冬の朝、布団から出られないのは子どもだけ?
番組の冒頭は、寒い季節の話から始まります。桜林さんは、冬の朝に起きられないのは大人も子どもも同じではないか、と中里さんに問いかけました。
僕は大人になってからは起きれるようになったんだけど、ちっちゃい頃はでも確かに目覚まし何個もつけてたな。
桜林さんは、部屋が寒くて布団から出られないことに加え、体が固まって実際に動きにくいことも理由に挙げます。そのうえで、学校に行きたくない、起きられないといった気持ちに季節が関係するのでは、と考えたそうです。
大人になった桜林さんの工夫は、起きる時間に合わせて部屋を暖めておくことと、好きな朝ごはんを用意しておくことです。
なんか自分で餌で釣るみたいなことを。
桜林さんの家では、桜林さんも娘さんも食いしん坊なので、食べ物で釣る方法は子どもにも有効だったといいます。
中里さんは、Branchの保護者会で生活リズムの作り方を話し合ったときのエピソードを紹介します。不登校の子は朝起きられずに学校へ行かないケースが多く、ある家庭では子どもの部屋だけカーテンをなくし、朝日が直接入るようにしているそうです。
桜林さんは、こうした小さな工夫が気分の波に大きく効くと話します。逆に、小さな嫌なことが重なると起きたくない気持ちにつながりやすいという点で、二人の意見は一致しました。
「1ヶ月を超えて詰んでいる」というお便り
今回の「のろい」は、ラジオネームおはぎさんから届いた「娘の不登校をどのように受け止めたらいいか」というお便りです。桜林さんが読み上げました。
次女小5の不登校が1ヶ月強になり、1ヶ月超えて詰んでいるおはぎです。娘は担任の先生が嫌ということで不登校になり、ぱったり学校に行かない、勉強もしない、塾も行かないと全てを0にして、ゲーム、YouTube、推し活のグッズ集めに全ての時間を費やしています。学校に行かなくても大丈夫と思う反面、行ってくれたら嬉しいという気持ちが捨てられず、近所のお友達に朝一緒に行こうと誘ってもらうようにお願いし、誘ってもらいました。娘は6時半に起こしてと言いつつゲームを始め、2時まで寝ませんでした。明日無理して行かなくてもいいよと言えませんでした。期待を捨てきれず、ダメな親だなと思いながら寝てしまいました。学校に行く選択肢を諦めきれず、フリースクールにもまだ踏み出せていません。娘の不登校をどのように受け止めたらいいのでしょうか。
お便りを読み終えた二人が最初に反応したのは、おはぎさんの「詰んでいる」という言葉でした。
全然詰んでないと思いますけどね。
中里さんは、気持ちが右往左往するのはどの親も同じだとして、「ダメな親」と自分を責めすぎなくてもいいのでは、と伝えています。
原因がわかっているのは、むしろ救い?
桜林さんが注目したのは、おはぎさんの娘さんが「担任の先生が嫌だ」と不登校の理由をはっきり言えている点です。
その相性悪かったことは運悪いけど、原因わかってるってかなり(救われる)。何が嫌で行かないか分かってんだもんね。
中里さんによると、小学1〜2年生など年齢の低い子は理由を言えないことも多く、親は何をすればいいかわからなくなりがちです。理由がわかっていれば、学校と話し合う道が開けます。
具体的には、クラスを変えてもらうよう交渉する方法があります。長丁場にはなりますが、3月までは耐えて、4月のクラス替えで確実に変えてもらえるよう、3〜4ヶ月かけて学校と交渉しておく手もある、と中里さんは話します。
一方で中里さんは、「先生が嫌」の中身が特定の先生個人なのか、指示やルールを出して管理する先生という存在全般なのかは分からない、とも指摘します。先生が変われば大丈夫になる子も多いものの、指導や指示そのものが強く嫌だという子も少なくないそうです。
ゲームとYouTube漬けは「元気なサイン」?
桜林さんは、学校に行かなくなったとたんに勉強も塾もすべてやめ、好きなことをやり尽くす娘さんの様子に、やるとやらないがはっきりした性質が表れていると見ています。
中里さんは、ゲームやYouTube、推し活のグッズ集めに時間を使っている娘さんを「結構元気そう」だと受け止めました。不登校になった直後に、大人でいう、うつのように布団から起き上がれなくなる子も多く、Branchにはそうした子がよく来るからです。
桜林さんは、好きなことだけの生活もいずれ自分で飽きてくるかもしれず、まだ1ヶ月しか経っていないと話します。
飽きてきて、なんかゲームを誰かと一緒にやりたいとか、推し活の話を誰かとしたいとかになってきた時とかに、なんか繋がりがやっぱり必要だよねってご本人も気づき、
学校に戻ったりする場合もあるし、フリースクールとかに行きたいってなったりする場合もあったりしますね。
とはいえ、親が「様子を見る」のは簡単ではありません。桜林さんは、1ヶ月強という期間も親にはとても長く感じられたはずだと気遣いつつ、人生のスパンで見れば「たった3ヶ月、たった1年」だとして、詰んだとは思ってほしくないと語ります。
中里さんは、小学5年生というこの時期が親子関係にとって大事なタイミングかもしれないと考えています。娘さんの気持ちをないがしろにして強引に学校へ連れて行くと、親への信頼感が失われてしまうことがあるからです。
中里さんによれば、今は娘さんの話をしっかり聞く「娘さん第一主義」でいることで、思春期に入っても親にいろいろ話してくれる子になるのではないかといいます。桜林さんはこれを、親は子どもの味方であると見せ続けることだとまとめました。
不安を子どもにぶつけないための置き場所
中里さんは、娘さんはもしかすると今の状態を楽しんでいて、気持ちが行ったり来たりして不安なのは、むしろ母親のおはぎさんのほうではないかと見ています。
その気持ちはまず娘さんにはぶつけない方がいいと思って。多分ぶつけてないと思うんですけど、ぶつけないために今回お便りくださった。すごいよかったなと思うんですけど。
そのうえで中里さんは、ほかの親御さんや親の会など、気持ちを聞いてもらえる場所を確保することを勧めています。中里さん自身も、木月さんや石井志功さんらと「不登校の親ネット」という無料のLINEグループを運営しているそうです。
桜林さんは、娘さんの今の没頭を「逃避」だと捉えています。好きなことができて嬉しいというより、学校が嫌だという気持ちが先にあり、その逃げ込み先として好きなことに向かっている、という見方です。
ゲームばかりの娘さんの姿は、見え方ひとつで受け止め方が大きく変わる、と桜林さんは話します。
このままずっとゲームばかりしていたらどうしよう、と不安が募る
学校が嫌で、今は一時的にそこへ逃げ込んでいるのだと受け止める
ゲームを取り上げるのは「浮き輪」を奪うこと
中里さんは、依存症の専門家である松本俊彦 ── 精神科医で、薬物などの依存症の治療・研究で知られる専門家。依存を「孤立した人が生き延びるための手段」として捉える視点を発信しています先生の「浮き輪」のたとえを紹介します。松本先生は、Branchの「学校を休んだ方がいいチェックリスト」を監修した医師でもあるそうです。
松本先生のたとえでは、依存先は溺れないために必死にしがみついている浮き輪です。不登校の子のゲームを取り上げたり、YouTubeを見られなくしたりする家庭もありますが、それは溺れかけた子から浮き輪を奪うことにあたる、と中里さんは説明します。
そこはそこでなんか奪い取ったりは絶対しない方がいいし、これはこれで肯定してあげつつ。
桜林さんは、推し活は大人にとっても浮き輪だと続けます。理不尽な世の中でやっていられず、推し活に逃げ込んでいる大人はたくさんいるからです。
その違い(推し活と単なる応援の)って、やっぱはたから見たらわかんないもん。
中里さんは、このタイミングで推し活を持っていること自体がとても良いと評価します。何かを好きになれるということは、浮き輪を自分で作り出せるということだからです。
夜2時まで起きているのは、朝の時間を飛ばすため
お便りでは、近所のお友達が朝一緒に学校へ行こうと誘ってくれていました。桜林さんは、友達と一緒に行ってほしいと願うことも、友達が誘ってくれたことも悪いわけではないとしたうえで、こればかりは本人のタイミング次第だと話します。
中里さんは、娘さんが「6時半に起こして」と言いながら2時までゲームをしていた行動を、不登校の子の「めちゃめちゃあるある」だと説明しました。
朝の6〜7時
学校へ行く子や親が慌ただしく動き出し、行くか行かないかの選択を迫られる
その時間を飛ばしたい
選択を迫られる朝の時間に起きていたくない
夜遅くまで起きる
ゲームやDiscordで夜更かしをし、朝寝ていても仕方ない状況を作る
中里さんは、この文章を読む限り娘さんがすぐに学校へ行くことはおそらくないと見ています。そのうえで、おはぎさんが言えなかった言葉をかけることを勧めました。
無理して行かなくてもいいよとか、一回家でゆっくり休もうかっていう一言、声をかけてあげれると、メンタル回復までのスピードが上がるかなっていう感じがしますね。
学校に行かなくても、生活リズムは一緒に決められる?
桜林さんは、学校に行かなくていい代わりに規則正しい生活を送ろう、と提案することはできるのかと尋ねます。中里さんの答えは「もちろん可能」でした。ただし、生活リズムがずれる子は多いそうです。
大事なのは、親が一方的に決めるのではなく、本人と民主的に話し合って約束やルールを決めることです。中里さんは、伝え方としてアイメッセージ ── 「私は〜と感じる」と、自分を主語にして気持ちを伝える話し方。相手を責めたり命令したりする印象を和らげる伝え方として知られていますを挙げました。
子どもが「そんなことないだろ」と反発しやすい
あなたが風邪をひいたら私が悲しいから、生活リズムは私と一緒にしよう、と自分の気持ちとして伝える
桜林さんは、学校に行きたくない気持ちを尊重することと、何も言わずに放っておくことは別だと話します。2時までゲームをしているなら、何も言えずにいるより「寝なよ」と声をかけたほうがいい、という考えです。
中里さんは、朝の時間を飛ばさなくていいと子どもが分かれば、安心して普通に寝てくれるかもしれないと付け加えます。朝に学校へ行くかどうかも聞かない、行きなさいとも言わない、と伝えたうえで、生活リズムを一緒にしようと提案する形です。
ただ、尊重すべき部分と一緒に決める部分の見極めは、1日中一緒にいれば無限に出てきます。桜林さんは、その一つひとつの判断が難しいのだろうと親の立場に思いを寄せていました。
回復までの見通しと、親が話せる場所
中里さんによると、Branchに来る子の中には、癇癪が激しく物を投げ、外が怖くて外出できない状態から始まる子もいます。その場合、外出できるまでに半年から1年かかることもあるそうです。
おはぎさんの娘さんは、外出が怖い、人への信頼を一切失っているといった状態ではなさそうです。中里さんは、ゆっくり休めれば外へ出たり、知らない人と活動を始めたり、学校に戻ったりするまでにそれほど時間はかからないのでは、と見ています。
桜林さんも、あくまで担任の先生へのボイコットであれば、そこが変われば行ってみようと思うかもしれないと応じました。
中里さんがまとめた親の動き方は、次の3つです。
中里さんは、様子を見るのにも忍耐力が必要だと話します。だからこそ、同じような経験をしている人の場で話を聞いてもらうことが大切だといいます。
しかもその先の話、うちも前そうだったけど、今こうだよみたいな話を聞けるのってとってもいいよね。
中里さんは、Branchや無料の不登校の親ネットのほか、「住んでいる地域名+親の会」などで検索すると、LINEのオープンチャットや地元の民間グループが見つかることも紹介しています。桜林さんも、親が喋れる場所があるといいと締めくくりました。
次回のテーマは「兄弟を平等に愛さなければならないが、愛せない」という呪いです。
まとめ
担任の先生が嫌で学校に行かなくなった娘さんについて、二人は「全然詰んでいない」と受け止め、理由がわかっていること、好きなことに没頭できる元気があることを前向きな材料として示しました。親が揺れるのは当然だからこそ、その不安を子どもではなく、話せる場所に置くことが勧められています。
- 不登校の理由がはっきりしていれば、クラス替えに向けた学校との交渉など打てる手がある
- ゲームや推し活は溺れないための「浮き輪」であり、取り上げると逆効果になりうる
- 夜更かしは、行くか行かないかを迫られる朝の時間を飛ばすための「あるある」な行動
- 生活リズムは一方的に決めず、アイメッセージで話し合って一緒に決める
- 親の不安は子どもにぶつけず、親の会や同じ経験を持つ人の場で話す






