「学校に行ってほしい」という気持ちに押しつぶされそうになる──不登校の子を持つ親の悶々とどう向き合うか
Branch代表の中里祐次さんと「雑談の人」桜林直子さんがパーソナリティを務める『親の「のろい」をとくラジオ』第33回。今回は、中学入学半月で不登校になった息子さんを持つリスナーから届いた「学校に行ってほしいという気持ちに押しつぶされそうになる」という相談を取り上げ、親の不安の手放し方や子どもとの向き合い方について語り合いました。その内容をまとめます。
リスナーからの相談──入学半月で不登校に
中学生の息子が、入学して半月で不登校になりました。原因は担任の先生に理不尽に怒鳴られたこと。他の先生も庇ってくれず、学校が「いつ怒られるかわからない恐怖の場所」になってしまいました。今はパソコンでゲームやYouTuber活動をして「毎日充実している」と言っていますが、本音を言うと学校に行ってほしい気持ちが消えません。ありのままの息子を認めなくてはと思いつつ、他の子と比較してしまう自分にもがっかりしています。この悶々とした気持ちはどうにかならないものでしょうか。
ふうちゃんさんの息子さんは、中学入学からわずか半月で不登校になりました。きっかけは、入ろうと思っていた部活の顧問でもある担任の先生から理不尽に怒鳴られたこと。先生は後日直接謝ってくれたものの、息子さんの気持ちは変わらなかったそうです。
現在は自宅でパソコンを使い、YouTuberとしての配信活動に取り組んでいます。一人で外出もでき、友達とも遊べていて、昼夜逆転にもなっていないとのこと。それでも、ふうちゃんさんの中では「学校に行ってほしい」という気持ちが消えず、悶々とした日々を過ごしていると語っています。
たった一人の先生が「学校=怖い場所」に変えてしまう
中里さんが指摘したのは、「入学してたった半月」という時間の短さがもたらす影響の大きさでした。半月では学校のことをほとんど知らない状態です。そんな中で怒鳴られる経験をすれば、その先生だけでなく「学校そのもの」が怖い場所として記憶に刻まれてしまう可能性があります。
半月でこの先生めっちゃ怒るじゃん、怖い……ってなってると、他の先生のことは全然知らない可能性がある。もうその先生イコールこの学校ってなったと思うので
桜林さんも「きっと先生は"最初が肝心"と思ってわざと厳しくしたのかもしれないけど、たった一回でこうなることもある」と共感を示しました。中里さんによれば、こうした指導スタイルは都市部では減ってきている傾向があるものの、地域によってはまだ見られるそうです。
また、2年生で担任が変われば行けるのではという期待について、息子さん自身は「うーん」という鈍い反応だったとのこと。中里さんは「中学に半月しか通っていないので、クラスの人間関係はほぼゼロ。自分がいないまま関係が出来上がっている中に戻るのはかなり大変」と、その難しさを丁寧に説明しました。
「元気な不登校」という見立て
ふうちゃんさんの息子さんの状態について、中里さんは「割と元気な不登校かもしれない」という見立てを示しました。
その根拠として挙げたのが、一人で外出ができること、数少ないながらも友達と遊べていること、そして昼夜逆転になっていないことです。不登校の初期には外出できない、友達と会えない、昼夜逆転になるといった状態に陥る子が多いため、それらがない点は前向きな材料と言えそうです。
・外出できない
・友達と会えない
・昼夜逆転になる
・うつっぽくなる
・一人で外出できる
・友達とも遊べている
・昼夜逆転なし
・YouTuber活動に意欲的
一方で桜林さんは、学校に行っていないことへの罪悪感から「意味のあることをやっている自分でいたい」という動機でパソコンに向かっている可能性もあるのでは、というふうちゃんさんの観察にも注目しました。息子さん自身は「楽しくやっている」と言っているけれど、親としてはその言葉をそのまま受け取っていいのか迷う──そんな揺れが伝わってきます。
子どもの「好き」を一緒に学ぶという選択肢
中里さんが提案したのは、息子さんが取り組んでいるYouTuber活動を「親も一緒に学ぶ」というアプローチでした。
YouTuberになろうとすれば、パソコンの仕組み、配信の方法、動画制作の技術、どんな動画が伸びるかのリサーチなど、学ぶべきことは多岐にわたります。そこに親も関心を持って一緒に考えることで、思春期の子どもと「同じ話題で会話する」きっかけが生まれるというのです。
思春期のお子さんと同じ会話をするのって難易度が高い。でも、子どもが好きなことを親も一緒に考えることで、初めて同じ会話ができるようになるんですよね
桜林さんも「学校に行かないこと」と「すべてを手放すこと」はイコールではないと強調しました。学校には行かなくても、じゃあ何をするのかという部分を子どもと一緒に考えることが大切だという意見です。
勉強については、学校に行っていない子は勉強もセットでやっていないケースが多いと中里さんは経験から語ります。学校に行かない代わりに塾に通っている子は「たまにいるが、滅多にはいない」とのこと。ただ、だからこそ「何ならできそうか」「何ならいけそうか」を探っていくことが重要になってきます。
将来の話はいつ・どう切り出すか
桜林さんが「学校に行ってほしいという気持ちを子どもに言わない方がいいんだよね」と確認すると、中里さんは「言わない方がいい」と明確に答えました。
その根拠として紹介したのが、BranchのメンターBranchでは、不登校や発達障害の経験を持つ大学生などが「メンター」として子どもたちの活動をサポートしています。で、小学5年生から中学3年間まるまる不登校だった方へのインタビューです。その方が語った言葉は印象的でした。
子ども自身が将来のことを常に考えているからこそ、親や先生から「そろそろ学校に……」と言われるとプレッシャーになってしまう。中里さんの経験では、不登校の子が将来の話を真剣に親に相談し始めるのは、多くの場合高校受験のタイミングだそうです。
では、いつならその話をしていいのか。中里さんが示した目安は次のようなものでした。
実際にふうちゃんさんは、学校側が「2年生になったら来るよね」と言っているのを息子さんが嫌がったため、学校にやめてほしいと伝えたそうです。これは息子さんの気持ちをしっかり代弁した対応と言えるかもしれません。
親の悶々は一人で抱えなくていい
「この悶々とした気持ちはどうにかならないものか」というふうちゃんさんの問いに対して、中里さんは正直に「ゼロにはならないと思います」と答えました。
しかし、その上で強調したのが「一人で抱えないでほしい」ということです。子どもの人生が学校に行っているかどうかで大きく分岐してしまったのではないか──そんな不安は「とてつもない重圧」であり、一人で耐えられるものではないと中里さんは語ります。
子供一人の人生を変えてしまったんじゃないかっていう不安って、とてつもない重圧なんだと思うんですよね
似た経験がある人、きっとたくさんいるから、どこかでつながってほしいな
中里さんは、Branch不登校や発達障害の子どもたちとその家族向けのコミュニティ。オンラインでの居場所づくりや、同じ境遇の親同士のつながりを提供している。のようなコミュニティで似た経験をしている親御さんとつながることで、「あ、別にそんなに心配しなくてもいいのかな」と感じられるようになることがあると話します。桜林さんも「つながると突然"あるある"になるからね」と後押ししました。
悶々とした気持ちが完全に消えることはないかもしれない。でも、一人で抱え込むよりは、誰かに吐き出すことで楽になれる──それが二人からのメッセージでした。
まとめ
今回は「学校に行ってほしいという気持ちに押しつぶされそうになる」という親の呪いを取り上げました。入学半月で不登校になった息子さんを持つふうちゃんさんの悩みに、中里さんと桜林さんは「その気持ちは自然なもの」と受け止めつつも、いくつかの具体的な視点を示してくれました。
子どもが元気であること自体がまず大切であること。「学校に行かないこと」と「すべてを手放すこと」は違うということ。将来の話は子どもも常に考えているからこそ、慎重に切り出す必要があること。そして何より、親の不安は一人で抱えるものではないということ。
呪いが完全に解けるわけではないけれど、少しだけ荷物を下ろせるきっかけになればと思います。
- 入学直後の怒鳴り体験は「その先生」だけでなく「学校全体」への恐怖に広がりやすい
- 一人で外出でき、友達と遊べて、昼夜逆転もないなら「元気な不登校」の可能性がある
- 子どもの好きなこと(YouTuber活動など)を親も一緒に学ぶことで、思春期の子どもと共通の会話が生まれる
- 将来・進路の話は子ども自身が常に考えているテーマ。切り出すなら中3の春〜夏頃、「一緒に考えたい」という姿勢で慎重に
- 「学校に行ってほしい」という気持ちは自然だが、子どもには直接言わない方がよい
- 親の悶々は一人で抱えず、同じ経験を持つ親同士のつながりの中で吐き出すことが大切

