Superhumanをまねる会社が増えている?
本題の「OK Boomer」に入る前に、宮武さんは前回の「バズワード」の回で話し忘れていたSuperhuman ── アメリカ発のメールアプリ。高速なメール処理を売りにし、招待制の丁寧なオンボーディングでも知られていますの補足から始めます。
宮武さんによると、Superhumanはゲーミフィケーションを取り入れ、オンボーディングやUI・UXを通じてユーザーがメール処理をうまくこなせるようにスキルアップさせるツールです。この設計がうまく、参考にする会社が増えているといいます。
その一例として宮武さんが挙げたのが、デザインツールのFigmaです。Figmaは「Figma Ninja」というブラウザゲームを出しました。
何をやるかというと、そのFigmaのチュートリアル、ショートカットを学ばすゲームですと。
パクりですと。すごく簡単に言うと。
宮武さんは、スタートアップ業界の変化をピッチの言い回しにも見ています。以前は「何々のUber版です」という意味の「Uber for X」が多かったのに対し、最近は「Superhuman for X」という言い方がちょこちょこ出てきているそうです。
草野さんも、ベルリンのプレゼンツール「Pitch」がサービスのキャラクターが活躍するゲームを作り込んでいた例を紹介しました。ただ、草野さんには何のためのゲームなのかがわからなかったそうで、宮武さんは「IP化したかったのかな」と首をかしげます。
「OK Boomer」はどんな意味で使われる言葉?
ここから本題の「OK Boomer」です。宮武さんによると、この言葉はアメリカの若い世代で流行していて、InstagramやTikTokのコメント欄によく出てくるといいます。
使っているのはミレニアル世代とGenZ ── Z世代。おおむね1990年代後半以降に生まれた世代を指す呼び方で、デジタルネイティブとして育った点が特徴とされますで、宮武さんは10代から30代前半あたりと説明します。今年の流行語に入るのではないか、という見立ても示しました。
「OK Boomer」の「Boomer」は、ベビーブーマーを指します。宮武さんは世代の並びを次のように整理しました。
草野さんは、日本でも第二次ベビーブーマーのような言い方があると補足します。ただし宮武さんによれば、「OK Boomer」はベビーブーマーだけに向けた言葉ではありません。
これはベビーブーマーだけに対しての言葉ではなくて、どちらかというと世間知らずの上の世代の人たちに(全体的に指してる)。
TikTokの一言がミームになるまで
「OK Boomer」の始まりはTikTokの動画です。宮武さんの説明では、もとになったのはTikTok以外で流れていた動画で、ある年配の白人男性がミレニアル世代など若い世代を批判していました。
その男性の主張は、若い世代は仕事もろくにしないし、自分のこともケアしない、怠けている、というものでした。宮武さんは、こうしたことを言う人は多く、よくある動画のひとつだったといいます。
この動画をTikTokの若いユーザーが取り上げ、返したのが「OK Boomer」という一言でした。トーンは「はいはい、わかりました」と受け流すようなものです。
はいはい、わかりましたと。でも例えばその今問題になってる環境の問題とか、その地球を悪くしてるのはあなたたちですよねと。
例えばですけど、トランプを選んだのはあなたたちですよね。
宮武さんによると、「アメリカがこれだけダメになっているのはあなたたちのせいでは」という言い返しを省略し、ミーム化したのが「OK Boomer」です。
草野さんが、世代間の対立はもともとあったのかと尋ねると、宮武さんは「多少あったものの、ちゃんとミーム化されてはいなかった」と答えています。
批判動画
年配の男性が、若い世代は働かず怠けていると批判する動画が流れる
TikTokで返答
若いユーザーがその動画を取り上げ「OK Boomer」と受け流す
言い返しの省略
環境問題やトランプ大統領の選出は上の世代の責任では、という反論が一言に込められる
ミーム化
世代間の対立が「OK Boomer」という言葉で広く共有される
Tシャツが即完売?珍しく「売れた」ミーム
宮武さんがこの話題を取り上げた理由は、普通のミームでは終わらなかったからです。「OK Boomer」は珍しくコマース化されたミームであり、社会的な会話のきっかけにもなっているといいます。
コマース化の始まりは、TikTokで流行を見たある若い女性、シャノンさんでした。シャノンさんは手軽にTシャツを作れるサイト「Bonfire」で「OK Boomer」のTシャツを作り、TikTokでシェアしました。
すると、すぐに金額以上の注文が入ったそうです。草野さんは「よく考えましたね。天才だな」と驚いています。
その後、これを見た多くの人が、キャップなどさまざまな「OK Boomer」グッズを作り始めました。草野さんが「商標登録しなくちゃですね」と言うと、宮武さんは「もう多分すでに絶対してますよね」と返しています。
フォロワー数ではなく文化で売れる時代?
宮武さんは、これほどコマース化されるミームはなかなか見ないとし、アメリカでは次のコマースの形が見えているのではないかと考えています。
SNSの広告は、広告中心からネイティブ広告へ、そしてインフルエンサー文化へと変わってきました。ただ、インフルエンサーによる販売は「フォロワーが何人いるから売れる」という人ベースの仕組みです。
一方でTikTokのアルゴリズムは、フォロワー数ではなくコンテンツの面白さを評価し、ユーザーの好みに合わせて表示します。宮武さんは、「OK Boomer」が今の主流のトレンドに乗ったことでより配信され、ミーム化からマーチャンダイズ化へつながったと見ています。
草野さんも、フォロワーや再生回数の多い人だけでなく、新しいユーザーや新しい投稿が広がる点はTikTokならではだと応じました。
宮武さんは、インフルエンサーとブランドの関係の変化にも触れます。以前は商品を渡してプロモーションを頼むだけでしたが、今のインフルエンサーは、フォロワーに「本当にこのブランドが好きなのか」と疑われるのを避けるため、大手ブランドからの依頼にも躊躇するといいます。
そこで増えているのが、インフルエンサー自身のブランドも乗せたコラボ商品です。ただ宮武さんは、それもまだ人ベースであり、今後は今流行っているもの、流行りそうなものを軸に商品化されるケースが出てくると考えています。
フォロワー数の多いインフルエンサーが起点。商品提供やコラボ商品で、その人のブランドに乗せて売る
いま流行っている言葉やトレンドが起点。「OK Boomer」のように、ミームそのものが商品になる
宮武さんは、これを新しいソーシャルコマースと捉えています。それに応じて、InstagramやPinterestが購入機能をさらに仕込んでくるのではないか、という見通しも語りました。
ハイファッションとミームが近づいている?
草野さんは余談として、ハイファッションブランドのBALENCIAGAを挙げます。草野さんによると、BALENCIAGAはミームっぽい商品を販売しているといいます。
草野さんが挙げた例は、Tシャツの前面にワイシャツがくっついたような服や、クロックスのような大きな厚底の靴です。ソーシャルメディアでバズが起きそうな商品が多く、ハイファッションとミームの掛け合わせが増えていると草野さんは感じています。
さらに草野さんは、ハイファッションとインターネットカルチャーやオタク文化のコラボレーションにも触れました。リーグ・オブ・レジェンド ── 世界的に人気のオンライン対戦ゲーム。eスポーツの代表的タイトルとして大規模な世界大会が開かれていますとハイブランドのコラボでトロフィーが作られた例や、ナルトとハイブランドのコラボです。
ナルトのコラボ相手について、草野さんは当初GUCCIと話していましたが、後で「コーチでした」と訂正しています。コラボ商品はバッグやジャケットなどの服だったそうです。
結構サブカルチャーだったものが、そのハイファッションとコラボしてるっていうのは新しいなというか、なんかそれも新しいトレンドなのかな。
「OK Boomer」の曲はなぜリミックスなのか?
宮武さんによると、「OK Boomer」のコマース化はアパレルだけではありません。「OK Boomer」の曲が作られ、Spotifyで配信して収入を得る人も出てきました。
宮武さんが面白いと感じたのは、その曲がリミックスだという点です。TikTokの動画は短く、そのままでは1曲にしにくいため、さまざまな人が話した言葉をリミックスして作られているといいます。
宮武さんは、TikTokそのものがリミックス文化を表すものだと考えています。そのうえで、リミックスの流行は一度冷めてから戻ってきたものだと説明しました。
トレンドって上がって下がってもう一回帰ってくるって思ってまして、特にエンタメ系は。
宮武さんは、今はリミックスが流行の中心にあり、TikTokはまさにそこに合っていて、「OK Boomer」もその一環として入ってきたのではないかと見ています。
ナルト走りでエリア51に突入?ネット発イベントの熱
ナルトのコラボの話から、宮武さんはアメリカでのナルト人気について語ります。アニメ自体の人気に加え、手を後ろにして走る独特の「ナルト走り」が知られているそうです。
そこで宮武さんが紹介したのが、エリア51 ── アメリカ・ネバダ州にある空軍の施設。機密性の高さから、宇宙人や未確認飛行物体が隠されているという噂が昔から語られてきましたをめぐる騒動です。エリア51はアメリカ軍の基地で、エイリアンがいるのではないかという噂が昔からありました。
宮武さんによると、今年、そこに侵入しようというキャンペーンが起き、大きな問題になりました。合言葉は「Storm Area 51, They Can't Stop All of Us」、つまり全員は止められないというものです。
きっかけは、ゲームを配信するストリーマーが冗談でFacebookに作ったイベントでした。ナルトのように走れば軍に撃たれてもかわせる、という冗談まで添えられていたといいます。
このイベントには150万人ぐらいが集まり、200万人ほどが参加表明をしたそうです。ただ、実際に現地にはほとんど集まらなかったと宮武さんは話しています。その過程でナルト走りが大きくミーム化しました。
草野さんは、ネット発のこうしたイベントは面白いと感想を述べ、宮武さんも最近のミーム文化の勢いを指摘しました。
リル・ナズ・Xに学ぶリミックス戦略と、日本で流行る可能性
草野さんはリミックスの話に戻り、以前番組で取り上げたリル・ナズ・Xの「Old Town Road」を例に挙げます。この曲はTikTokで大きく流行した楽曲です。
草野さんによると、リル・ナズ・X本人がリミックスバージョンを4〜5曲ほど出し、普通のポップス版やK-POPアイドルとのコラボ版などを展開していました。その結果、Apple Musicなどのストリーミングで、K-POP部門、ポップス部門、カントリー部門のそれぞれに顔を出せたといいます。
(リル・ナズ・Xの)コラボレーションとかリミックスはうまいなと思いました。
宮武さんは、エンタメ系のスタートアップやクリエイターツールにとって、リミックスは今のキーワードであり、うまくサービスに埋め込むとよいのではないかと話しました。
最後に草野さんが「OK Boomer」は日本でも流行るかと尋ねると、宮武さんの答えは「流行らないんじゃないですか」でした。ただ、ニュージーランドでは若い議員が年配の議員からのヤジに「OK Boomer」と返した例もあり、他の国でも使われているといいます。
ただ、日本ってそんなにミーム文化ってそんなないですよね。
宮武さんは、日本版が出てくるとすればお笑いの場ではないかと予想します。ネタとしてそうした返しがあれば、1年間ぐらいは持つのではないか、という見立てで話は締めくくられました。
まとめ
「OK Boomer」は、上の世代からの批判を受け流しつつ言い返す若い世代の一言として、TikTokから広がったミームです。今回の話では、この言葉がTシャツや曲として売れたことを手がかりに、人ではなく文化を起点にしたコマースと、戻ってきたリミックス文化が浮かび上がりました。
- 「OK Boomer」は世間知らずの上の世代全般に向け、環境問題や政治への責任を問い返す意味を一言に込めたミーム
- TikTokでのTシャツ販売をきっかけに、グッズや曲へと広がった珍しくコマース化されたミーム
- フォロワー数ではなくコンテンツを評価するTikTokの仕組みが、文化ベースのソーシャルコマースを生む可能性
- YouTube時代から一度冷めたリミックス文化が、TikTokを中心に再び盛り上がっている
- 宮武さんは、ミーム文化の薄い日本で流行るならお笑いの場からではないかと予想



