アワード受賞と動画撮影の「硬さ」から始まる回
この回のテーマは、TwitterとSquareのCEOを兼ねるジャック・ドーシーです。本題に入る前に、草野さんから番組にうれしい知らせがあったことが共有されました。
Off Topicは、ポッドキャストアワード2020のSpotify NEXTクリエイター賞を受賞しました。草野さんも宮武さんも、まさか連絡が来るとは想定しておらず、驚いたと話しています。
これを機に、リスナーの方というか、皆さんに還元できるような、もっといいコンテンツが出せたらなとは思ってます。
宮武さんが「クオリティの高い深掘りコンテンツを出していきたい」と締めると、草野さんは「ちょっと硬いですね」とツッコミます。受賞に合わせた動画撮影でも、宮武さんはカメラを前に言葉が出ず、セリフを草野さんに任せたそうです。
カメラ向けられたらちょっとできなくなっちゃったんですよね。
和やかなやり取りのあと、草野さんは今回の話が個人的にもすごく面白い回になりそうだと前置きし、宮武さんが持ち込んだジャック・ドーシーの話題へ移ります。
同じCEOなのに株価で約100倍の差がついたのはなぜか
まず草野さんが、Squareのサービスを簡単に説明します。Squareは小さな店舗やカフェが簡単に決済できるPOSレジのような端末とシステムを提供し、業務管理やオンライン販売にも対応する決済系サービスです。
宮武さんは、昔のSquareがスマホに挿してカード決済できるドングル型のカードリーダーを売っていたことにも触れます。そのうえで、SquareとTwitterは同じジャック・ドーシーがCEOを務めているのに、株価のパフォーマンスに大きな差があると指摘しました。
宮武さんが示したのは、2020年12月末時点の数字です。Squareは2015年11月のIPO時に株価が9ドルで、そこから25倍に伸びました。一方、2013年11月にIPOしたTwitterは、2020年末までに約24%しか上がっていません。
草野さんは、決済とSNSという業種の期待値の違いもあるのではと尋ねます。宮武さんはそれもあるとしつつ、SnapchatやFacebookの伸びと比べてもTwitterは上がっていないと答えました。
そのため、アメリカのテック業界では「なぜTwitterのジャック・ドーシーは悪く、Squareのジャック・ドーシーは良いのか」という議論が長く続き、2社のCEO兼任は厳しいのでTwitterを辞めるべきだという声も出ていたといいます。
さらに、物言う株主であるアクティビスト投資家 ── 企業の株式をまとめて取得し、経営陣の交代や経営方針の変更などを求めて企業価値の向上を図る投資家。日本では「物言う株主」とも呼ばれますのエリオット・マネジメントが、ジャック・ドーシーをTwitterのCEOから外そうとするキャンペーンを始めた時期もありました。最終的に退任には至っていません。
ただ宮武さんによると、直近はTwitterも買収や新プロダクトの発表で株価が上がり、評価が変わり始めています。そこで議論は「ジャックは悪いCEOか」から、「なぜ2社の運営はここまで違ったのか」へ移っているそうです。
2社のCEOを兼ねる自由人、ジャック・ドーシーの経営スタイル
宮武さんはSquareの話に入る前に、2社のCEOを兼任した過去の例を挙げます。スティーブ・ジョブズは一時期ピクサーとAppleを率い、2006年にディズニーがピクサーを買収した際に株をディズニー株に換え、ピクサーの運営から離れました。
もう1人の例がテスラとスペースXを率いるイーロン・マスクです。宮武さんは、ジョブズは天才的でありながら兼任に大きなストレスを感じていたとされ、マスクも天才で「次元が違う」と話します。
宮武さんから見たジャック・ドーシーは、この2人とは違う落ち着いたタイプです。旅行をしたり、コロナ前から週1回は自宅で仕事をしたり、ミーティングをあまり入れなかったりする人物だといいます。
ジャック・ドーシーはセレンディピティ ── 偶然の出会いや思いがけない発見を指す言葉。計画していなかった出来事から価値あるものを見つけることを意味しますを好み、オフィスを歩き回って、たまたま見かけた人に話しかけるのが好きだそうです。
ジャック・ドーシーが一度Twitterをクビになった理由の1つも、この自由さにあったと宮武さんは紹介します。共同創業者のエヴァン・ウィリアムズは、ジャック・ドーシーが早めに退社することを問題視していました。
しかも早く帰る理由がファッションデザインの授業を取るためなんです。
草野さんは、ジャック・ドーシーをアーティスティックでヒッピーっぽい人物だと表現します。宮武さんによれば、ジャック・ドーシーは自分ですべてを判断したくないタイプで、周囲に権限を渡す経営をしてきました。
一方で、Twitterでは「ジャック・ドーシーがいないと誰が判断するのか」が問題になり、プロダクト開発が遅れる原因にもなっていたといいます。朝はTwitter、午後はSquareにいることが多く、朝だけで判断しきれるのかという疑問も出ていたそうです。
プロダクトは良いのにネットワーク効果がなかったSquare
ジャック・ドーシーは、Twitterを辞めさせられたあとにSquareを立ち上げています。宮武さんはSquareのプロダクトを、ハードウェアとソフトウェアを融合させた良いプロダクトだと評価し、Appleから刺激を受けているのではないかと見ています。
Squareは中小企業がほぼ無償で、しかも簡単に使えるのが強みでした。ただし、加盟店を1社ずつ営業して獲得する必要があり、ネットワーク効果があまりありませんでした。
その弱点を変えたのが、個人向けのP2P送金アプリCash App ── Squareが提供する個人間送金アプリ。送金に加えて、ビットコインや株式の売買などの機能も備えていますです。元はSquare Cashという名前で、2013年に社内のハッカソンから生まれたサービスでした。
Cash Appの月間アクティブユーザー(MAU)は、2016年末の300万人から、現在は10倍以上の約3600万人に増えたと宮武さんは紹介します。
草野さんと宮武さんが口をそろえるのが、Cash Appのマーケティングのうまさです。アパレル販売やデザインのかっこよさに加え、草野さんはInstagramのアカウントが特にかっこいいと勧めています。
宮武さんによれば、2020年第2四半期(4〜6月)のCash Appの売上は1.2ビリオンで、300億ほどの黒字になっています。Twitterでは「いいねとリツイートでお金が当たるかもしれない」というギブアウェイ企画を行うなど、若者向けの獲得施策も巧みです。
その結果、Cash Appのユーザー獲得コストは5ドル以下に抑えられ、非常に儲かるビジネスになっているといいます。
ジャック・ドーシーのプレイブックにある3つのステップ
宮武さんは、SquareにものちのTwitterにも共通する「ジャック・ドーシーのプレイブック」があると説明します。プレイブックとは、事業を作るうえで繰り返し使う型のことで、3つのステップから成るといいます。
Squareが立ち上がった当時、カード決済ができる中小企業は少なく、多くは現金で対応していました。簡単にカード決済を導入できるサービスがなかったという課題は、Squareの創業メンバーの実体験から来ているそうです。
宮武さんはさらに、SquareとTwitterの成り立ちが逆だと整理します。Squareはツールから始まってネットワーク効果を加え、Twitterはネットワークから始まってツールが加わったという見方です。
ユーティリティ(ツール)から始まり、のちにCash Appでネットワーク効果を加えた
ネットワークから始まり、のちにユーティリティが加わってきた
伸びすぎたTwitterが方向性を見失ったのはなぜか
宮武さんは、Twitterをシンプルに見えて意外と複雑なプロダクトだと話します。そもそもTwitterは、会社としての方向性がなかなか決まらなかったといいます。
ジャック・ドーシーがクビになる頃まで、TwitterとFacebookはユーザー数で似たような伸び方をしていました。投資家の間では、TwitterがFacebookを超えるのではという声もありましたが、結果としてその領域には届かず、最終的にニュースやテキストの方向へ進んでいきます。
初期のTwitterで有名なのが、サービスが落ちたときに表示されるクジラの画面です。草野さんも「クジラですか」とすぐに反応しました。
宮武さんの説明では、Twitterは初期から伸びすぎてネットワークが集まりすぎ、技術的負債 ── 急いで開発したことなどで後回しにされた設計上の問題が、のちの改修や機能追加の負担になる状態を借金にたとえた言葉。英語ではテクニカルデットと呼ばれますを大量に抱えていました。
伸びすぎ
ユーザーとネットワークが急速に集まりすぎた
技術的負債
直さないといけないインフラが大量に残った
穴埋めに追われる
すぐ落ちるサービスへの対応が最優先になった
全体設計ができない
他の機能やプラットフォーム全体を考える余裕がなくなった
ジャック・ドーシーは2010年にTwitterのCEOを外れ、ディック・コストロが後任になりました。コストロのもとでTwitterは広告ビジネスに本格的に乗り出し、宮武さんも売上を作ること自体は悪くなかったと話します。
ただ今振り返ると、短期的な売上を目的にしていたのではないかというのが宮武さんの見方です。この期間には、広告系のMoPub ── モバイルアプリ向けの広告配信プラットフォーム。2013年にTwitterが買収しましたやチートデック、動画アプリのVineなど、買収が非常に多かったといいます。
(Vineは)本当にもったいないことした。
宮武さんが今振り返ると間違いだったと見る判断もあります。1つは、広く公開していたAPIを制限し、サードパーティーの開発者を締め出したことです。もう1つは、2人ともよく覚えていないという「Twitter Music」のローンチでした。
こうした買収やサービスの乱発の結果、ユーザーの成長率もエンゲージメントも落ちました。宮武さんは、サービス自体が良くなっていなかったことが理由で、マネタイズに走りすぎたという感覚だと話しています。
ジャック・ドーシーの復帰と、本当の評価
その後、ジャック・ドーシーはTwitterに戻ってきます。当時すでにSquareを運営しており、「仮」の復帰という話でしたが、今もCEOを続けています。草野さんは「括弧仮がずっと」と笑います。
Twitterといえばジャックっていうイメージがあります。
草野さんは、ジャック・ドーシーの自由人らしさはTwitter好きのユーザーから大きな支持を集めていると話します。宮武さんも、Twitterのコアファンほどジャック・ドーシーのビジョンに賛同していると応じました。
宮武さんが例に挙げたのは、自身が担当して投資した動画アプリTRASHです。TRASHはVSCOに買収された会社で、社長のハナさんはTRASHの前にVineのGMを務めていました。ハナさんはジャック・ドーシー自身が採用した人物で、ジャック・ドーシーのプロダクトビジョンに深く賛同していたといいます。
ジャックが好きな人はプロダクトガイというか、プロダクトが好きな人が多いイメージがありますよ。
ただ、復帰したジャック・ドーシーが向き合ったのは、インフラがごちゃごちゃなのに猛スピードで勝とうとしているチームでした。広告プロダクトすらきちんと作られておらず、コンテンツモデレーションの機能も存在しなかったそうです。
「ジャック・ドーシーが戻ってから株価が落ちた」という批判についても、宮武さんは株価の履歴を見ると違うと話します。復帰のタイミングで株価はすでに大きく落ちており、その後も多少は下がったものの、最初の1、2年に限った話だったといいます。
もちろんジャックさん完璧ではないですし、そのスクエアを一緒に運営してたからこそ遅いっていうのはあったんですよ。5年かかったので。
宮武さんは、作り直しにかけた5年は長く、途中でPeriscopeなどライブ配信に気を取られたことや、広告プロダクトやクリエイターへのフォーカスが遅れたことは事実だと認めます。ジャック・ドーシー自身も、投資家向けアップデートでイノベーションと判断の遅さを認めていたそうです。
外から見えなかった、5年間のインフラ作り直し
それでも宮武さんは、この5年間を見るとジャック・ドーシーは長期的に物事を見る人物だと考えています。ジャック・ドーシーが取り組んでいたのは、外からは見えにくい社内インフラの作り直しでした。
具体的には、広告プロダクトを一から作り直すこと、ローンチ当初から技術的負債で手が回らなかったプロダクトに取り組むこと、そしてコンテンツモデレーションに力を入れることです。
宮武さん自身も、以前TwitterのM&Aチームと話した経験があります。当時のTwitterは買収をかなり減らしていて、何を買収したいかと聞くと、コンテンツモデレーションのインフラの話ばかりが出てきたそうです。
なんかTwitter何考えてるんだろうみたいなことを気にしてたんですけど、今考えると、そこのインフラ周りをジャックさんが考えてたのかなっていうところで。
広告や売上のインフラ、コンテンツモデレーションは作り直しに時間がかかり、すぐには数字に表れません。その中でも、Twitterが重視するmDAU ── Monetizable Daily Active Usersの略。広告を表示できる、つまり収益化が可能な1日あたりのアクティブユーザー数を指すTwitter独自の指標ですは着実に伸びていたといいます。
宮武さんによると、TwitterのMAUはここ数年横ばいですが、DAUが伸びると売上も伸びます。インフラの作り直しがほぼ終わったタイミングで、ジャック・ドーシーの次の展開がようやく始まったというのが宮武さんの見立てです。
「ジャック・ドーシー第3章」でTwitterが見つけたターゲットは?
草野さんはこの局面を「ジャック・ドーシー第3章」と表現します。宮武さんは、スティーブ・ジョブズでいえばMacintosh、復帰後のiPodに続くiPhoneの時期にあたるかもしれないと例えました。
宮武さんは改めてSquareに戻り、Squareのプレイブックが加盟店側とユーザー側の両方に適用されていると整理します。加盟店側はPOSシステムを軸に中小企業を、ユーザー側はCash Appを軸に、銀行や送金サービスを使えなかった若者を狙っています。
Cash Appの周りには、ビットコインや株の売買などの関連サービスが広がっています。宮武さんはこれを、Squareの2つのエコシステムだと考えています。
一方のTwitterは、ユーザー側のエコシステムはすでに出来上がっていました。ただ誰でも使える反面、明確なターゲットがありませんでした。インフラが整った今、Squareと同じプレイブックを当てはめて、ようやく見つけたターゲットがクリエイターだと宮武さんは話します。
出たクリエイターの時代、クリエイターエコノミー。私たちの大好きな。
Twitterはクリエイターの発見や配信の場としては最適でしたが、マネタイズの支援はできていませんでした。直近では、Super Followsやコミュニティ、ニュースレターサービスのRevue ── Twitterが買収したニュースレター配信サービス。有料購読の仕組みも備えています、サブスク機能、投げ銭など、クリエイター向けのサービスが相次いで発表されています。
| 会社 | ユーザー側 | もう1つの側 |
|---|---|---|
| Square | Cash App(送金を軸に関連サービス) | 加盟店(POSを軸に関連サービス) |
| 既存のユーザー基盤 | クリエイター(サブスクや投げ銭を軸にSuper Followsなど) |
宮武さんは、Twitterがアメリカの主要SNSで初めて、広告以外のサブスクで大きく稼ぐ可能性があると見ています。Facebookを含め、主要SNSのベースは広告ビジネスです。
Twitterは価値を提供している割に、その価値を収益として回収できていませんでした。サブスクによって、ようやく価値を取れるようになるかもしれないと宮武さんは話します。
いつもディストリビューションだけやって、広告だけで評価されて悲しい。
TIDAL買収と最初のツイートのNFT化が示すもの
ここから宮武さんは、考察であり「こうなってほしい」という期待も込みだと断ったうえで、ジャック・ドーシーの直近の2つの動きに注目します。
1つ目は、Squareが音楽ストリーミングサービスのTIDAL ── 音楽ストリーミングサービス。高音質配信が特徴で、アーティストへの還元を重視してきたことで知られますを買収し、ミュージシャンのマネタイズ支援を約束したことです。
2つ目は、ジャック・ドーシーが投稿したTwitter史上最初のツイートを、NFT ── ブロックチェーン上で発行される、複製できない固有のデジタルデータ。デジタル作品などの所有権を示す用途で注目されていますとしてオークションにかけていることです。収録時点で2.5ミリオンまで値が上がっていましたが、最終額は決まっていないようです。
宮武さんがまず思い浮かべたのは、TIDAL上の音楽をすべてNFT化し、ミュージシャンが稼げるようにする構想です。大手アーティストがNFTを受け入れれば大きく儲かる可能性があり、Squareと連携して買えるようになるかもしれないといいます。
宮武さんは、Squareはまだイーサリアムに対応していないものの、対応すればSquareで全部買えるようになるという構図を描きます。ただ、宮武さん個人はそれ以上に大きな野望があると考えています。
TwitterとSquareは合併するのか?
宮武さんの結論は、ジャック・ドーシーはTwitterとSquareを合併し、1つの会社にしたいのではないかというものです。
根拠は、先ほど整理したエコシステムの重なりです。Squareは加盟店とユーザーの両側で3ステップのプレイブックを回しており、Twitterにもいま似たエコシステムができつつあります。
同じ社長だから同じ考え方になる、という理由もあります。宮武さんはそれに加え、Off Topicで繰り返し話してきた「クリエイターは次世代のブランド」という見方を持ち出します。
クリエイターを次世代の中小企業と捉えれば、中小企業を支えるSquareと、クリエイターを支え始めたTwitterのエコシステムが合わさるのは自然な流れだと宮武さんは話します。
えー、ジャック天才ですか?ジャックここで伏線回収してくる。天才すぎる。
宮武さんがもう1つ注目するのは、Twitterがクリエイター向け機能やECボタンを発表する一方で、裏側の決済・金融サービスについてはほとんど語っていない点です。草野さんも、Squareの名前が出ないことに「おやおや」と反応します。
Twitterにクリエイターのエコシステムができる
サブスクや投げ銭でクリエイターが稼ぐ
裏側にSquareの決済が入る
クリエイターや加盟店の決済をSquareが担う
全TwitterアカウントがCash Appアカウントになる
ビジネスアカウントも銀行口座なしで代金を受け取れる
ユーザー側も、全TwitterアカウントがCash Appアカウントになればわかりやすいと宮武さんは話します。Twitterはビジネスアカウントも作ろうとしているため、ビジネスも銀行口座を作らずに代金を受け取れるようになります。
NFTネイティブのSNSという最強のクリエイタープラットフォーム
宮武さんの考察には、さらにNFTが加わります。前回の配信で、Twitterがニュースレターやツイート、短尺と長尺の音声など、さまざまなコンテンツを作るプラットフォームになると話していたことが前提です。
今後はTIDALの影響で音楽が入る可能性もあり、そのすべてのコンテンツをNFTで裏付けられるようにすれば、圧倒的に強いクリエイタープラットフォームになると宮武さんは見ています。
この方向性に行った場合に、Twitterって初のNFTネイティブのSNSプラットフォームになりますと。
シリコンバレーではNFTの活用法として、NFTネイティブ版のYouTube、Instagram、TikTok、Substack、LinkedIn、Spotify、Amazonを作るべきだという議論が盛んだそうです。宮武さんは、ゼロから作るより既存プラットフォームが取り入れれば圧倒的に強くなると話します。
ジャック・ドーシーはビットコインやブロックチェーンが好きで、自分の最初のツイートをオークションにかけて事例も作っています。ブロックチェーンベースのSNSインフラを作ろうとしているというニュースもありました。
その全部の彼の動きを見ると、あれ?意外と一つの方向性に全部結んでるのかなっていう。
宮武さんは、Twitterはインフラを整えないと次へ進めなかっただけで、いまようやく2つのエコシステムを作っている最中だと整理します。成功するかはわからないとしつつ、出来上がれば今後の展開が非常に面白いと話しています。
TwitterアカウントがCash Appに、銀行口座になる未来
宮武さんの想像はさらに広がります。全TwitterアカウントがCash Appになり、Squareが裏側に入れば、バンキングサービスも追加され、Twitterアカウントを作るだけで銀行口座ができる可能性もあるといいます。
金融に進出するサービスは多く、AppleやAmazonも取り組んでいます。それでも、同じCEOが率いる別々の会社が掛け合わさって大きなものになる進化はなかなかないと、草野さんも宮武さんも話します。
僕もこれをいろんな人の分析とか読んで全部組み合わせて、あれって思った瞬間にちょっと鳥肌立って。
合併には、ジャック・ドーシーの支配力という観点もあります。宮武さんによれば、ジャック・ドーシーはTwitter株を2、3%しか持っておらず、Squareは12、13%を持っています。
2社を1つにすれば、ジャック・ドーシーは両社のCEOとして完全なトップになり、決定権を握れると宮武さんは見ています。草野さんは「それはそれでちょっと怖い」と返しました。
宮武さんは、株式の比率上は逆らえるとしたうえで、全く違う2社を合わせてより大きな会社を作れれば、Snapchatは軽く超え、Facebookなどと並ぶトップティアに入ると話します。草野さんは、クリエイターエコノミーの未来を左右する展開になりそうだと受け止めました。
「覚醒」ではなく、気づけなかっただけかもしれない
草野さんは、クリエイター支援や音楽サービス、ビットコインといった要素が、自由人でアーティストっぽいジャック・ドーシーらしい未来だと話します。
宮武さんは、ジャック・ドーシーが2019年あたりから本当にTwitterが好きになった、という趣旨の発言をしていたことを紹介します。草野さんは「それまで嫌いだったんですか?」とツッコみ、宮武さんも「それはそれで問題」と笑います。
宮武さんは、当時は意味がわからなかったその発言も、2019年末あたりからTwitterが変わり始めたと考えると理解できると話します。草野さんも、クリエイター向けサービスを次々出しながら決済の話を一切しないのは違和感しかないと振り返りました。
もしかしたら本当にこれが昔からの彼のビジョンで、ようやくそれが今回実現され始めてるっていう段階かもしれないですね。
宮武さんはあくまで仮説だと念を押しつつ、今後1年ほどでそうした動きが見え始めると考えています。2人は、今後のTwitterに注目しながらリサーチを続けていきたいと締めくくりました。
まとめ
SquareとTwitterの株価の差は、ジャック・ドーシーの能力の差ではなく、2社が置かれた状況の違いから生まれた可能性があります。宮武さんは、Twitterがインフラを作り直してクリエイターというターゲットを見つけたことで、Squareと同じプレイブックが動き始め、両社が1つになる未来も見えてきたと考察しています。
- Squareは2015年のIPOから25倍、Twitterは2013年のIPOから約24%と、株価に大きな差がついていた
- ジャック・ドーシーのプレイブックは「無償で簡単」「未開拓層を狙う」「関連サービスを広げる」の3ステップ
- Twitterは伸びすぎによる技術的負債を抱え、ジャック・ドーシーは復帰後の5年間を見えにくいインフラの作り直しに費やした
- クリエイターを次世代の中小企業と捉えると、TwitterとSquareのエコシステムは自然に重なる
- TIDAL買収や最初のツイートのNFT化から、宮武さんはNFTネイティブSNSと両社合併の可能性を仮説として描いている







