リアリティ配信から始まった三人のプロジェクト
いむ電波.wavは、ルカさん、πさん、ikidaw(イキダウ)の三人が運営するアートコレクティブです。アバター"いむちゃん"の開発・拡張・再構築をテーマに、音楽やグラフィック、映像を制作しています。
結成のきっかけは、バーチャルライブ配信アプリでの出会いでした。それぞれ配信していた三人が知り合い、意気投合したことから始まったといいます。
その原点は、リアリティっていう配信アプリがあって、そこでそれぞれ配信してた三人が知り合って、気が合うから一緒にやろうよってなったのが始まりですね。
ちょうどコロナ禍の頃で、暇つぶしで配信を始めたのがきっかけだったと二人は振り返ります。ルカさんは配信をしながら音楽を作り始めたそうです。
二人の音楽ルーツ
ルカさんは音楽制作を始める前、昭和歌謡やASIAN KUNG-FU GENERATIONなど日本の音楽を聴いていたといいます。特に半音下がるメロディの感覚や、ドリーミーな歌詞に惹かれていました。
昭和歌謡とかは半音下がるようなメロディの感覚とか、ドリーミーな世界観の歌詞とかが特に好きで、女性アイドルの楽曲を中心に聴いていましたね。
その感覚が、今も無意識に音楽を作る際に出てしまうといいます。歌詞の可愛らしさや浮遊感は、いむ電波.wavの制作でも特に意識しているそうです。
さらに現在は、yeule(ユール)というアーティストに強く惹かれていると話します。
yeuleの輪郭がぼやけて溶けていくようなサウンドの質感に強く惹かれているから、今の曲でもそこは大事にしていこうって、作り方が少しずつ変わっていってるのかな。
一方πさんは、特定のルーツを一言で言えるタイプではなく、その時々でいろいろなものを追いかけてきたといいます。
昔は家で常にクラシック音楽が流れてる家庭で育って。ちっちゃい頃はハロープロジェクトさんとか普通のJ-POPを聴いて、ハロープロは意外に今でも自分の人生の核みたいになってますね。
その後はボーカロイド、Perfume、K-POP、洋楽インディーとジャンルを問わず聴いてきたそうです。学生時代にはバンドに憧れて軽音に挑戦したものの、人前に立つのが苦手でうまくいかなかったといいます。
そこからエレクトロ系の音楽やクラブカルチャーに惹かれ、yeuleやDorian Electra(ドリアン・エレクトラ)などAVYSSが手がける来日公演に通うようになりました。
ジャンルから好きになってるっていうよりかは、その時々で惹かれたものを追っかけて今の活動につながったっていうような感覚です。
絵が浮かぶサウンドと二面性の質感
マシロマッシュさんは、いむ電波.wavの音楽の魅力として「絵が浮かんでくる」点を挙げます。この番組では以前、イラストレーターが楽曲に触れると真っ先に色彩やビジュアルが浮かぶと語っていたそうで、その感覚に通じるものがあると話します。
私も曲を作る時に最初にビジュアルが浮かんできて、色とか景色が見えてきて、そこに音を当てはめて、言葉を紡いでいくっていう作り方をしているので。
サウンドはざらついた質感やノイズ混じりでありながら、メタリックさや透明感にもつながる二面性があります。楽曲制作で意識していることをルカさんはこう語ります。
壊れている不安定さと攻撃的な鋭さっていう、ちょっと矛盾する二つの質感を同時に共存させたいなと思っていて。
yeuleのような浮遊感のあるボーカルや、バウンシーで跳ねるベースライン、ダブステップ由来の重い重低音を組み合わせて、聞いていて安心できない、でも離れられないようなサウンドを目指しています。
そのざらついた質感は、テキストが文字化けするようないむちゃんのグラフィックとも重なり、どこか懐かしさやノスタルジーを感じさせるといいます。
確かに謎のノスタルジーあるかも。
楽曲のミュージックビデオには、NHKのフリー素材が使われているそうです。ウォーターマークもそのまま入っており、80〜90年代のインターネットやガジェットを思わせる電波的な景色になっています。
なぜ独創的に感じるのか。"入れ物"としてのいむちゃん
リスナーのうにゃにゃさんからは、AVYSSのイベントでいむ電波.wavのライブを見てファンになったという便りが届きました。似たアーティストが思い当たらないほど独創的に感じる理由を尋ねる質問です。
いむ電波.wavの楽曲にはとても独創性を感じます。あまり似たアーティストや曲が思い当たらないという意味です。そう感じる理由はどこにあると思いますか。また、どういうジャンルや界隈での立ち位置だと認識していますか。
問われた二人は「あまり考えていないかもしれない」と戸惑いつつ答えます。そこでマシロマッシュさんが、その独創性の理由を代弁しました。
多くのバーチャルアーティストはキャラクターの個性やストーリーを前面に出すのに対し、いむ電波.wavではいむちゃんはあくまで空間であり"入れ物"だと指摘します。
いむ電波.wavさんってあくまで空間とか、いむちゃんっていう入れ物なんだよね。
まだ未完成でベータ版のいむちゃんという器の中で、作業員と呼ばれるメンバーそれぞれがクリエイティブを発揮できる。だからこそ大きな可能性があると解釈します。
マシロマッシュさんは、この構造を自身が好きなTommy february6と重ねます。
今って人物が主体性を持ってストーリーを描いて「私がリアルだ」というアーティストが多い中で、世界形成をとことん作り込んでいく。一つの映画とか作品を嗜んでる感覚なんですよね。
この解釈に二人も共感します。いむちゃんは何も語らず、感情も持たない存在だといいます。
でも確かにいむちゃんは何かを語らなくて、感情を持ってなくて、私たちによって開発された存在なんですよね。
この魅力は、2023年5月に開催された「BLACKBOX³ + AVYSS Pre. Hyd immersive live」でも体感できるとのことです。ルカさんにとっても強く印象に残るライブだったといいます。
最新曲「DYNAMIC INFECTION」と壊し続ける制作
リスナーに聴いてほしい推し曲を尋ねると、ルカさんは最新曲「DYNAMIC INFECTION」を挙げました。復活後初のシングルリリースで、新体制になったグラフィックのモードも変わっているといいます。
推し曲はやっぱり最新のDYNAMIC INFECTIONっていう曲を聴いてもらいたいです。本当にかっこよく仕上がっているんです。
マシロマッシュさんは、この曲からも絵が浮かぶと語り、透き通るようなアクアブルーが目に浮かんだと伝えます。ルカさんは「もうその通りでございます」と応じました。
壊していくっていうのが結構キーになっていってますね。どんどん壊します。
粗い質感や電脳空間を思わせるサウンドは、これまでの活動にも通じる軸であり、スクラップアンドビルド的な姿勢が貫かれています。
靴下、対バンしたい相手、リスナーとの掛け合い
番組にはユニークな便りも届きました。アルミリウムさんからは「今履いている靴下の色を教えてください」という質問です。
ルカさんは裸足、πさんはスケルトンの靴下だと答え、マシロマッシュさんはファミリーマートのフジロックカラーのラインソックスを紹介するなど、和やかな掛け合いが広がりました。
醤油をこぼすなさんからは「対バンしてみたいアーティストは誰か」という質問が寄せられました。
ゆーるかな、やっぱり。
πさんはNina Zilaziや、共演という概念が謎だと前置きしつつXGの名前を挙げました。大きなフェスでの共演を想像し、話は盛り上がります。
画面はデカければデカいほどいいと思ってる。
M3でのファーストアルバムと野外フェスへの夢
いむ電波.wavは10月、初めての音楽マーケットM3に参加します。推しポイントを尋ねると、ファーストアルバムのリリースが明かされました。
ライブとかでは少しずつ新曲をポロポロやってたりしたんですけど、サブスクとかで聴く機会が多分なかった。それらを全部一つの作品としてまとめてアルバムになっております。
ライブでやっている曲の九割が未発表音源だといい、アルバムでまとめて聴けることになります。これまでの楽曲はEP「Foundation System」や「Psychic Escape」として各ストリーミングサービスで聴くことができます。
今後のチャレンジを尋ねると、ルカさんは「野外フェスに出てみたい」という夢を明かしました。これは共演相手のπさんも初めて聞く話だったといいます。
チャレンジというか夢なんですけど、野外フェスに出てみたい。
日が沈み、光と映像でいむ電波.wavの世界を展開する夜のレイブを二人は思い描きます。ライブ出演を重ねるごとに、その意欲は少しずつ高まっているそうです。
ライブ欲が、出演する回数を重ねるごとに上がってきてて。
収録の最後、πさんは自分たちの活動を言葉で語る貴重な時間だったと振り返りました。
普段は作品作ったりライブすることが多くて、こうやって自分たちのことをゆっくり言葉で話す機会がなかったので、すごい楽しい貴重な時間でした。配信とは違った緊張感があって良かったです。
まとめ
いむ電波.wavは、感情を持たず何も語らないアバター"いむちゃん"を"入れ物"として、メンバーそれぞれが表現を発揮する音楽プロジェクトです。壊れた不安定さと鋭さ、絵が浮かぶサウンドという特徴が独創性の核にあり、M3でのファーストアルバムや野外フェスへの意欲とともに活動を広げています。
- いむ電波.wavはREALITYで出会った三人が始めたアートコレクティブで、いむちゃんは永遠にベータ版の存在として設定されている
- 楽曲は「壊れた不安定さ」と「攻撃的な鋭さ」を共存させ、ビジュアルから発想して音を当てる制作手法をとっている
- いむちゃんが感情を持たない"入れ物"であることが、他のバーチャルアーティストとは異なる独創性につながっている
- 10月のM3で初のファーストアルバムをリリースし、ライブ出演や野外フェスへの意欲も高まっている
