子育ての孤独と「しょうがなさ」──余裕をつくることから始める、親のセルフケア
Branch代表の中里祐次さんと「雑談の人」桜林直子さんがお届けする『親の「のろい」をとくラジオ』第10回は、テーマもお便りもない雑談回。番組の好調な船出の報告から始まり、子育てにつきまとう「孤独」と「決断の重さ」、そして余裕をどうつくるかという話へ自然に展開していきます。その内容をまとめます。
番組の好調な船出
今回はテーマもお便りもない「ノーテーマ」の雑談回。まずは番組のスタート直後の反響が語られました。リリース翌日に告知を出したところ、翌朝にはApple Podcastのキッズ・ファミリーカテゴリーおよび子育てカテゴリーでランキング入りを果たしたとのこと。
告知したその日にもうランキング入りしてて、え、すごいなって
タイトルの強さもあるよね。まず聞いてみようってなるんじゃない?
中里さんは「さくちゃん様様」と謙遜しますが、桜林さんは「親の"のろい"」というタイトルのインパクトが大きかったのではと分析。「何が始まったんだ」という好奇心がリスナーを引きつけた面もありそうです。
子育ての孤独と「決断の重さ」
番組を始めてからの変化を聞かれた中里さんが、最近深く考えさせられたエピソードを打ち明けます。Branchの保護者面談で聞いた、ある一言がきっかけでした。
「結局最後は家庭で決めなきゃいけないのが孤独なんです」って言われて、深く考えさせられてしまって
番組の初回では「いろんな知見を集めて提案し、最終的にはご自身で決めていく必要がありますよね」と話していました。しかし、その「自分で決める」こと自体が親にとっては重い。子どもの人生を変えてしまうかもしれないという責任が、決断をさらに孤独なものにしています。
桜林さん自身もシングルマザーとして、「残念ながらあなたの親は私で、一人しかいないから諦めて」と早い段階で娘に宣言していたそうです。それでも影響を与え続けてしまう怖さからは逃れられない。だからこそ、「しょうがないか」と受け入れる力──桜林さんの言う「しょうがねえか力」が大事になってくるといいます。
ないものねだりはキリがないから、あるものをどう生かすか。これしかないんだからしょうがないみたいな感じ
極論を言えば、どこかの国の王族に産んであげられたら選択肢は無限に広がったかもしれない。でもそんなことを言い出せばキリがない。今持っているものの中でベストを尽くす──その割り切りが、子育ての孤独と向き合ううえで一つの支えになるのかもしれません。
背中を見せるという子育て
桜林さんは、子育て中に自分自身を大きく変えた経験を語ります。30歳頃、娘が7歳くらいの時に「このままだとやばい」と限界を感じたそうです。
「好きなこと見つけてほしい」「のびのび育ってほしい」という願いはあった。でも、自分自身が我慢し、犠牲を払いながら子どもに「楽しくしてね」と言うのは無理がある。そう気づいた桜林さんは、自分がまず「のびのびする」ことを決断しました。
子どもに「自由にしなさい」と言いながら、自分は我慢と犠牲の日々。言っていることとやっていることのギャップに限界を感じる
会社を辞め、自分でクッキー屋を開業。夏休みは1ヶ月仕事を休むなど、「のびのびする背中」を見せる子育てに転換
娘さんは自宅近くに突然クッキー屋ができたことに驚いて「お店って勝手に作っていいの?」と聞いてきたそうです。「いいんだよ」と答えた桜林さん。その体験は娘にとって「大人ってそんなことしてもいいんだ」という選択肢の拡張になったと振り返ります。
毎日学校の先生みたいな働き方じゃない人生もあっていいんだとか、いろいろ選択肢が増えたタイミングかもしれないね
自由に育つことの「プラスマイナス」
ただし、桜林さんは正直にプラスマイナスの両面も語ります。のびのびと育った娘さん(現在23歳)は、今を楽しむことに長けている一方で、将来のことを考えたりお金の感覚を身につけたりすることはまだ苦手だそうです。初めてのお給料をもらって「こんなにもらっちゃった」と喜ぶ娘に、「自分で生活するにはそれじゃ足りないんだよ」と伝える場面もあったとか。
子育てには何パターンもの「こうすればこうなったかも」がありますが、実際に選べるのは一つだけ。その中で「うちはこうだった」と受け入れるしかない。ここにも「しょうがなさ」が顔を出します。
三〜四世代で「呪い」を捉え直す
話は視野の広げ方へと移ります。中里さんが夏に戦争関連の本を読んだ際、17歳の学生が「国のために」と日誌に書いていることに衝撃を受けたそうです。環境によって、子どもの考え方がこれほど変わるのかと。
桜林さんはここで、自分がよく人に話すという「四世代で見る」視点を紹介します。
三世代さかのぼれば、どうしても戦争の世代にぶつかる。おばあちゃんたちの代で当たり前だった価値観が、そのまま今の自分に引き継がれていることに気づくと、「私のせい」「親のせい」ではなく、「もっと大きなものの影響だったんだ」と見えてくる。誰も悪くないけれど、古いかもしれない──そう捉え直すだけで、手放せるものがあると桜林さんは言います。
中里さんも同意しつつ、縦軸(世代)だけでなく横軸(海外の考え方や地域差)で見てみることの大切さを加えます。「今だけじゃん」「日本だけじゃん」「なんなら東京だけじゃん」──そう気づくと、悩みが少しバカらしく見えてくる。その「バカらしくなる」感覚が、呪いを解くコツの一つかもしれません。
余裕のなさが、すべてを止める
視野を広げるには「勉強」──といっても国語算数理科社会ではなく、知らないことを調べたいと思う気持ち、つまり好奇心と学習意欲が大切だという話に展開します。中里さんは不登校の子を持つ親から「家でも勉強しなくて心配」という相談を受けることがあるそうですが、大事なのは「勉強させること」より「学習意欲をなくさないようにすること」だと語ります。
ここで桜林さんが、自分自身の子ども時代を振り返ります。好奇心が湧かなかったのは、余裕がなかったから。自分の身を守ることに精一杯で、何かに興味を持つキャパシティがなかった。
一番最初の時に言ったように、すべての問題は余裕のなさ。それは親だけじゃなくて、子どももまたそう
余裕がないと、新しいものが入ってこない。いろんなことが止まってしまう。これは子どもだけでなく、親にも共通する構造です。中里さんも、お便りを読んでいて感じるのは、子どもの余裕のなさよりも先に親御さんの余裕のなさが来ているケースが多いということでした。
課題を分解して「今やること」だけに集中する
では、余裕はどうやってつくるのか。桜林さんは「余裕を作ることを目的にした方がいい」と提案します。
桜林さん自身の体験では、シングルマザーとして時間もお金も足りない中、よそのご家庭と比較して「全負け」だと感じていたといいます。しかし、そこで「余裕がないです」とまず認め、「一人分の時間しかないなら、この中で何ならできるんだっけ」とシンプルに考えることに集中したそうです。
中里さんも、ビジネスの場でよく言われる「課題を分解する」ことの大切さを加えます。問題が大きな塊のままだと「丸ごとできない」となって苦しくなる。細かく分けて、「これはやめよう」「これだけはやっておこう」と判断できるようにすると、動き出しやすくなります。
悩みって悩みを連れてくる。本当は1個の問題なのに、すごいいっぱい問題があるみたいに思っちゃう
中里さんは保護者面談で、25分間一息で話し続ける方に出会うことがあるそうです。そこに含まれる15個ほどの課題を整理し、「この中でどこから手をつけるといいか」を一緒に考えるのが自分の役割だと話します。桜林さんも「ぐちゃぐちゃのまま出した方がいい。整理できてる時点で大丈夫」と励まします。
最後に中里さんからリスナーへのメッセージ。お便りを送って何かを決断した後に、また新たな困り事が生まれたなら、それもまた送ってほしい。一回で終わりではなく、長く付き合っていくスタンスでいるとのことでした。
まとめ
テーマなしの雑談回でしたが、子育てにつきまとう孤独、決断の重さ、そして余裕の大切さという、この番組の根幹にある問いに自然とたどり着く回になりました。「しょうがないか」と思えること、三〜四世代の長い目で見ること、まず減らして余白をつくること。どれも即効薬ではないけれど、少しだけ肩の力が抜ける考え方ではないでしょうか。次回は「育児の手を抜いてはいけないという呪い」について掘り下げるとのこと。お便りは整理されていなくても、ぐちゃぐちゃのままでも大歓迎だそうです。
- 子育ては最終的に家庭で決めなければならず、その「決断の孤独」と「子どもへの影響の怖さ」は避けられない
- 完璧を求めず「しょうがないか」と受け入れる力=「しょうがねえか力」が、孤独と向き合ううえで支えになる
- 子どもに「自由にしなさい」と言うなら、まず親自身がのびのびする姿を見せることが説得力になる
- 悩みを三〜四世代で見たり、海外や他の地域と比較したりすると、「自分だけの問題」ではないと気づける
- すべての問題の根底にあるのは「余裕のなさ」。まず減らす→余白をつくる→それから足す、の順番が大事
- 大きな悩みは課題を細かく分解して、「今やること」だけに集中すると動き出しやすくなる

