なぜ今、ポッドキャストに全力を注ぐのか
番組ホストの三浦崇宏さんが、近所に住む友人でアル代表取締役のけんすうさんを迎えた回です。
けんすうさんは現在、週5本ほどのポッドキャストを定常的に配信していると話します。「幻会議」「限界突破ライフハック」に加え、コテンラジオ歴史をテーマにした人気ポッドキャスト番組。深井龍之介さんらが運営している。の樋口さんとの「まだない」、一人語りの「けんすうスピーク」、箕輪さんとの「ご神託ラジオ」などです。
そんなに喋りたくないんですけどね。
なぜそこまで発信するのか。きっかけはポッドキャストの面白さと、それが良質なコンテンツの元ネタになるという発見でした。
三浦さんもそんなにXとか書かないじゃないですか。noteも書かないし。でもこういうところで喋るとコンテンツがあるっていう、これを元にした方が日本のメディアが基本的に良くなると思ってるんですよ。
その背景には、現在のインターネット空間への強い問題意識があります。
「賢く黙る」時代への危機感
けんすうさんは、今は賢い人ほどXで発信しなくなっていると指摘します。
三浦さんも、Xを開くと知らない人同士の激怒と謝罪ばかりが目に入り、つい追いかけてしまうと共感します。
Xを開くと大体知らない人が知らない人にキレてて、知らない人が知らない人に謝罪してて。でも激怒と謝罪にはつい目が行ってしまうから追いかけちゃう。
問題は、賢い人が黙ることで、価値ある情報がエリート同士の間だけで独占されてしまうことだと言います。
これからチャンス掴みたい若い人とかがXを見ても不倫の話とかばっかりだと掴めないじゃないですか、チャンスを。なので、まともな情報空間を作りたいというところからポッドキャストに。
だからこそ、文脈ごと話を聞いてもらえるポッドキャストで「賢く黙る」状態をやめたい、というのがけんすうさんの狙いです。
その情報を効率よく届ける手段として、けんすうさんは自社でポッドキャストを記事化するツール「Pody」も開発していると紹介しました。
インターネットの「庭師」という自認
話題は、けんすうさんがなぜここまでインターネットとXを愛するのかに移ります。
三浦さんは、けんすうさんが突然「三浦さんこれツイートしてみてください」と絶妙な文面を送ってくると明かします。言われた通りに投稿すると、なぜか少しバズるのだそうです。
今この人がこの投稿するともうすごくいいみたいな気持ちが抑えられない。
その根底には、自分の関与で世界が良くなるという見通しがあると言います。
二人はこの感覚を「Xという庭を管理する庭師」と表現します。勝手に育つ巨大な木の枝を切り、自分の植物を育て、全体の景観を保つイメージです。けんすうさんは2007年ごろからこの自覚を持っていると話します。
そして、この「自認」は能力の話ではなく、自分がその役割で生きているという思い込みだと二人は言います。
自分が能力があるとかできるとかじゃなくて、自分はそういう役割で生きているという謎の自覚。
「したい」ではなく「せねばならない」で動く
この「勝手な使命感」こそが、人を強く動かす原動力になると二人は語り合います。
けんすうさんは、ある漫画家の例を挙げます。「これ絶対面白いのに誰も描いてないから、面倒くさいけどしょうがなく描いている」という感覚で、その作品が何千万部も売れているというのです。
描きたいとか、こういう作品出したいとか、評価されたいではなくて、仕方ないっていう。
三浦さんは、楽しいだけではここまで続けられないと応じます。スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクも、自分がやらねば誰もやらないという感覚で動いていたのではないか、と二人は例を重ねました。
そこから、けんすうさんはキャリアの考え方についての持論を語ります。
三浦さんは、これを言葉の言い換えとして整理しました。
「何々したい」という言葉を全て「何々せねばならない」に変えるべきだ。俺はこれをやらねば世界がダメになると思えるような、勝手な使命感があるものがあったら幸せですよね。
やりたいことや適性から選ぶ考え方。二人は、これだと動機としてやや弱いのではないかと話しています。
自分がやらないと世界が良くならないという使命感。強いパワーを生み、人を巻き込む照れもなくなると語られています。
なお、この「使命感」は違法投稿を通報するといった小さなことから始めてもいい、とけんすうさんは補足しています。
今AIを覚えようとするのが一番愚か
話題はAIとの向き合い方に移ります。けんすうさんは、優秀な人ほど発信してほしいと繰り返しつつ、質の低いAI発信への違和感を口にします。
愚にもつかないAIの良さを滔々と語る長文でインプレッションを稼ぐ人たちがいる。ああいうのは本当に駆逐したいと思ってる。
けんすうさんは、著書『メタスキル』の内容にも触れながら、スキルを身につける時代からメタスキルの時代へ移っていると語ります。
プロンプトのやり方とか覚えてももうすぐ陳腐化するから、プロンプトのやり方を世界から探して一番いいやつをまとめてってAIにお願いしましょうみたいなのが、超ざっくりいうとメタスキルで。
二人は、ルールが1週間単位で変わる中で、暫定的なルール内の細かいテクニックを覚えても意味がないと指摘します。
今サッカーのルールがこうだから、ここをうまくやるテクニック身につけようってやっても、ルール変わったら意味ないよねっていうのが1週間単位で変わっていくので。
三浦さんは、これを踏まえて「これだけ覚えればいいプロンプト20選」のような発信を強く批判しました。
メタ視点の課題解決力とは
けんすうさんは、メタスキルの具体例として将棋と就活の話を挙げます。
将棋で勝つには盤面の戦術にフォーカスしがちですが、指すのが人間なら、相手の体調や対局のタイミングまで見て有利をつくった方がいい、というのがメタ視点だと言います。
さらに象徴的なのが就活の話です。採用人数が決まっているなら、序盤に受けた方が有利になると分析します。
採用人数100人って決まってたら、人事は最初の方は採用できなかったらどうしようで不安なので、そこにやった方が採用されやすい。90人も決まってたら、なるべく厳選した方がいいと。不安の質が変わるので、最初の方に受けてれば絶対入りやすい。
三浦さんは、これを「個別の課題を解く前に、そもそもこのゲームの勝ち方とは何かから考えること」だと整理しました。
三浦さんは、この「枠の外」を考える発想を仕事にも重ねます。宮本武蔵の『五輪書』を例に、剣術を突き詰めると最終的にマクロな戦略まで考えざるを得なくなると語りました。
本当にミクロを突き詰めると、自動的にマクロまで見ないといけなくなっていく。
ただし三浦さんは、武蔵の話は記憶で語っており正確でないかもしれない、と自ら断っています。
The Solutionsへの宿題
最後は、けんすうさんからこの番組そのものへのフィードバックが語られます。
けんすうさんは、The Solutionsは毎回三浦さんがきれいにパッケージして届けているため外れ回がないと評価しつつ、それゆえに「隙を見せる回」があってもいいと提案します。
全部三浦さんがいい感じにパッケージしてお届けしちゃってると。だから外れ回がないんですよ。いい意味でも悪い意味でも。なので、その隙を見せる回があった方がいいんじゃないかな。
素人が作る動画や音声だからこそ、プロっぽく仕上げすぎると逆にチープに見えることもある、というのがけんすうさんの見立てです。
プロの最下位じゃなくて、素人のトップランクの方がいい競技であるってこと。
三浦さんは、15秒のCM制作で「パッケージ」を作り続けてきた自分の癖を認めつつ、あえてパッケージしない番組づくりに挑む、という宿題を受け取りました。
本当のパッケージしないをやってみたい。いずれやらねばならない。トライアンドエラーだよ。
まとめ
発信をやめた賢い人たちの言葉を、いかにまともな情報空間へ流通させるか。けんすうさんの活動の根には、インターネットの「庭師」としての自認と使命感がありました。AIについても、テクニックではなく「構え方」というメタ視点が重要だと語られた回です。
- 賢い人ほど発信しなくなる「賢く黙る」状態が、情報格差を広げる問題として語られた
- 自分がやらねばという「せねばならない」の使命感が、人を強く動かす原動力になる
- AIはルールが1週間単位で変わるため、個別のテクニックより「メタスキル」が重要
- 就活や将棋のように、個別の課題を解く前に「ゲームの勝ち方」から考えるのがメタ視点の課題解決力
- The Solutionsへは、きれいにパッケージしすぎず「隙を見せる回」を作るという宿題が示された
