13年続いたcomicoが終わる。購入作品はどうなる?
漫画アプリのcomicoが、来年の1月6日にサービスを終了するというニュースが出ました。CEOセオさんはこのニュースを取り上げ、なぜcomicoが終了に至ったのかを追っていくと話します。
comicoの運営会社はNHNコミコで、親会社は韓国のNHNです。サービス開始は2013年10月なので、comicoは約13年続いてきたプラットフォームということになります。
CEOセオさんによれば、comicoは縦読みとフルカラーの漫画を2013年に日本で本格的に打ち出した存在です。今では縦読みはピッコマなどでも当たり前になっていますが、その先駆けが撤退することになりました。
comicoで購入した作品は、資本関係のない別会社のサービスであるめちゃコミの本棚へ移行できます。CEOセオさんは、資本関係もない会社に作品が移る点にも業界の流れがあるのではないかと見ています。
comicoのクローズは段階的に進みます。今月末で新刊配信、レンタル更新、コイン販売、新規会員登録が止まり、翌月にはさまざまな機能が停止していく予定です。
めちゃコミへの移行には条件があります。CEOセオさんが挙げた条件は次のとおりです。
- 9月28日時点でcomicoの本棚に購入済みとして登録されている
- めちゃコミ側でも同じタイトルが配信されている
- 出版社や権利元から引き続き許諾が取れている
- ユーザー自身が期間内に申請する
移行は自動では行われず、ユーザーが自分で申請する必要があります。CEOセオさんは、comicoを使っている人はこの点に注意が必要だと呼びかけています。
プラットフォームをやめて、制作会社として生き残る
comicoのサービスは終わりますが、運営会社のNHNコミコがなくなるわけではありません。NHNコミコは今後、漫画コンテンツの編集・制作事業に注力すると表明しています。
NHNコミコは、10年以上培ってきたWebtoon ── スマートフォンで縦にスクロールして読むことを前提にした、主にフルカラーのデジタル漫画の形式。韓国で発展し、世界に広がりましたの企画・編集・制作力を土台に、国内外の20以上のプラットフォームへ作品を提供していく方針です。CEOセオさんは、出版社のような制作会社のポジションになっていくと説明します。
NHNコミコには、モモクリ、ミイラの飼い方、ReLIFEなどのヒット作を含め、600作品を超えるオリジナル作品があります。この制作資産を生かし、プラットフォーム事業はやめて制作プレイヤーになるという判断です。
ピッコマの「待てば無料」は何を変えたのか
縦読み漫画の市場では、comicoが2013年に縦読みを始め、その3年後の2016年にピッコマが日本で「待てば無料」の形を打ち出しました。
ピッコマの「待てば0円」は、23時間待てば次の話が無料になる仕組みです。CEOセオさんによれば、この形が業界の標準のようになり、多くの事業者が追随しました。
ピッコマは当時、1日に120万アクセスがあり、広告を入れれば月間1億の利益が取れる試算だったものの、広告は入れないと説明していたといいます。広告ではなく、漫画コンテンツを提供するプレイヤーとして収益を取っていく道を選んだということです。
縦読みと待てば無料の世界で、comicoとピッコマは初期から競い合ってきました。結果を振り返ると、ピッコマは今や絶好調で、comicoはサービス終了という明暗が分かれています。
勝敗を分けたのは「作品の量」だった?
CEOセオさんは、漫画アプリの勝敗を分けた要因として「本棚」の性質を挙げます。一度あるアプリで本棚を作ると移行させるのが難しく、同じ作品ならそのアプリで買い続けてしまうというモデルです。
本棚が動かしにくい以上、漫画アプリには配信作品の数が求められます。作品数が多いほどユーザーはそのアプリに滞留しやすく、ピッコマは毎日戻ってくる仕組みとして、とにかく供給量を増やしました。
CEOセオさんによれば、ピッコマは2025年3月時点で配信19万作品以上、累計5000万ダウンロードを達成しています。ゲームを除けば国内1位の収益ランキングを取っており、巨大であるほど価値があるという、プラットフォームの基本を体現した形です。
自社制作の縦読みオリジナル作品で勝負した
ライセンス供給で作品数を一気に増やし、プラットフォームとしての量で勝負した
ただCEOセオさんは、オリジナルとラインナップの量はどちらも正しいとしています。オリジナルがあるから行くというニーズも、たくさんあるから行くというニーズもあり、その両者のガチンコ勝負が行われていたという見方です。
結果としてはプラットフォームはやっぱり量がないと、やっぱ厳しいねというのが今回、分かったというかね、まあ結果として。
CEOセオさんは、時代背景も影響したと考えています。今はコンテンツが次々と消費されていく「掛け捨て」の時代で、オリジナル作品だからといって長く記憶に残るわけではないという指摘です。
オリジナルだからといってずっと記憶に残って覚えてもらえるかっていうとそうじゃなくて、結局は全てがもう掛け捨てなんですよね。
CEOセオさんの見立てでは、自社制作のオリジナルで売ったcomicoは、ライセンス供給で量を増やしたピッコマに勝てませんでした。LINEマンガも同じモデルで、ユーザーはそちらへ流れていったといいます。
一方でCEOセオさんは、もしコンテンツが掛け捨てではなく積み上がっていくものであれば、オリジナル作品のほうが伸びた可能性もあると付け加えています。
縦読みは「機能」にすぎなかった
CEOセオさんは、縦読みという企画を作ったのはcomicoだったと強調します。ただ縦読みはビジネスモデル特許 ── ビジネスの仕組みや方法に関する発明に与えられる特許。単なるアイデアだけでは認められず、技術的な実装を伴うものが対象になりますのようなものではないため、他社も参入できました。
CEOセオさんは、縦読みと待てば無料の違いを「機能」と「サービス」で説明します。縦読みは機能、待てば無料はサービスであり、機能だけでは人は来ないという考え方です。
他社もすぐ真似できる読み方の仕組みで、それだけでは人を呼べない
毎日戻ってくる理由を作るマーケティングの工夫
CEOセオさんは車を例に挙げます。いくらハイパフォーマンスのエンジンを積んでも、それだけで売れるわけではないという話です。
フェラーリを買う理由というのは、やっぱりあのフェラーリというブランドのイメージとかね、やっぱりあの乗った時の自分の体験とか、そういったものでフェラーリっていうのは売れるわけですね。
CEOセオさんによれば、フェラーリはブランドイメージ、乗ったときの体験、転売性などを含めて買われており、機能そのものを買っているわけではありません。
ただし漫画には、みんな同じ価格で売っていかなければならないガイドラインがあり、価格を上げ下げすることはできないとCEOセオさんは補足します。それでも、機能だけで人を取れるほど甘くはないのが今の現実だという見方です。
CEOセオさんはユニクロも例に挙げます。快適であることはもう当たり前で、その上でサイズ感や、ファッションデザイナーと組んだ流行のセンスまで提供しなければ、消費者は満足しなくなっているといいます。
国外では先に撤退、移行先のめちゃコミも大赤字
CEOセオさんによれば、NHNは韓国・英語圏・フランスで、電子コミック配信サービスの終了を2025年10月31日にすでに発表しています。日本の撤退はそれから時間をかけて進められたもので、撤退計画としては時間をかけてきたと言えます。
comicoの作品の移行先であるめちゃコミも、厳しい状況にあります。めちゃコミの運営会社は営業赤字60億を発表しています。
めちゃコミの運営会社は、ブラックストーン ── アメリカの大手投資会社。企業買収や不動産などへの投資を手がけるプライベート・エクイティの代表的なプレイヤーですが2024年にTOB ── 株式公開買い付け。買い付ける価格や期間を公表し、市場外で株主から株式を買い集める方法ですで買収しました。CEOセオさんは、高い金額で買ったことで544億円の特別損失が出て、最終的に341億の赤字になったと説明します。
2024年3月期(旧アムタス時代)は売上高558億円、最終黒字50億
営業赤字60億、特別損失544億円を含め最終赤字341億
旧アムタス時代は好調だった会社が、一転して大赤字に転落しています。comicoの作品はそこへ移籍することになり、CEOセオさんは前途多難だと見ています。
電子コミック市場はもう伸びない?
CEOセオさんは、個々のプラットフォームや出版業界の事情だけでなく、電子コミック市場そのものが横ばいになっていると指摘します。
電子コミック市場は、2025年で6846億円、前年比プラス2.1%の成長にとどまりました。前年の2024年は6700億で、前年比3.9%伸びていたため、伸び率は確実に鈍化しています。
CEOセオさんは、爆発的な急成長期が終わり、年数パーセントしか伸びない成熟産業に切り替わったと見ています。そうなると企業のバリュエーション ── 企業価値の評価額のこと。成長が見込める業界ほど高くつきやすく、成熟した業界では伸びにくくなりますもつきづらく、トッププレーヤーにならないと収益性も確保できません。
出版市場全体でも、2025年は紙と電子を合わせて1兆5400億で、マイナス1.6%でした。紙は4%のマイナスで、出版市場は4年連続のマイナスになっているといいます。
電子コミックは2019年の2500億から6年ほどで2倍以上に伸びた市場ですが、いまは踊り場に入っています。CEOセオさんは、成熟産業ではトップ3でも生き残るのが大変になると話します。
成長期
あらゆるプレーヤーが食べていける
成長の鈍化
伸び率が年数パーセントに落ちる
成熟期
1位が全部持っていく状況になり、上位5社でも厳しくなる
CEOセオさんは、こうした状況を「ウィナーテイクスオール ── 勝者総取り。市場の首位企業が利益やシェアの大半を獲得し、2位以下との差が大きく開く状態を指します」という言葉で表します。
2500万ダウンロードでも撤退する現実
CEOセオさんが紹介した利用中の電子書籍アプリの割合では、1位がピッコマで32%、LINEマンガが31%、Kindleストアが17%です。この3つでおよそ8割のシェアを占めています。
| 順位 | アプリ | 割合 |
|---|---|---|
| 1 | ピッコマ | 32% |
| 2 | LINEマンガ | 31% |
| 3 | Kindleストア | 17% |
上位3社で8割を占める市場で残りを取りにいくのは、プラットフォームビジネスとして当然厳しくなるとCEOセオさんは話します。
comico自体は、世界で累計3500万、国内でも2000万のダウンロードを達成したと発表しています。2026年には国内累計2500万突破という報道もあるといいます。
通常なら大きな成果と言えるダウンロード数でも、comicoは撤退に至りました。CEOセオさんは、そこに今の漫画アプリ市場の厳しい現実があると見ています。
黒字転換したタイミングでの撤退判断
CEOセオさんが面白いと指摘するのは、NHNコミコの業績です。NHNコミコは2025年12月期に最終利益1億6400万円で、6期連続の最終赤字から黒字転換していました。
NHNコミコは、黒字転換したまさにそのタイミングで、プラットフォームであるcomicoをやめると決断しました。CEOセオさんは、これをV字回復を取りにいく動き、新しいプレイヤーとして生き残るという表明でもあると受け止めています。
一方、競合のピッコマは2025年に初めて営業利益100億円を突破しています。comicoとピッコマの命運は、はっきり分かれました。
韓国勢が争う市場で、日本はどう戦うか
CEOセオさんは、漫画アプリのプラットフォームの多くが韓国勢だと指摘します。comicoはNHNの傘下、ピッコマはカカオの傘下、LINEマンガはLINEで、ほかにNAVER系のWEBTOON Entertainmentもあります。
韓国プレイヤーがプラットフォームで勝負を仕掛けられるのは、巨大資本を投じる立ち上げの戦い方ができるからだとCEOセオさんは見ています。
さらにCEOセオさんは、comicoのような大手がプラットフォームから制作側へ移ることで、今度は中堅の制作プレイヤーが厳しくなると予想します。プラットフォームでも負け、制作でも負けるということが起きうるという指摘です。
やっぱりこれは経営としてはやはりかなり集中と選択をしっかりしていかないと、なかなかこの漫画のプレイヤーとして勝つのは難しくなってきているということですね。
CEOセオさんは、日本はアニメが強い一方で、韓国もエンターテインメントコンテンツが非常に強いと話します。日本政府もアニメや漫画を世界に広げる方針を示しているため、海外展開も含めて日本の戦い方を改めて見直すことが大切だという考えです。
CEOセオさんは最後に、AIの進出も踏まえて、それをどう取り入れていくかを経営者は考える必要があると締めくくっています。
まとめ
comicoの撤退は、縦読みという企画を生んだ先駆者が、作品の量で勝負したピッコマに敗れた結果とCEOセオさんは見ています。背景には、機能だけでは勝てないという原則と、電子コミック市場の成熟による勝者総取りの構造があり、経営には選択と集中が求められているという解説です。
- comicoは来年1月6日に終了し、購入作品は条件付きで申請すればめちゃコミへ移行できる
- 縦読みは真似できる「機能」で、稼いだのは「待てば無料」と作品数で勝負したピッコマだった
- 機能で売ると、同じ機能が出たときに価格で負ける
- 電子コミック市場は成長率2.1%の成熟産業に入り、上位3アプリで約8割を占める
- NHNコミコは黒字転換のタイミングで制作会社への転換を選び、選択と集中を体現した


