フリースクールの本とドラマ、学校を休むチェックリスト
本題の前に、中里祐次さんから告知が3つありました。1つ目は、教育ジャーナリストの太田敏昌さんによる新書『フリースクールという選択』で、紹介されている複数のフリースクールの1つとして、収録場所でもあるブランチルームが取り上げられています。
中里さんは、学校以外の居場所はフリースクールなど数多く生まれているとして、学校に行っていないけれど居場所を探したい人に読んでほしいと話しています。桜林直子さんによると、この本は講談社+α新書から出ています。
2つ目は、4月8日から土曜日に放送されているフリースクールが舞台のドラマ『たつき先生は甘すぎる』です。原案を手がけたのは、この番組の企画にも関わっていた前田シモンさんで、去年までBranchで働いていた方だといいます。
中里さんは、企画を立てる際に少しBranchも参考にしてもらったのかもしれない、と控えめに話しています。
3つ目は、雑誌『ストーリー』の「子供の学校行きたくないに親ができること」という特集です。Branchがキヅキさんや不登校ジャーナリストの石井志功さんと共同開発した「学校を休んだ方がいいチェックリスト」が、石井さんのインタビュー内で紹介されています。
このチェックリストは、子どもが学校を嫌がっていても、どんな基準で休ませていいのかわからないという親の声に応えるものです。LINE上で20問に答えると、休ませた方がいいのか、まず子どもと話し合うべきかといった目安が示されます。
誌面にはQRコードが載っていて、そのまま読み込めるようになっています。Branchがこの雑誌に載るのは2回目で、一昨年は通っている家族へのインタビューが掲載されたそうです。
隣のおじさんに「我慢の限界です」と言った相談者
今回の「のろい」は、他の人に自分の子育てについて口を出されて、どうしようもなく怒りが湧いてしまうというものです。桜林さんが、ラジオネーム冬の星座さんからのお便りを読み上げました。
私は自分の母にサポートしてもらいながら、ほぼシングルで子供1人を育てています。子供には父親がいることをまだ話していません。なので、周りの人に家庭環境を突っ込まれないように、周りの人とできるだけ関わらないようにして子育てをしてきました。
冬の星座 さんから
家の隣に独身の一人暮らしのおじさんがいます。その人もお母様がシングルマザーでしたので、うちの子のことを幼稚園の頃から気にかけてくれました。父がその頃亡くなったこともあり、おじいさん代わりでお年玉を毎年もらっていました。私も熱がひどい時には病院の送迎をお願いしたことがあります。
冬の星座 さんから
子供が小学生になってから、会うたびにこうあるべきだ論を子供に言うようになりました。運動部の◯◯に入ればいいとか、持久走大会は1番を狙わなくちゃダメだなどです。
冬の星座 さんから
子供はとても繊細さんです。カウンセリングでは、お母さんの方がカウンセリングを受けなければならない状態です、私が安定すれば子供も安定しますと言われて、まだ続けています。桜林さんやジェーン・スーさんの本、哲学、心理学、脳科学など、ありとあらゆる本を参考にして、私はこれを大事にしたいを見つけてきました。
冬の星座 さんから
昨日、朝子供の登校を見送っていると、またおじさんが男たるものもっと強くあらねばならない論を言ってきました。私は話の途中で我慢の限界ですと言い放って逃げました。大人げない行動だと思いますが、子育てを一生懸命やってるからこそ、他人にとやかく言われることを許せなかったのかもしれません。
冬の星座 さんから
自分の親であれば喧嘩をすることもできますが、他人となると対応が難しいです。でも私はもうお年玉をもらえなくてもいい、自分が子供にお年玉をあげればいいやと思いました。そんな時どう対応されますか?
冬の星座 さんから
相談者の冬の星座さんは、家庭環境を守るために人と距離を取りつつ、困ったときは保健師や学校の先生、カウンセラーといったプロに相談してきました。その中で、隣のおじさんだけは例外的に近い存在になっていたことがわかります。
なぜ「良かれと思って」の口出しは断りにくいのか
お便りを聞いた2人の第一声は、おじさんの口出しは「普通に嫌だ」というものでした。中里さんは、言い放った後に隣に男性が住んでいる状況は、親子2人で暮らす相談者にとって怖いのではないかと心配しています。
いや怖いな。もうちょっと僕もおじさんなんで、同じおじさんとしてすいませんって謝りたいですね。
桜林さんは、問題の根っこを距離の近さに見ています。お年玉や病院の送迎を通じて、おじさんは遠い親戚くらいの気持ちになり、普通は他人に言わないことまで言っていいと思ってしまったのではないか、という見立てです。
中里さんは、おじさんが一度ではなく何度も言ってきている点に注目します。桜林さんも、それだけ本気で思っていることなのだろうと応じています。
本当に良かれと思って言ってるから、(口出しされるのは)嫌ですよってことを伝えるのが難しいよね。
さらに桜林さんは、最初が肝心だと話します。1回目に「そういうことは令和では言っちゃダメですよ」と伝えられれば相手も改めたかもしれませんが、何度も言われた後に突然言うのは難しく、それが「我慢の限界です」という爆発につながったと見ています。
多分向こうきっときょとんとしてるよね。訳分かってないよね。
頼る
病気のときの送迎やお年玉で、おじさんとの距離が近くなる
口出し
おじさんが「良かれと思って」こうあるべき論を繰り返す
我慢
最初に指摘できず、言われるたびに我慢を重ねる
爆発
「我慢の限界です」と言い放って逃げる
警戒が解けた相手だけ、距離が近くなりすぎた
桜林さんは、父親がいないことを突っ込まれたくないから周囲と関わらないようにしていた相談者の警戒が、このおじさんに関してだけ解けてしまったのだろうと読み取ります。
中里さんは、子どもが病気のときなどに助けてくれる人がほかにいなくて、時間のありそうな隣のおじさんを何度か頼ることになったのではないかと想像しています。
他の人に頼りたいね。そしたら。そのおじさん以外なら誰でもいいかも。
一方で桜林さんは、おじさんの年齢を考えると、「時代も違うし、うちはうちの考えがあるから息子に言わないで」と伝えても、すぐに「わかった、ごめん」とはならないだろうとも話しています。揉めたくもないだろう、という相談者の立場も気にかけています。
「逃げた」対応はそれしかなかったのか
中里さんは、相談者が「我慢の限界です」と言って逃げた対応について、それで良かった、それしかなかったと思うと伝えます。そのうえで、ほかのやり方として文章にして伝えることも挙げました。
僕はもうその冬の星座さんの対応として別にいいと思うというか、もうそれでそれしかなかったと思います。
桜林さんも、本当は最初のうちからチクチク言えていればよかったものの、言えなかった以上は逃げるしかなかったという意見に同意しています。逃げれば関係は途切れ、近づいてきた人を突き放す形になりますが、それしか離れる方法がないなら仕方がない、という考えです。
お年玉はどうでもいいよ。もらえなくていい。お年玉のために仲良くする必要はないし。
お年玉は相談者自身があげればいいし、困ったときの手助けもこのおじさんにしかできないわけではありません。2人は、おじさんとの関係を手放しても失うものは大きくないと整理しています。
一方的に話す人には言い返しにくい
中里さんは、このおじさんに限らない話として、会話のタイプの違いを挙げます。桜林さんのように話を最後まで聞いて質問もしてくれる人がいる一方で、一方的に話し続け、強引に割り込まないと会話が成り立たない人もいる、という指摘です。
中里さんは「勝手な想像」と断りながら、このおじさんも「何々すべき」を一方的に話すタイプで、言い返しづらかったのではないかと考えています。年齢が上の人ほどそのタイプが多いのではないか、というのも中里さん個人の印象として語られました。
「最近どう?」と聞いてくれるので、その流れで「実はああいう話はうちには合わない」と伝えやすい
言いたいことだけを話すため、割り込まないと伝える機会がない
桜林さんは、そういう人の言うことなら全部真に受けて聞かなくていい、「なんか言ってんな」くらいでいいはずだと話します。本当は受け流したかったのに我慢を重ねて爆発してしまった、と2人は相談者の状況を受け止めています。
子育てとか、自分の考えに突然ダメ出しされたり、こうあるべきとか言われたら誰だって嫌だから。それは別に我慢することじゃないので。
桜林さんは、相手がおじさんでも女友達でも、こうあるべきと言われるのは誰でも嫌なことだと強調します。難しいのは怒りを抑えることではなく、そういう人とどう距離を取るかだという整理です。
どこを開き、どこを閉じるか
中里さんは、その場の対応と今後の対応の2つの話があると切り分けます。桜林さんは、自分ならそもそも隣の独身のおじさんと仲良くなることが想像できないと率直に話しました。
さらに桜林さんは、自分ならシングルで子育てしていることを周りに隠そうとは思わないとも語ります。人との距離を「どこを開いてどこを閉じるか」の感覚が、自分の場合は少し違うという話で、あくまで人によると前置きしています。
中里さんは、家庭の課題は話しづらい場合も多いとしつつ、話しておくと助けてくれる人が増えるのは間違いないと思うと述べます。相談者が信頼できる人とだけ仲良くしていることについて、桜林さんは、その人たちに頼れるならおじさんがいなくても大丈夫なのではと応じました。
気まずくなった隣人への不安をどうするか
中里さんは、言い放つ前であれば、手紙で伝えるほか、友人の男性に来てもらって伝えてもらうなど、自分で言いにくいなら他の人に言ってもらう方法もあったと考えています。
そのうえで中里さんが気にかけているのは、今後おじさんと気まずくなっていることへの怖さです。桜林さんは、本来はそんなに関わらないほうが普通だと返しますが、中里さんは関係ゼロとは違うと話します。
関係性がゼロだったらもういいと思うんですよ。一回関係しちゃって、ちょっとこじれちゃったおじさんが隣にいるって。
中里さんは、市区町村に相談できるのかとも考えますが、桜林さんは、実際の被害がない個人間の問題までは難しいだろうと答えます。中里さんは、それでも誰かしらに相談しておいたほうが不安は払拭されるのではないか、と話しています。
「この人、口出していいと思ってんだ」くらいで引く
桜林さんは、相手がおじさんでもそうでなくても、子育てについて「こうするべき」と言われて怒りが湧いたときの考え方を語ります。言いやすい相手なら「内々でやるからほっといて」と言えるかもしれませんが、大事なのは言われたことを受け止めすぎないことだといいます。
本当はそうしなきゃいけないのかなとか、うるさいなって思っても、なんかグッと聞いてしまうみたいな。それは本当に相手が誰でもしなくていいと思うんだよね。
本当は他人の子育てについて誰も口出すべきじゃないけど、あ、この人なんか口出していいと思ってんだぐらいでいいと思うの。
桜林さんは、怒るほどでもなく、引いて流すくらいがいちばん楽なのだろうと話します。相談者は人の言うことを真に受けて、まっすぐ聞きすぎているのではないか、という全体の感想です。
本当はそうしなきゃいけないのかと真に受け、我慢して聞き続ける
「この人、口出していいと思ってんだ」と引いて流し、信頼できる友人に愚痴を言う
中里さんも、引いたうえでおじさん本人ではなく信頼できる友人に「ちょっと引いちゃうんだけど」と愚痴をこぼすくらいでいい、と賛同しています。
相談者にはすでに軸がある、だから「他人の教育に口を出すな」
中里さんは、相談者がプロやカウンセラーに相談し、さまざまな本で学んできたことから、「これがうちの家庭の教育なんだ」という軸がきっとあると感じています。桜林さんも、大事にしたいことを見つけてきたと書かれているので、そこは心配いらないと話しました。
軸があるからこそ、おじさんの口出しに強く反発したのだろう、と中里さんは見ています。最後に中里さんは、Branchのスタッフ間で始めた当初から共有している方針を紹介しました。
Branchの方針は「他人の教育に口を出すな」というものです。中里さんは、子どもは自分では動けないから親が指導すべきだと本気で考える先生や家庭、塾の先生も当たり前にいると教わったことがあり、家庭によって考えは全然違うのだと話します。
中里さんは、これは相談者ではなく、どちらかといえばおじさんに言いたいことだと付け加えています。番組の最後には、次回のテーマが「父親として妻をどのように支えればいいか」というのろいであることが告げられました。
まとめ
子育てに口を出されて怒りが湧くのは、我慢すべきことではありません。今回の相談では、距離が近づきすぎた隣人との関係を手放してよいこと、そして他人のべき論を真に受けすぎず、引いて流すことが楽になる道として語られました。
- 子育てにこうあるべきと言われて嫌なのは誰でも同じで、我慢する必要はない
- 「我慢の限界です」と逃げた対応は、それしかなかったと2人とも肯定している
- 困ったときの頼り先やお年玉は、そのおじさんでなくても代わりがある
- 口出しには「この人、口出していいと思ってんだ」くらいで引き、信頼できる人に愚痴をこぼせばいい
- Branchでも大切にしているのは、他人の家庭の教育方針には口を出さないこと







