新木場ageHaで隣同士だった二人の出会い
マッシュがクラブに足を運ぶようになって初めてできた友達が、ゲストのskiemoさんです。出会いはいまも二人の語り草になっています。
初めて会った時のことはやっぱり僕もすごい覚えてるんで。会うたびに話しますね。あの時にあんな感じでこういう風にあったよねっていう。
出会いは新木場ageHaで開催されたカプセルのリリースパーティーでした。2011年のことだと二人は振り返ります。
当時、二人はDaBaby MASAやPandaBoYさんが出演するフロアの最前列で、それぞれ一人で踊っていました。
最前でお互い多分一人同士かな。一人同士でそれぞれ爆踊りして。
きっかけは、PandaBoYさんによる「恋愛サーキュレーション」のリミックスでした。この曲が最高だと盛り上がったところで、隣にいた二人は意気投合します。
その後、マッシュは2012年に配信プロジェクト「2.5D」のUstream配信で、DJをするskiemoさんの姿を見つけます。お客さん同士だった相手がDJをしていたことに、思わず嬉しくなったといいます。
同じ年、skiemoさんは渋谷Sound Museum VISIONのメインフロアや、二人が出会った新木場ageHaのBOXにも出演。マッシュは我が事のように喜んだと話します。
先に出会いがあってっていうのが、やっぱりそこで先に知り合ったマッシュさんと、自分がDJを始めるようになってからその現場でまた一緒に会うようになってるっていうのが、やっぱ僕もすごい嬉しいなって思ってます。
バンド少年がクラブとDJに出会うまで
skiemoさんはもともと邦楽ロックが大好きで、バンドサウンドに親しんでいました。
一番最初に出会って好きになったのはアジアンカンフージェネレーション。ELLEGARDEN、ストレイテナー、BUMP OF CHICKEN、フジファブリックとか、いろんな邦楽のバンドがすごい好きで、いっぱいライブハウスに通ってた。
クラブに行くようになったのは大学卒業後のこと。それまではほぼ毎週のようにライブハウスに通っていたといいます。
クラブへ足を運ぶきっかけも、やはりPandaBoYさんの「恋愛サーキュレーション」リミックスでした。当時のTwitterのタイムラインで流れてきたニコニコ動画のリンクがはじまりです。
めっちゃかっこいいし、めっちゃかっこいいのに雰囲気が可愛いというか、可愛さもあるみたいな。なんだこの曲はと思って。
ダンスミュージックにほとんど触れたことがなかったskiemoさんは、その曲を調べていくうちにPandaBoYさんのライブを見たいと思うようになります。
ただし、ライブハウスしか知らなかったため、DJではなく「ライブステージ」を見たいという感覚だったといいます。
きっとこの人も何かそのステージに立つ時はライブをやる。
PandaBoYさんをTwitterでフォローしていたところ、2010年秋に秋葉原MOGRAでのDJイベント出演の告知を見つけ、足を運びます。これがskiemoさんにとって初めてのクラブ体験でした。
当時のMOGRAには、フリーフードのイベントやコンセプチュアルな企画など、個性的なパーティーが数多くありました。二人はその頃の空気を懐かしく振り返ります。
メガネがCUEボタン、初めてのDJ配信
skiemoさんが印象に残っているのは、やはり初めてDJをしたときのことです。
MOGRAでDJイベントの楽しさを知ったskiemoさんは、切れ目なく音楽をつないでいく姿に惹かれ、イベントの一週間後にはPCDJのコントローラーを購入していました。
最初は2.5DのUstream配信でのDJでした。顔出しはせず、音声のみで映像はスライドショーという形だったといいます。
マッシュは配信で見たskiemoさんの姿をいまも覚えています。曲をつなぐたびにずれてくるメガネを直す仕草から、「メガネがCUEボタン」という謎のミームが生まれました。
こいつDJ機材じゃなくてメガネの方がCUEボタンなんじゃねっていう、そのいじられを初めてDJ現場に出た時にしていただいたんですよね。
2.5Dは池尻大橋にあった配信スタジオで、DJ機材と5、6台のカメラを備え、ほぼ毎日のように配信していたといいます。現場には10人もいなかったものの、skiemoさんにとってはそこが初めて人前に立った場所でした。
選曲の幅を広げた15年、変わらない「楽しくDJすること」
今年でskiemoさんのDJ活動は16年目に入りました。始めた当初は、これほど続くとは全く思っていなかったといいます。
その最初は現場に出たい、人前に立ちたいみたいなのが全然なかったので、継続して呼んでいただいたり、レギュラーイベントに参加したりするようになるとは想像もしなかった。
15年で最も変わったのは選曲の幅だとskiemoさんは話します。活動初期はPandaBoYさんの影響が大きく、リミックスやエディットが8〜9割を占めるセットでした。
さまざまな現場に呼ばれる中で、ハウスやドラムンベース、ストレートなポップスやアニソン、オールジャンルのパーティーなど、多様な音楽を好きになっていきます。それを自分のプレイにも反映させるようになりました。
リミックスやエディットが8〜9割を占めるセット
さまざまなジャンルを吸収し、現場に応じて楽しい時間を作れるように
一方、変わらず大事にしているのは「楽しくDJすること」です。DJを見始めた頃、演者本人が楽しんでいる感覚が目でも伝わってくる現場が多かったといいます。
しっちゃかめっちゃかでもいいから、自分が楽しんでる感覚が目でも見て、画面の先の方だったり、現場の皆さんだったりに伝わったらいいなっていう感覚があって。そういう意識でDJしたのはすごい覚えてる。
その意識はいまも続いています。無理はせず、自然にテンションが上がったときに表情が明るくなる。その瞬間が、フロアにも伝わるといいます。
パーティーを支える選曲へのこだわり
選曲で意識していることを、skiemoさんはメモを見ながら丁寧に挙げていきます。
一番に来るのはやっぱりイベントコンセプト。会場の広さ、ボリュームレベル、お客さんの人数、年齢層、男女比、ゲストなのかレギュラーなのか、時間帯、音楽のジャンル、季節、その日の天候。
すべてを毎回100%達成できるわけではないと前置きしつつ、そのイベントで何を重視すべきかに優先順位をつけて選曲していると話します。
最も大事なのは「自分がやりたいこと」と「その日求められていること」のバランスです。
かつてDJイベントを主催していたマッシュも、このせめぎ合いには共感します。演者に特定のイメージを託してキャスティングし、それを汲み取ってもらえたときの喜びを語りました。
マッシュがskiemoさんを招いたのは2回。2014年に名古屋で初めて主催したパーティー「ダブルオー」と、2018年に渋谷Club Asiaで開催した回でした。
そのトリを飾ったskiemoさんの選曲は、マッシュの記憶に強く残っています。BUMP OF CHICKENなら定番曲ではなく「ハルジオン」を、というチョイスの妙です。
痒いところに手が届くの。このアーティスト単位でもこの曲なんだよっていうところが、共通の温度の高まり方というか。
一方で、みんなが知っているアンセムを流し続ける「青天井」の状態も、skiemoさんは好きだといいます。
有名だし自分も流したい気持ちもあるけど、今日はもっとこのアーティストでこっちの方が流したい、ちょっと有名じゃないけどみたいな日があって、そういうのを流した時にお客さんが最高みたいに言ってくださると、本当に嬉しい。
キャッチーな曲もレアなグルーヴも、その日のムードや自分の状態によって使い分ける。マッシュはそれを「役割」だと表現します。
嘘のアニソンDJイベントという遊び心
マッシュが気になっていたのが、2024年に秋葉原MOGRAで行われた「嘘のアニソンDJイベント」というパーティーです。
これは、アニソンではないアニソンっぽい曲を、DJがテーマを決めて架空のアニソンとしてプレイするというコンセプトのイベントです。skiemoさんは「嘘のバンドアニメSet」で参加しました。
skiemoさんは、まず絶対に流すと決めた1曲を軸に、そこへ至る流れを肉付けしていったといいます。
その曲が骨になって、それ以外の肉付けを考えていった。どうしても流したかった曲がUNISON SQUARE GARDENのフルカラープログラム。
この曲は「流星前夜」に収録されたバージョンで、サブスクでは聴けないものだといいます。skiemoさんはあえてその音源を使いました。
前後には、BUMP OF CHICKENの「aruku」やELLEGARDENの「ジターバグ」を配置。「ジターバグ」は、ジャンプ+で連載中の漫画『ふつうの軽音部』に登場することも意識したといいます。
参照元を知っているとより味わい深くなる選曲に、マッシュはskiemoさんのDJの魅力を見出します。
DJをすることで想像力とかイマジネーションとか、この文脈やこのつなぎ、この背景っていう、いろんなことを想像する力が豊かになっていく。
親友からのサプライズメッセージ
番組では、skiemoさんをよく知る人からサプライズメッセージが届けられました。秋葉原MOGRAなどにも出演する「成人男性」さんです。
第一印象を覚えていたら教えてください
2023年秋、下北沢CREAMのパーティー「HO」が初めまして。そのDJが言葉にできないほどの衝撃で、DJってここまでのレベルがあるんだとワクワクした、とのことでした。
初対面の印象は、その前からせいちゃんの名前はインターネットとかで拝見してて、活躍し始めているDJさんっていう印象を先に持ってて。すごい真摯に熱量を伝えてくださるし、本当に素敵な方だなって。
もう一つの質問への回答も、skiemoさんのプレイを深く見ていることがうかがえるものでした。
DJ skiemoさんのここがすごいと思うところ
選曲の幅と鋭さ。フロアのお客さんに刺さる曲を突然流してぶち上げるので、そのヤバさに思わず笑ってしまう。フロアを見渡す視野の広さとお客さんを刺しに行くキラーパスから、「J-POP DJ界のイニエスタ」とのこと。
自分が変えてきて、いまも大事にしている選曲の幅を的確に褒められ、skiemoさんは心の底から嬉しいと語りました。
野良DJが人との関わり方を学んでいった場所
skiemoさんが現在レギュラーで参加するのが「TOKYO Mellow City」です。2018年10月に始まり、今年で8年目を迎えます。
初回はゲスト出演でしたが、あまりに楽しくて、自らレギュラー参加を申し出たといいます。コロナ禍では配信企画「イエメロ」も行い、DJを始めた頃の感覚を思い出したと振り返ります。
収録では終始緊張していたというskiemoさん。しかし、話した内容はすべて本音だと強調します。
15年の付き合いで仲悪いわけがないし。大好きなんですよ。これは言わないと。
マッシュとの15年の付き合いについて、skiemoさんは声を大にして伝えたいことがあると言います。
本音しか話してないし、そのエピソードも本当だし、本当に思ってることしか喋ってないんだけれども、喋りの間だったりとか、緊張だったりが多く乗っかってて。
マッシュもまた、思ったことは言葉にして伝えていきたいと語ります。クラブで十数年遊ぶ中で、伝えることの大切さを身に染みて感じてきたからです。
たくさんの出会いがあるのと裏返しで、たくさんの別れがあんの。だから15年以上もskiemoくんと小屋して、イベントもポッドキャストも、絶対お金じゃ買えないと思う。
マッシュがこうした気持ちを大事にする背景には、2010年代に周りにいた諸先輩たちの存在があります。中でも「SUGO DJs」を主催していたカレーパイセンの振る舞いが印象的だったといいます。
初めましての時でも、来てくれてありがとう、一緒に飲もうやって、ドリンクを振る舞ってくれたり、いろんなDJさんを紹介してくれたり。その不安を取り除いてくれる、おもてなし的な。
マッシュはこの経験を、後の自分のオーガナイザーとしての振る舞いに活かしたといいます。
skiemoさんにとっても、カレーパイセンはDJを始めた頃からの憧れの存在でした。SUGO DJsには2013年から2018年まで5年間所属していました。
そしてskiemoさんは、自分にとってクラブやライブハウスが特別な意味を持っていたことを打ち明けます。
僕は多分DJイベントとかクラブとか、その前のライブハウスとかがなかったら、間違いなく今の自分はいないと断言できるので。
ライブハウスへは基本的に一人で通っていたというskiemoさん。10代の頃は音楽の話ができる人が欲しいと思いつつも、素直になれなかったといいます。
なんか気恥ずかしさと、いや俺はそんなんじゃないしみたいな。
クラブは、そんなskiemoさんが初対面の人と楽しさを分かち合うことを「自分に許可できる空間」でした。だからこそ、新木場ageHaでマッシュと意気投合できたのはミラクルだったと二人は語ります。
自分にとっては一期一会というか、その場限りの刹那的な感覚だし、いいかなって自分の中に許可できる感覚があって。わーって一人で楽しんでたら、隣にマッシュさんがまた一人で楽しんでて、めっちゃ喋りたいぞって。
その刹那的な出会いが連続し、恒常的な友情へと変わっていく。skiemoさんは、人と好きなことを共有することの尊さを、この世界で学んでいったと話します。
マッシュも、skiemoさんを河川敷での野外DJパーティー「JOINUS」に誘ったことを振り返ります。家族連れの子どもが妖怪ウォッチの曲で踊る光景が、skiemoさんの心に残っているといいます。
そんないろんな素敵な空間を、まっしーさんとかも含めて体験させていただくことによって、人との関わり方を学んでいったところが。
まとめ
クラブで隣同士だった二人が、15年をかけて育んだ友情と、その裏にあるDJという世界での学びが語られた回でした。選曲のこだわりから人との関わり方まで、skiemoさんの本音がにじむトークになりました。
- マッシュとskiemoさんの出会いは、2011年の新木場ageHaでPandaBoYの「恋愛サーキュレーション」リミックスに盛り上がった最前列でした。
- skiemoさんのDJは、初期のリミックス中心から、さまざまなジャンルを吸収した幅広い選曲へと変化しました。
- 変わらず大事にしているのは「楽しくDJすること」で、自分が楽しむ感覚をフロアに伝えることを意識しています。
- クラブやライブハウスは、素直になれなかったskiemoさんが人との関わり方を学んだ場所でした。
- 思ったことを言葉にして伝えること、そして偶然の出会いを尊く思う気持ちが、二人の15年を支えています。
