできるから、それはデジタルって言えるのかな。
エマさんは、電気が電子という数えられる粒だと今の人は知っている、とも指摘します。ただ光については、粒が見えるわけではないので、二人ともアナログにしか見えないと話しています。
レンさんは、今回のテーマを「あらゆるものがつぶつぶでできている説」とし、主役としてマックス・プランクを紹介します。パッと見はアナログなものが本当にアナログなのかを再定義した人物で、それを難しい式を出さずに説明すると宣言しました。
光は波だと思われていた時代のおさらい
レンさんはまず、番組で続けてきた原子の話をおさらいします。目的は「この世界は何でできているのか」を知ることで、昔の人は世の中が全部ちっちゃい粒からできているという原子論 ── 物質はそれ以上分割できない小さな粒(原子)から成るとする考え方。古代ギリシャに起源があり、近代に化学や物理学の土台になりましたを予想しました。
その後、電気を調べると電気も粒っぽいとわかり、電子が発見されたという話は前回までに扱われています。さらに、電気と磁気でできる波が光だということも知られていました。
波は連続しているのでアナログです。つまり当時、光はアナログだと考えられていて、それがパッと見の現象をだいたい式で説明できる「世界の真理」のように扱われていたとレンさんは説明します。
それでも説明できない現象がちょこちょこ出てきます。前回のレントゲンの話もその一つで、今回取り上げるのは、物を加熱するとめっちゃ光る現象です。
熱した炭はなぜ赤から白へと色を変えるのか
レンさんが例に挙げるのは、炭、ストーブやトースターの鉄の部分です。エマさんも、ガラス細工でガラスを熱すると赤くなることを思い出します。
1800年代後半、百年ちょっと前の世の中では、加熱して光る物の色と、かけている熱の関係が調べられていました。エマさんは、百年前でもまだわかっていなかったことに驚いています。
炭を加熱すると、だんだん赤くなり、さらにめちゃめちゃ熱くすると白く光るようになります。色と波長は関係しているので、出てくる光の波長は実験で調べられます。
加熱を始める
炭がだんだん赤くなっていく
さらに加熱する
白く光るようになり、光の波長はどんどん短くなる
その先
紫外線のような、さらに波長の短い光へと向かう
実験でわかったのは、縦軸を出てくる光のエネルギー、横軸を波長にすると、グラフが山なりになることでした。波長が短くなるにつれて光は強くなりますが、あるピークを超えると、そこから弱くなっていきます。
えーと、じゃあ縦軸が、えーと、出てくるエネルギー。
で、えーと、横軸が波長。
エマさんはグラフの軸を一つずつ確認しながら、波長と出てくるエネルギーの関係を調べている話だと整理していきます。
理論では「焚き火で死んでしまう」?紫外破綻の謎
観察すればグラフの形はわかります。そこで、光が電磁波だとわかったときにできた数式などを使い、波長ごとにどれくらいのエネルギーが出るかを理論で予測し、実験値と一致するかが確かめられました。
ところが、理論の予測はまったく違っていました。波長が短くなるほどエネルギーが無限大に発散してしまい、めっちゃ波長の短い紫外線が莫大なエネルギーを持つという結果になったのです。
そうなっちゃってたら、焚き火してるだけで大量の紫外線がバーって出て死んじゃうってことになるんで、理論だけで言ったら。
レンさんによれば、実際には波長がめっちゃ短い光はもっと出にくいのに、理論では波長の短い光もたくさん出てしまう計算になっていました。
波長が短くなるほどエネルギーが無限大に発散し、短い波長の光もたくさん出る
グラフは山なりで、ピークを超えると光は弱くなり、短い波長の光は出にくい
エマさんは、与えるエネルギーと出てくるエネルギーの両方が出てきて混乱しやすいと指摘し、自分の言葉で整理し直します。理論では小さなエネルギーを与えるだけで短い波長の高エネルギーの光が出るはずなのに、実際にはそうならない、という食い違いです。
この矛盾は紫外破綻 ── 紫外線のような短い波長の領域で、古典的な理論の予測するエネルギーが無限大になってしまう問題。英語ではウルトラバイオレット・カタストロフィーと呼ばれ、どうにかしたいと考える物理学者がたくさんいました。
無限に分割できるお金でダイヤモンドを買うと?
レンさんは結論を先に明かします。紫外破綻は「エネルギーがつぶつぶだ」と考えることで解決します。ただ、それだけでは意味がわからないので、ダイヤモンドを買う話にたとえて説明しました。
たとえ話では、与える熱をお金、出てくる光をダイヤモンドとみなします。どちらもアナログ、つまり無限に分割できるものとして考えます。
持っているのは最大10円で、0.1円にも0.001円にも分けられるお金です。一方、ダイヤモンドは1個100万円ですが、こちらも分割して売られている世界を想定します。
無限にちっちゃいダイヤモンドを無限に小さいお金で買い続けたら、一応どんどんダイヤモンドとしては増えてって、最終的に無限にダイヤモンド買えちゃうみたいな結論になって、これはおかしくなるわけですよ。
レンさんは、アナログなものを理論に入れると、どこかでこういう破綻が起きる、というのが当時の古典物理学 ── 量子論が登場する前の、ニュートン力学や電磁気学などを中心とした物理学の総称のイメージだと話します。
そこで、お金には1円という最小単位を決め、ダイヤモンドにも100万円以下では買えないという最低価格を決めます。すると10円しか持っていない人はダイヤモンドを買えなくなり、無限に買えてしまう人は出てこなくなります。
お金もダイヤモンドも無限に分割できる。10円でもダイヤモンドを無限に買えてしまう
お金は1円単位、ダイヤモンドは100万円が最低価格。10円では買えず、秩序が保たれる
光の話に戻すと、熱のエネルギーがお金にあたります。熱を無限に分割できるなら、いくらでも小さな熱でどんな光も出せてしまいますが、この波長の光はこれだけのエネルギーがないと出ないというルールがあれば、短い波長の光は出にくくなり、矛盾が避けられます。
アナログの世界だったらもう無限に分割できるけど、デジタルの世界だったら最小単位が決まってるから、なんか最小値が定義できるみたいな。
しょぼい熱では紫外線は出てこない
エマさんはたとえ話のイメージはつかめたと言い、紫外破綻の話に当てはめて確認します。レンさんは、最初の炭を加熱する例に戻って説明を続けます。
炭を加熱するのは熱エネルギーを与えて光を出すことです。しょぼい熱でも無限に分割できるなら、出にくいはずの光や紫外線まで出まくってしまう、それが紫外破綻だとレンさんは整理します。
与えるエネルギーに最小単位があるなら、出にくい波長の光は出てきません。無限に暴走するようなことは起きず、現実世界でもそうだよね、という結論に落ち着きます。
まあ特定のある程度の熱エネルギーを与えたら、ある程度の光しか出てこないですよねってなるわけだよね。
レンさんは、波長の短い光は本来、超エネルギーをかけないと出てこないと補足します。こうして理論を現実の実験結果と一致させる発想をした人物が、マックス・プランクでした。
プランク定数はどうやって決まったのか
マックス・プランクは、エネルギーをつぶつぶと考える発想を式にしました。レンさんによれば、エネルギーの大きさは、光の振動数に、つぶつぶの大きさを表す定数を掛けたものになります。この定数がプランク定数です。
プランク定数は、炭などを加熱して出る光の波長や振動数を測ったたくさんのグラフに、なんとか合うように決められたものでした。レンさんはパラメータ調整のようなものだと表現しています。
その値は6.626×10のマイナス34乗という、超ちっちゃい値です。エマさんは、エネルギーは光の強さから、振動数は色から波長を経て求め、そのデータで定数を決めたのだと確認していきます。
エマさんが「定数がつぶつぶの大きさ」という点に引っかかると、レンさんは、エネルギーなので大きさと言うのは難しいとしたうえで、最小単位があると決めたこと自体がめちゃくちゃ画期的だったと強調しました。
「量子」という言葉はどこから来たのか
最小単位を仮定すれば全部つじつまが合う、という考えが量子仮説 ── エネルギーは連続的な量ではなく、とびとびの決まった単位でやりとりされるとする仮説。1900年にプランクが提唱しましたです。ここで初めて「量子」という言葉が登場します。
レンさんによると、プランク自身もこれはつじつま合わせの式で、後々訂正されるかもしれないと言っていたそうです。それでも結果的に、今のところ正しかったということになっています。
当時の学会では、奇妙な仮説だと受け止められていました。波もそういうもので説明できるのかと、直感にあまりに反していたため、最初は受け入れられなかったといいます。
なんか分かったような分かんないような感じだけど、とりあえず波から粒への転換を初めて提唱したのがマックス・プランクさんだったっていうこと。
量子という言葉自体も曖昧だとレンさんは話します。英語のクオンタムはもともとラテン語で「どれくらいの量か」を問う言葉で、エマさんはクオンティティと同じ語源だと気づきます。つまり量子は「エネルギーのある量」というふわっとした意味で、日本語でも量と訳されて量子になりました。
1900年の提唱から1925年まで、なぜ時間がかかったのか
量子の概念が出たのは1900年です。最初は学会で認められませんでしたが、レンさんによれば、量子がちゃんと認められてから2025年でちょうど百年目にあたります。
エマさんは、25年で認められたなら意外と早いと感じます。レンさんは、原子すらまだ実験で確認されていない時期に、さらに小さな量子の話を出したので、あまりに常識外れだったと説明します。
たった25年って結構長くね?でも。で、そこで大激論起きるわけよ。物理学で。
量子を認めれば、ニュートン以来信じられてきたことも考え直す必要が出てきます。ニュートン的な考えで光を計算した結果が紫外破綻だったからです。世の中の最小単位が変わると、全部が揺らいでくるとレンさんは表現しています。
こうしてプランクの提唱が量子力学のスタートになり、プランクは量子論の父と呼ばれています。レンさんは、時代を先取りしすぎていたと話しました。
キログラムの定義はプランク定数で変わった
プランク定数は暮らしにも関わっています。レンさんによれば、2019年にキログラムの定義がプランク定数を使ったものに変わりました。
それまではキログラム原器 ── 1キログラムの基準として作られた金属の分銅。フランスで厳重に保管され、1889年から長く質量の国際基準とされてきましたという金属の塊の重さを1キログラムと定め、厳重に保管していました。
でもさ、それ(キログラム原器)何十年、何百年、何千年経ったらさ、変わりそうじゃん。
1キログラムはみんなが信じているルールなので、変わってしまうのは大問題です。そこで2019年、プランクの言う最小のエネルギーの粒はもう正しそうだとして、これを使って1キログラムを決めることになりました。
正確には、光の速さのように値が決まっているものと、プランク定数などを結びつけてキログラムの重さに変換し、それを1キログラムとするルールです。
レンさんは、ある意味で関わっていない人はいない、と話します。一方で、出発点の紫外破綻は黒体放射の観測にまつわる話で、正直むずかしいとも認めています。
エマさんは、実はこれが撮り直しのテイク2で、テイク1も約2時間、今回も約2時間30分オフレコで議論したと明かします。それでも最後まで理解しきれず、波から粒へという点だけを理解したと話しました。
次はアインシュタイン、光も粒なのか?
レンさんは、電子も粒、エネルギーも粒と、パッと見流れているようなものが次々に粒だとされてきた流れを振り返ります。ただしこの段階では理論が先行していて、量子も原子もまだ誰も実験で見ていません。
次のステップは、原子論が本当らしいとさらに踏み込み、それを実験で確かめる人物の登場です。その主役がアインシュタインで、ここ4回ほどの話はアインシュタインのための土台だったとレンさんは話します。
エマさんはアインシュタインといえば相対性理論や宇宙のイメージでしたが、今回の流れでは相対性理論とは別の功績を扱います。アインシュタインは1年で大きな発見を3つしたと言われ、そのうち2つが出てくる予定です。
残る謎は光です。エマさんが磁気も粒なのかと尋ねると、レンさんは、マクスウェルの式では磁気は電荷が動くと発生するもので、その電荷が粒だとされているため、説明上は粒的に扱えると答えました。
でも確かにそういう状況だったら、本当に光も波なんか?ってなるね。
光も粒なのではないかと言い始めるのがアインシュタインで、そこまで行くとようやく原子が計算できそうになるといいます。量子がないと原子が何なのかを知る段階に進めない、とレンさんは締めくくりました。
最後にレンさんとエマさんは、毎月の限定音源やDiscordでの交流、限定記事などがある有料コミュニティ「サイエントークラボ」を紹介しています。
まとめ
この回では、アナログに見える熱や光のエネルギーを「つぶつぶ」と考えることで、加熱した物が出す光をめぐる紫外破綻が解決した経緯が語られました。プランクの量子仮説は当初は奇妙だとされましたが、今ではキログラムの定義を支えるところまで来ています。
- アナログは値が滑らかに変化するもの、デジタルは飛び飛びに区切られたもの
- 光を連続的な波とみなす当時の理論では、短い波長でエネルギーが無限大になる紫外破綻が起きていた
- プランクはエネルギーに最小単位があると仮定し、プランク定数を含む式で実験結果と一致させた
- 1900年の量子仮説は1925年に認められ、2019年にはキログラムの定義にも使われた
- 次回は、光も粒ではないかと考えたアインシュタインの話へ続く


