年間テーマ発表はなぜ「フリ」と「オチ」に分かれたのか
Off Topicは毎年年末に、その年のポッドキャストや記事に通底していた1つのテーマを発表しています。宮武さんによると、この年末企画は今年で3年目になります。
2020年のテーマは「アテンション・アンド・トラスト・エコノミー」、2021年は「コンポーゼンカルチャー」でした。2022年版は去年と違い、2回に分けて発表する形を取っています。
あの、今日はそのテーマの名前を発表しませんと。
今日がフリで、来週がオチなので、来週そこの(テーマの)名前の発表をしたいと思うんですけど。
宮武さんは今回、テーマにたどり着くまでの背景と課題感を、「世界がいろんなシステムで作られている」という切り口で話すと説明します。草野さんもテーマの中身は直前まで知らされておらず、一リスナーとして楽しみにしていたと話しています。
宮武さんが挙げるシステムの例は、インターネット、教育制度、メディア、マーケティングなどです。なぜ今の状況にあるのか、課題は何か、次の進化はどこにあるのかを知るには、アメリカの100年以上前の歴史に戻る必要があるといいます。
1880〜1920年代は「パッションプロジェクトの博物館」を作った時代だった
宮武さんが注目するのは、アメリカの1880年あたりから1920〜30年代までの期間です。この時期に作られたものが、今の世界のベースになっているという見方を紹介します。
この時期には、鉄道のネットワーク、テレグラフのネットワークが作られ、それが後に電話、さらにラジオのネットワークへとつながりました。高速道路や電気の一般普及もこのタイミングで始まり、当時作られたものの多くが今も使われています。
宮武さんは収録当日の朝、Stripe ── オンライン決済のインフラを提供するアメリカのフィンテック企業。ジョン・コリソンは兄のパトリックとともに同社を創業しました創業者のジョン・コリソンさんのツイートを見たといいます。その内容は「世界はいろんなパッションプロジェクトの博物館だ」というものでした。
大人になるとともに、自分の周りの、当たり前だと思って存在してたものが、実はそれを実現するためにめちゃくちゃパッションを持った人たちがそれを実現させたんだと。
それはそう。それはそう。
宮武さんは、住んでいる家もホテルも鉄道も街も、作るにはいろんな努力が必要だったのに、後々当たり前になるので忘れてしまうと話します。
当時の起業家として挙がるのは、今では「泥棒男爵」とも呼ばれるロックフェラーやカーネギー、鉄道ネットワークを作った人たち、スタンフォード大学の創業者リーランド・スタンフォードなどです。資金を出すVC的な存在として、JPモルガンもいました。
宮武さんは脱線として、JPモルガンには元々イギリスとアメリカの2つの会社があったと紹介します。成長スピードが落ちてきたイギリスのお金を、次の成長領域であるアメリカに移す資金移動が、その理由の一部だったといいます。
ロサンゼルスは「嘘の広告」から生まれた街?
宮武さんによると、1880〜1920年代は新しい都市を作る企業プロジェクトがまだ行われていた時代でした。Wikipediaには「American City Founders」というページがあり、アメリカの都市を作った起業家が100人以上リスト化されているといいます。
もうすでに存在してるから当たり前すぎて考えないですけど、そうですよね。誰かがこの土をコンクリートにしてみたいな、道路作ってお店作ってみたいな人たちがいたわけですもんね。
宮武さんが特に面白いと挙げたのが、1880年以降に大きく成長したロサンゼルスの創業物語です。LAは元々砂漠で、水がない土地でした。
西海岸の人たちはLAを大きな街にするため、ニューヨークなど東海岸に「素晴らしい場所だから来てください」という広告を出し始めました。宮武さんが実際の広告画像を見たところ、緑がいっぱいでオレンジなどのフルーツが大量にある、という完全な嘘の内容だったといいます。
ただ、当時は飛行機とかもなかったわけなんで、見に行けないんですよ、誰も。
東海岸の人たちは自分の人生を捨てて西海岸へ向かい、そこで砂漠に出会います。草野さんは「思ってたのと違うって」と笑いつつ、ハングリーな人たちが集まった街だと受け止めました。
宮武さんは、LAは悪い意味で言えば嘘から生まれた街だとしながらも、楽園になれるという可能性に人生を賭けた人が集まった結果、今では都心部に400万人ほどが住んでいると話します。120年前の出来事が今になってようやく生きている、という見方です。
インフラに100兆円を使っても、なぜ何も作られないのか
宮武さんは、新しいシステムとしてその後に作られたのはほぼインターネットだけだと指摘します。1960〜70年代以降、インターネットを除けば、新しい街、交通ネットワーク、ダム、病院、銀行、大学を作ることが非常に難しくなったといいます。
アメリカは去年と今年、インフラ包括法案 ── 道路や橋、港湾、通信網などの整備に巨額の連邦予算を投じる法律。2021年に成立した超党派インフラ投資法などを指しますで100兆円以上の規模の予算を何回か出しています。それでも新しい港は作られず、草野さんはサプライチェーンの問題にも触れました。
宮武さんの見立てでは、ビット、つまりデジタル領域ではイノベーションがあった一方、原子、つまり実際の「もの」のイノベーションは停滞していました。宇宙旅行や医療もその例で、何が規制され何が規制されていないかが、原因の一部だといいます。
宮武さんは例として、新しいソフトウェア企業は1000万円あれば作れるのに、新しい薬は100億円以上、場合によっては数千億円かかると話します。アメリカのFDA ── アメリカ食品医薬品局。食品や医薬品、医療機器などの安全性と有効性を審査し、販売を承認する連邦政府の機関ですの承認を通すのにそれくらいかかるためです。
1000万円ほどで新しく作れる。デジタル領域ではイノベーションが続いてきた
FDAを通すのに100億円以上、場合によっては数千億円かかる。「もの」の領域は停滞してきた
宮武さんは架空の思考実験として、もしFDAと同じ規制がビデオゲームにかかっていたら、ゲームが安全かを確かめる二重盲検を何年も続ける必要があり、新しいゲームはほぼ生まれなかっただろうと話します。
投機(スペキュレーション)は悪なのか。Fyre FestivalとAppleの株
宮武さんは、イノベーションには投機、つまりスペキュレーションが必要だと話します。LAの創業物語を今誰かが再現しようとすれば、「そもそも砂漠じゃん」で絶対うまくいかないだろうといいます。
今で最も近い事例として宮武さんが挙げるのが、ファイヤーフェスティバル ── 2017年にバハマで開催予定だった高級音楽フェス「Fyre Festival」。豪華な宿泊や出演者を宣伝したものの実態がなく、主催者は詐欺罪で有罪となりましたです。草野さんは、ラグジュアリーなテントで音楽を楽しめると思ったら何もなかったフェスだと補足しました。
宮武さんは、LAもFyre Festivalも可能性を信じて人が集まる点で投資と似ており、今のWeb3領域にも同じ構図があると話します。メディアでは投機はネガティブに語られがちですが、価格が下がった瞬間に「ほら言ったぞ」と言われるだけで、イノベーションはそもそも新しいものの価値が上がることへのベットだといいます。
もちろん悪いスペキュレーションのものもいっぱいあるんですけど、スペキュレーション自体が悪いっていう話ではなくて。
宮武さんが最も面白い事例として挙げたのがAppleです。AppleがIPOした際、マサチューセッツ州は「Appleは詐欺で、絶対うまくいかない」という理由で、投資家を守るために個人投資家がApple株を購入できないルールを作ったといいます。
こんな会社がうまくいかないから、今投資すると絶対お金、ゼロになっちゃうんで。
宮武さんは、アメリカという国自体も、何があるかわからない土地へイギリスからボートで渡るスペキュレーションから始まったと話します。それなのにここ30〜40年、デジタルのリスクは取っていいのに、アナログのリスクは取ってはいけないような状況が続いているといいます。
1971年にアメリカで何が起きたのか
宮武さんは、規制によって資金の行き先が誘導されていると話し、例としてエネルギー領域を挙げます。その停滞を象徴するのが、1971年という年です。
宮武さんが紹介したのが「WTF Happened in 1971」というサイトです。1971年を含むさまざまなグラフを並べたもので、そこから明らかな停滞が見えるといいます。草野さんは、1971年が気になっている人がたくさんいることに驚いていました。
サイトによれば、1948年から1972年までアメリカの生産性と給料の成長率はほぼ同じでした。ところが1971年から、生産性だけが上がり続け、給料は停滞するようになったといいます。
1948〜1972年は生産性と給料の成長率がほぼ同じ。上流・中流・下層の給料も同じくらい上がっていた
1971年以降、生産性だけが上がり給料は停滞。上流層の給料の伸びが圧倒的に大きくなった
ほかにも宮武さんは、同じ頃からの変化をいくつも紹介しています。インフレの上昇、電気・飲食・住宅価格の高騰、GDP比で見た国の負債の増加、民主党と共和党の対立の深まりなどです。
教育では読書・数学・科学のレベルが停滞する一方、学校の管理系スタッフが大幅に増えました。病院でも管理スタッフが増えたのに医者の数はあまり増えず、弁護士人口は急増したといいます。宮武さんは、弁護士の増加は需要が上がったためだろうと見ています。
さらに結婚年齢の上昇、親と住む成人の割合の増加、メディアや政府への信頼度の低下も、このあたりから始まったと紹介されました。
環境保護庁と原発1000基計画、勝ったのはどちらか
1971年以降の停滞の背景として、宮武さんは規制の具体例を挙げます。ニクソン大統領は1970年にEPA ── 米国環境保護庁。大気や水質の汚染規制など、環境保護に関する規制を担う連邦政府の機関ですを作りました。
その数年後、1973年ごろにニクソン大統領は「プロジェクト・インディペンデンス」を立ち上げ、2000年までに原子力発電所を1000施設作るという目標を掲げたといいます。
環境保護庁って、多分、原子力発電所を作りたくないはずじゃないですか。
宮武さんによると、2つはまったく別々のビジョンだったため、最終的にどちらかが勝つことになりました。アメリカではEPAが勝ち、過去40年ほど原子力発電所が1基も作られていないといいます。
宮武さんはこれを、規制が開発を止めている1つの事例にすぎないと位置づけます。規制は全体の問題の一部でしかない、という前置きで、話はシステムそのものへ移ります。
システムが一般化すると「ゲーム」になる
宮武さんの見立てでは、1880〜1920年のイノベーションから生まれたのが新しいシステムでした。進歩主義やウィルソン主義のような考え方、官僚制、工場、マスメディア、学校などの教育制度がそれにあたります。
これらのシステムは、その後20〜30年で一般化しました。宮武さんは、一般化するとシステムはゲーム化されると話します。
会社なら、新入社員として入り、社内政治を通り抜けて昇進し、いずれ経営者や社長になる道のりがあります。研究施設なら、大学院生から始めて、読む人が少ない論文でもとにかく数を貯め、役職を上げて最終的に施設を運営する、という流れがあると宮武さんは説明します。
イノベーション
1880〜1920年に新しい技術やネットワークが生まれる
システムの誕生
官僚制、工場、マスメディア、教育制度などが作られる
一般化
その後20〜30年でシステムが当たり前になる
ゲーム化
人々はシステム内でどう上に行くかを遊ぶようになる
学校は学ぶ場所か、「いい成績を取る」ゲームか
宮武さんが最もわかりやすい例として挙げるのが学校です。学校は本来学ぶ場所のはずなのに、学生は学んでいるというより「学校というゲーム」を遊んでいるだけだといいます。
学校って明確なKPIがあるじゃないですか。その学生にとっていい成績を取るっていう。
いい成績を取るっていうのがKPIになった瞬間、それって学ぶことではないんですよね。
宮武さんによると、成績を取る手法は何でもよくなるため、徹夜で覚えてテストを受け、翌日には何を学んだかわからない、ということが起きます。宮武さんは、そういうシステムなので仕方ないとしつつ、結果としてテストを取るのがうまい人たちを作っただけだと話します。
一方で宮武さんは、この仕組みは元々悪くない意図で作られたはずだとも話します。大学の研究施設の仕組みを1940年ごろに作ったのは、レイセオン ── アメリカ最大級の防衛企業の1つ。ミサイルやレーダーなどを手がけていますの創業者でもあるヴァネヴァー・ブッシュさんでした。
ヴァネヴァー・ブッシュさんの狙いは、最も効率よく最大のアウトプットを出すことでした。宮武さんは、学校の成績も本来は「生産性が高い人」を表すKPIだったと説明し、草野さんは「頭がいい、勉強ができるじゃなくて、生産性が」と受け止めています。
生産性が高い人を見分けるためのKPIとして設計された
いい成績を取ること自体が目的になり、学生はそれをゲームとして攻略する
システムはスケールすると自分を守ろうとする
宮武さんは、過去50年ほど社会はシステム内でどれだけ活躍できるかを遊んできた一方、アウトプットとしての効率は悪くなったと話します。それなのにインフラ包括法案のように、既存システムへの資金提供はどんどん大きくなっているといいます。
宮武さんは、アメリカ政府が大学にお金を費やしても学費の高騰が直らない理由を、システムが自分を守ろうとしているからだと見ています。
例として紹介されたのが、アメリカ国立衛生研究所 ── National Institutes of Health(NIH)。医学・生命科学研究を担う米国の機関で、外部の研究者にも多額の研究助成金を出していますの助成金の調査です。1980年から2012年の約30年間について、助成金を受け取った人の年齢を調べたものだといいます。
本来なら、助成金を最も多く受け取る年齢は毎年同じになるはずです。ところが調査では、1980年に30歳が最多なら1981年は31歳というように、最多の年齢がほぼ1年ごとに1歳ずつ上がっていたと宮武さんは紹介します。
もちろんこれは僕もこのエビデンスはないですけど、もしかしたら同じ人たちがもらってるんじゃないかっていう。
宮武さんは根拠はないと断ったうえで、システム内の同じプレイヤーが自分たちにお金が流れるようにしているのではないか、データとしては怪しいと話します。結果として、元々若い人が受け取っていた助成金が、今では年をとった人たちに渡るようになったといいます。
こういうシステムだからねって。しょうがない、しょうがないですよね。
しょうがないですよって言いながら、結局自分たちを守るために。
銀行も病院もなぜ新しく作れなくなったのか
宮武さんは銀行のシステムも例に挙げます。アメリカの3大銀行はJPモルガン、シティ、バンク・オブ・アメリカで、2008年のリーマンショック ── 2008年に米投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻したことをきっかけに広がった世界的な金融危機ですの際にはアメリカ政府に救済されました。
当時、アメリカ中で「二度と起こさないために銀行を増やし競争を増やすべきだ」と言われていたにもかかわらず、今もこの3社が最も大きく、2008〜2009年当時よりさらに大きくなっていると宮武さんは話します。新しい銀行の設立許可を取るのはほぼ無理になっているといいます。
サンフランシスコで新しい家を建てること、新しい大学や病院を作ることも難しくなっています。宮武さんは、その許可を決める人たちが既存のシステム内にいて、新しい病院を作るには他の病院の許可が必要だからだと説明します。
Kodakはなぜ自社が作ったデジタルカメラを封印したのか
宮武さんは、同じことが会社レベルでも起きていると話し、フィルムカメラのKodakを例に挙げます。Kodakは一時期300億ドル規模、世界トップ30に入る会社でしたが、今は4億ドルほどまで下がっているといいます。
フィルムの次に来た技術はデジタルカメラでした。宮武さんによると、Kodakはこの変化を予想していただけでなく、1975年に自社の研究開発施設でデジタルカメラを作っていました。
それを見て何をやったかというと、そのプロジェクトを止めたんですよ。
その経営者層がその作ったその従業員にこれを誰にも言うなと。
宮武さんは、フィルム事業はマージンが高くいいビジネスだったため、Kodakは自分たちが作ったシステムを守ろうとしたのだと話します。デジタルカメラの先には写真編集ソフトや、InstagramやSnapchatまでつながる世界があり、そちらの方が儲かっていたかもしれないといいます。
草野さんは「既存の自社サービスに影響するからやめておこう」という話はあるあるだと受け止めます。宮武さんは、これがいわゆるイノベーターズジレンマ ── 優良な大企業が既存顧客や既存事業を守ろうとするあまり、新しい破壊的技術への対応が遅れて衰退してしまう現象。クレイトン・クリステンセンが提唱しましただとし、既存事業を守りながら新しいことをしようとするMetaのメタバース投資は、見ていて複雑だと話しています。
TwitterやInstagramは30億人が遊ぶゲーム
宮武さんは、SNSなどオンライン上のものもシステム化されており、フォロワーを増やすことなども含めてゲームに見えると話します。Off Topic自身もこのゲームを遊んでいるといいます。
見方としては、Twitter、Facebook、Instagramっていうのはただのゲームでしかなくて。
宮武さんによると、それは30億人のアクティブユーザーがいるゲームで、うまくやれば事業につながります。宮武さん自身やOff TopicがTwitterに投稿する理由も、事業につなげるためでもあると話しています。
宮武さんは、イーロン・マスクさんがTwitterで非常にアクティブなのも、このシステムを理解しているからだと見ています。ゲームに勝てばテスラのマーケティングになり、草野さんはその延長でTwitterの買収にも至ったのではないかと話しました。
宮武さんは、去年リル・ナズ・Xさんを世界一のマーケターだと言ったのも、オンライン上のゲームがリアルな世界にどうつながるか、その全体のシステムを理解しているからだと振り返ります。カルチャーやステータス、Off Topicで話してきたカレントシングやシンキングラダーも、1つのメンタルシステムだといいます。
システムは最終的に「宗教」になる
草野さんは、システムを守ろうとする人間ではなく、システムを利用して遊べる人が勝つということだと整理します。宮武さんは、利用するのが1つ目の選択肢で、2つ目は新しいシステムを自ら作りに行くことだが、そちらは圧倒的に難しいと応じます。
宮武さんによると、システムは同じような人や同じようなものを生み出し、それによってグループが作られます。そのグループ精神は、自分たちを変えようとする新しいアイデアの持ち主を倒そうとするといいます。
そう考えると、システムってただの、宗教でしかなくて。
宮武さんは、今の科学というアイデアも、ウォークやトランプイズムと同じくらいの宗教であり、シリコンバレーも宗教だと話します。システム化が最終段階に行くと宗教になる、という見方です。
そのうえで宮武さんは、起業やクリエイティビティ、新しい曲や本は、システムが隠しているもの、認めたくないものを暴き出すところから生まれると話します。前回話したミメーシスのように、人の真似をするだけでは新しいことは生み出せないといいます。
一方で、起業家やアーティストは人口のごく一部です。宮武さんは、ほとんどの人がシステム内でただのソルジャーとして動き、グループの考えに賛同しなければならず、イノベーションにつながる考えを持ってはいけないシステムになってしまったのではないかと問いかけます。
さらに宮武さんは、明日新しいシステムを作ったとしても、スケールすれば再びグループが生まれて宗教化し、新しいアイデアが生まれなくなると指摘します。だからこのサイクルを繰り返す必要があるといいます。
スケール
システムが広がり、同じような人やものを生み出す
グループ化
同質なグループが作られる
宗教化
グループ精神が、変えようとする人や新しいアイデアを倒そうとする
停滞
新しいアイデアが生まれにくくなる
新しいシステムは「危機」から生まれる
宮武さんは、新しいシステムが生まれるには劇的な危機が必要だと話します。既存のシステムは権力を強く持っているため、危機がなければ変えられないといいます。
それはやっぱスタートアップとかで、AirbnbとかUberが出た時期、結構リーマンショック起きたのと同じ時期だみたいな、そういうものと関係してます?
宮武さんはそれと強く関係していると答えます。今ならコロナ、サプライチェーン問題、ロシアとウクライナの問題は、これまでのシステムのアウトプットが失敗し続けた結果であり、同時に新しいシステムが生まれやすいタイミングだといいます。
コロナから生まれた例として宮武さんが挙げるのがmRNAワクチン ── ウイルスのたんぱく質の設計図となるmRNAを体内に届け、免疫を誘導するワクチン。新型コロナで初めて広く実用化されましたの開発です。バイオテック業界がずっと推していた新しい薬の作り方でしたが、提案に何千億円もかかり規制で止まっていたものが、危機によって一気に進んだといいます。
宮武さんは、人類が50年間月に行っていない理由も、アメリカ政府が優先していないことと規制の積み重ねにあると話します。アポロ計画の時代は冷戦下で、何でもいいから行かなければならず、LAに投資するように不確実な未来に賭けていたといいます。
冷戦下のアポロ計画やコロナ下のmRNAワクチンのように、規制やリスクを越えて一気に進む
優先されず規制が重なり、月面着陸のように50年間止まってしまう
システムを無視する、利用する、作る。次の100年の基盤へ
宮武さんは、ビジネスパーソンやアーティストなどリスナー全員が新しいシステムを作る必要はないと話します。1つ目の選択肢は、システムがあることを完全に無視することです。
まああの、無知は幸福とも言うと思うんですけど。
言い方。
宮武さんは、それでもハッピーな人はいるので1つの選択肢だとしたうえで、2つ目の選択肢としてゲームを理解してアドバンテージを持つことを挙げます。多くの人に役立つと考え、今回システムの話をしたかったといいます。
| 選択肢 | 内容 | 難しさ |
|---|---|---|
| 無視する | システムがあることを気にせず生きる | 「無知は幸福」でハッピーな人もいる |
| 利用する | ゲームを理解してアドバンテージを持つ | 多くの人に役立つ |
| 作る | 新しいシステムを自ら作りに行く | 圧倒的に難しい |
宮武さんは、イノベーションが停滞していたことは悲しい一方で、大きなチャンスがあると話します。1880年に生まれて約90年生きた人は、流せるトイレすら普及していない時代から、1969年の月面着陸までを見ていたといいます。
その人は車の普及や、悪い意味では原子爆弾の投下も見てきました。宮武さんは、これから似たような時代が来るのではないかと考えています。
宮武さんは、次の20〜30年間のイノベーションが、次の100年以上の生活の基盤となるシステムを作る可能性があると話します。草野さんの「システムを作った人が相当勝てるゲーム」という言葉に、宮武さんも同意しました。
次回は、システムが変わるタイミングと、Off Topicとして注目している新しいシステムについて話し、2022年のテーマ名が発表される予定です。
まとめ
今回のOff Topicは、2022年の年間テーマの前編として、1880〜1920年代に作られたシステムが一般化してゲーム化し、自己防衛によってイノベーションを止めてきた流れが語られました。そのうえで宮武さんは、危機の時代こそ新しいシステムが生まれるチャンスだと見ています。
- 今の世界の多くは、1880〜1920年代に情熱を持った起業家と投資家が作ったシステムの上に成り立っている
- 1971年以降、アメリカではデジタル以外の領域で停滞が見られ、規制はその原因の一部とされる
- システムは一般化するとゲーム化し、スケールすると学校、助成金、銀行、Kodakのように自分を守ろうとする
- システムとの向き合い方は、無視する、理解して利用する、新しく作るの3つ
- コロナやサプライチェーン問題などの危機は、次の100年の基盤となる新しいシステムが生まれる機会になりうる





