無名の二人がクラファンで2,000万円──goyemonが「応援されるブランド」になれた理由
The Breakthrough Company GOが運営するアイデア図鑑メディア『The Solutions』に、goyemon日本の伝統工芸と最新テクノロジーを融合させたプロダクトを展開するブランド。雪駄×スニーカーの「UNDA」や提灯型ランタン「ANDON」などが代表作。COO/コンセプターの武内賢太さんがゲスト出演。実績も知名度もゼロの状態からクラウドファンディングで2,000万円超を集め、Supreme1994年にニューヨークで設立されたストリートウェアブランド。スケートボード文化を背景に世界的な人気を誇り、コラボレーション商品は即完売することで知られる。やユニクロとコラボするまでに成長した「応援されるブランド」の作り方を、三浦崇宏さんが深掘りしました。その内容をまとめます。
「クラファンで勝てるもの」から逆算したブランド設計
goyemonの始まりは、高校の同級生だった武内賢太さんと大西藍さんが「二人で世の中にないものを作ろう」と決めたことでした。当時23歳。美大を出てメーカーのプロダクトデザイン職に就いていた武内さんですが、デザインの賞を取ったこともなく、まったくの無名だったといいます。
そこで目を付けたのが、当時まだ一般的ではなかったクラウドファンディングインターネット上で不特定多数の人から資金を集める仕組み。日本ではMakuake、CAMPFIRE、Readyforなどのプラットフォームが普及。「応援購入」型はリターンとして商品が届く形式が主流。でした。「周りにやっている人がいないからこそ、友達から"クラファンやるやつがいるらしい"と話題になりやすい」──そんな発想で、リスクが低く無名でも始められるクラファンを最初の舞台に選んだのです。
ただし、「何を作るか」はまだ決まっていませんでした。武内さんたちはMakuakeサイバーエージェントグループが運営するクラウドファンディングプラットフォーム。応援購入型のプロジェクトが中心で、プロダクト系に強い。で支援額の大きいプロジェクトを片っ端から分析。すると、成功パターンは大きく2つに分かれていることに気づきます。
宇宙の技術を使った素材、世界最薄の財布など、スペックの驚きで支援を集める
町工場の職人が初めて消費者向け商品を作る、メイドインジャパンの挑戦など、物語への共感で支援を集める
武内さんたちが出した答えは「両方やる」でした。日本の伝統工芸品は長年姿形を変えてこなかった一方、テクノロジーは日々進化する。この2つを掛け合わせれば、伝統工芸を毎日アップデートできる分野に変えられる──そう考え、「日本の伝統×テクノロジー」をブランドの軸に据えました。
テクノロジーは毎日新しい技術が生まれる。そこを伝統製品と一緒にしちゃえば、日本の伝統製品も毎日アップデートができる分野に参入できる
雪駄×エアソール──UNDAが生まれたプロダクト戦略
コンセプトが固まった次の課題は「何から作るか」。武内さんたちが注目したのはフットウェアでした。理由は明快で、「アパレルブランドのスニーカーは大体スニーカーブランドとのコラボ。だったら誰も真似できないオリジナルのシューズを作れば、アパレル側からコラボの話が来るはず」という逆算です。
とはいえフットウェアはサイズ展開が多くロット管理も大変。しかし雪駄日本の伝統的な履物の一つ。竹皮や革で作られた草履の底に皮を張ったもの。かかとを出して履くのが「粋」とされる。にはスニーカーにない利点がありました。
こうして生まれたのが、雪駄にハイテクスニーカーのエアソールを組み込んだ「UNDA」です。三浦さんも「こういうものがあって当たり前だったのに、なかったことに驚いた」と語ります。
もちろん、世の中にないものを作る以上、工場や職人から「できない」と言われることは日常茶飯事だったそうです。しかし武内さんは「できない」を2種類に分類していました。
素材の特性上加工が不可能、金属加工の限界など
前例がないだけ。「こうしたらできますか?」とアイデアを持ち込むと突破できることが多い
実際に話を聞いてみると、大半は後者──「やったことがないからできない」でした。武内さんたちは「こういう加工ならどうですか?」と具体的なアイデアを持ち込み、職人と二人三脚で解決策を探るスタイルで壁を越えていったといいます。
達成率4,335%を支えた「応援される仕掛け」
UNDAのクラウドファンディングは、開始30分で目標金額50万円を達成。最終的には2,000万円超、達成率4,335%という驚異的な数字を記録しました。無名のブランドがなぜここまで支持されたのか。武内さんが語った「応援される仕掛け」は、いくつかの層に分かれていました。
①「一瞬でわかる」プロダクトデザイン
武内さんが全プロダクトに共通して意識しているのが、「サムネイル1枚でコンセプトがわかる」こと。UNDAなら横から見るだけで「雪駄+エアソール」が瞬時に伝わります。クラファンのページが大量に並ぶ中で、スクロールの手を止めてもらうには、この「瞬間伝達力」が欠かせないのです。
②自分たちのストーリーを隠さない
当初は副業だったため顔出しをしない予定だった武内さん。しかし「応援購入」と銘打たれているクラファンで、顔の見えないプロジェクトが応援されるはずがない──そう考え直し、「大西藍と武内賢太、高校の同級生が二人で始めた」というストーリーを前面に出す方針に切り替えました。
23歳で新しいことを始めるって、みんな人生のフェーズであるじゃないですか。「自分にもこういうのあったわ」っていう共感が、応援につながるんです
「高校の同級生と何かを始める」という設定は、多くの人にとって一度は思い描いたことのある世界線。この親近感と共感が、見知らぬ人からの支援を生み出す力になりました。
③友達の連鎖で信頼が広がる
まず自分たちの身の回りの友達に連絡し、プロジェクトを知ってもらう。すると「友達がこういうチャレンジをしてるよ」という口コミが、ネット広告よりもはるかに信頼性の高いPRとして機能します。友達の友達は友達──その連鎖が、仲間内の数十人から2,000万円規模の支援者へと伝播していったのです。
④期待を超える「お礼」でリピーターを作る
「クラファンでは成功したけど一般販売でこける」パターンは少なくありません。武内さんがこの罠を避けるために大切にしているのが、支援者一人ひとりへの「お礼」です。
1回の購入で終わらせず、長くブランドを応援し続けてくれるファンを育てる。武内さんは「クラファン達成は一人ひとりのおかげ。一人でもいなかったら達成していない可能性がある」と話します。
応援と同情は違う──絶対にやらないこと
「応援されるブランド」を標榜するgoyemonですが、武内さんには明確に「これだけはやらない」と決めていることがあります。それが「同情を誘わない」こと。
伝統製品が衰退しちゃうから応援してくださいって言うと、今まで伝統産業を守ってきてくれた方々にすごく失礼。「助けてください」「なんとか応援購入してくれないとダメなんです」みたいな言い方は絶対しない
三浦さんもこの点を強く共感し、「下から行くと舐められるし、一回応援したからいいでしょとリピーターにもつながらない」と補足しました。応援と同情の温度感を間違えると、ブランドの力が削がれてしまう──これはクラファンに限らず、あらゆるブランディングに通じる教訓かもしれません。
プロダクトの魅力+作り手のワクワクに共感して「仲間に加わりたい」と思わせる
「衰退するから助けて」「頑張ってるから買って」と情に訴え、一時的な支援を得る
武内さんは、ブランドの発信でも「常に楽しんでいる姿勢を隠さず出す」ことを意識しているそうです。楽しんでいるチームを見ると、人は自然と仲間に加わりたくなる。noteやInstagramで武内さんと大西さんの仲のよさが伝わる投稿が多いのも、この考えに基づいています。
Supremeから連絡が来る「コラボされる側」の設計
UNDA以降、goyemonは切子グラスガラスの表面にカット模様を施す日本の伝統的なガラス工芸。江戸切子や薩摩切子が代表的。goyemonはこの技法を現代的にアレンジしたキッチンウェアを展開した。、包丁、そして提灯型ランタン「ANDON」goyemonが開発した、日本の伝統的な提灯をモチーフにしたLEDランタン。Supremeとのコラボレーションでも話題に。と、あえてアパレルではないプロダクトを次々に展開。「雪駄の次は浴衣?」と聞かれることも多かったそうですが、プロダクトデザインブランドとしての幅を持たせる狙いがあったといいます。
そして注目すべきは、Supremeやユニクロといったビッグブランドとのコラボが相手側からの連絡で実現しているという点です。武内さんが意識しているのは2つ。
UNDAの定番モデルは、和紙の部分にあえてロゴを入れていません。Supremeとのコラボ時にはそこにSupremeのロゴが入りました。「最初はうちのロゴを入れようとしていたけど、ない方がコラボの時にロゴを入れたくなるよね」と武内さんは振り返ります。
雪駄がUNDAに、提灯がANDONになった。プロダクトの再発明をしているから、「Supremeがこれを作ったらどうなるの?」というアレンジのベースになっている
なお、goyemonは2025年4月に大阪・心斎橋に過去最大規模のフラッグシップストアをオープン。「大阪は天下の台所。商いの場所に店舗を構えたかった」と、京都ではなくあえて大阪を選んだ理由を武内さんは語っていました。
まとめ
三浦さんは今回の対談を通じて、「クラウドファンディングをやるなら、自分が主人公の漫画を描くくらいのつもりでやらなきゃダメ」と総括しました。武内さんのnoteを読んでいると、悩みもチームの関係性も包み隠さず綴られていて、まるで二人が主人公の物語を追いかけているような気持ちになると語ります。
武内さんからの最後のメッセージは「自分のやりたいことには嘘をつかない」こと。物作りが好きでこの業界に入ったのなら、その気持ちに蓋をせず、ワクワクに正直に向き合ってチャレンジしてほしい──そう語る姿に、goyemonが応援され続ける理由が凝縮されているように感じました。
- goyemonはクラファンの成功パターンを分析し、「日本の伝統×テクノロジー」という勝ち筋を逆算してブランドを設計した
- 雪駄はサイズ展開が少なく左右もないため、スタートアップでもフットウェアに参入しやすいプロダクトだった
- 「無名だから売れない」ではなく「無名だからこそ応援される」への発想転換がクラファン成功の鍵
- サムネイル1枚でコンセプトが伝わるデザイン、自分たちのストーリーの発信、友達の連鎖による口コミ、期待を超える開封体験──4つの仕掛けで支援を伸ばした
- 「応援」と「同情」は明確に区別し、下からお願いする姿勢は絶対にとらない
- 唯一無二のプロダクト+カスタマイズの余白を残すことで、ビッグブランドから「コラボしたい」と声がかかる構造を作った
