ゲームはなぜ子どもと大人をつなぐのか
番組『親の「のろい」をとくラジオ』は、親や子育ての「べき思考」をほどくことをテーマにしています。今回はその本題から離れた、テーマなしの雑談回です。
雑談回の最初の話題は、中里さんがこの収録の直前に買ったゲームでした。PS5のゲーム『ゴーストオブヨーテ』で、前作の『ゴーストオブツシマ』が素晴らしい作品だったため、久しぶりにやろうと決めたそうです。
(ゲームをする)時間を取れるかどうかがかなり怪しいんですけど、あまりにも前作が面白かったから、今回もなんとかやりたいなっていう希望でさっき買いました。
中里さんによると、この新作はオープンワールド ── 広い世界を最初から自由に移動して探索できるゲームの形式。決められた順番で進むステージ型のゲームとは遊び方が大きく異なりますと呼ばれるタイプで、短い時間でも遊べる一方、終わりがありません。桜林さんは「キリないね」と笑っています。
子どもの頃のゲーム体験について、中里さんはロールプレイング(RPG)しかやっていなかったと振り返ります。反射神経が必要なゲームは苦手で、物語に入り込むタイプが好みだったそうです。
マリオ、ストリートファイター、シューティングなど反射神経が必要なもの。桜林さんは「3分で飽きる」
物語に入り込むRPGや、桜林さんが挙げた『ポートピア殺人事件』のような推理もの
中里さんが大人になってゲームを再開したのは、Branchを始めてからだといいます。前職のサイバーエージェント時代はまったくやっていませんでしたが、子どもたちがゲームをしていたため、一緒にやれることを増やそうと考えました。
共通言語だよね。
中里さんは、子どもと共通言語を作るためにフォートナイト ── 多人数で同時に遊ぶオンライン対戦ゲーム。子どもや若者に特に人気がありますをかなり初期からプレイし、中古のプレステ4を買ってゲーマーの友人に名作を教えてもらったそうです。コロナ前のその時期は、仕事と関係なくしっかりハマったと話しています。
20年以上「無」だったバスケ熱が突然戻ってきた
ゲームの話を受けて、桜林さんは「子どもの頃好きだったものが、大人になってもう一回再発することはないか」と問いかけます。桜林さん自身の例は、バスケットボールの観戦でした。
桜林さんは中学・高校とバスケ部でしたが、部活がきつかったこともあり、卒業後はバスケをやることも見ることも一切ありませんでした。
そこから、17、18歳でしょ。28……20年以上をもう無、バスケに関する興味は無だったのに、3年前ぐらいに突然見出して。
桜林さんのバスケ熱のきっかけは、テレビで珍しく放送されていた日本代表のワールドカップ予選でした。たまたま見たら面白く、出場選手の所属チームを調べて、近い横浜のチームに河村勇輝選手がいると知り、チケットを取って会場へ行ったそうです。
中里さんもバスケ部出身で、実際に会場へ行くことの影響は大きそうだと反応します。桜林さんは、自分がやっていたからこそ選手のすごさがわかり、ルールを知っているぶん面白がるのも早いと話しています。
話題はBリーグ ── 日本の男子プロバスケットボールリーグ。2016年に開幕し、地域名を冠したクラブが各地を本拠地に戦っていますにも及びます。桜林さんによると、Bリーグは発足してまだ10年ほどで、それ以前は企業チームと混ざった形でリーグが行われていたそうです。
中里さんは、中学生の頃にJリーグができてサッカーが一気にメジャーになっていくのを見て、「バスケにもこういうのがあればいいのに」と思っていたことを思い出します。桜林さんは、この3年でチケットがとても取りにくくなったと人気の広がりを実感しています。
中里さんは、最近『スラムダンク』の電子版が出て読み返す人が多いはずだとも付け加えます。桜林さんは、自分は流行りに乗っただけかもしれないとしつつ、眠っていたはずの「好き」が突然出てくること自体を面白がっています。
他のこともそれあったら楽しいなと思って。子供の頃好きだったけど、今全くやってないみたいなこと。
発売日の朝にミニストップへ、漫画に注いだ子どもの頃の熱量
子どもの頃の遊びを聞かれた中里さんは、勝手に「ドッジボール部」を作って練習方法を考えていたと振り返ります。そのうえで、漫画を読むことは昔から今まで一番好きなくらいずっと続いていて、「再発」ではないと話します。
桜林さんも漫画はずっと読み続けている一方、子どもの頃によく描いていた絵はまったく描かなくなったそうです。桜林さんの場合は、娘さんの絵がすごすぎるからだといいます。
桜林さんの子ども時代は少女漫画の『りぼん』や『なかよし』の連載がどれも熱く、徒歩1分のミニストップに発売日の朝、学校へ行く前に買いに行っていました。中里さんも、ジャンプを発売日より早く出す本屋へ、区をまたいで自転車で通ったそうです。
中里さんの漫画への熱は高校時代にさらに強まります。実家のあった学芸大学には当時古本屋が6軒あり、そのすべてを週3回ほど回っていたといいます。
高校生の時にロッテリアでバイトとかしたんですけど、月8万円ぐらいもらったアルバイト代のうち4万円ぐらい漫画に毎月費やして。
大人になった今も漫画にお金を使う二人は、年間でいくら使っているかは「絶対に見たくない」と口をそろえます。桜林さんは、税理士に出す明細もAmazonとしか書いていないので「書籍ということにしておこう」と笑い、中里さんは「漫画も書籍ですから」と返しています。
今の子どもは漫画ではなくアニメで物語を知る
中里さんによると、Branchで接する今の子どもたちは、漫画をあまり読んでいないそうです。物語に触れる入口はアニメで、漫画まで手を伸ばす子は一部に限られ、その理由の一つは漫画が高いことだといいます。
中里さんは、鬼滅の刃が人気すぎる例として、グロテスクなシーンが怖くて作品自体は見ていないのに、全キャラクターを把握し、ストーリーを友達から教わって、一緒に話したりコスプレしたりして遊ぶ子がいると紹介します。
桜林さんの娘さんは、ポケモンで同じような楽しみ方をしていたそうです。アニメも映画も見ず、図鑑だけでポケモンを把握していました。
見といで見といでって言ったら、好きすぎて見れないって。
高校生ぐらいの娘さんに評判のいいポケモン映画を勧めたところ、予告を見ただけで「うわっ」となり、結局見に行かなかったそうです。中里さんは「推し力高」と驚き、桜林さんは「動いてる」と感じてしまうのでは、と推測しています。桜林さん自身も、『スラムダンク』の映画のオープニングで線画が歩き出したとき「動いてる」と感じたといいます。
中里さんは、漫画でしか味わえない感動や、アニメ化されていない優れた作品がたくさんあることを、子どもたちに伝えていきたいと話します。桜林さんの娘さんは学童に置いてあった漫画を全巻読んでいたそうで、最初さえ読めば続きを読みたくなるという点で二人の意見は一致しています。
一方で中里さんは、今週オンラインでマインクラフトを一緒に遊んだBranchの子どもの話を紹介します。その子は鬼滅の刃の煉獄さんが出てくる映画を初めて見ながら、中里さんに結末を聞いてきたそうです。
新しいストーリーを楽しみたいとかじゃなくて、一旦そのストーリーが何であるかっていう把握ができればいいみたいな。
桜林さんは、映画評論家も同じことを話していたと応じます。若い人のなかには、面白いかどうかわかってからでないと見たくない、自分で見て判断するのはコスパが悪いと考え、なかには「ハッピーエンドですか?」と事前に聞いてくる人もいるそうです。
自分で漫画をめくり、結末を知らないまま長い積み重ねの先にある感動を味わう
アニメや周囲の話で全体像や結末を先に把握し、確実に楽しめるものを選ぶ
中里さんは、こうした見方が広がると、漫画や小説で少しずつ積み重なっていく大きな感動は感じ取りにくくなるのかもしれない、と話しています。ただし、それが多数派かどうかはわからないとも断っています。
漫画で活字を覚えた子は国語が解ける?
本はさらに読まれていないのでは、という話の流れで、中里さんはBranchの保護者から聞いた明るい話を紹介します。小学2年生の頃から見ている中学生の子が、ずっとポケモン好きだったのに、最近急に小説を読み始め、お母さんがとても感動していたそうです。
その中学生が手に取ったのは、おそらくライトノベル ── アニメ調のイラストを多用した若年層向けの娯楽小説。アニメ化される作品も多く、映像から原作へ入る読者もいますだろうと中里さんは見ています。転スラやリゼロのような作品から活字に入る子は一定数いますが、今は中学生が活字を読むこと自体がレアになっているそうです。
桜林さんは、自分たちの世代は漫画で活字や漢字を覚えたので、本を読むのも苦痛ではなかったと振り返ります。娘さんも、家に置いてあった藤子不二雄の『オバケのQ太郎』の愛蔵版などを読んで漢字を覚えていたそうです。
漫画を大量に読む
さまざまなストーリーとキャラクターに触れる
心情を読み取る力がつく
登場人物の気持ちを自然と理解できるようになる
現代文が解ける
早稲田の受験でも、現国の勉強をせずに解けた
漫画とか大量に読んでて、いろんなストーリーといろんなキャラクターの心情とかを分かってると、結局現代文、現国は解ける。
中里さんは、アニメも大量に見れば心情を読み取る力につながる部分があるかもしれない、と付け加えています。
TikTokが見られないのは「時間を支配される」から?
桜林さんは、得意不得意には脳の偏りもあると話し、自分はアニメを見るのが苦手で、YouTubeもあまり見られないと打ち明けます。映画やドラマはむしろ好きなのに、TikTokのような短い動画が一番見られないそうです。
中里さんもTikTokはまったく見られないといいます。桜林さんは、その理由を考えるなかで「時間を支配されている感じ、勝手に見せられているみたいな感じがある」と話しました。
中里さんは、同じ感覚を高校時代からテレビに抱いていたそうです。マスメディアを完全に断っていた理由も、時間の主導権をあちらに握られる感じが嫌だったからでした。
漫画が一番好きな理由はそこが結構あって、自分でスピードをコントロールできる。
ずっと受動になり、CMも含めて「主導権は全てブラウン管の向こう」
自分でページをめくり、読むスピードを自分でコントロールできる
桜林さんは、高校生でそう考えたことはなかったと驚きつつ、自分も録画してCMを飛ばして見ていたので、行動としては同じだと話します。
一方で桜林さんは、今の子どもたちがTikTokを見られるのは誰かに教わったからではなく、なじみがあるからだと考えています。大人がいきなり見ても難しいのは当然で、ずっと見て育てば見られたかもしれない、と話しています。
中里さんは自分の記憶を掘り返し、お小遣いのない家庭だった中学時代、友達が『すごいよ!!マサルさん』などで笑っているのに、慣れていない自分には何が面白いのかわからなかったと語ります。
コミュニケーションの輪に入れないっていう感覚があって。入りたいみたいな。だから、この笑いを理解したいとか、この漫画の読み方を理解したいみたいなものが多分あった。
中里さんは、たくさん読むうちに漫画の面白さがわかるようになったが、TikTokに対しては「理解しよう」という働きかけをしていないからではないか、と推測します。「好き」になるには、理解したいという気持ちが入口になるのかもしれない、という見立てです。
桜林さんは自分を完全に活字優位だと分析し、Instagramも写真3枚ほどで「もういいや」となると話します。中里さんが「さくちゃんは言語化能力が異常に高い」と言うと、桜林さんは「言葉にうるさい」と返し、映像で見たものはあまり覚えていないと明かしています。
子育て中の人に薦めたい映画『普通の子ども』
最後に中里さんが最近面白かった映像作品を尋ねると、桜林さんは映画『普通の子ども』を挙げました。小学4年生の子どもたちが主人公で、ドキュメンタリーかと思うほどリアルに子どもたちが見ている世界を描いた作品だといいます。
先生役とかお母さん役が風間俊介さんと蒼井優さんで、あまりに俳優さんだから、なんか「あ、これ映画だった」ってなるんだけど。すっごい面白かった。
桜林さんは、子育て中の人はもちろん、みんな子どもだったことがあるのだから全人類に見てほしい、と強く薦めています。収録時点ではまだ上映館があり、中里さんは配信が遅れるぶん、Branchのコミュニティに今日のうちに書き込んでおくと話しました。
中里さんは「全然関係ないことを話すと無限に話せる」と締めくくり、次回は「みんなと同じようにできないといけない」という呪いを取り上げると予告しています。
まとめ
テーマなしで始まった雑談は、ゲームやバスケ観戦をきっかけに、子どもの頃の「好き」が大人になってよみがえる面白さへと広がりました。漫画からアニメへ、結末を先に知りたい楽しみ方、短い動画が見られない理由まで、世代ごとの「好き」の入口の違いが、二人の実体験を通して語られています。
- 桜林さんは20年以上無関心だったバスケを、テレビ中継と現地観戦をきっかけに3年前から熱心に見るようになった
- 二人は子どもの頃から漫画に熱中し、漫画で活字や心情の読み取りを覚えたと振り返っている
- 今の子どもはアニメで物語に触れ、結末を先に把握したがる傾向もあると中里さんは感じている
- TikTokが見られない理由として、時間を支配される感覚や、なじみ・理解したい気持ちの有無が挙げられた
- 桜林さんは子育て中の人にも、すべての人にも映画『普通の子ども』を薦めている






