親知らずの痛みとイギリスの日照時間
今回のサイエントークはおたより回です。ただ、レンさんは冒頭から口の痛みを打ち明けます。変な生え方をしていた親知らずを大きな病院で抜き、1週間ほど経ってもまだ痛みが引かないそうです。
変な生え方しちゃってたんで、なんかもうバカほど麻酔打たれて。
レンさんは局所麻酔で抜歯し、気づいたら傷口を縫われていたといいます。糸を抜くためにもう一度通院しなければならず、「もうやだわ」とこぼしていました。
エマさんも4本すべての親知らずを普通の歯医者で抜いた経験があります。ただ、エマさんの記憶では、1週間も痛みが続いたほどつらくはなかったそうです。
続いてエマさんは、住んでいるイギリスでようやく日が長くなり、メンタルが安定してきたと話します。1月ごろは心身ともに不調だったといいます。
(1月は)常に落ち込んでるのプラス、常に風邪引いたりとか、なんか頭痛があったりとか。
収録時の3月中旬のイギリスは、エマさんの感覚では日本と同じくらいで、18時ごろに暗くなります。二人が去年5月に訪れたときは20時〜21時ごろまで明るかったため、季節による変化の大きさが話題になりました。
1月ごろは夜が長く、落ち込みや風邪、頭痛など心身ともに不調が続いた
3月中旬には日本と同じくらいの日の長さになり、メンタルも安定してきた
高専出身のリスナーが公害防止管理者に合格
最初のおたよりは、科学が好きなアラサーのトリさんからです。トリさんは第1回から最新回まで一気に聴き、去年良かったことを振り返るとサイエントークに出会ったことが必ず出てくると書いています。
小さい頃から科学にとても関心を持っていました。中学の頃に『有機化学美術館へようこそ』という本に出会って、研究職に憧れを持つようになりました。その後、研究の道も考えましたが、何かの間違いで高専の化学系学科に進みました。4、5年生の頃は有機化学系の研究室で有機合成、特に光反応分子の合成を行いました。今は就職して化学系メーカーに勤務をしております。
トリさんは、サイエントークのリスナーにもいろいろな人がいて面白いと感じていたそうです。エマさんは、リスナーには中学生もいると応じました。
今年は国家試験を受験したので、試験勉強をするときに聞いていました。リスナーさんの中にも勉強を頑張っている方がいることを知って、サイエントークリスナーとして必ず合格しないといけないと力が入りました。
トリさんが受験したのは公害防止管理者 ── 工場などで公害防止の業務を担う人のための国家資格。大気・水質・騒音などの区分があり、水質関係第一種は最も広い範囲を扱う区分です第一種水質関係です。10月に受験し、12月に合格証書を受け取ったと報告しています。
初めてのメッセージで合格の報告をしたかったので、目標が達成できて満足しています。来年はまた別の資格の取得を目標に勉強に励みます。
この合格報告に、二人は「おめでとう」と繰り返して祝福しました。
真空ジェシカの脱線と『有機化学美術館へようこそ』
お祝いの言葉を急に変わった声で言ったレンさんに、エマさんが理由を尋ねます。レンさんによると、最近、芸人の真空ジェシカのポッドキャスト「ラジオ父ちゃん」にはまっているそうです。
エマさんは芸人に詳しくなく、知っているのはレンさんに教わったチョコレートプラネットや、ZOOM会議のコントのジャルジャルくらいだといいます。レンさんは、去年のM-1グランプリで真空ジェシカを好きになったと説明しました。
ボケの方がね、なんかもう相槌が全部おかしいのよ。
例えば君がなんか喋ったらずっと「もちろん」しか言わない時間とか、急にだから「おめでとう」みたいな。
レンさんは「ラジオ父ちゃん」の相槌に毒されていたようです。話を戻すと、レンさんは公害防止管理者について、自分も持っている危険物取扱者と近い系統の資格ではないかと話しました。
トリさんが研究職に憧れたきっかけの『有機化学美術館へようこそ』は、佐藤健太郎 ── 有機化学者出身のサイエンスライター。分子の構造や化学の面白さを一般向けに紹介する著作を多く手がけていますさんの本です。もとは同じ名前のブログでした。
レンさんも佐藤健太郎さんの本をたくさん持っており、去年はXでリプライをもらったこともあるそうです。美術館と名付けるだけあって、分子をビジュアルで見せてくれるのが魅力だと語ります。
最後に、サイエントークを聴きながら勉強に集中できるのかという話題も出ました。エマさんは、勉強中ではなく歩いているときなどに聴いていたのではないかと推測し、二人とも「自分だったら聞きながら勉強はできない」と笑いました。
ニュートン回への反響とコラボへの期待
次のおたよりは、研究職として働くトモミさんからです。以前の科学雑誌ニュートンとのコラボ回に寄せられたコメントで、エマさんの「コメントしたことない人もぜひ」という呼びかけに背中を押されたといいます。
ニュートンの存在はもちろん知っていましたが、ちゃんと読んだことはなかったので、この回を聞いて読んでみたくなって、面白そうなものをいくつか購入しました。本棚に置いて小5と中2の息子たちにも手に取ってもらえればななんて思っています。
通勤時間にポッドキャストがぴったりで、ニュートンのポッドキャストがあればぜひ聞きたいと思っています。
レンさんによると、ニュートン回に寄せられたコメントはすべてニュートン側に送っているそうです。ただ、その後、別の番組で月1回ほどニュートンのポッドキャストが始まっており、レンさんは「やりたかったな」と悔しがりました。
エマさんは、トリさんの話に出た分子のビジュアルの話題から、ニュートン回の内容を思い出したといいます。ニュートンでは科学的な絵を描くために、あえて美術系の人を採用しているという話です。
レンさんは、廊下の話をした回ではニュートンの廊下特集を参考にし、ニュートン側の板倉さんがSNSで反応してくれたことも紹介しました。二人はもう一度コラボしたいと、番組内で呼びかけています。
化学にもフィールドワークはある?大学生からの相談
電気羊さんからのおたよりは、レンさんへのアドバイスを求める相談です。おたよりはエマさんが読み上げました。
自分は今大学生で化学工学と材料工学を専攻しています。ですが、海外のリアルを体験したい。また、頑張る途上国の方の支援をしたいと思い、青年海外協力隊に応募しようと考えています。
ですが、浪人で人より遅れている中、2年の休学をしている暇はあるのかとも考えてしまいます。なので、現地で科学の研究ができれば、卒論、ひいては修論に生かせるのではないかと考えています。
ですが、生物学や医学とは違い、化学という分野ではフィールドワークでできることが思いつかず、厳しいのかもしれないと思っています。科学者であるレンさんから見て、化学のフィールドワークは価値があるものでしょうか?
エマさんも、化学にはフィールドワークのイメージがないと率直に話します。これに対してレンさんは、化学にも実験室の外で行う研究のジャンルがいろいろあると答えました。
普通に考えたら研究室、実験室でいろいろやってるイメージあるかもしれないけど、別にフィールドワークのジャンルも結構いろいろあるよ。
レンさんが挙げた化学のフィールドワークの例は、環境中にある分子を調べる研究です。川の水や土壌の成分、大気中に含まれるものを、地域ごとの特徴とあわせて調べる研究があるといいます。
分析機器は必要になるものの、現地の試料を近くの施設に送ったり、実験室に持ち帰ったりすれば対応できるとレンさんは話します。化学のフィールドワークにも価値はあるというのが、レンさんの答えでした。
休学2年の不安に、浪人と留年を経験したエマさんは
レンさんは、相談者が本当にフィールドワークをしたいのかが気になったといいます。研究とボランティア活動を重ねたい気持ちはわかるものの、両者を切り分けてもいいのではないかという考えです。
研究する時は研究するで、別にそういうボランティア活動みたいなのする時は必ずしもね、研究と重ねる、重ねたいって気持ちはすごいわかるけど。
エマさんは、周りより2年遅れることへの不安に強く共感します。エマさん自身も1年浪人し、さらに留学のために1年留年した経験があるからです。
エマさんは留学中に日本の大学の勉強も進め、留年を避ける選択肢もありました。それでも、留学に集中し、帰国後に大学の勉強をきちんとすると決めたといいます。
それでちゃんと時間取れたっていういい面もありつつ、悪い面はやっぱり(20代の)2年を少し人よりも遅れてしまったっていうのは確かにあるかな。
エマさんは、2年程度なら新卒での就職には影響がないと考えています。一方で、すぐに転職したくなった場合は、第二新卒枠の年齢制限や、30歳前後の女性が転職しにくいという話もあり、少し不利になるかもしれないと話しました。
そこは結局本人が最終的に決めればいいけど、そういった面もあるよっていう情報を知っとくのはいいことなんじゃないかな。
レンさんは青年海外協力隊のホームページも確認しました。島国の気象観測データを地元に還元するIT系の活動や、日本語や読み書き計算を教える活動など、ザンビアやウズベキスタンを含めてさまざまな派遣例があったそうです。
現地の薬草や暮らしは研究テーマの宝の山かもしれない
レンさんが個人的に気になったのは、現地で昔から使われている薬草です。現地で効くと伝えられているものを化学の視点で調べ、成分を特定すれば、先進国でも使えるものが見つかるかもしれないといいます。
いや、もう絶対やられてる。まあ分かりやすいのは漢方とか、そういう東洋系の使われてる薬草なり、そういうものから有効成分特定しますみたいな。
だけどなかなかね、そういう手の行き届いてないところにもしかしたらまだ眠ってるかもしれないなとか。
レンさんは、昔なんとなく使われていたものから薬ができたり、布を染める葉の成分が今の衣服の染料になったりした例もあるはずだと話します。この流れでいえば、現地で使われているものは宝の山かもしれません。
現地の慣習
薬草、染料、発酵料理、捨てられているゴミなどがある
理由を問う
なんとなく続いているものの理由を、ミクロな視点で突き詰める
化学で調べる
成分を特定したり、有用な菌や燃料の可能性を探ったりする
研究テーマへ
新しい化合物や化学研究のテーマにつながる可能性がある
さらにレンさんは、現地のゴミがバイオ燃料になる可能性や、発酵料理から良い菌が見つかる可能性にも触れました。そのうえで、現地に行く前に背景知識を思い描いておくことが大事だといいます。
行った時にいろんなこうバックグラウンドを思い描いておくと、これは実はなんか繋がってるんじゃないかなとか、こうミクロな視点を持っていくことは結構重要な気がするんだよね。
エマさんはこの話を、現地の生活を意識的に観察し、なぜそうなっているのかを考えることだと受け止めました。レンさんは、それがフィールドワークそのものではなくても、新しい興味につながるかもしれないと話しています。
やばいしか言えない人へ『「好き」を言語化する技術』
電気羊さんはおすすめの本も尋ねていました。普段あまり本を読まないというエマさんに代わって、レンさんが三宅香帆さんの『「好き」を言語化する技術』を紹介します。
三宅香帆さんは『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』がベストセラーになった人として知られています。レンさんがこの本を手に取ったのは、言葉で伝えるポッドキャストを続けるうえで、語彙力の不足を感じていたからです。
(KEK見学の)あれ僕動画自分で編集してて、マジでやばいとかしか言ってねえなと思って。
KEK ── 茨城県つくば市にある高エネルギー加速器研究機構。素粒子物理などの研究に使う大型の加速器を持つ研究機関ですで加速器を見学したときの動画を編集しながら、レンさんは自分の語彙の少なさに気づいたそうです。この本は、感動したのに「やばい」「面白かった」しか言えない人に向けた本だといいます。エマさんは即座に「私だ」と反応しました。
レンさんによると、この本は方法論だけでなく、心持ちについても書かれています。ネット上の感想やレビューばかり見ていると、みんなが同じような言葉しか使わなくなるという指摘が印象に残ったそうです。
だからこそ、まず他人が言語化した言葉に頼らず、自分の言葉で話す姿勢が大事だとされています。そのためには、好きなものを細かく分解し、どこが良いのか、なぜ好きなのかを具体的に考えることが必要です。
レンさんが本をきっかけに意識しているのは、独り言のように考えることです。一人の時間が多いと、何の感情も湧かないまま1日が終わることがあるため、良いと思ったら何が良いのかを考えるようにしているといいます。
これもう『「好き」を言語化する技術』っていう本を好きというのを言語化しようとしてるんだけど。
レンさんは、この姿勢がフィールドワークでも役に立つかもしれないと付け加え、電気羊さんへの回答を締めくくりました。
「#サイエントークおめでとう」とアメリカ在住タツさんの手紙
おたより以外の話題として、「#サイエントークおめでとう」というハッシュタグ付きの投稿が届いていることが紹介されました。エマさんは、ポッドキャストアワードについての投稿ではないかと推測しています。
科学系ポッドキャストの日に参加している『奏でる細胞』『工業高校農業部』『ひよっこ研究者のサバイバル日記』の3番組が、お祝いのエピソードを公開したそうです。内容は、ほとんどレンさんについての話だったといいます。
結構あることないこと言ってるのもあったけど。なんか身長が3メートル45センチぐらいあるとか。
レンさんは、そのいじりに「非常に愛を感じた」と話しました。各エピソードに副音声的にツッコミを入れる2時間の回も、サイエンマニアで公開されています。エマさんは「いじられキャラのレン君が成立した」と笑いました。
お祝いのエピソードを作った一人のタツさんからも、以前おたよりが届いていました。タツさんはアメリカに17年ほど住んでおり、エマさんのイギリス行きの話に自分の渡米を重ねたといいます。
あの時の僕は、一緒にアメリカに来てくれる妻と2歳の子供を自分の挑戦に巻き添えにするという意識は全くないまま、胸を躍らせて渡米しました。
ただ、思い描いていた留学はそこにはなく、逆に妻が自分で見つけていた就職先のおかげでピンチを切り抜けることができたり、子供の保育園をきっかけにコネクションができて助けてくれる家族に出会うことができたり、どの出来事もあれがなかったら今の自分たちはないなと思うような濃い日々でした。
海外に行きたいという希望を追いかけたこと、そしてそれを家族に受け入れてもらえたこと、自分にとって本当に大きなことだったので、いつになってもとにかく感謝しかないです。
エマさんは、2歳だった子どもは今では18歳ほどになり、英語と日本語を話せるうえ、日本だけでは得にくい感覚も身についたはずだと想像します。エマさん自身も、親に海外へ連れて行ってもらう経験があればとよく思うそうです。
君が来てくれたことによって、私がその一人ではできなかったような発見とか、できなかったようなコネクションが(イギリスで)またできるかもしれないしね。タツさんみたいな感じで。
エマさんの仕事をきっかけに、レンさんもイギリスへ行くことになっています。二人は、現地で誰に出会うかわからない生活を楽しみにしていると話しました。
最後にレンさんは、口の痛みが限界だと明かします。エマさんは、日本にいるうちに口を全部治しておくようすすめました。次回は回復したレンさんがハキハキ話しているかもしれない、と冗談を交わして収録を終えています。
まとめ
今回のおたより回では、資格合格の報告からキャリアの悩み、おすすめの本まで、リスナーのそれぞれの挑戦に二人が応えました。中心となったのは、化学のフィールドワークは成り立つのかという相談と、それに対する研究者らしい視点です。
- 化学にも、川や土壌、大気、生態系を調べるフィールドワークがあるとレンさんは答えた
- 現地の薬草、発酵料理、捨てられているゴミなどに「なぜ」を問うことが、研究テーマのヒントになるかもしれない
- エマさんは浪人と留年の経験から、2年遅れることの良い面と不利な面の両方を知ったうえで決めるとよいと話した
- 『「好き」を言語化する技術』をきっかけに、レンさんは好きなものの良さを分解して考える習慣を意識している
- トリさんの合格報告やタツさんの海外生活の振り返りなど、リスナーの挑戦が番組を支えている




