大人の友だち作りは、なぜ30代・40代の「あるある」なのか?
この雑談回で桜林直子さんが持ち出したテーマは、「大人になってから友だちはどうやって作ればいいのか」という悩みです。
桜林さんは、マンツーマンの雑談サービス「サクちゃん聞いて」で、普段から一人ひとりの個別の話を聞いています。転職のように共通する悩みもあるなかで、それを飛び越えて多くの人が口にするのが、この友だち作りの話だといいます。
なんか大人になって友達ってどうやって作ればいいんですかねっていう、めちゃくちゃあるあるの悩みというか、テーマ。
まあ30代、40代でみんなそこに行き着く。
中里祐次さんも、この悩みについては「すっごい考えたことある」と応じます。番組ではふだん不登校の悩みなどのお便りを扱っていますが、この回は二人の個人的な実感から話が広がっていきます。
趣味の友だちが強い理由。音楽とスポーツの「二大巨頭」
桜林さんに「どうしてる?」と聞かれた中里さんは、自分は友だちが多いほうだと答えます。大学時代の友だちに加え、社会人になってから友だちになった人もかなりいるそうです。
中里さんが大人になってからの友だちと出会った場所は、圧倒的に音楽だといいます。大学時代、中里さんはVJ ── ビジュアルジョッキーの略。クラブイベントやライブなどで、音楽に合わせて映像を流したり演出したりする役割のことですとして、クラブイベントやフェスティバル、カフェで映像を流す活動をしていました。
社会人になってからVJはやめていましたが、音楽イベントには顔を出し続けていたため、中里さんには仕事とは違う居場所があったことになります。
で、やっぱ音楽は一番強力な武器かなって。
中里さんは40代になった今も、音楽を通じて新しい友だちができているといいます。さらに、音楽と並ぶもう一つの柱として、ランニングや登山などのスポーツを挙げました。
音楽と多分僕の中で音楽、スポーツが二大巨頭なんじゃないかなって。
桜林さんも「趣味友は強い」と同意し、趣味がある人は友だち作りにあまり困っていないのではないか、という見方で二人は一致します。
顔と名前を出す桜林さんの友だち作りが「参考にならない」理由
桜林さんの場合は、昔から長く続いている友だちはほとんどいなく、大人になってからの新しい友だちばかりだといいます。
ただ、桜林さんは自分の友だち作りを「参考にならない」と考えています。顔と名前を出して自分の考えを書いたり話したりしているため、出会う前から相手に人となりが伝わっているからです。
やっぱり話が早いじゃん、仲良くなる時に。
本を書いたり何かを作ったりしている人同士なら、会う前からお互いを知っていて、「あとは会うだけ」という状態になることもあります。普通に働いている人には真似しにくい方法だ、と桜林さんは話します。
そのうえで桜林さんは、家と会社の往復だけで友だちができることはなかなかなく、会社に友だちを求めるのも今は違う感じがする、と整理します。
顔と名前を出して考えを発信しているため、会う前から相手に人となりが伝わり、仲良くなるのが早い
家と会社の往復だけでは出会いがなく、会社と家以外に何かしらのコミュニティを増やす必要がある
なんか、だからやっぱり外、会社と家以外に、なんか何か増やすしかないんだけど。
食と読書会。小さな集まりが気の合う人に出会いやすい理由
会社と家以外に何を増やせるかという問いに、中里さんは音楽とスポーツに加えて「食」を挙げます。中里さんの周りには、アマチュアながら料理がとても上手な友だちが何人かいて、東京の貸しキッチンなどでホームパーティー的なイベントを開いてくれるそうです。
桜林さんの友だちにも、貸しキッチンで開かれる料理教室に教わりに行き、そこで友だちができた人がいるといいます。
そういうちっちゃいやつの方がさ、例えばこの人がやってるから来た、来ましたっていうさ、その狭いけどセンスとか好みとかが近い人が集まりやすいじゃん。
桜林さんは、大手の料理教室よりも、個人が開く小さな集まりのほうが気の合う人に会いやすそうだと話します。
続いて桜林さんが、これなら多くの人ができるかもしれないと挙げたのが読書会です。コロナ禍で一度なくなったものの、最近また増えてきた印象があるといいます。
桜林さんの理解では、読書会にはざっくり2つの型があるそうです。
1冊の本を全員で読み、読んだ人同士で集まって感想を言い合う
テーマに沿った本を一人ずつ持ち寄り、「このテーマならこの本」と紹介して話す
どちらの型でも、読書会では自分の話を急にするのではなく、本を通して話せる点がよいと桜林さんは言います。
本を読む人同士は語彙や言葉の扱い方にギャップが少なく、意思の疎通がしやすい。そのぶん気が合うのも早そうだ、というのが桜林さんの見立てです。
言葉を大事にしてる人とめっちゃ雑に使ってる人っていうか。で、結構なんか意思の疎通難しかったりとかすることもあるけど、なんかそういうのも一つクリアされる気がして。
桜林さんは以前、読書会を覗きに行った際、誰が来るかわからない場所を警戒していたそうです。しかし今、友だち作りの悩みを聞いていると、むしろ「誰でも行っていい場所」は素晴らしいと感じるようになったといいます。
ファンのオフ会、近所のバー、自分で開く会。「強者」のやり方
大人になってから友だちがたくさんいる人に話を聞くと、桜林さんいわく「強者」のやり方が見えてくるといいます。
たとえば、好きな芸人のファンコミュニティにTwitterなどで自分から入り、リアルのオフ会に行ってみる。あるいは、近所で気になっていた常連のいるバーに飛び込み、そこで仲良くなる。桜林さんは、どれも「みんながやりたいけど難しくてできないやつ」だと話します。
中里さんは、料理が得意で人を呼べる人のように、自分で会を開ける側の人も強者だと付け加えます。読書会も自分で開けば継続でき、定期的に友だちができるかもしれない、と中里さんは考えます。
一方で桜林さんは、会の管理人には向き不向きがあると指摘します。中里さんも、主催することで嫌われてしまう可能性にも触れました。
ちょっと乗っかるだけだったら人がやってるのに行く方がいいかもしれないね。
こうした方法は想像すればいろいろ挙がるものの、それでも多くの人が「大人になってから友だちが欲しいけどできない」と言う、と桜林さんは振り返ります。桜林さんは、40代以降で友だちの価値がとても上がっている気がする、とも話しています。
職場の人は友だちになれるのか?「会社の仮面」という壁
中里さんは、この話題の根っこに「仕事先で出会った人を友だちと呼べるか」という問いがあると考えます。中里さんには、先輩から相談された強烈な記憶があるそうです。
中里さんの先輩は、音楽で友だちが多い中里さんたちと3人で食事をした際、「お前らはいいよな」と漏らしたといいます。会社の中に知り合いはいても、先輩にはそれが友だちだとは思えなかったのです。
だから会社でできてる知り合いは全部会社の仮面で語ってるように見えちゃうから、友達だとは思えないみたいな。
大きな会社では仕事上の関わりも多く、飲み会のような仕事以外の場もあります。それでも中里さんの先輩にとって、そこは仕事の延長線上で、仕事としての自分を見られている場所だったと中里さんは説明します。
桜林さんも、40代男性からまったく同じ相談を受けたことがあるといいます。その男性は、男同士では仕事の話や成果の話ばかりしてしまい、仕事と関係ない悩みは話せないと語ったそうです。
なんか、じゃあ本当に自分がすごい困った時とか、仕事と全く関係ないところで悩んだ時に、そういう話はやっぱできないんですよねって言ってて。
その男性は一時期ダウンしたことがあり、周りが応援してくれても、ダウン中に話せる人はいないと強く感じたそうです。
桜林さんは、女性同士は嫌なことやつらいときに「聞いてよ」と言うのが上手で、職場で会った人とも愚痴を言い合えることが多いと話します。中里さんは、男性はそれが「ど下手」だと応じ、上司と部下という関係がプライベートでもそのまま固定してしまうと続けました。
仕事の話や成果の話ばかりになりやすく、困ったときや仕事と無関係な悩みは話しにくい
つらいときに「聞いてよ」と言うのが上手で、職場で会った人とも愚痴を言い合えることが多い
仕事がきっかけでも友だちになれるのは、どんなときか?
桜林さんにも、20年前のお菓子屋時代に仕事で知り合い、その後すぐ離れてから友だちになった人が何人もいます。ただ、一緒に働き続けていたら、むしろ友だちにならなかったかもしれないといいます。
そこで探そうとするのはちょっと違うよね。
中里さんはこの話から、職場の同僚が職場の外で仲良くなっていく漫画「ロボーの藤」を思い出します。前年に漫画賞の2位になった作品として紹介され、中里さんは今の時代感が表れた漫画だと感じたそうです。
二人は、職場でたまたま出会い、仕事の外で仲良くなるのは全然ありだと確認します。ただし中里さんは、その場合も趣味などの共通点がなく、仕事の話ばかりしていると関係は変わらないと指摘します。
友達かっていうと、いや仕事仲間だなってなりますね。
友だちに何を求める?2〜3か月に1回会う距離感
桜林さんは、誰とどれくらいの距離で関わりたいかは人によって違う、と話の視点を変えます。桜林さん自身は友だちの数が多いわけでも、距離が近いわけでもなく、毎日LINEをするような関係は求めていないそうです。
でもなんかそういう何を望んでるかにもよると思うの。その友達欲しいの友達ってどういう存在のことを言ってますかみたいな。
桜林さんにとってのベストは、2、3か月に1回会ってご飯を食べ、近況をめっちゃ話すくらいの関係です。普段はその頻度で、どちらかが困ったときには密接に助け合いたいといいます。
中里さんは、メンタルダウンしたときに相談できる人を作るのはハードルが高いが、たまにご飯を食べる友だちならハードルは低いと整理します。中里さんが「その友だちにダウンしたとき相談できるのか」と尋ねると、桜林さんは「全然できる」と答えました。
2、3か月に1回会って近況を話す関係。中里さんは比較的ハードルが低いと見ている
メンタルが落ちたときに頼れる関係。中里さんはハードルが高いと見ている
続く友だちに共通するのは、店の好みと正直度合い
桜林さんがここ1、2年で仲良くなった人を思い浮かべると、関係が続く相手には共通点があるそうです。一つは、ご飯の好みや、ご飯にどれくらいお金をかけるかの感覚が似ていることです。
なんかそろそろ喋ろうよっていう時に、え、どうする?何食べる?っていう時に、同じテンションであそこ行きたい、ここ行きたいって言える人とかだと、やっぱりどっちも無理してない、どっちも行きたくて行くのがわかるから続きやすいし。
もう一つは、悪口の温度感が似ていることです。片方だけが悪口を言っていると、相手に聞かせてしまっている、実は心を痛めていたら申し訳ない、と気になると桜林さんは話します。
桜林さんはこれを「正直度合いが似ている」と言い換えます。気を使われたり合わせてくれたりしているのがわかると、桜林さんは相手を誘いづらいそうです。
だから私の周りにはバカみたいに正直な人しかいないっていう感じになっていくんだけど。
グループよりサシ?人数の好みと誘い方
桜林さんの友だち付き合いは完全にマンツーマンで、グループで仲良くするのは苦手だといいます。一方で、4、5人のグループで定期的に会うのが好きな人もいる、と桜林さんは認めます。
中里さんも、サイバーエージェント ── インターネット広告やメディア、ゲームなどを手がける日本のIT企業です時代の同期とは辞めてからも長く、もう友だちと言っていい関係だと感じています。ただ、声がかかるのは10人以上の大人数が多く、中里さんには多すぎて行けないそうです。
中里さんは、2〜3人で誘ってくれる同期となら会うといいます。桜林さんは、大人数の会には行かないか、無理して行って、サシで飲みたい人に「今度改めて飲もうよ」と声をかけるかもしれないと話します。
でもそれが難しいんだろうな。やっぱ自分から誘うとかが難しい人が多いのかもね。
「誘われたいけど誘いたくない」と、急に連絡する気軽さ
中里さんは、桜林さんに相談してきた人が、転職をせず同じ職場にずっといる可能性を考えます。中里さんは、転職を5回ほどしていれば、そのうち1、2か所では友だちができていそうだと話します。
桜林さんは、友だちができにくい背景に「変化に弱い」ことがあるかもしれないと見ます。自分から変化を起こしたり、誰かを誘ったりするのが苦手なのかもしれない、という見方です。
誘われたい、自分は誘いたくないけど、誘われたいって何を頑張っていいかわかんないよね。
桜林さん自身は、誘うことや連絡することにためらいがないといいます。無理なら断られるだけ、と考えているからです。
桜林さんは、2年に1回ほどしか会わない友だちにも、思い立ったときに急に「元気?」と連絡したり、何かを見て思い出した相手にそれを送ったりするそうです。
なんかもう2年も会ってないしな、向こう友達って思ってるかわかんないしなみたいなことをしないで、なんかあんたのこと今思い出したよっていうこととか、結構気軽に連絡する。
中里さんは、大学時代や前の職場の人に突然連絡できるかがポイントになりそうだと応じます。桜林さんは、相手がどう思っているかを気にするとできないのかもしれない、とまとめました。
オンラインゲームとファンコミュニティ。新しい友だちの入り口
話の後半、中里さんは新機軸として、オンラインゲームで友だちができる流れを付け加えます。少なくとも10代や20代前半にとっては、音楽やスポーツと並ぶか、それ以上の入り口になっていると中里さんは見ています。
中里さんによると、オンラインゲーム仲間は基本的にゲーム内で遊びますが、毎日のように一緒に遊ぶため、ルームシェアに近いほど親しくなるそうです。そうした仲間が年に1回オフ会で会うと、もう「マブダチ」のような関係になっているといいます。
桜林さんの娘のあーちんさんも、4年間北海道で大学生活を送るなか、大学以外に知り合いができず、オンラインゲームやゲーム実況で遊んでいたそうです。東京に戻ってからオフ会やイベントに行き、初めて会った仲間と友だちになったといいます。
桜林さんは、誰かのファンコミュニティも新しい関係の入り口だと付け加えます。中里さんも、ライブの日に時間を合わせて行く、チケットを一緒に取るといった例を挙げました。
好きなことがない人はいない。封じた「好き」を掘り起こす
ここまでの入り口はどれも、何か好きなものがある人が強い、と桜林さんは振り返ります。中里さんは、子どもたちと接してきた経験から、好きなことがない人はいないと考えています。
好きなことがないってなっちゃってるとしたら、それは仕事だったり環境だったり、何かしらで封じ込められちゃってるだけで。
中里さんは、勉強以外に時間を使ってはいけないという世界観で育つと、好きなものを小中学校のころに封じてしまうことがあると話します。そうなると、大人になってから余暇に何をすればいいかわからなくなるといいます。
桜林さんは、深くて強い「好き」でなく、浅く広くでもよいとしたうえで、早めに封じた「好き」を掘り起こしておくのがいいかもしれないと応じます。中里さんがこれを「ミッドライフクライシス ── 中年期に、これまでの生き方や価値観に迷いや不安を抱く心理的な危機のこと。おおむね40代前後に起こりやすいとされますですね」と言うと、桜林さんは「重たく言うとね」と笑って受けました。
最後に中里さんは、次回のテーマが「自分の子育てに口を出されて怒りが湧いてしまう呪い」だと予告して、この雑談回を締めくくりました。
まとめ
大人になってからの友だち作りは、会社と家以外に居場所を持つことから始まります。そのうえで、自分が求める距離感を知り、相手の反応を気にしすぎずに声をかけることが、関係を続けるヒントとして語られました。
- 音楽、スポーツ、食、読書会、ファンコミュニティ、オンラインゲームなど、好きなものを通じた場が友だち作りの入り口になる
- 職場の関係は「会社の仮面」がつきまといやすく、仕事の外で趣味などの共通点がないと仕事仲間のままになりやすい
- 「友だち」に何を求めるかで作りやすさは変わり、2、3か月に1回会う距離感ならハードルは下がる
- 続く関係には、店の好みや正直度合いが似ていること、そして自分から気軽に誘えることが効いている
- 好きなことがないと感じる人も、封じ込めてきた「好き」を浅く広くでも掘り起こすことが勧められている






