「良い親」になろうとして習い事を詰め込んだ母親は、何に気づいたのか?
この番組は前回から、エピソードの最初にリスナーの感想のお便りを読み、その後に「呪い」の相談に入る構成を試しています。中里さんは、お便りが2つ続く構成が分かりやすかったかどうかも含めて、感想を送ってほしいと呼びかけました。
今回の感想のお便りは、第6回「習い事で才能を伸ばさなきゃ」の放送を聞いたリスナーから届いたもので、桜林さんが読み上げました。
#6習い事で才能を伸ばさなきゃの放送を聞いて、お便りのお母さんの話が自分と重なり苦しくなりました。私も以前、子供に将来に役に立つことをやらせなければ、良い親になりたいという思いから、娘にたくさんの習い事や塾に通わせていました。様々な育児情報を見すぎて不安でいっぱいだったのだと思います。
今振り返ると、子供の邪魔をしないことがいかに大事だったかと痛感しています。当時は本人が乗り気でない中学受験までさせてしまい、余計なことばかりさせてしまったという後悔でいっぱいです。中学生になった今も、娘は当時の嫌だった気持ちを話してくれます。その度に胸が締め付けられますが、しっかりと受け止めています。
結局、公立中学に進学した娘ですが、今はアニメや漫画に夢中で、やりたいことがたくさんあり、将来の夢に向けて自分で頑張っている最中です。呪いにがんじがらめになって不必要に苦しくなっていたのは私だけ。そして、それに子供を巻き込んでしまったことは本当に悲劇でした。(もっと早く聞きたかったです。)
このお便りの母親について、中里さんは、呪いがかかっていたものの時間が経って呪いが解け、娘さんもいい方向に動いたということだろうと受け止めました。
桜林さんが特に良かったと話したのは、娘さんが「塾が嫌だった」「受験が嫌だった」と母親に言えている点です。中里さんも、親子の会話がちゃんと始まったのだろうと応じ、会話が始まらないまま終わってしまう家庭も結構あると付け加えました。
桜林さんは、こうした経験が「あるある」として共有されることについて、困った話がたくさんあるのは嫌かもしれないけれど、自分だけじゃないと思えることはいいことだと話しています。
休日に友達と遊ばない中学1年の息子、母親は何が心配なのか?
今回取り上げる呪いは「子どもに友達がいないのでは?人間関係がうまく構築できないのでは?」というものです。中学1年生の息子を持つ母親から、匿名で届いた相談を桜林さんが読み上げました。
息子は中学1年生の男子です。持病があり、小学生の時はそのせいもあり欠席が多い時期があったり、不安が強い傾向があって、小学校はカウンセラーと相談しながらなんとか登校できていました。それでも仲良しのお友達ができたり、お休みの時に友達が遊びに来たりして楽しい時間もあったと思います。
中学で一番仲良しの友達と学校が違い、他のお友達ともクラスが違って最初は通いづらい日々でした。でも新しいクラスの仲良くできる子ができて、その子たちと部活も一緒なので楽しかったり、また大変さを分かち合えるお友達ができたのかなとホッとしていました。
が、休日や放課後はお友達と約束することなくずっと家にいます。最初は平日忙しいのでそれが本人にとっていいのだろうと思っていました。しかし、小学校の時に仲の良かった子がLINEで毎週末遊びに行っている写真や、友達との写真を送ってきたりするようです。寂しく思っているようです。
実は寝るときにいまだに私と手をつなぎたがります。中学1年で母親と手をつなぎたがるのは幼いのかなと不安に思っています。そういうのも、お友達ともっと楽しい時間が増えることで解消されるのではないかと勝手に思っています。きっと息子はこれを聞けば僕の勝手でしょと思うかもしれませんが、この私の友達がいた方がいい、また多い方がいいという呪いを解いてもらいたいです。
相談者の母親の心配は、休日に友達と遊ばないこと、小学校時代の友達との写真を見て寂しそうなこと、寝るときに手をつなぎたがる幼さ、の3つが重なったものとして書かれています。
相談文のどこまでが事実で、どこからが想像なのか?
相談文を受けて中里さんがまず気にしたのは、小学校時代の友達との関係です。引っ越したわけでもないなら、なぜその友達と実際に遊びに行かないのか、とはいえLINEが来るくらいにはつながっている、と二人で状況を確かめ合いました。
桜林さんが相談文を読んで気になったのは、書かれている内容の多くが想像だという点でした。はっきりした事実は「息子が休日に家にいる」ことと「小学校の友達からLINEが来ている」ことくらいだと桜林さんは指摘します。
たとえば「寂しく思っているようです」という一文も、息子本人が寂しいと言ったのかどうかは文面からはわかりません。休日に家にいるのも、家にいたくているのか、遊ぶ相手がいないと言っているのか、判断できないと桜林さんは話しています。
桜林さんが整理した、相談文の中身の分け方は次のとおりです。
休日や放課後は家にいる。小学校時代の友達からLINEで写真が届く。部活も一緒の友達がいる
息子は寂しく思っているようだ。大変さを分かち合える友達ができたのかな。休日に遊ぶほど仲がいい子がいないのかな
そのうえで桜林さんは、息子がどう感じ、どうしたいのかはまったくわからず、確かなのは母親が心配しているということだとまとめました。
中里さんは、中学1年生は小学校から上がったばかりで、まだ人間関係を作っている途中の時期かもしれないと付け加えます。
桜林さんは、小学校時代に登校が難しかった頃から同じ心配がずっと続いてきたのではないかと推測しつつ、何年も経って中学1年生になった今、息子はもう心配すべき存在ではないのかもしれないと話しました。
中里さんも、小学校で欠席が多くカウンセラーに相談していた時期があったため、母親にとって息子は「心配する対象」であり続けていると読み解きます。その感覚の上に「休日に遊ぶ友達はできていないらしい」という現実が積まれている、という見立てです。
中学1年生の友達関係に、親はどこまで踏み込んでいいのか?
桜林さんは自身が中学1年生だった頃を振り返り、親に友達のことを把握してほしくなかったかもしれないと話しました。誰と遊んでいても遊んでいなくても、親が全部知っているのは嫌かもしれない、という感覚です。中里さんも、自分も完全にそうだったと同意しています。
中里さんは、息子が寝るときに手をつないでくる甘えん坊なところがあるからこそ、母親は全部を見守ったほうがいいのではないか、まだ子どもなのではないかと感じるのだろうと推し量りました。
手をつなぐことについて、桜林さんは「でもいいじゃん、別に。今だけよ」と肯定し、中里さんも、いっぱいつないでおいた方がいいと笑って応じています。
一方で桜林さんは、自分の思う中学1年生像や男の子同士の友達関係とずれているから不安になるのは、お子さん本人が不在の状態に感じると指摘しました。
中里さんは、本当は息子に普通に聞いてみたほうがいいが、母親は聞くのが怖いのだろうと考えます。桜林さんが、中1なら「ほっといてよ」となるだろうと言うと、中里さんは、そう言われたらほっといた方がいいし、母親はまさにその「ほっといて」が怖いのではないかと返しました。
中里さんは、この相談を親離れ子離れの話だと捉えています。Branch ── 中里さんが代表を務める、不登校や発達障害の子どもがいる家庭を支援する事業。子どもの居場所づくりなどを行っていますの保護者の話を聞いていても、子どもが先に親離れすることが圧倒的に多く、親が子離れするのには時間がかかるパターンが多いといいます。
桜林さんは、まず「もう踏み込んじゃいけないんだ」と気づくことが先だと話します。もう小さい子じゃないと受け止め、子どもの自立の妨げにならないよう、苦しくてもほっておくことが必要なのだろうという考えです。
聞き方についても二人は具体的に考えました。「友達いるの?」は聞きづらく、「休日何してんの?」も家にいるのだから変だと迷った末、桜林さんは「休日はお友達と遊んだりしないの?」と聞くくらいがよく、「別にしないよ」と言われたらほっておけばいいと提案しています。
中里さんはこの聞き方から、休日に一人でハマっている遊びがある、あるいはオンライン上に友達がいる、といった可能性もあると気づきました。相談文にはそうした話はなく、あくまで仮説だと断ったうえでの指摘です。桜林さんも、母親の想像どおり平日が忙しいから休日は一人でゆっくりしたいだけかもしれないと付け加えました。
「この心配、どこに持っていけばいいの?」思春期に急に来る子離れ
中里さんによると、子どもからの「ほっといて」は思春期に急に来るため、親も戸惑ってしまうといいます。これまであれもこれもして、心配もしてきたのに、急にほっておくことなどできない、という戸惑いです。
桜林さんは、母親の不安が強かった小学校時代の事情は理解しつつ、子どもは心配すべき対象だという感覚をあまり引きずらない方がいいと話します。心配を正当化しすぎると、子どもは自立できない、親がいないとダメな存在だと言っていることになってしまうからです。
二人は「暇になっちゃう」「私のこの心配、どこに行けばいいの?」と親側の気持ちを代弁しながらも、桜林さんは、心配が自分の仕事みたいにならない方がいいと釘を刺しました。
中里さんは、中学1年生は親が目線を切り替えるのに本当にいいタイミングだと話します。子どもの親離れが始まったときこそ、十数年ぶりに母親自身の趣味を思いきり楽しんでいい時期だという考えです。
桜林さんも、ただほっておくのは難しいけれど、自分が全然違うことをしていれば結果的にほっておけると応じました。親の意識の向け先をどう移すかを、二人の話から整理すると次のようになります。
子どもを心配する対象として見続け、友達関係まで把握しようとする
「ほっといて」を受け入れ、自分の趣味や時間に目を向けることで結果的に見守る
さらに桜林さんは、中学1年生はそもそもヘトヘトだと話します。環境が変わり、部活も勉強もテストも始まり、一つ上の学年とも急に先輩後輩の関係になって敬語を使うようになる時期です。中里さんも、点数を見せ合う競争環境にさらされている学校もあるかもしれないと加え、息子さんは友達どころではないのかもしれないと二人は話しました。
ほっておくのが怖い親にできることは、相談の窓口を開けておくこと
中里さんは、完全に突き放すのが怖いのであれば、「何かあったら相談に乗るから、いつでもママに言ってね」と一言伝えておくのはいいかもしれないと提案しました。桜林さんも、それしかないと同意しています。
中里さんの見立てでは、寝るときに手をつないでくるくらいだから、息子は母親に安心感を持っていて、相談できる関係はすでにできているはずです。いじめや友達とうまくいかないといったことが実際にあった場合に相談してもらえるよう、ルートだけ作っておけばよく、そうなったら「お母さん出動」だと話します。
桜林さんは、相談の窓口さえ開いていれば大丈夫だと応じ、自身の子育ても例に挙げました。桜林さん自身が親に干渉されたり友達のことを把握されたりするのが嫌だった反動で、娘さんにも学校の出来事をあまり聞かなかったといいます。
それでも興味がないと思われたくないので、桜林さんは「どうだった?」と一言だけ聞き、「大丈夫」と言われたら大丈夫なのだと受け取っていたそうです。大丈夫でないときは、娘さんのほうから「今日さあ」と嫌だったことを話してくれたといいます。
桜林さんは、興味はあるよ、あなたのことを見ているよと伝えるだけで十分で、あまり知ろうとしなくていいと話しています。
中里さんは、今回の親子には当てはまらないだろうと断ったうえで、子どもが大人への信頼を失って相談してくれなさそうな気配がある場合の方法も紹介しました。いきなり「相談して」と言っても話してくれることはなかなかないので、子どもがしている遊びを一緒にするなど、同じ行動をとっていると、そのうちにぽろぽろと話してくれるようになるといいます。
最後に中里さんは、この回の結論を整理しました。相談文の事実がまだはっきりしていないので、まずは休日のことを軽く聞き、返ってきた答えに応じて母親の心配をいったん閉じる、という流れです。
次回は「私の中の普通から外れた言動や行動をした時に叱ってしまう」という呪いを取り上げると予告されました。
まとめ
子どもに友達がいないのではという心配は、相談文を読み直すと多くが母親の想像でできていました。中里さんと桜林さんは、中学1年生という時期を親離れ子離れの入り口と捉え、軽く聞いて答えを受け止め、相談の窓口だけ開けて、親は自分の時間に目を向けることを勧めています。
- 心配の中身を「事実」と「想像」に分けると、確かなのは親が心配していることだけだと見えてくる
- 中学1年生は親に友達関係を把握されたくない年頃で、環境の変化でヘトヘトな時期でもある
- 「休日はお友達と遊んだりしないの?」と軽く聞き、「ほっといて」なら心配をいったん閉じる
- 「何かあったら言ってね」と相談の窓口を開けておけば、ほっておいても大丈夫
- 子離れのタイミングは、親が十数年ぶりに自分の趣味を楽しむ時間にしてよい





