日記もアプリも続かない、記録が苦手なのはなぜ?
本題に入る前の雑談は、桜林さんがもらった日記の話から始まります。1ページに同じ日付の5年分を書ける「五年日記」で、2年目からは去年の同じ日に何をしていたかがわかる仕組みです。
(五年日記は)最初の1年目は絶対つまんない。書くだけだから。2年目から面白いじゃん。去年の今日これやってたんだってなるから。
だから頑張って1年やろうと思って10ヶ月でやめちゃった。
中里さんも、去年は日記アプリのDAYONEを使っていたものの、4月ごろで途絶えたと明かします。二人とも、過去と比較できる日記の楽しさはわかるのに続かないという点で一致しました。
一方で、中里さんは読んだ本や見た映画を記録するサービスは十何年も続けている「記録魔」です。感想は基本的に書かず、記録だけを「ポチ」で終わらせるのが続くコツのようです。
佐久間宣行さんの「年末ベスト3」が羨ましい理由
桜林さんが記録に憧れるきっかけの一つは、テレビプロデューサーの佐久間宣行さんがラジオで毎年年末に発表する、その年のベスト3の映画やドラマ、演劇です。
(佐久間さんは)1年中見たものをエクセルで管理して、めっちゃ見るから忘れないように、何月何日何見たって記録してあって。
桜林さんにとっては、ベスト3の中身を知ることも楽しい一方、記録して年末に振り返るという習慣そのものが羨ましいといいます。最近見た映画を聞かれても、見たのに一切出てこないそうです。
中里さんが記録を続けているのは、自分に記憶力がないと強く自覚しているからです。記録しておかないと「なかったことになっちゃう」と考えて頑張っていると話します。
記録怖くないよ。怖くないけどなんかすっごい優先度が低くなっちゃう。
中里さんも、実は1ヶ月後に本棚やAmazonの履歴を見てまとめて登録することがよくあるといいます。それでも十何年続いた今は、やらないと気持ち悪い状態になっているそうです。
記憶力がない自覚から、感想は書かずに記録だけを「ポチ」で残す。十何年続き、やらないと気持ち悪い
記録したい気持ちはあるが優先度が低くなり、五年日記も10ヶ月で途絶えた
お便り紹介:祖父母からの「学校に行かせなさい」
本題は、ラジオネーム「ももも母」さんからのお便りです。今回の呪いは「子どもは学校に行くのは当たり前」というものでした。
私が呪われていたのは、自分の両親と義理の両親の「子供は学校に行くのは当たり前」という価値観でした。息子は○年生の2学期から○年生まで不登校でした。共働きでしたので、普段から両親たちの力を借りることが多々ありました。
本人の体調が良くなく、学校に行き渋りになり、かといって私も仕事に行かなくてはならず、当初は体調が良くなるまでだという認識で両親の力を借りていましたが、体調が戻っても学校に行かない息子を見て、「学校に行かせなさい、子供が学校に行くのは義務だ」とこちらを責め立ててくるような口調でした。
つらい。
自分の仕事と両親たちと子供と学校とのやりとりで余裕がなくなっていた私は、心が削られていったなと今思い返しています。両親たちから受けた呪いをそのまま子供にぶつけてしまっていたとも思います。
愛があるゆえの呪いだったとは思いますが、自分でアプローチできる手段は昔よりもあり、正解は子供と一緒に自分たちで探っていくことだと今は思えています。追伸、中学生になり、2週間に一度ポロッと休むことはありますが、学校には通えるようになりました。
お便りを受けて中里さんは、世代の違いからこうした話が出てくるのは「本当にあるある」で、Branchでも初期の頃から聞いてきたと話します。
祖父母世代を説得するなら「NHK」と「病院の先生」?
祖父母との価値観の違いに直面したとき、中里さんが「もしかしたらできるかも」と伝えているのが、祖父母世代は権威に弱いという点を使う方法です。
僕らの周りだとよく本田秀夫先生っていう方とか、結構いろんな本を書いたりするんですけど、うちで撮ったYouTubeとかもあったりするので、このYouTubeを見せてみたらどうなりますか?とか。
NHKの番組で現代の不登校が取り上げられ、こうした方がいいと言っていた、と伝えるのも一つの手だといいます。桜林さんは、娘に言われるよりNHKに言われたほうが効く、と表現しました。
NHK本当強いんですよね。
ただ桜林さんは、親を説得すること以上に、親の価値観を自分も食らってしまい、それがさらに子どもへ向かってしまうことのほうが「あるある」なのではないかと指摘します。
子どもを預けているから言い返せない、板挟みのしんどさ
お便りの母親の場合、両親に子どもを見てもらっているという事情がありました。中里さんは、そうした負い目があるからこそ言い返しづらいと話します。
ほっといてとは言えないよね。頼んどいてね。
桜林さんは、これは呪いというより、世代ごとに当たり前が違うだけの思い込みかもしれないと考えます。それでも「義務だ」と言われれば、そうなのかもと思ってしまうのは仕方がないといいます。
中里さんによれば、この話がすんなり通る祖父母は少ないそうです。「スーパーおばあちゃん」がいる家庭もあるものの、多くはありません。
中里さん自身、80歳ぐらいの大好きな寿司屋の親方に不登校の仕事の話をした際、「甘やかしてるからだよな」と普通に言われた経験があります。何も言い返さず、その世代はこれが普通なのだと改めて感じたといいます。
桜林さんは、子どもと向き合いたい、両親も無視したくない、仕事もしなければならないという状況を「板挟み」と表現し、どれを優先していいかわからないしんどさに寄り添いました。
「不登校離職」という大きな問題
中里さんは、こうした場合によくあるのが、母親が仕事を辞めて不登校の子どもと一緒に過ごす選択だと話します。
これ不登校離職って言われて、結構今大きな問題になってるんですけど。
子どもが家に誰かがいないと不安で怖い状態になることもあり、まず母親がしっかり見るという家庭は多いそうです。子どもの状況が好転したあと、仕事に戻っていく人も多いといいます。
桜林さんは、リモートに切り替えられる仕事ばかりではないため、辞めざるを得ない場面もあるのだろうと受け止めています。
子どもが不登校に
家に誰かがいないと不安な状態になることもある
母親が仕事を辞める
一度子ども優先で付きっきりで見る
状況が好転
その後、仕事に戻っていく人も多い
今の学校は「楽」なのか?辛さの種類の違い
中里さんは以前、祖父母世代の元教育関係者から「今の学校の方が楽で甘やかしているのに、なぜ行かないのか」と言われ、それは違うと説明したことがあるそうです。
中里さんの説明では、昔の学校は頭を叩くような体罰的な厳しさがありました。その意味では今は甘やかされているように見えるかもしれません。
学校教育が積み重なっていった結果、ちっちゃなちっちゃなルールみたいなものに積み重なっていって、それにお子さんは過剰適応していて、それで疲れちゃって、学校に行けない。
辛さの種類が違うね。
つまり今の学校の辛さは、「普通」の範囲から少しでも外れたらダメだという、がんじがらめの辛さだと中里さんは話します。ただ、この違いは経験していない祖父母世代にはなかなか伝わらないそうです。
叩かれるなど、体罰的な厳しさ
細かなルールが積み重なり、「普通」の範囲から外れられない辛さ
子どもの人権と、時代そのものの変化
桜林さんは、学校だけでなく時代そのものが違うと指摘します。昔は「学校には必ず行くもの」「大人の言うことは聞くもの」「親には反発するな」といった思い込みがたくさんありました。
桜林さんによれば、学校や子どものことだけをNHKなどで知っても、わかった気にはなるかもしれません。しかし、本当に時代が変わったこと、何が変わったのかまで理解しないと、本当にはわからないだろうと話します。
中里さんは、時代は少しずつ「子どもにも人権がある」という方向に流れてきたと整理します。昔は子どもが家族の食いぶちを稼ぐ存在で、畑を手伝うのが当たり前の時代もありました。
でもやっぱり子供はある程度管理下に置かれてるみたいな、家族の中の。っていう時代の価値観なんですよね。
桜林さんは、お金を稼ぐ父親が一番偉く、子どものしつけや選択は親の責任とされた時代から、子どもには子どもの責任があり、どれを選んでもよい時代になったと話します。その変化は、関わっていない世代には実感しようがないといいます。
祖父母を説き伏せるより、自分がブレない場所を
中里さんは、現実的には祖父母を説き伏せる方向はかなり難易度が高いと話します。桜林さんもそれに強く同意しました。
私たちはこれでいこうっていう。なんかこう、ブレなさみたいなものとか、揺れちゃっても帰ってくる場所を作っておくとか、そっちの方が大事なんだろうなと思います。
桜林さんの考えでは、祖父母の価値観を変えることより、揺れても帰ってくる場所を作っておくことのほうが大事だということです。
中里さんは、同じような経験をしている親同士で考え方を共有し、話し合ったり共感し合ったりすることも勧めています。お便りを送ること自体も、ある意味でコミュニケーションだといいます。
うまくいかなさから見えた「新しい時代の輪郭」
中里さんは、子どもが学校に行かず、両親から責められて苦しんだことで、子どもの人権や新しい課題が見えるようになったと、あえてポジティブに捉えます。学校に通い続けている家庭からは見えていない景色だといいます。
桜林さんも、嫌で困った経験だとしても、それによって得たものはあると応じます。ただし、それは時間が経ったから言えることで、最中にはそう思えないかもしれないとも添えました。
最後に二人は、時間が経ってから振り返ってお便りを書いてくれたことで、聞いている人への学びにもなっていると感謝を伝えています。
まとめ
今回は、祖父母から「学校に行かせなさい」と責められた母親のお便りをもとに、世代間の当たり前の違いが語られました。祖父母を説得することは難しく、それより親自身がブレない軸を持ち、同じ経験をした人と共有することが大切だという結論です。
- 祖父母世代に伝えるなら、NHKや医師など権威ある情報を見せる方法もある
- 今の学校の辛さは体罰ではなく、細かなルールへの過剰適応という別の種類のもの
- 子どもを預けている負い目があると言い返しづらく、板挟みになりやすい
- 祖父母を説き伏せるより、自分がブレない軸と帰ってくる場所を持つことが大事
- うまくいかなかった経験は、新しい時代の輪郭が見えるきっかけにもなる




