妖怪はどう描いてもいい?概念が絵になるということ
小柳省三さんは、怪異譚の連作として妖怪『狂骨』を描いています。井戸から出てくる骨の妖怪で、これまでにお化けや妖怪をテーマにした作品を7枚ほど描いてきたと話されています。
小柳さんによれば、妖怪は言い伝えや概念を一言でまとめたものです。姿は本来なく、絵師が描くことでアイコンになります。
たとえば京極夏彦さんの作品に出てくる産女は、不幸な生まれ方をした子の長い話を、名前ひとつで共有できるショートカットの例だと説明されます。
物理的にはなくても、多数の人間が共有できているものは、それはあるのと同じことになるので、妖怪ってそういうものです。
小柳さんは、ネット上にしかないものも「ある」と言えるのと同じだと例えています。
鳥山石燕や水木しげるさんがすでに描いた妖怪でも、誰が自分の解釈で描いても正解だといいます。石燕自身も狂骨の実在を疑う記述を残しているそうです。
有名な絵師が描くとアイコン化しますが、無名の絵師が描いても、独自の解釈や表現が面白さになると語られます。
直前に描いていた中国の妖怪・人面樹は、笑いかけると笑い返す花の妖怪です。鳥山明さんがドラゴンクエストのために描いた人面樹とは全く違う姿で、描き方の自由さの例として挙げられました。
落書きでいいので描いてみると楽しいですよ。誰にも見せないんだったらいいじゃないですか、何でも。
江戸の骨は正確、内臓は不正確?腑分け図の美しさ
小柳さんは、胡粉と墨で描いた狂骨の骨がうまくいったと話します。江戸時代の日本画らしい骨の描き方を意識しているそうです。
江戸期の絵では、骨が身近に転がっていたため比較的正確に描かれました。一方、内臓はすぐ腐るため、解剖しないと見られず不正確だったといいます。
江戸中期から日本でも罪人の解剖が行われ、腑分けとしてスケッチされるようになりました。日本の絵師は和紙と岩絵具で描いたそうです。
日本の解剖図はめちゃくちゃ綺麗なんですよね。怖いよりも綺麗だなのが先に立ちます。
古い岩絵具は危ない?群青と毒性の話
夜空を群青で描くため、小柳さんは群青を作り始めます。この群青はアズライトという宝石を砕いた岩絵具で、江戸後期のラピスラズリ系の群青は高級品だったと説明されます。
岩絵具は絵描きが亡くなると弟子や知り合いに引き継がれます。小柳さんも故人から引き継いだ絵具を持っており、現代のものと発色が違う一方、当時の安全基準で作られているため扱いに注意が必要だそうです。
口に入ると毒性が強いものがあり、爪を噛む癖のある人は特に注意が必要だと話されます。ただし即死するようなものではないとも述べています。
岩絵具を焼くと色に深みが出ますが、朱は水銀系、黄色系は原料不明の猛毒のものがあるため焼かないほうがよいそうです。現代の岩絵具は安全だと強調されました。
上絵付けの劇薬と毒皿、骨董の食器は大丈夫?
小柳さんは幼少期に焼き物の上絵付けをしていた経験があり、その絵具のほうが岩絵具よりずっと恐ろしいと話します。劇薬も使い、管理は金庫と責任者立ち会いで厳重だったそうです。
例として、フッ化水素や、硫酸と塩酸を混ぜた黄水が挙がります。フッ化水素は手に落ちると穴が開き、ガラスや鉄も溶かすため、小柳さん自身は慣れた人に任せていたそうです。
上絵付けで焼きが不十分だと毒が染み出す器になり、これを毒皿と呼ぶといいます。古い九谷には時々あるらしいと語られます。
釉薬の下に入る下絵付けはガラスに閉じ込められるので大丈夫ですが、釉薬の上にのる上絵付けは閉じ込められません。
釉薬の下に入り、ガラスに閉じ込められるので大丈夫
釉薬の上にのるため閉じ込められず、毒が出る恐れがある
このため、上絵付けの骨董食器は、酢の物のような酸性やアルカリ性のものを入れないほうがよいと小柳さんは考えています。現代の食器は問題ないとのことです。
脳を焼くスマホと、追わなくていいAIのニュース
群青を塗った後の休憩で、小柳さんは30分に一度休憩を取る理由を、脳の興奮を冷ますためだと説明します。
TikTokのように刺激の強い映像を次々めくる行為は「脳を焼く」と言われ、脳に悪いようだと話されます。ただし禁止事項を増やすのも良くないと考えています。
AIの話題は毎週変わるため、追いかけすぎると一日中頭を支配されると述べ、専門家以外は必要なことだけ覚えればよいとしています。AI技術者である息子さんは毎週のアップデートに文句を言っていたそうです。
AIに営業を任せている?BASEで絵が売れた話
小柳さんは、群青と緑青で手前の藪を描きながら、今週中に狂骨が仕上がりそうだと話します。この制作はYouTubeチャンネル用のもので、販売や発表の予定はないそうです。
一方で営業は好調で、BASEで6万円ほどの絵が売れました。ネットで絵が売れることに喜びを感じたといいます。海外のプラットフォーム2社とも取り扱いの交渉が進んでいます。
この営業はAIが担っています。パートナー候補の会社を探し、メールを送り、反応があれば報告して進めていいかを尋ねてくるそうです。
決済は必ず僕を通すように「勝手に決済しないで」って言ってやってます。
営業台帳や売上管理のスプレッドシートもAIが作り、人を2人雇っているような感覚だと話されます。制作はAIが欲しいものを作れないため任せていないそうです。
探索
AIが毎日、パートナー候補の会社を調べる
提案
メール送付の可否をAIが尋ね、承認すると営業を開始する
報告
反応があれば報告し、進めてよいか確認する
決済
決済は小柳さんを通す
FIREしても働くべき?60代以降の仕事と年金
小柳さんは、遊んで暮らすことに憧れつつ、FIREした人は虚無感に襲われると聞くと話します。働く力も体力と同じで、一度落ちると戻りにくいらしいと語られます。
本人は死ぬ直前まで働いていたいと考えています。昔は高齢になると警備員の仕事くらいしか選択肢がありませんでしたが、今は仕事が増えたと述べます。
絵で食べられなくなっても社会から外れたくないので、別の仕事をするつもりだそうです。年金は出るものの、厚生年金の期間が限られるため多くないと話されます。
軍人恩給の話では、志願して従軍したお父さんは恩給をもらえず、ぶつぶつ言っていたといいます。小柳さんは線引きが必要だと理解しつつ、気の毒だとも感じています。
寂しい『狂骨』と、配信のお知らせ
仕上げ前に、小柳さんは狂骨の骨本体、笹やススキ、ぼんやり青い遠景を見せます。怨念を抱く怖い妖怪のはずが、誰もいない場所へ飛び出す姿は怖いより寂しいと語られます。
井戸から出てくる骸骨ってなんか寂しいじゃないですか。井戸の中で孤独だったろうなとか思っちゃうと。
狂骨は井戸に閉じ込められた恨みが怨念になった存在だと説明されました。粒子の粗い岩絵具は、見る角度で全然違って見えるとも話されます。
この配信は月曜から土曜の21時から22時頃に行われますが、来客や体調、出張で休む日もあります。
まとめ
妖怪は概念として自由に描けるという話から、岩絵具の安全、AI営業、働き方まで、描きながらの雑談が広がりました。
- 妖怪は言い伝えや概念であり、誰が自分の解釈で描いてもよい
- 現代の岩絵具は安全だが、古い引き継ぎ品や上絵付けの骨董食器は毒性に注意が必要
- AIに営業を任せ、決済だけは自分で行う運用が語られた
- FIREしても働く力は落ちるらしく、小柳さんは死ぬ直前まで働きたいと考えている



