不登校や発達障害のお子さんを抱えるご家庭を支援するBranch「好き」を軸に、不登校や発達障害の子どもたちが安心して過ごせる居場所や教育を届けるサービス。代表の中里 祐次株式会社Branch代表。1000家族以上の相談に乗ってきた専門家。さんと、「雑談の人」対話を通じて思考を整理する「サクちゃん聞いて」を主宰。として活躍する桜林 直子コラムニスト、雑談サービス主宰。ジェーン・スーさんとのポッドキャスト『となりの雑談』でも知られる。さん。二人が親を縛る「べき思考」という名の「のろい」を解きほぐしていきます。
今回は、小学校の先生であり4歳児の父でもあるリスナーから届いた、「環境を変えるべきだから、怒ることは違うと自分を縛ってしまう」という切実な悩み。専門知識があるからこそ陥るジレンマと、子どもとの誠実な向き合い方について、深く、そして優しく語り合います。その内容をまとめます。
信頼される人の「おすすめ」と「佇まい」
番組の冒頭は、桜林さんの「おすすめ上手」なエピソードから始まりました。最近、桜林さんの周りでは、愛用しているスニーカーが「お揃い」になる現象が起きているそうです。
私が履いてるHOKAホカ(旧ホカ オネオネ)。高いクッション性で知られるフランス発のスニーカーブランド。の靴、全く同じやつを周りに4人も履いてる人がいて。旅行で2万歩歩いても足が痛くないよって言ったら、みんなすぐに買ってきたの(笑)
すごい信頼度ですね。さきちゃんが選んだものなら間違いないっていう安心感があるんだろうな。
中里さんは、そんな桜林さんの「信頼される佇まい」に注目します。かつては道を聞かれることが全くなかったという中里さんですが、Branchの活動を始めてから、頻繁に道を聞かれるようになったのだとか。人は、その人の内面や活動が表情や雰囲気に滲み出るものなのかもしれません。
昔:道を聞かれることが全くなかった。表情が硬かった?
現在:よく道を聞かれる。活動を通じて「佇まい」が柔らかくなった。
【お便り】「怒るのは違う」という正しさに縛られて
今回のお便りは、教育現場と家庭の両方で悩むお父さんから寄せられました。
4歳の息子の父であり、小学校教諭です。私は特別支援教育を学んできたため、「環境や自分の接し方を変化させるべきで、怒ることは違う」という考えに縛られています。妻が感情的に怒るのを見て、自分も同じように怒るべきか悩みます。また、学校では優しいとなめてくる児童もいて、自分の立ち位置に自信が持てません。
中里さんは、この「呪い」に深く共感します。というのも、中里さん自身も「環境を整えることで解決すべき」という専門的な視点を持っているからこそ、無意識に自分へ「怒ってはいけない」という制限を課していたことに気づいたからです。
「ダメなものはダメ!」と感情をぶつける。伝わりにくいが、大人の本音ではある。
特別支援教育個々のニーズに合わせ、環境調整や適切な指導を行う教育。怒りによるコントロールを避ける傾向がある。の考え。正しいが、大人が自分を縛りすぎる原因にも。
感情を「消す」のではなく「一旦預かる」
パートナーや職場のスタッフが感情的に怒っているとき、どう向き合うべきか。中里さんは、周りの人にまで「怒るな」と強要することは慎重になるべきだと語ります。
相手の感情を『消せ』と強制すると、いいことはないんです。僕がスタッフと接するときは、『モヤモヤしたら一旦僕に言ってほしい』と伝えています。子どもに直接ぶつける前に、大人同士で感情を共有する場所を作るんです。
大人だって人間ですから、イライラするのは自然なことです。それを「正しい教育」のために無理やり押し殺すのではなく、一旦誰かが預かる。そうすることで、子どもの前では一貫した態度を保ちつつ、大人の心も守ることができるのかもしれません。
現場でのイライラ・モヤモヤ
(感情の発生)
信頼できるパートナーや同僚に吐き出す
(感情を預ける)
子どもには冷静な態度で接する
(一貫した対応)
「怒る」以外で大人をなめさせない方法
相談の中にあった「優しいとなめられる」という問題。これに対し、桜林さんは「怒鳴ること以外でも、大人をなめるなという表明はできる」と持論を展開します。娘さんが小学生の頃、トラブルを起こしていた男の子たちと対峙した際のエピソードが印象的です。
私は怒鳴ったりはしないけど、『私はこう考えているけれど、あなたはどう思いますか?』って、対等な大人と話すような口調で接したの。そうすると、子どもも『あ、この人には逃げやごまかしが効かないんだ』って察して、ちゃんと話し始めてくれたことがあって。
大人をなめるなという表明は、怒ることだけで黙らせるんじゃなくて、対等に向き合うことでもできる。
一方、中里さんは「1対1ならなめられてもいい」というユニークな視点を持ちます。例えばマインクラフト世界中で人気のサンドボックスビデオゲーム。子どもたちの学習教材としても注目されている。のMODModificationの略。ゲームの内容を改変したり拡張したりするためのユーザー制作データ。については、子どもの方が圧倒的に詳しい。そこでは子どもが「先生」であり、大人が教わる立場になる。そんな関係性も、信頼を築く一つの形なのです。
答えが出ない問いに「揺れ続ける」誠実さ
最後に二人が強調したのは、ロマネさんの「悩み続けている姿勢」そのものの素晴らしさです。「自分の立ち位置はこれでいいのか」と自問自答し、自己嫌悪に陥ることさえ、実は子どもに対して誠実である証拠なのです。
『これでいいんだ』ってゴールを決めて固まってしまうより、ずっと揺れていてほしい。疑問を持ちながらやってくれる先生って、すごく信頼できると思います。
時代によって正解は変わりますからね。頑固にならずに学びながら変遷していく態度は、本当に誠実ですよね。その弱みや悩みを、ぜひ奥様や同僚にもライトに吐き出してみてほしいです。
というわけで
専門的な知識が、時に自分を縛る「のろい」になってしまうことがあります。「環境を変えるべきだから怒ってはいけない」という正しさは、裏を返せばそれだけ子どもを大切に思っている証拠でもあります。
大切なのは、その正しさで自分を追い詰めるのではなく、揺れ動く自分を認め、誰かと共有すること。そうすることで、ふっと肩の力が抜け、子どもとの新しい距離感が見つかるのかもしれません。ロマネさんの誠実さが、いつか子どもたちとの深い信頼に繋がることを願っています。
- 「怒るべきではない」という知識が自分を縛る「のろい」になることもある
- 大人の感情は消すのではなく、一旦誰かに「預ける」ことで一貫性を保つ
- 大人をなめさせない方法は「怒ること」以外に「対等に向き合うこと」でも可能
- 答えの出ない問いに悩み、揺れ続ける姿勢こそが誠実さの証である

