1から100まで足すと?10歳のガウスが一瞬で出した答え
今回のエピソードは、レンさんの「小学校で1から100まで足す計算をやらされなかった?」という問いかけから始まります。エマさんは小学校ではやった覚えがなく、中学か高校で数列として習った記憶があると答えます。
エマさんは、1+100、2+99と組み合わせるとすべて101になり、最後に2で割るという総和の公式の考え方を説明します。レンさんによると、この計算を10歳で即答したのが、今回紹介する数学者のガウスです。
これを10歳の時に5050ってすぐ答えた人がいて、昔の数学者で。それ今日紹介したい人なんですけど。
ガウスは、1から100への足し算と100から1への足し算を組み合わせ、101が100個できるのでそれを半分にして5050だと考えました。他の子が1つずつ足していく中、ガウスは5050とだけ書いてすぐに解き終えていたといいます。
2列に並べる
1+2+…+100 と 100+99+…+1 を組み合わせる
ペアを作る
どの組も合計が101になる
まとめる
101が100個で10100
半分にする
2で割って5050
レンさん自身も、10歳ぐらいのときにこの話を聞いて「頭いい」と感動した記憶があるそうです。エマさんは、試験で一人だけ早く終えて教室を去っていく人のようなかっこよさだと表現しています。
GPSもスマホもガウスなしでは成り立たない?
レンさんは、ガウスがいなかったら現代社会はできていなかったかもしれないとして、まず業績を紹介します。数学史シリーズは今回がラストで、ガウスは「ラスボス」的な扱いだと話しています。
1つ目はGPSです。地球の表面は丸いため、曲面上の距離を計算できないと自分の位置を正確に求められません。そこで使われるのがガウスの曲率 ── 曲面がどれだけ曲がっているかを表す量。ガウスが微分幾何学の中で導入した概念で、曲面上の距離や形の計算の基礎になりますという概念だといいます。
2つ目は、電場と電荷の関係を表すガウスの法則 ── 電場と電荷の関係を表す電磁気学の基本法則の1つ。閉じた面を通る電場の量が、その内側の電荷に比例することを示しますです。レンさんは、これがないと電気回路の設計ができず、スマホやパソコンもうまく設計できないだろうと説明します。
3つ目は統計です。テストの偏差値などで使う正規分布は、ガウス分布とも呼ばれ、その計算もガウスによるものだとレンさんは紹介しています。
| 業績 | 分野 | 使われている場面 |
|---|---|---|
| ガウスの曲率 | 数学(曲面) | GPSでの位置計算 |
| ガウスの法則 | 物理(電磁気) | 電気回路、スマホやパソコンの設計 |
| ガウス分布(正規分布) | 統計 | 偏差値、テストの点数 |
| ガウスぼかし | 画像処理 | インスタやカメラアプリのぼかし |
エマさんは、物理も数学も統計も、どれも今使われているものだと驚いています。
インスタのぼかしにもガウスがいる
レンさんが「ちょっと面白いやつ」として挙げたのが、インスタやカメラアプリで背景をぼかすときの処理です。この処理はガウスぼかし ── 画像の各点を、周囲の点の色とガウス分布に沿った重みで混ぜ合わせるぼかし処理。境目が目立たず、自然で柔らかなぼけ方になりますと呼ばれます。
レンさんによると、ガウスぼかしは画像データに関数で計算をかける処理で、これも数学です。エマさんは、現実ならすりガラスを置けばいいけれど、画面上でぼかすのは確かに難しいと応じます。
ガウスぼかしってやつはね、結構あのインスタ映えする感じでぼかせる感じなのよ。
エマさんが「ピントが合ってないみたいな」と言うと、レンさんはまさにそれだと答えます。撮った後でピントを変える編集機能も、全部ではないもののガウスぼかしかもしれないといいます。
ぼかし具合の裏でも計算が走っていて、数値を変えればどれだけ粗くするかを調整できます。レンさんは、それこそがまさに数学だと強調しています。
2歳で父の計算ミスを指摘した神童
ガウスは1777年にドイツで生まれました。レンさんは、以前の回で紹介したオイラーと同じく、恵まれた家ではなく、周囲に才能を見出されたタイプだと説明します。
ガウスの家はレンガ職人の家でした。2歳のとき、父親が給料の計算をしている様子を隣でずっと見ていたガウスは、計算の間違いを指摘したといいます。
お父さん(に)計算間違えてるよって言ったらしいよ。
で、本当に間違ってたらしいのよ。
エマさんは、言葉もまだ喋れないのになぜ数の概念を理解できたのかと驚きます。レンさんによると、数学の本を買ってもらったり、大人の計算を見たりする中で、自然に四則演算の仕組みを理解していたと言われています。
本人が書いてるのは冗談交じりかもしれないけど、言葉を話す前に計算のやり方を知ってたって言ってたらしいよ。
レンさんは、見たものを全部覚え、8桁同士の計算ができたというオイラーに近いタイプだと話します。そうした状態で7歳で学校に入り、10歳で冒頭の足し算を一瞬で解いたという流れです。
高価な本を与え続けた先生と、貴族の支援
10歳のガウスに驚いた学校の先生は、ガウス少年と一緒に数学を探求しようと、難しい数学の本をどんどん与えていきます。ガウスは大学レベルの本を小学校ぐらいから読んでいたそうです。
エマさんは、小学校の先生に大学レベルの数学を教える技術があったのかと疑問を投げかけます。レンさんの説明では、教えていたというより、当時とても高価だった数学の本を買って与えていたということです。
先生はやがて教えることがなくなるほどで、ガウスは大人になってからもこの先生を生涯の友人と呼んでいたといいます。
本来ガウスはレンガ職人の道に進むはずでした。ところが先生が貴族とたまたま知り合いで、14歳のガウスを紹介し、教育の援助を頼んでくれます。
レンガ職人の家に生まれ、家業を継ぐはずだった
先生が貴族に紹介し、14歳から学費などの支援を受けて勉強を続けた
エマさんが貴族の位になったのかと尋ねると、レンさんは身分はそのままで、貴族が気に入って学費を出していたと答えます。エマさんは「サポートシステムが素晴らしい」と感心しています。
15歳の毎日の日課は素数探し
15歳のガウスは、すでに学ぶべきことを大体学んでしまっていました。そこで始めたのが、1日に1000個の自然数について素数かどうかを紙に書いて調べ続けるという作業です。
エマさんが学校はどうしていたのかと尋ねると、レンさんは、学校にはちゃんと通いながら、毎日素数の探求の時間を取っていたと説明します。学校の数学の授業はめっちゃつまらなかったと思う、とレンさんは想像しています。
毎日1000個ずつ調べて数が大きくなるにつれ、ガウスは素数が出てくる確率が少しずつ減っていくことに気づきます。レンさんは、こうした作業で「これは素数っぽい」という数学的な感覚が身についたのだろうと話します。
ガウスはこの傾向を証明しませんでしたが、約100年後に素数定理 ── ある数以下にある素数の個数が、おおよそ x / log x で近似できることを示す定理。1896年にアダマールとド・ラ・ヴァレ・プーサンが独立に証明しましたとして証明されます。100年ぐらい先取りしていたことになります。
レンさんによると、素数定理では整数xが素数である確率が「log x 分の1」でおおよそ表せます。xが100なら約4.666分の1になり、実際に100までの素数は25個で約4分の1なので、少しずれはあるもののおおよそ近い値になるといいます。
エマさんの「その式をガウス君が思いついてたの?」という質問に対し、レンさんは、何桁までいくとどれぐらいの割合で素数が出るかの記録は取っていて、予想として式も出していたかもしれないが、証明はできなかったという理解だと答えています。
2000年解かれなかった正n角形の作図問題
素数の研究を続けたガウスは、19歳で数学者になろうと決めます。そして19歳のある朝、ベッドから起きて、2000年以上解かれていなかった問題の答えを思いつきます。それが、定規とコンパスによる正n角形の作図です。
レンさんの説明では、円を描いて円周上に均等に点を打てれば正n角形が描けます。正三角形、正四角形、正五角形は昔から描けることが知られていました。
エマさんは正三角形の描き方を説明します。円を描き、円周上の1点を中心に同じ半径の円を描くと交点ができ、そこを中心にまた同じ半径の円を描いていけば正三角形ができるという方法です。
一方で、正七角形は定規とコンパスでは描けません。アルキメデスが挑んでできないと書き、中世にはレオナルド・ダ・ヴィンチも挑戦しましたが、やはりできないとしていたといいます。
そもそも数学における作図っていうのは、定規とコンパスで線を引くことって定義なの。
いろいろな図形で試していくと、nが7以上の素数だと正n角形は作れないのではないか、という予想が生まれていました。エマさんは、それなら11角形や13角形も描けないのかと反応しています。
正17角形はなぜ描けるのか
レンさんは、音声だけで伝えるのはほぼ不可能に近いと断ったうえで、正n角形が描ける条件を紹介します。詳しく知りたい人は、図を見られるウェブなどで確かめてほしいとしています。
条件の鍵になるのは cos(2π/n) という値です。レンさんによると、この値が四則演算とルートだけで表せることが、正n角形を作図できることの必要十分条件になっています。
たとえば n=3 なら cos(2π/3) は普通に計算でき、エマさんが確かめたとおり -1/2 になります。同じように、正17角形なら cos(2π/17) を四則演算とルートで表せれば、作図可能だと証明できます。
作図の条件
cos(2π/n)が四則演算とルートで表せれば作図できる
ガウスの分解
cos(2π/17)をルートの中にルートが入る形まで分解
結論
四則演算とルートで表せたので、正17角形は作図可能
ガウスが行ったのは、cos(2π/17)を分解することでした。出てくるのは、ルートの中にルートがあり、その中にさらにルートがあるという、とんでもない数だといいます。
(正17角形は描けるという)人間が2000年ぐらい経ってもずっとできてなかったことをやったんよね、19歳が。
描ける正素数角形はたった5つ
正17角形が描けるなら、他の素数ではどうなのか。レンさんによると、定規とコンパスで作図できる正素数角形は5つしか見つかっていません。3、5、17、257、65537です。
エマさんが「6万なんちゃらって、本当にトライしたの?」と聞くと、レンさんは、実際に描いたのではなく、必要十分条件に当てはまることを理論的に証明したのだと説明します。つまり正65537角形も、定規とコンパスで描けることになります。
正65537角形はその数十年後、ドイツの教授が実際に描いています。手作業で10年以上かかったそうです。エマさんは「10年かけて描けましたって言って終わりじゃん」と笑っています。
この5つの素数はフェルマー素数 ── 2の(2のn乗)乗に1を足した形の数のうち、素数であるもの。現在知られているのは3、5、17、257、65537の5つだけですと呼ばれます。2の上に小さく「2のn乗」が乗った数に1を足した形で表される素数です。
レンさんによると、それ以外の素数については正n角形が作図できるとは示されておらず、描けないと言われています。エマさんは「難しすぎて何のためにやってるのかもよくわかんない」と率直な感想を漏らします。
生前は発表されなかった「ガウス日記」
正17角形が描けたことで「数学おもしれえ」となったガウスは、これをきっかけに日記を書き始めます。それが「ガウス日記」です。
ガウスは完璧主義で、ガウス日記の内容を生きている間にはほとんど発表しませんでした。レンさんは、この日記の中でガウスは100年ぐらい一人で数学の道を突っ走っていたと表現しています。
後の時代に別の数学者が発表した成果が、何十年も前にすでにガウス日記に書かれていたと後からわかることもありました。レンさんは、発表しなかったがゆえの悲劇でもあると話します。
ガウス日記には、正規分布の式につながる最小二乗法 ── 測定データとの誤差の二乗の合計が最小になるように、式やパラメータを決める方法。観測データから最もよく当てはまる値を求めるのに使われます、GPSで触れた曲面の計算方法、小惑星の軌道を計算する理論などが書かれていたといいます。証明が終わっていないものは発表しなかったため、生前に発表されたのはごくわずかでした。
お餅みたいな記号?ガウス記号とガウス素数
ガウス記号の話題になると、エマさんは「お餅みたいなやつ」と言い出します。番組冒頭で流れたやり取りは、このシーンです。
焼き餅みたいなさ、膨らんだ。
焼き餅それオメガじゃないの?
レンさんの説明では、ガウス記号は大きなカッコのような記号で、たとえば3.1をくくると3になるというものです。エマさんは見たことがあるかわからず、後で調べてみると話しています。
レンさんは、ガウス素数も紹介します。普通は2は素数ですが、虚数 ── 2乗するとマイナスになる数。iを2乗すると-1になる虚数単位iを使って表しますまで広げると、2は(1+i)×(1−i)で割り切れます。
そのためガウスの世界では2は素数ではなく、iまで広げても割り切れない数がガウス素数になります。レンさんも「頭良すぎてついていけねえ」と言いつつ、その面白さを語っています。
レンさんによると、ガウスは数学の中でも数そのものを扱う数論が一番重要だと示し、その先頭を走っていた人物でした。
30歳で天文台のトップ、その後の静かな生涯
ガウスの20歳以降の人生は、レンさんいわく「地味」です。若い頃に観測結果から小惑星の軌道を計算し、実際にその通りに観測できたことで評価され、30歳ぐらいで天文台のトップになります。
それでもガウスは贅沢をせず、小さな机とソファーがあるだけの、学生のワンルームのような部屋に住んでずっと数学をしていたといいます。
その後、ナポレオン軍の戦争に巻き込まれ、天文台の偉い人なのだからもっとお金を払えと求められたこともありました。ガウスが優れた数学者だと知っていた周囲の人々は、人望もあったガウスに代わってその支払いを肩代わりし、数学に集中してほしいと支えたそうです。
ガウスは一生数学に打ち込み、77歳で静かに生涯を終えたと言われています。発表した成果もありますが、ずっと書き続けた日記があまりにすごく、そちらが注目されているとレンさんは説明します。
ガウスがやったことで数学史が数百年進んだって言われてる。
すごさが分からなくても知っておく意味とは
レンさんは、数学の話題はポッドキャストで伝えられる限界ギリギリまでやっているつもりだと話します。エマさんは、どの分野でもすごすぎる発見はすごさがよくわからなかったり、何のためかと思ったりするけれど、それが後の時代にGPSなどになっていると応じます。
レンさんは、仕組みを100パーセント理解するのは学者の仕事であり、一般の人が全部理解する必要はないと考えています。ただ、そういうベースの上に便利な生活があると知ることは大事だといいます。
レンさんは、生活の裏に多くの歴史や数学者が関わっていると知ることは、大事であり面白いことでもあり、科学史の話を通して伝えたいことだと話します。
エマさんは、こうした重要性が理解されていないと研究にお金が回らず、発展のスピードが遅くなりそうだと指摘します。レンさんも、基礎研究の重要性はこういう話からでないと理解されないのではないかと答えています。
数学史シリーズの完結と、次は物理史へ
サイエントークの数学史シリーズは、牧場で牛の数を石を積み上げて数えたという数の始まりから始まりました。レンさんは、現代社会につながるところまで話せたのではないかと振り返ります。
数学史はガウスで最後になり、ここからは再び物理史に戻って、原子や量子の話へ向かう予定です。レンさんは、そういう話も数学がないと無理なので、その土台ができたところまで来たと話しています。
最後にお知らせとして、3月1日16時にSNSで告知があること、3月16日の夕方にYouTubeライブでポッドキャストアワードの授賞式が配信されること、オンラインでグッズを在庫限りで販売していることが紹介されました。
まとめ
ガウスは、2歳で父の計算ミスを指摘し、10歳で1から100の和を即答し、19歳で2000年来の正17角形の作図問題を解いた数学者です。その成果はGPS、電気回路、統計、画像のぼかしにまでつながっており、レンさんは、そうした土台の上に今の生活があると知ることの大切さを語っています。
- 10歳のガウスは、1から100を逆順と組み合わせて101が100個と考え、5050を即答した
- 先生が高価な数学の本を与え、貴族の支援につなげたことで、レンガ職人になるはずだったガウスは学び続けられた
- 19歳で正17角形が作図可能だと示し、作図できる正素数角形は3・5・17・257・65537の5つだとわかった
- 生前は発表されなかったガウス日記には、後の時代に再発見される成果が数多く書かれていた
- 基礎研究のすごさを全部理解しなくても、それが生活を支えていると知ることに意味がある


