話し方は「マーケティング」だと言い切る理由
冒頭で千葉佳織さんが提示したのは、話し方をスキル以上のものとして捉える視点でした。
私は話し方はマーケティングだと思ってます。自分がどうありたいかというところの言語化と、相手からどう見られたいかというところの接合点を探していく。
千葉さんは、話し方トレーニングサービスkaekaの代表です。この回はThe Solutionsの番外編として、良いアイデアを120%引き出すための「伝える力」をテーマに進みます。
三浦さんは、千葉さんが起業する前からの知り合いだと明かします。かつて千葉さんが弁論を作った際、三浦さんがアドバイスをしていたこともあったそうです。
すごい賢いし、めっちゃ自分の信念のある方だなと思ってた方が、こうやってどんどん有名になって、仕事でも活躍されるのを見て、なんかやっぱ世の中捨てたもんじゃないなと。
司会の川口カノンさんは、アイドルを経てGOで働く中で、今まさに話し方に悩んでいると打ち明けます。The Solutionsの司会も3回目で、どう話せばいいかまだつかめていないと言います。
「面白い人」に見せる話し方は笑いだけではない
川口さんは、話し始めてすぐに「この人の話は面白そう」「面白くなさそう」が分かってしまうと感じており、面白いと思ってもらうための工夫を尋ねます。
私は面白いって思って欲しいんですけど、そのためにどういう工夫をしていったらいいですか。
これに対して千葉さんは、面白さを笑いだけに限定しないことから話を始めます。誰もが芸人のように爆笑トークをできるわけではないからです。
例えば私とかは真面目で誠実っていうようなキャラクターをしっかり持ちながら話す方が、(話の)濃密度が上げられるんですよ。
一方で、粗品さんのように対立軸を作って面白さを生む人もいると千葉さんは指摘します。つまり面白さのつくり方はキャラクター次第だという前提です。
そのうえで千葉さんが重要だと語ったのは、話し方から人柄が垣間見えることでした。
その一言言うと、その人が過去に何を大切にしてきたかすらもう伝わってくる。未来に何を目指しているのかという意志も伝わってくる。そういうのが面白いなって私は感じます。
三浦さんは、千葉さんが川口さんと初対面ながら、前のめりで相手の目を均等に見て、落ち着いたトーンで一定の速度で話す様子を、その具体例として挙げました。
最初に鍛えるべきは「一対複数」で話す時間
三浦さんは、社内の会話、プレゼン、会議、スピーチなど話す場面が複数あるなかで、最初にレベルを上げるべきはどこかを尋ねます。
千葉さんの答えは意外なもので、一対複数で話す時間をうまくできるかを試すのが手っ取り早い上達方法だといいます。
スピーチ、プレゼンとか事前準備できるものの方がPDCAサイクル回しやすいので、自分で振り返りやすいんですよね。
千葉さんによると、とても苦手な人でも、3か月ほど自分の話し方を見返すと見違えるように変わることがよくあるそうです。少人数へのプレゼンからでも構いません。
見返す対象は、声色、語順、分かりやすいキーワード、姿勢や表情など多岐にわたります。普段は自分の話し方をほとんど見返さないからこそ、見つめ直すだけでも変わると言います。
三浦さんは、この話には「話す内容の整理」と「その伝え方」という2つの要素があると整理しました。
話す内容そのもの。資料の中身や、説明する語順の整理を指す
その内容をどう伝えるか。声色、姿勢、間、抑揚など届け方の部分
緊張は敵ではない。「楽しみ」に乗せて口に出す
川口カノンさんは、GOの全社員向けにアイドル時代に気をつけていたことをテーマにプレゼンする予定があり、司会もプレゼンも手が震えるほど緊張すると打ち明けます。
もう本当に不安で。この司会もすごい手が震えるほど緊張しいなので、プレゼルもそうですし、司会もめちゃめちゃ緊張してしまいます。
千葉さんは、まず緊張そのものを悪いものと捉えないほうがいいと答えます。緊張があるからこそその時間に集中でき、緊張しないときのほうがパフォーマンスが落ちることもあると言います。
常に一定の緊張を保てるようにっていうところは意識してます。
三浦さんは、緊張したら「私は今緊張している。でもその緊張は楽しい」と口に出すといいと補足します。その瞬間に緊張が力に変わるという実感からのアドバイスです。
千葉さんもこれに同意しつつ、言い方に注意を促しました。
緊張してます、なのでちょっとうまくいかないかもしれないんですけどって言うと、一気にネガティブな自分のマインドになっちゃう。
緊張してるんですけど、楽しみですっていう、この感情に乗せるっていうところにすごく意味があると思います。
ビジネスで効く「自己紹介の型」のつくり方
千葉さんが川口さんに勧めたのは、自己紹介の型を作ることでした。川口さんはアイドル時代に自己紹介の型はなく、9人グループで人数が多かったため尺の都合で不要だったと明かします。
千葉さんによると、ビジネスシーンではかしこまった場で自己紹介することが多く、200文字ほどの型を用意しておくとよいといいます。
自分がこれまでどういうキャリアを歩んできて、なんでGOに入社していて、どういうことをビジネスマンとして頑張りたいのかっていうことをまとめておくと、まず安心材料になるかなと。
三浦さんに促され、千葉さん自身が理想の自己紹介を実演しました。15歳で弁論を始め全国大会で4回優勝したこと、もともと話すのが苦手だったこと、その学習を広めたくてkaekaを起業したことを短くまとめています。
ただ、この4回がすごいっていう話がしたいわけではなくて、もともと話すことがすごく苦手だったんですよね。
三浦さんは、この自己紹介の構成を分解します。客観的な実績、そこからの方向転換、苦手だったものが上達した流れ、社会人になってからの実績、今の仕事への向き合い方という順序でした。
千葉さんは、この構成に明確な意図を込めていると説明します。実績だけを言うと偉そうに聞こえるため、自己開示で人柄を見せているのです。
本当はそれを作れたのは自分の実力ではなく、周りの方と環境の支えによってなんだっていう、ここが自分の人柄が見えるところなんですよね。
三浦さんはこれを「ファクトとエモーションを両方伝えることでスピーチが効く」とまとめます。千葉さんによれば、どちらが好まれるかは人によって分かれるため、両方を組み合わせておくと相手を選ばず言葉が響くといいます。
「3つあります」の罠。伝えたいことは1つに絞る
言葉の選び方や構成について、千葉さんはまず「一番言いたいことは何か」を言語化することが当たり前のようで難しいと語ります。
その例として挙がったのが、「言いたいことは3つあります」という定番の構図です。三浦さんは「大体3つ目が思い浮かばない」と実感を口にします。
結構この3つ聞いてるうちに、本人も大変なのと、聞いてる相手も1つ目なんだっけ?って思うことって意外とあったりします。
三浦さんは、社内のThe Creative Academyで、24個のポイントを挙げた講師が90分の講義のうち60分経っても3個しか終わらなかったエピソードを紹介しました。
千葉さんは、項目が多い場合でも、最後に「今日一番言いたいことはこれです」と総まとめを添えると、聞き手が何を伝えられたか思い出しやすくなると助言します。
三浦さんが「世の中のビジネスパーソンが失敗しがちなポイント」を尋ねると、千葉さんは「問いかけをしてすぐ話す」ことを挙げました。
とりあえず問いかけをしておけば、他の人はみんな聞いてくれるだろう。これは勘違いだと思います。
千葉さんによれば、問いかけの後は反芻してもらう間を取り、考えてもらった先に意外なことを言えて初めて意味があるといいます。レトリックだけを使うのはもったいないという指摘です。
早口で詰め込むより「削る」。間が生む効果
千葉さんは、制限時間内に収めるために早口で話していいかと聞かれたら「絶対ダメ」と答えるといいます。
大体その時間内に入れようと思って早口で話しても、情報量が多すぎて、結局何言ってたか覚えてもらえないことの方が多いんですよね。
そのため、言いたいことが多いときはとにかく削る、削っても意外と言いたいことは言えると千葉さんは強調します。
三浦さんも、ピッチの審査で早口の人が続くと内容が流れてしまい、自信がなく聞こえると指摘します。逆に、早口が続いたあとにゆっくり話す人がいると、それだけで注目度が上がるといいます。
千葉さんは「間」の効用の例として、江頭2:50さんの入学式スピーチを挙げました。ストップウォッチで測ると7秒ほど間を取った箇所があったそうです。
7秒も取るとさすがに次何話すんだろうって、みんなシーンとして顔上がるんですよね。
普段のスピーチでは2〜3秒でもよいとしつつ、この間の効用は覚えておくべきだと言います。
三浦さんは、音楽の休符に例えました。音を鳴らさない休みも音楽を構成する要素であるように、空白の時間や間もスピーチを構成する重要な要素だという捉え方です。
千葉さんによれば、多くの人は最初、間を取ることを怖いと言うそうです。しかし慣れると視線が上がるのが分かり、快感になってくると言います。
抑揚を分解する。語尾で親近感としっかり感を切り替える
千葉さんが次に挙げたのは、抑揚を分解して練習することでした。抑揚は漠然としがちですが、実は複数の要素から構成されています。
それは声の大きさだったり、声の高さ、低さだったり、あとはそもそものスピードとか、えーあのっていう言葉がどれぐらい入ってるかで、一文が長い長くないとか、それでも関連してたりします。
具体例として、千葉さんは川口さんのアイドル的な話し方を分析します。全体的に高いトーンで、語尾が少し長くなることで親近感が生まれているといいます。
一方で、この語尾の部分を少し削っていく。今日はなんとかなんとかでこう思っていますっていう風にやると、しっかり感が強くなるんですよね。
川口さんは、伝えたい内容だけでなく、どう思われたいかをもとに話し方を変えることもあるのかと確認します。ここで千葉さんは冒頭の主張に立ち返りました。
同じ人でも声は使い分ける。「どう見せたいか」からの逆算
三浦さんは、普段の声、プレゼンの声、YouTubeの声を自分が使い分けていると明かし、そのルールやセオリーを尋ねます。
千葉さんの答えは「どう見せたいかからの逆算」でした。信頼感を持って話したい人に届けたいため、自身は比較的低めで落ち着いたトーンを選んでいると説明します。
これは少し親しみやすい人だと思ってもらいたいっていう気持ちがあって、そのバリエーションを持ってる。
三浦さんが川口さんに「YouTubeを見てくれる人にどう思われたいか」を尋ねると、川口さんは「信頼」と答えます。親しみはこれまでの経験である一方、自分には信頼が足りないという自己認識でした。
信頼がちょっと足りないと思います、私には。
三浦さんは、GOのメンバーはクライアントの社長や有名な政治家にプレゼンすることも多く、若くても信頼されないといけない仕事だと語り、その方法を千葉さんに尋ねました。
実績は「発掘」できる。若手が信頼を勝ち取る話し方
千葉さんがまず挙げたのは「実績を話し方で作る」というポイントでした。
若いほど持ち寄れる実績は少なくなりますが、会社が積み上げた資産や、上司と取り組んだ企画などはあります。それらを意識的に数字に落として語ることで、行動量と地道さというファクトを自ら作りに行くのです。
三浦さんは、川口さんの場合ならThe Solutionsの出演回数だけでなく、「累計で何分カメラの前で話した経験がある」と言い換えると印象が変わると例を挙げます。
千葉さんも、川口さんがアイドル時代に何千人と直接話してきた経験に触れ、その知見を語れば魅力的でしっかりして見えると付け加えました。
自分の中で実績を数字で発掘していくっていうやり方。
三浦さんは、普通に考えると出てこないが、よく考えると言えることを見つける作業が必要だとまとめます。
もう一つのポイントは「相手に関心があると伝え続ける」ことでした。何十年も仕事をしてきた相手には、リスペクトが伝わったほうがよいという考えです。
誰々さんのご著書を拝見して、特にこういうところが心に響いたんですって具体的にお伝えしたら、ちゃんと自分のために時間を作ってくれたんだって思うじゃないですか。
三浦さんは、幻冬舎の見城徹社長が作家の五木寛之さんに原稿を頼みに行った際、目の前で作品を暗唱し始め、4ページ目あたりで五木さんが「もういい、お前の話は聞く」と言ったというエピソードを挙げ、相手への関心の極端な形として紹介しました。
声を大きく、抑揚は高→低。デリバリーの具体策
デリバリー面で千葉さんが最初に挙げたのは「声を大きくする」ことでした。初歩的ですが最も大事だといいます。
結局ビジネスの現場で意見が通る人って声が大きい人なんですよ。
千葉さんによれば、声の大きさは熱量があることを示し、相手に届けようとする配慮の表れでもあります。そのうえで、抑揚は高いトーンから入って低いトーンで終え、語尾を伸ばさないと信頼感が出ると説明します。
実演では、語尾を伸ばした「今日はよろしくお願いします」は親近感が、伸ばさない言い方はしっかり感が出るという違いが示されました。
三浦さんは、簡単だが意外に意識されていないと指摘します。千葉さん自身も、無意識にできるようになるまでトレーナーとして2000時間ほどこの学習に費やしたと明かしました。
三浦さんは、声が小さくてもプレゼンが上手い人の存在を「嫌な質問」として挙げます。師匠にあたる博報堂の嶋浩一郎さんが、小さな声でも仕事を作ってくると言います。
そこに表出している思考が素晴らしかったりとか、謙虚さも踏まえたお人柄が魅力的だったりとか、いろんな要素が合ってるなと思うんですよ。
千葉さんは、小さな声が味になるのは、思考や実績、謙虚さとのギャップによるものだと整理しました。
フィジカル面では、目線を聞き手に均等に配ることと、ジェスチャーの使い方が挙がりました。ジェスチャーは出しすぎず、言いたい言葉のタイミングに合わせると言葉が目立つといいます。位置もやや高めのほうが視線に入りやすいそうです。
話し方は「コスパのいい学習」。数十年使えるスキル
三浦さんが「学ばなければいけないことがいっぱいある」と漏らすと、千葉さんは話し方の学習をコストパフォーマンスのよいものだと語ります。
一つ学習したらその後数十年間というか、生きている時間ずっと使えるものだと思ってるんですよね。
千葉さんは、コミュニケーションの課題は解決できると信じていると述べ、kaekaのサービス内容を紹介しました。AI診断とトレーナーの指導を掛け合わせ、3〜6か月かけて理想の話し方を追求するものです。
社会人だけでなく、政治家や経営者まで幅広く支援しているとし、個別相談会への参加を呼びかけて収録は締めくくられました。
まとめ
千葉佳織さんが一貫して語ったのは、話し方は生き方や人柄が表れるものであり、「どうありたいか」と「どう見られたいか」の接合点を探すマーケティングだという視点でした。実績が少ない若手でも、数字の発掘と相手への関心、そして声や間といったデリバリーの工夫で信頼は作れるといいます。
- 話し方は「どうありたいか」と「どう見られたいか」の接合点を探すマーケティングとして捉える
- 最初に鍛えるべきは、振り返りやすい一対複数のスピーチやプレゼンの場
- 緊張は敵ではなく、「緊張しているけど楽しみ」と感情に乗せて口に出すと力に変わる
- 伝えたいことは1つに絞り、問いかけは間と意外な答えとセットで使う
- 若手は会社の資産や過去の経験を数字で「発掘」し、相手への関心を具体的に伝えて信頼を作る




