親世代の「こうあるべき」は何を残したのか
この番組は、子育ての「べき思考」を毎回1つずつ取り上げ、親の心が少し楽になる時間を届けるというものです。第5回の冒頭で、中里さんと桜林さんは前回のテーマ「ちゃんとした親にならなければいけない」という呪いを振り返りました。
中里さんは、「ちゃんとした親でなければならない」という考えは、自分たちより上の世代のほうが強そうだと話します。桜林さんもそれに同意し、今の子育てにはその名残があると受け止めています。
私たちの親の世代って、親はこうあるべき、母親はこうあるべき、父親はこうあるべきがありすぎて、それに頑張ってはまろうとした(んだと思う)。
はまれなかった部分とかが、しわ寄せで来ている気がしてて。
桜林さんの母親は、働きながら子どもを育てていました。桜林さんは、当時は「働くのはいいけど、ちゃんとしなきゃ」という圧力が強く、無理なことをやろうとしてできないイライラが子どもに向いていたのではないかと振り返ります。
今の桜林さんは、それが社会の仕組みなどのしわ寄せだったとわかるので、親をそれほど恨んではいないといいます。ただ影響は出ていたとして、こうあるべきが強いと、あまりいいことは起こらないと学んだと話しています。
放置されて育った中里さんの家庭は何をもたらしたか
中里さんは自分の家庭の話もしています。父親が16年ほど働いておらず、母親が仕事も家事もこなしていたため、忙しさから中里さんはほとんど放置されて育ったそうです。
その結果、中里さんは何でも自分で選ぶようになり、大学進学も就職も起業も親に相談しなかったといいます。中里さんは、自己決定力が勝手についたのは家庭の影響だろうと話しています。
これに対して桜林さんは、親の関わり方がどう出るかは子どもとの組み合わせ次第だと指摘します。
ほっとかれても自分で決められたし、なんならラッキーって言って遊ぶみたいなこととかもできた子と、ほっとかれて鬱々とどんどん陰になっちゃう子もいるかもしれないから。
子によるっていうか、同じ親でも兄弟で全然違ったりするから。
中里さんも、学校や社会に出たときの環境で変わるものだと応じます。中里さん自身はたまたま環境が良かっただけで、違えば悪い道に進んでも親が気づかなかったかもしれない、と話しています。
放っておかれても自分で選び、ラッキーと遊べる。中里さんは自己決定力がついたと振り返る
放っておかれて鬱々とし、どんどん陰になってしまう可能性もある
「勉強させなきゃ」はどこから来る焦りなのか
後半の本題は、親として子どもにちゃんと勉強させなければいけない、という呪いです。中里さんが、リスナーからのお便りを読み上げました。
いつも楽しく拝聴しています。うちの子はどうしても勉強に集中できず、すぐに遊びたがってしまいます。周りのママ友は子供の教育に熱心で、毎日ドリルをさせたり、塾に通わせたりしていると聞くと焦りが止まりません。このまま勉強させないままだと将来が不安で仕方ありません。親として子供に勉強させなきゃという呪いから、どうすれば解放されるのでしょうか。
桜林さんは、この相談に大きく頷く人は多いだろうと受け止めます。子どもが学校でやることの多くが勉強なので、やらないよりやったほうがいいと思ってしまうのは自然だといいます。
中里さんは、お便りに出てきた「周りのママ友」の存在に注目します。周りがやっているからうちもやったほうがいい、という比較が焦りを強めているという見方で、桜林さんも「比較だね」と応じました。
やればできるのにやらなかった理由は何か
桜林さんは中里さんに、子どもの頃に勉強が得意だったかを尋ねます。中里さんは得意だったと答え、桜林さんは、得意な子にとって勉強は苦ではないと話します。
一方で桜林さん自身は、勉強が得意でも好きでもなく、それでもある程度はできてしまう子どもでした。そのため大人からは「やればできるのにサボっている」と言われるタイプだったそうです。
多分本当にやったらできるんだよね。だけどやる意味がわかんないからやれない。動機がないっていうか。
桜林さんが初めて勉強を楽しいと思えたのは、30代後半になってからでした。それまでは、何かをやりたいと思ってもどうせダメだと、自分で気持ちに蓋をしていたといいます。
その蓋に気づいて「やりたい」を出せるようになると、好奇心や興味も同時に湧いてきて、もっと知りたい、もっと本を読みたいと思えるようになったそうです。桜林さんは、子どもの頃に勉強しなかったのは、興味や好奇心が湧いていなかったからだと考えています。
やりたいことに蓋をしていて、勉強の意味がわからず、やればできるのにやらなかった
30代後半に蓋に気づき、好奇心が湧いて「もっと知りたい」と勉強が楽しくなった
点数を上げる勉強は続くのか
中里さんは、学校の勉強は国語や数学、理科といった教科の枠に当てはまるものだと指摘します。目的や動機がないと勉強を始められない桜林さんのようなタイプには、その枠に当てはまらないと難しいといいます。
点数上がって嬉しいみたいなのも、それ単純にそれで頑張れる子もいるじゃん、ゲームみたいに。だけどそれも全然上がらないタイプだから、すごい冷めてて。80点でも90点でも変わんないよみたいな。
中里さんは逆に、点数を上げることにハマって勉強していたタイプでした。けれど中里さんは、その勉強は意味がなかったと振り返り、続かずに今はやっていないと話します。
中里さんによれば、自分の興味関心から動機づけられた分野の勉強は、今も続いているそうです。Branchには小学校低学年のころから同じものが好きで学び続けている子もいて、中里さんは見ていて羨ましいと話しています。
中里さんは子どもの頃ハマったが、続かず今はやっていない
自分の中から動機づけられた分野は、今も続いている
親は「邪魔さえしなければいい」のか
桜林さんの娘も、興味を持つものと持たないものがはっきり分かれていて、興味のないことは全然できない子でした。桜林さんが娘に求めたのは、授業で先生の話だけはちゃんと聞くことだけだったといいます。
桜林さんの娘は、小さい頃から絵本には興味を示さず図鑑ばかり読み、生物が大好きでした。放っておけばずっと絵を描いている子でもあり、桜林さんが邪魔をしなかったことで、好きなものは好きなまま続いたそうです。
桜林さんの娘は最終的に大学の海洋学部に進み、今もイラストの仕事をしながら生物を好きなままでいます。そこから桜林さんは、親は邪魔さえしなきゃいいと感じたと話しています。
桜林さん自身は、興味を持ったものやできて嬉しかったことを否定され続けた感覚があり、興味を育てる経験がなかったといいます。だからこそ娘を羨ましく思い、5教科や7教科を全部できなくてもいいのでは、と感じています。
ただし桜林さんは、何に興味を持つかを知るためには、勉強をまったくやらないとわからないとも付け加えています。
AO入試は「勉強しないと将来が不安」を変えるか
中里さんは「身も蓋もない話」と前置きしたうえで、大学受験でAO ── アドミッション・オフィス入試の略。学力試験だけでなく、志望理由や活動実績、面接などで選考する入試方式で、現在は「総合型選抜」と呼ばれています入試が増え、最終的に教科の勉強が必要なかったという例も増えていると話します。
Branchの子どもたちで大学に進んだ年代はまだいないものの、中里さんはAOで進学できそうな子が割といると感じています。小中学生の頃から見てきた子がAOで入学すれば、好きなことを続けて大学に入れると自信を持って言えるといいます。
(焦りママさんも)多分大学受験できました。その後も自立してご自身で仕事できるようになりましたってなったら、多分最終的な不安とかってなくなると思うんですよ。
中里さんは、好きなことからAO入試を経て仕事までつながったロールモデルがあれば、教科の勉強でなくてもいいと思えるのではないかと考えています。
好きなこと・興味関心
小さい頃からの好きなものを続ける
AO入試
教科の勉強ではなく、好きなことを軸に大学へ進む
仕事・自立
好きなものから仕事まで続けられる
桜林さんも、極論かもしれないとしつつ、勉強することより興味や好奇心が湧くことのほうが大事だと話します。勉強が無駄だとは思わず、できる子や楽しい子はやればいいとも付け加えています。
大学に行かなかった桜林さんはどう考えるのか
桜林さんは大学には進まず、お菓子の専門学校に進んでお菓子の業界に就職しました。大学からいい会社に入ることを良しとする人から見れば、それは失敗や心配の対象に映るかもしれないと桜林さんは話します。
そっから先長いから結構どうとでもなんだみたいな。
桜林さんは、仕事にも就いたうえで、その先は「意味がわかんない展開」になっているといいます。大学に行くことをゴールにすると、その先が長すぎて詰んでしまうので、もう少し長い目で考えたほうがいいのでは、と自分を慰める意味も込めて語っています。
親自身の「小さい頃から続く好き」は何か
中里さんは、親自身が子どもの頃に好きだったものや、今も続いている自分の特性を思い出してみることを勧めます。中里さんは以前、Branchのポッドキャストでも同じ話をしたそうです。
中里さんの場合、小学生の頃から、一人で黙々とやるよりみんなを集めて何かをするのが好きでした。存在しないドッジボール部を勝手に作り、練習メニューを考えて対決していたといいます。
中里さんは、この性質がサイバーエージェントでのプロデューサー職のような仕事や、今の会社経営にもつながっていると感じています。点数を上げる勉強に惑わされて見えなくなった時期もあったものの、その性質は今もいい意味で続いているそうです。
中里さんは、親が自分の中の「続いている好き」を思い出せば、子どもが好きでやっている細かなことも大事にしたほうが人生が豊かになるかもしれない、と思えるのではないかと話しています。
変な大人に会える場所として大学を選ぶ理由は
桜林さんは、大人になってから大学の授業を受けて面白さに驚いた経験を話します。ただし大学生の年齢で同じように面白がって聞けたかはわからず、勉強したいタイミングはいつ来るかわからないといいます。
桜林さんの娘は進学先を考えた時期に、専門学校のほうが楽しそうだと感じていました。桜林さんが調べてみると、専門学校と大学には次のような違いがあったそうです。
幅が狭く、就職目的の内容が中心
一見関係なさそうな授業もあり、先生の種類も人数も多い
いかに変な大人に会えるかだと私は思ってたから、なるべく変ないろんな大人に会える選択肢っていう意味では、私だったら大学に行けるんだったら行って、意味なかったなって思ってもいいから、一回広げるなら今しかないよみたいな。
桜林さんは、両方行けるなら可能性が広がるほうを選び、今閉じなくていいのではと娘に伝えたそうです。桜林さんにとって大学を勧めたのは、勉強そのものより可能性を閉じないためでした。
桜林さんの娘はそれまで受験勉強をほとんどしておらず、面接と論文の入試でギリギリ入学したといいます。桜林さんは、娘が「生物をもっと勉強したい」と言い出してくれたので、その一点で進路の話ができて助かったと振り返っています。
子どもはいつ自分から勉強を始めるのか
中里さんは、呪いの脱却そのものにはならないと断りつつ、Branchで見てきた実際の傾向を紹介します。子どもが自主的に勉強したり、進路を大人に相談したりし始めるのは、早くて中学2年生、中学3年生になると多くの子が真剣に考え出すそうです。
中里さんによれば、そこから急に勉強して私立に進む子もいれば、大学進学の段階でAOを考えて対策する子もいるといいます。だから親も焦らなくていいし、子どもを焦らせすぎなくてもいいのでは、と中里さんは話しています。
桜林さんは、向き不向きややる気になるタイミングは本当にわからないとしたうえで、親の試行錯誤にも理解を示します。やったことがないと興味は持てないので何でもやらせたくなる気持ちも、まったくやらなくなるのは困るという気持ちもわかる、と話しています。
勉強と将来の不安は分けられるのか
中里さんは、前回の「ちゃんとしなきゃ」も、前々回のゲームの話も、今回の勉強も、将来の不安と結びついて大きくなっていることが多いと指摘します。そのうえで、勉強の話と将来の話は別に分けたほうがいいと話します。
だから勉強してないから将来が(どうこう)はちょっとやっぱ飛躍しすぎてるので、ここは分けてもいいんじゃないかな。
桜林さんも、気持ちはとてもわかるけれど、勉強と将来は分けた方が良さそうだと同意しました。
呪いが解けたかという問いに、桜林さんはどうすればよかったかはずっとわからないと思うと答えます。中里さんは、番組は一緒に考えていくスタンスなので、もう一度お便りを送ってもらってもいいと呼びかけ、次回は「習い事で才能を伸ばさなきゃ」という呪いを扱うと予告しました。
まとめ
「勉強させなきゃ」という焦りに対して、中里さんと桜林さんは、勉強そのものを否定せず、子どもの興味や好奇心を邪魔しないことと、勉強と将来の不安を切り分けることを提案しています。
- 「勉強させなきゃ」の焦りには、周りの家庭との比較が大きく関わっている
- 桜林さんは、やればできるのにやらなかった理由を、興味や好奇心が湧いていなかったからだと振り返る
- 親は何かを足すより、子どもの好きなものの邪魔をしないことが結果的に大事だと桜林さんは話す
- AO入試の増加や、中学2〜3年で自分から勉強を始める子の存在から、焦りすぎなくていいと中里さんは考える
- 「勉強していないから将来が不安」は飛躍があり、2つは分けて考えたほうがいい






