新聞社はなぜ生き残れなくなったのか
宮武さんがこの回でメディアを取り上げたきっかけは、2つの出来事です。1つは、あるYouTuberがAIウェアラブル企業の製品をレビューして話題になった件で、もう1つは数か月前にローンチした新しいスポーツ系ポッドキャストです。
宮武さんは、この2つが一見無関係に見えるかもしれないと認めつつ、今のメディアの状態をよく表していると考えています。今週は前者、来週は後者を中心に話す構成です。
宮武さんはメディア業界にとって少し暗い話になると前置きしたうえで、それは「進化」でもあるので個人的には良いことだと考えていると話します。
例えば新聞企業に関して言いますと、「より難しくなった」っていう話ではなくて、もう今生き残れない状況まで多分陥ってるかなと思っていて。
宮武さんが挙げる新聞社の苦しさの理由は複数あります。一番いいコンテンツを新聞社が持っているとは限らず、最もパーソナライズされたコンテンツでもなく、読者層についてのデータも乏しいことが多いといいます。
ビジネス面でも、広告主は「ジャーナリズムを支援したいから広告を出す」とは考えないため、新聞社は広告主からも切り離されている、と宮武さんは指摘します。
個人的にはGoogleとFacebookって一番フェアな戦い方をしたのかなと思っていて。一番ユーザーを集めた会社なので。
一部のメディアはGoogleやFacebookが広告売上を奪ったと批判していますが、宮武さんはそれをフェアな勝負でメディア企業が負けた結果と見ています。ただし、それによって優れたメディア組織がなくなった事実もあると付け加えます。
一方で宮武さんは、このシフトでニュースメディアそのものが終わったわけではないと強調します。草野さんもニューヨーク・タイムズやテレビはまだ人気だと応じ、宮武さんは新しい形のニュースメディアも出てきていると話します。
インターネットが変えた3つの要因
宮武さんは、従来の新聞業界と比べて、インターネットはメディアの形を3つの大きな要因で変えたと整理します。
ディストリビューションが無料に
最小限の努力で自分のコンテンツを出せるようになった
リーチの拡大
地域限定ではなくなり、メールアドレスなどで多くの人に届けられるようになった
市場規模(TAM)の変化
リーチの拡大によって、狙える市場の大きさそのものが変わった
宮武さんは比較として、ニューヨーク・タイムズ創刊時の数字を挙げます。人口50万人ほどのニューヨークで2.6万人が購読し、ローンチまでの費用は今のドル換算で1.4ミリオンほど、1年目の運営コストは今のドル換算で2.2ミリオンほどだったといいます。
一方、今はポッドキャストやブログなら数十ドルから数千ドル程度でメディアを立ち上げられる、と宮武さんは対比します。草野さんは「もうゼロ円からすぐにできますね」と応じています。
記者よりコンテンツそのものが評価される時代とは
宮武さんは、インターネット時代には組織のブランドや記者よりも、コンテンツそのものが良いかで評価されるようになると話します。SNSでバイラル化するのは「このコンテンツが面白かった」というものだからです。
草野さんは、記者個人が支持される場合でも、それは「その人が書くのが面白いから」バイラルするのだと補足しています。
今我々のやってる「オフトピック」は、すごい失礼な言い方ですけど、ニューヨークタイムズと同等レベルな場所で戦えるっていう。
宮武さんによれば、Off Topicのコンテンツがニューヨーク・タイムズの記事の横に並び、ブランドや内容次第で選ばれる時代になっています。めちゃくちゃいいコンテンツを持っていれば、ニューヨーク・タイムズのどの記事も超えられる可能性があるといいます。
(YouTubeの)全部のおすすめに並ぶのはテレビの局もあれば、芸能人もあれば、YouTuberもいれば、全然知らない人も並ぶみたいなの。最初多分みんな嫌だったっていうのはなんか似てるのかなとは思いました。
宮武さんは、新聞社が広告に寄せる道を選んだため、広告主がより良いプロダクトを選んだ瞬間に危機的な立場に陥ったと振り返ります。番組では先々週ごろ、広告ファーストかサブスクファーストか、メディア企業が改めてPMFを達成しているかを検証すべきだという話をしていたといいます。
広告を選んだ結果、多くのメディア企業がクリックベイトやセンセーショナリズムに傾いた、と宮武さんは指摘し、ビジネスのあり方そのものを考え直す必要があると述べます。
なぜ平均的なメディアは読まれなくなるのか
宮武さんの見立てでは、今後はジャーナリズムやメディアがより小規模で行われ、場合によっては個人1人で運営する時代になる可能性があります。SubstackやYouTubeなどがその例として挙がります。
個人は、めちゃくちゃジェネラルな話ではなくて、基本的には何かしらの得意分野を持つことだと思っていて。
宮武さんは、メディアをクオリティで並べると、かつては平均的なメディアが多く、低いものと高いものが少ないベルカーブ ── 釣鐘型の分布のこと。正規分布とも呼ばれ、平均付近に多くが集まり、両端に行くほど少なくなる形を指します型だったと説明します。
インターネット時代になっても、供給側のベルカーブは最初は変わりません。変わるのは消費されるものであり、それによって最終的にベルカーブ自体が変わる、というのが宮武さんの説明です。
流通が有料で、地元の新聞など平均的なメディアでも読むしかなく、ユーザーは選べなかった
誰もが好きなメディアを選べるようになり、良いものが共有されてさらに読まれる、パワーロー的な形に近づく
選べるような時代に今なった中で、なぜわざわざ平均的なメディアを読むのかっていうところになるんですよ。読まないじゃないですか。
草野さんは、日本で翻訳されたものを読むより海外のメディアを直接見に行く人が増え、現地の話は現地の発信者から得るようになったと実感を話します。
宮武さんは、平均的なメディアが読まれる場面として美容室の待合室の雑誌を例に出し、スマホで好きなメディアを好きな時間に読める今は、消費がベルカーブ型にはならないと述べます。草野さんの質問に対しては、全部ではないもののアメリカでは一般に置いてある雑誌の多くは平均的だと答えています。
宮武さんは、ロングテールが伸びながらもよりパワーロー的になり、読まれる側に回る1つの方法がトピックのエキスパートになることだと話します。草野さんは、アメリカならエキスパートに尖っても市場が大きいと応じ、英語化できればよりニッチなトピックでも成り立つかもしれないと話しています。
メディアは本当に信頼できるのか
宮武さんは、日本でもすでに一部エキスパート化したメディアや、複数人でキュレーションする人たちがいると認めたうえで、アメリカのメディアへの信頼が大きく落ちていることを取り上げます。
宮武さんが紹介した最近の調査では、メディアがフェアで正確な報道をしていると信じるアメリカ人は32パーセントで、全く信頼していない人は39パーセントでした。宮武さんは、全く信頼しない層がかなり信頼する層を上回ったのは初めてかもしれないと話します。
信頼低下の大きな要因は民主党支持層の信頼が落ちたことだといいます。共和党支持層はここ10年、15年ほどもともと低く、それがさらに下がったと宮武さんは説明します。
個人的にそのメディアってただのブログとして見るべきだと思っているので。でも「メディア」って聞いた瞬間、なぜか信頼してしまう。
宮武さんは、この不思議さを示すものとしてゲルマン健忘効果 ── 自分が詳しい分野の記事の誤りには気づくのに、同じ媒体の別分野の記事は信じてしまう心理現象。作家マイケル・クライトンが物理学者マレー・ゲルマンにちなんで名付けたとされますを挙げます。
詳しい分野の記事を読む
間違いや誤った捉え方が多いことに気づく
次の記事へ進む
同じメディアの、自分が詳しくない分野の記事を読む
なぜか信じてしまう
さっき誤りに気づいたはずなのに、ほぼ全部正しいと受け取る
宮武さんは、記者は多くの記事を書かねばならず、調べる時間や情報源が限られることもあるので、誤りが出ること自体は一部仕方がないと話します。そのうえで、自分の会社について書かれた記事に「全然違う」と感じた経験は多くの人にあるはずだと述べます。
草野さんは、自分にその分野の真偽を測るコンパスがないから、与えられたら信じるしかないと応じます。
僕が草野さんと話してて、草野さんが何か詳しいトピックについて僕が話し始めて、めちゃくちゃ僕が間違った情報しか言わなかった場合に、僕が違うトピックを話したとしても、おそらく草野さんって疑うと思うんですよ。
宮武さんは、人が相手なら疑うのに、メディアになった瞬間そうならないところが健忘効果の面白さだと説明します。草野さんは、ゴシップや芸能ニュースは最初から疑って読めるが、政治や戦争のように自分で能動的に調べないとわからない話題は特に難しいと話します。
草野さんが「でもアメリカの人は信頼していないんですよね」と尋ねると、宮武さんは、そう言いながらもみんな読み続け、引用しているのだと答えます。宮武さんは、エキスパートではないと知りながらエキスパート扱いしてしまう点を不思議な現象と捉えています。
解決策としての新世代のエキスパート
これ(メディアの過剰な信頼)の解決法は、いわゆるもっとエキスパートが出てくることだと思うんですよ。すごい簡単に言うと。
宮武さんは、テック業界では経営者が直接話すことも多いが、それにはリスクもあり、第三者の目線が大事な場面もあると話します。全メディアを否定しているわけではなく、Off Topic自身もメディア的な役割を果たしているといいます。
宮武さんは、セラノス ── 血液検査技術を掲げて巨額の資金を集めた米国のスタートアップ。技術の実態がなかったことが報道で明らかになり、経営者は詐欺罪で有罪判決を受けましたを調査したウォール・ストリート・ジャーナルを素晴らしい例に挙げます。そのうえで、調査型の新世代の記者やジャーナリストとしてクリエイターが出てきていると見ています。
MKBHDのHumane AI Pin酷評レビューは無責任だったのか
ここで宮武さんが取り上げるのが、冒頭で触れた出来事です。ガジェット系YouTuberのMKBHDことマーカス・ブラウンリーさんが、Humane ── AIウェアラブルデバイスを開発する米国のスタートアップ。画面を持たず、服に付けて音声などで操作するAI Pinを発表しましたのAIウェアラブルピンをレビューし、テック業界で話題になりました。
Humaneは約1年前のTED Talkで、画面を見ずに目の前の世界に集中しながら使えるコンピューティングデバイスを紹介しました。宮武さんによれば、当時から多くのメディアが本当に実現できるのかと懸念していたといいます。
今年ようやく発売されたAI Pinのレビューは、ニューヨーク・タイムズ、The Verge、ウォール・ストリート・ジャーナルなど、ネガティブなものが多かったと宮武さんは話します。草野さんは、まだまだだと思いつつ、プロダクトのデザインは個人的に好きだといいます。
MKBHDさんのレビューは細かく、ファーストジェネレーションの新しいフォームファクターではあるが、彼が試したデバイスの中では全然ダメだという内容でした。動画のタイトルは「The Worst Product I've Ever Reviewed」でした。
この動画に対しては、厳しすぎる、Humaneが終わってしまうのではないか、ハードウェア作りは難しいのだからもっと好意的に見るべきだ、という声が上がりました。登録者1800万人を持つ人がこうしたタイトルを付けるのはメディアとしての責任を感じていない、クリック稼ぎではないか、という批判もあったといいます。
基本的にMKBHDの動画はめちゃくちゃフェアだったと思うんですよ。
宮武さんは、MKBHDさんはYouTuberなのでアルゴリズム上そうしたタイトルは普通で、他のレビューのタイトルもネガティブだったと話します。結果として責めるべきはレビューではなくプロダクトだ、というのが宮武さんの立場です。
個人的にはなんかそこまで言わなくてもいいんじゃないかなっていうのは思いますね。
草野さんも、クリエイターには表現の自由があり、正直なレビューは仕方ないと考えています。問題があるとすれば、MKBHDさんに匹敵するメディアがまだなく一強になっていることだと話します。
ちょっとその盛った表現とかしてたとしても、まあそれが本当にプロダクトが良かったら、手元に行った時に「そうじゃないね」ってなることもあると思うので。
Fiskerの株価下落と、レビュアーの責任
宮武さんは、草野さんの言うタイミングの問題が大事だったと応じます。MKBHDさんはHumaneの数週間前に、電気自動車会社のFisker ── 米国の電気自動車メーカー。上場企業でしたが、販売不振などで経営難に陥りましたの車を「一番最悪の車」という趣旨のタイトルでレビューしていました。
宮武さんによれば、動画だけのせいではなくプロダクト自体の問題もあるものの、その後Fiskerの株価は55パーセント下落しました。それもあって、今回のHumaneでも破産してしまうのではと懸念する人が出たと宮武さんは見ています。
草野さんは、カイリー・ジェンナーさんが「Snapchatはもう終わり」という趣旨の発言をして株価が落ちた例を思い出しつつ、それも一時的なもので、会社側は嫌だろうが止めることはできないと話します。
宮武さんも止めることはできないとし、MKBHDさんが1800万人の登録者を得たのは良い動画を作ってきたからだと述べます。逆に彼が製品を褒めて視聴者が買い、ひどい体験をすれば、それはそれで叩かれるといいます。
むしろ彼とすると、別になんか嘘をつかなければ、基本的にまあフェアですと。
宮武さんは、X(旧Twitter)に投稿した同じ動画ではタイトルがより柔らかかった点も懸念の一因だったかもしれないと触れます。そのうえで、普段は多くの製品を褒めていてネガティブな動画はレアだからこそ、今回はよりバズったのだろうと話します。
宮武さんが重要だと考えるのは、The Verge、ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、TechCrunchよりも、レビューだけをひたすら続けてきた個人のもとにユーザーが集まっている点です。
宮武さんは、ティム・クックさんやマーク・ザッカーバーグさんがテレビよりポッドキャスターやYouTuberのチャンネルに出る時間が増えているのも、パワーバランスのシフトの表れだと話します。
1人のレビュアーの時代と、多様なレビュアーの時代
草野さんは、複数人でコンテンツを作るメディアでは書き手ごとに思想が違い、1人のクリエイターでも持っていきたいナラティブはあると話します。メディアではそれを統一するのが難しいのではないか、という問いかけです。
宮武さんは、かつてもMKBHDさんに近い立場の人はいたと話します。テック系ならウォルト・モスバーグさんやデイビッド・ポーグさんがいて、その2人がほぼ全部の製品をレビューしていたといいます。
ウォルト・モスバーグさんやデイビッド・ポーグさんなど少数がほぼ全製品をレビューし、その言葉しかなかった
YouTubeなどに得意分野を持つ多様なテックレビュアーがいる
むしろ今の方が健全なのかもしれないと思うんですよ。
むしろ業界を潰せたのって、昔の方が潰せたんじゃないかっていう。
大企業にも正直にレビューできるか
草野さんは、テック系のレビューにもっとバラエティがあるとよいと話します。大きなガジェット系YouTuberにとってAppleの発表会に招待されるのはうれしいことで、そのぶんCMやプロダクトを批評しづらいのではないか、という懸念です。
草野さんは、Appleはもともと良いプロダクトを作っていて自分も好きだと前置きしつつ、今回の発表会で初めて批判が出たことに触れます。今後Appleがネガティブなことをしたとき、ずっとレビューしてきたクリエイターがどう反応するのかが気になるといいます。
宮武さんは、メディアでもSNSでも誰かが言い出すとみんなが乗るパターンが多いと話します。iPadのCMへの批判では、誰かが微妙だと言えたことで、多くの人が同じ意見を言えたのが大事だったといいます。
ただ同時に、なんか誰も言わなくなると、本当に誰も言わないっていう。そこのなんかみんなコピーし合ったりしちゃうので、それはなんかちょっとメディア業界のまあ悪いところでもあるかなと思いますよね。
レビュアーが多ければ誰かが声を上げるチャンスが高まる、というのが宮武さんの考えです。草野さんは、MKBHDさんが迎合せず、いいものはいい、悪いものは良くないというスタンスを取ってくれるのはクリエイターとしてありがたく、姿勢がすごくいいと話します。
ポッドキャストはなぜ信頼されるのか
宮武さんは、より信頼されるエキスパートメディアが出てくる場として、YouTubeに加えてポッドキャストが強いと考えています。データもそれを示しているといいます。
宮武さんが紹介したのはピュー研究所 ── 米国ワシントンD.C.に拠点を置く非営利の調査機関。政治、メディア、社会動向などに関する世論調査で知られていますの調査です。メディアを全く信頼しないアメリカ人が39パーセントだったのに対し、ポッドキャストで聞いたニュースは基本的に正確だと考える人は87パーセントでした。
同じ調査では、ポッドキャストで他のメディアでは得られないユニークなニュースを聞くことが少なくともたまにある人が73パーセント、常にある人が30パーセントだったと宮武さんは話します。草野さんは、声で人が介在していることが信頼につながるのではないかと応じています。
「本音っぽい」フェイクポッドキャスト広告の広がり
宮武さんは、ポッドキャストへの信頼の高さを背景に、フェイクポッドキャストが増えているという現象を紹介します。パターンは2つあるといいます。
1つ目はフェイクポッドキャスト広告です。TikTokやショート動画、リールで、役者がマイクの前でヘッドフォンを着け、カメラ目線にならず横を向き、背景にネオンサインまで置いて、会話の中で「最近使っためちゃくちゃいい商品がある」と宣伝します。でも実際はポッドキャストではありません。
草野さんは「賢いですね。嫌だけど」と反応し、それが許されるのかと尋ねます。宮武さんは、ハッシュタグで広告と入れればありなのではないかと答えています。
その代わり信頼度は落ちますけど。
宮武さんによれば、フリーランス系のサイトでは役者がこの仕事を請け負うと出品しており、1分間の広告で195ドル、日本円で3万円ほどです。多くのブランドが依頼しているらしく、月に数百万円稼ぐ人もいるといいます。
草野さんは日本では増えないでほしいと話し、人が話す映像は情報量が多くリアルに感じるため、役者だと余計に見分けがつかないと指摘します。宮武さんも、ポッドキャストは長尺で本音が出やすい場だからこそ信頼されるのだと応じます。
2つ目のパターンは広告ではなく、実際にはポッドキャストを運営していないのに、自分のコンテンツをバズらせるためにポッドキャスト風のショート動画を上げるクリエイターです。草野さんは、日本でもありそうで、それ自体はいいと思うが、広告のほうはすごい話だと話します。
日米のニュースポッドキャストはどう違うのか
草野さんは、アメリカにはニューヨーク・タイムズのThe Daily ── ニューヨーク・タイムズが配信するニュースポッドキャスト。毎回1つのニュースを掘り下げる形式で、米国で最も聴かれている番組の1つですや、別の制作のアメリカンライフのような番組があると話します。
草野さんによれば、The Dailyは1時間以上の回もあり、ニュースを題材にしつつディスカッションしたり長めに掘り下げたりします。そこから新しい発見があり、ニュースが本当だろうと感じられるのではないかといい、日本のニュース系ポッドキャストとは違うパターンもあると話します。
宮武さんは、全般的にアメリカのポッドキャストのほうが長いと応じます。草野さんも、CNNのようにヘッドラインだけを話す番組もあれば、非常に長いニュース番組もあると話しています。
宮武さんは今回のまとめとして、既存メディアはさまざまな形でディスラプトされており、ニュース業界ではクリエイターや新しいエキスパートが担い手として出てきていると述べます。
流通の独占が崩れる
インターネットにより、メディアがディストリビューションチャネルを抱えなくなった
アテンションの戦い
新しい人たちが参入し、注目の奪い合いになった
アテンションと信頼の戦い
注目を取りすぎてクリックベイトが流行り、信頼も問われるようになった
来週は同じ流れで、スポーツ業界でも新しいエキスパートメディアが次々に立ち上がっている話をする予定です。
ピュリストとツーリストの間に立つ人
最後に草野さんは、デザイナーのヴァージル・アブロー ── ファッションブランドOff-Whiteの創業者で、ルイ・ヴィトンのメンズ・アーティスティック・ディレクターも務めたデザイナー。2021年に亡くなりましたが語った、ピュリスト(純粋主義者)とツーリスト(観光客)という分け方を持ち出します。
物知りな玄人、ちゃんとしたファン
好奇心で好きになった、どちらかというと素人のファン
草野さんは、エキスパートメディアの担い手はその間にいる人ではないかと感じたといいます。死ぬほど詳しいが実際にそれを使ってはおらず、素人でもなく、客観的な目線で見ている人、という像です。
宮武さんはその例えを「すごい正しい」と受け止め、メディアの変遷を説明します。ごく初期は人々に情報がなく、情報を与えるだけで十分だったといいます。
その後、消費者の中に仕事などを通じてその分野に詳しい人たちが出てきました。しかし、マス向けになるほどツーリスト向けにエンタメ要素を入れる必要があり、エキスパート向けのメディアは減っていった、と宮武さんは話します。
宮武さんによれば、エキスパート向けの内容はニッチで、そもそも広告モデルに合わないこともあります。ところがインターネットでは、ニッチでもエキスパートが大勢いる分野があるといいます。
まとめ
この回では、インターネットで流通が無料になり、誰もがニューヨーク・タイムズと並んで戦えるようになった結果、平均的なメディアが読まれなくなり、得意分野を持つエキスパートメディアが求められるという見立てが語られました。MKBHDのHumane酷評やポッドキャストへの高い信頼は、アテンションだけでなく信頼を得られる媒体が力を持つ時代を示す例として取り上げられています。
- ディストリビューションの無料化、リーチの拡大、市場規模の変化によって、メディアの立ち上げコストと競争の形が大きく変わった
- 選べる時代には平均的なメディアは読まれにくく、消費はパワーロー的になるため、エキスパートになることが読まれる側に回る1つの道とされる
- ゲルマン健忘効果のように、人はメディアを過剰に信頼しがちで、宮武さんはその解決策をより多くのエキスパートの登場に見ている
- MKBHDのレビューについて、宮武さんはフェアだったとし、草野さんは一強状態のほうを懸念しつつ、多様なレビュアーがいるほうが健全だと二人とも語った
- ポッドキャストは信頼されやすい一方、その信頼に便乗するフェイクポッドキャスト広告も増えている


