メタバースは概念から「どう実現するか」の段階へ
Off Topicがメタバースを正面から扱うのは、37話「メタバースとは何か、Epic Gamesの野望」以来、約半年ぶりです。宮武さんはこの3〜4か月、メタバースについてかなり集中的にリサーチしてきたといいます。
宮武さんによると、これまでの議論は「メタバースとは何か」という概念の話が中心でした。今回は、メタバースが本当に実現するならどう実現するのか、作るために何が必要なのかという視点に移っています。
なんとなく(メタバースは)2つのメタバースが考えられてる気がして。それがクローズドのメタバースとオープンなメタバースなんですけど。
宮武さんはこの回で、2つのメタバースの違い、自身がオープンなメタバースに賛同する理由、そしてオープンなメタバースがなぜ作りにくいのかを話すと予告しています。
草野さんは前提として、メタバースという言葉はSF小説『スノウ・クラッシュ ── ニール・スティーヴンスンが1992年に発表したSF小説。仮想空間「メタバース」が登場し、この言葉の語源とされています』に由来し、インターネットの次のインフラとも言われていると、過去のnoteの内容を振り返りました。
宮武さんは、メタバースの定義はいまだに難しいと話します。1950〜90年代の人がSNSやTikTokを予測できなかったのと同じで、今の人々もメタバースの完成形は見通せないからです。
そのため宮武さんは、メタバースを特徴で捉えています。終わらない、常にライブで同期されている、誰でも参加できる、アクセス人数が無制限、自由経済がある、データやコンテンツに相互運用性がある、といった点です。
いまメタバースに一番近いのはRoblox?
宮武さんは、今現在の大手プレイヤーの中でメタバースに一番近い体験を提供しているのは、FortniteではなくRoblox ── ユーザー自身がゲームを作って公開し、他のユーザーが遊べるオンラインゲームプラットフォーム。子どもや10代を中心に利用者が多いサービスですだと考えています。
宮武さんによると、Epic Gamesはメタバースのインフラを作る会社だと思う一方で、現在のFortniteはシューティングゲームが中心です。コンサートなどの体験も、基本的にはアーティストとのコラボで用意されたもので、ユーザーが世界を作れるクリエイティブモードはまだ小さいといいます。
一方のRobloxは、約3200万人のDAUがいるなかで、ユーザー自身がゲームや世界を開発しています。1つのアバターで多くのRobloxゲームを体験でき、全体に経済も作られている点が、宮武さんには『レディ・プレイヤー1』の世界観に近く見えるそうです。
例えばゲームAで何かデジタルアセットを購入すると、(それを)ゲームBにも持っていける。
シューティングゲームが中心。コンサートはアーティストとのコラボで、ユーザーが世界を作るクリエイティブモードはまだ小さい
ユーザーがゲームや世界を開発し、同じアバターで横断して遊べる。経済圏も作られている
ただし宮武さんは、Robloxも現時点ではメタバースではないと考えています。草野さんが整理したように、アイテムはゲームを横断できても、それはRobloxの中に限られるからです。
そのためRobloxは最近「マイクロバース」と呼ばれることがあり、メタバースの中の1つの世界やプラットフォームになるのではないか、という見方があるそうです。
Robloxの2つの道と、一社が支配するメタバースの危うさ
宮武さんは、Robloxがメタバース化するには2つの道があると話します。1つはよりオープンになり、オープンなメタバースの中のクリエイターとして生きる道。もう1つは、より難しいもののRobloxにとっては儲かる、全世界を支配するような1つのメタバースを作る道です。
草野さんは、前者はFortniteなど他のゲームと共存する道だと受け止め、どちらも難しそうだと応じました。宮武さんも、どちらもかなり難しく、Robloxが後者を選ぶとは思わないと述べています。
宮武さんが気にしているのは、SF映画で描かれるメタバースの多くが後者、つまり誰か一人がコントロールする世界だという点です。
主人公がいい人だったっていう、それだけで成り立ってますよね。あの鍵が誰か違う悪いやつに取られてたら、もう結構破滅的ですね。
宮武さんは、メタバースを一社がコントロールすることは、将来的には神に近い存在になることだと話します。メタバースはリアルな世界とデジタル世界をつなぐので、たとえばアメリカだけが世界を支配するような状態に近くなるからです。
宮武さんは会社単位の例としてFacebookを挙げ、Facebookがインターネットをコントロールするのと同じことになると指摘しました。Facebook自体は面白い取り組みをしていても、クローズドなメタバースの方向に進むのは怖い、という考えです。
デジタル世界はなぜ「家を出るたびにIDリセット」なのか
宮武さんは、オープンなメタバースには各世界をつなぐブリッジが必要だと話します。キーワードは、相互運用性(Interoperability ── 異なるシステムやサービスの間で、データや機能をそのまま連携・利用できる性質のことです)やクロスプラットフォームです。
宮武さんは、今のデジタル世界の不便さを、自宅とオフィスのたとえで説明しました。
家を出てオフィスに入ろうとすると、自分のIDをリセットして、同じ服も同じものも新しく購入しないといけないみたいな。
宮武さんによると、今のデジタル世界はまさにその状態です。たとえばFacebookのIDはTwitterに持っていけず、Facebookにある写真などのアセットも移せません。現実なら、写真をオフィスから家へ持ち運べるのにです。
プラットフォームごとに壁があり、移動するたびにIDやアセットがリセットされる
リアルな世界と同じように、IDや持ち物を別の世界へそのまま持っていける
宮武さんは、こうした相互運用性を作るプラットフォームやツールの会社が重要になると話し、その詳細は次回に回すとしています。
オープン化は大手にも利益になる、と宮武さんは考えています。例に挙げたのがオープンソースで、MicrosoftはかつてLinux ── オープンソースで開発されているOS。サーバーなどで広く使われていますが登場した頃にオープンソースを強く批判していましたが、最近は以前の発言は間違っていたとまで言うようになったそうです。
宮武さんの見立てでは、Amazonはオープンかクローズドかにあまり左右されず、自分たちなりの役割を持つ会社です。一方、Epicと同じくゲームエンジンを作るUnity ── 多くのゲームで使われているゲームエンジン。さまざまなデバイス向けに開発できる点が特徴ですは、クロスプラットフォームのエンジンを作っているため、オープンなメタバースに賛同していると見ています。
そのうえで宮武さんは、まだ話していない大手テック企業2社として、AppleとGoogleを挙げました。この2社はオープンなメタバースに批判的な動きをしているといいます。Googleは半分オープンで半分オープンではなく、Appleは明らかにオープンなシステムを嫌っている、という整理です。
初期インターネットはなぜオープンに作られたのか
オープンかクローズドかを論じる前に、宮武さんはインターネットが作られた時代の歴史を振り返ります。今回はいわば「インターネット2.0」を作るタイミングで、過去とは作り手の条件が明らかに違うからです。
宮武さんによると、1960〜90年代のインターネットは、主に政府の研究機関、科学者、ノンプロフィットが作っていました。彼らが作ったのは、インターネットの土台となるプロトコルやスタンダードです。
例として挙がったのがメールです。昔のメールは同じパソコンでしか送れず、同時にオンラインでなければ送れませんでした。それが@の記号を使うプロトコルの導入で変わった、と宮武さんは簡略化して説明しています。
こうしたスタンダードやプロトコルは誰も所有権を持たず、オープンソースとして存在しました。その上にGmailのようなサービスが作られ、今のWeb2.0ができあがっている、というのが宮武さんの整理です。
初期インターネットがオープンだった理由の一部は、これほどの経済インパクトを誰も予想していなかったことにある、と宮武さんは話します。1960〜90年代はリアルな体験が圧倒的に多く、SNSの存在も誰も想像していませんでした。
デジタルアートが70億で売れるなんて誰も予想してないじゃないですか。
宮武さんによると、だからこそ当時は「全員にアクセスさせよう」という思いのほうが強く、お金儲けを目的にする人は少なかったそうです。
メタバースは「お金の匂い」がする中で作られる
初期インターネットと比べて、メタバースは状況が大きく違います。宮武さんは、メタバースが次のインターネットだと知った瞬間、多くの人が「お金儲けのチャンスだ」と考えると話します。
その結果、メタバースは政府の研究機関やノンプロフィットではなく、会社が作るものになります。しかも作り手は、それが大きな経済圏につながると理解している人たちです。
会社が作って、しかもそれがすごい経済圏につながってるっていうのを理解してる人たちだからこそ、どこまでオープンなものを作るのかっていう疑問がすごい出てくるんですよ。
政府の研究機関・科学者・ノンプロフィットが、経済インパクトを意識せずにオープンなプロトコルを作った
経済圏の大きさを理解した会社が作るため、どこまでオープンにするかが問われる
草野さんは、自社の利益を得たい気持ちとオープンにしたい気持ちの両立は難しく、みんなが協力しないと実現しない未来だと感じたと話しています。
宮武さんは、今の大手インターネット企業はみな、オープンソースのプロトコルの上でサービスを作ってきたことを理解していると指摘します。それなのに、今のWeb2.0のサービスはほとんどクローズドです。
もしインターネットがクローズドだったら?
オープンにするメリットについて、宮武さんは、多くの人が入ってこられるからこそ経済圏が生まれると話します。草野さんは、オープンにすると他のプラットフォームにユーザーが移ってしまう怖さもあるのではと問いかけ、宮武さんもそのリスクは大いにあると認めました。
宮武さんは、会社がやるとそうしたリスクを考えるからこそクローズドにする、と説明します。そのうえで、初期インターネットがクローズドに作られていたらどうなったかという思考実験を示しました。
5社が集まってインターネットっていうものを作ったとすると、そうすると場合によっては全アクションが課金制になったりとかする可能性ってあって。
宮武さんの例では、ブラウザはChromeとInternet Explorerの2択しか許されず、JPEG画像のダウンロードやPingにもそれぞれ料金がかかったかもしれません。数社しかコントロールしていないので、ユーザーには他の選択肢もありません。
数社が所有
5社ほどがインターネットを作り、アクセス権を握る
全アクション課金
ブラウザは2択、画像のダウンロードなどにも料金がかかる
お金がハードルに
他の選択肢がないまま利用にコストがかかる
普及しない
誰もインターネットにアクセスしなかったかもしれない
宮武さんは、インターネットがこれほど普及した理由の大きな部分は、一社がコントロールしないオープンな仕組みだったことにあると考えています。
草野さんは、今のインターネットはGoogleやFacebookのような一部のアメリカの大手プラットフォームが握っており、初期とは対照的だと応じました。宮武さんはこの状況が次のインターネットを作るうえで大きなハードルになっているとし、なかでも最大のハードルはAppleだと述べています。
Appleはなぜ「インターネットのゲートキーパー」なのか
宮武さんは、自身もApple製品を愛用し、スティーブ・ジョブズやティム・クックをすごい経営者だと思っていると前置きしたうえで、Appleがほぼインターネットのゲートキーパーになっていると指摘します。
宮武さんによると、Appleには2つのビジネスがあります。草野さんが言い当てたように、ハードとソフトです。ハードは自由市場で勝ち取っているビジネス、アプリストアは完全にクローズドで独占しているビジネスだという整理です。
Androidと競う自由市場で、プロダクトの質やUI/UXの良さによってシェアを勝ち取っている
iPhone上では競合がいないクローズドなエコシステムで、独占している
アプリストアを閉じている方法として、宮武さんは主に3つを挙げました。
配信の制限
iPhoneではAppleのアプリストアからしか配信できず、第三者のアプリストアは立ち上げられない
全アプリの承認
すべてのアプリをAppleが承認し、Appleが判断する
決済の強制
Appleの決済システムを使う必要があり、30%の手数料がかかる
宮武さんによると、アメリカでのAppleのスマホのシェアは約66%、アプリストアでは75%です。さらにアメリカの10代に限ると80%がiPhoneを持っており、Androidとの差は今後も広がると見ています。
iMessageの色が学校でのステータスになる?
草野さんが「やっぱりiPhoneは人気なんですね」と応じると、宮武さんはアメリカでよく言われるジョークとして、iMessageの吹き出しの色の話を挙げました。
iPhone同士のiMessageは青、Android相手のSMSは緑で表示されます。宮武さんは最初に色を逆に言いましたが、草野さんの指摘で訂正しています。
で、その色によって学校でのステータスが変わるんですよ。
草野さんは日本でも「iPhoneのほうがかっこいい」という感覚はあると話しつつ、アメリカではAppleへの批判が多いのに、iPhoneはとても人気だというギャップに驚いたといいます。
宮武さんは、アメリカではSMSがよく使われるため、一瞬でAndroidユーザーだとわかってしまう点は、ほぼ差別要素だとも述べています。草野さんは、iMessageなら無料でいくらでも送れる共通の嬉しさがあるとも付け加えました。
ゲームのバンドル化を止めているのは誰か
宮武さんは、Appleのクローズドなエコシステムが競合を排除し、場合によっては業界の成長を止めていると指摘します。特に成長が止められているのがクラウドゲーミング ── ゲームの処理をサーバー側で行い、映像を端末にストリーミング配信して遊ぶ仕組み。端末の性能に左右されにくい点が特徴ですだといいます。
音楽や動画ではSpotifyやNetflixのようなストリーミング、つまりバンドルが標準になりました。しかしゲーム業界ではそれが起きておらず、宮武さんはその理由をAppleにあると見ています。
宮武さんによると、Google StadiaやMicrosoftのxCloudは、当初アプリストアにアプリを出せませんでした。出せた後も、扱うゲームを見せるだけの「ショールーム」にとどまり、実際にゲームをプレイすることはできなかったそうです。
Appleはセキュリティなどを理由にしていますが、宮武さんはその説明を疑問視し、ビジネスモデルを見ると影響の大きさがわかると話します。
ゲーム内課金が多いため、ゲームのバンドルが入ってきた瞬間にAppleの売上は大きく影響を受ける、というのが宮武さんの見立てです。
iTunesからSpotifyへ。Appleが一度味わった痛み
宮武さんによると、Appleは似た流れを音楽業界で一度経験しています。2012年ごろ、AppleはiTunesでデジタル音楽の販売売上の70%のシェアを持ち、1曲ずつ販売していました。
そこに音楽ストリーミングという概念とSpotifyが登場しました。Appleもその後Apple Musicを作りましたが、シェアは2番手にとどまり、宮武さんによれば大きな赤字事業です。かつてのiTunesはとても儲かっていたといいます。
iTunesで1曲ずつ販売し、デジタル音楽販売の70%を握る儲かる事業
ストリーミングが主流になり、Apple Musicはシェア2番手で赤字
宮武さんは、クラウドゲーミングにはもう1つの脅威があると話します。ゲームが配信される仕組みなので、古いデバイスでも新しいゲームを遊べ、最新のiPhoneが必要なくなります。それはハードウェア事業へのリスクになります。
結局Appleはゲームバンドルを許可しましたが、全ゲームをAppleが承認する、全ゲームを個別アプリにするといった条件を付けました。宮武さんは、これでは「Google Stadia版Call of Duty」のように別アプリになり、結局1アプリと変わらないと話しています。
草野さんは、自分がAppleの社員だったら、iTunesでこれだけ売上が立っているのにストリーミングを自社でやるのはまだ早いと思ってしまいそうだと話しました。宮武さんも、だからこそApple Musicは出遅れたと考えています。
Apple自身それ(自社製品の置き換え)に結構慣れてるのは慣れてますけどね。iPhone、新しいiPhoneを出すたびに過去のiPhoneを捨てるっていうことにもなるので。
宮武さんは、クラウドゲームは1つのアプリでいろんな世界を遊べるメタバース的な概念であり、メタバースのコンテンツ作りの重要なインフラにもなると強調します。Appleがそれを止めていることは、市場の発展を遅らせることになるという見方です。
Epicの反撃とFortniteユーザーの半分
宮武さんによると、Appleに対抗できる会社は少なく、スマホでの売上が大きい会社ほど対抗すると止められて売上が下がってしまいます。そのなかで注目されたのがEpic Gamesです。
2020年8月、EpicはAppleのストアを通さない自社決済「ダイレクトペイメント」を導入し、30%の手数料がない分、ゲーム内通貨のV-Bucksを20%割引で販売しました。規約上は大問題でアプリはBANされましたが、4〜5時間ほど公開されていたといいます。
(Appleのストアで買うと)すでにカード登録してるじゃないですか。なのですごい簡単じゃないですか、買うのって。
宮武さんによると、ダイレクトペイメントではカード情報を入れ直す手間がありました。それでも、Epic CEOのティム・スウィーニーさんによれば、Fortniteのユーザーの半分がそちらで購入したそうです。宮武さんは、20%の差はそれだけ大きいと見ています。
草野さんは、iPhoneが出たばかりの頃のApp Storeは個人開発者のアプリも多くランキングに並んでいたが、今は企業がアプリを出し、App Storeの売上が非常に重要になっていると振り返り、大きな税金のようだと話しました。
手数料30%は高いのか、競合がいないのか
Epicは有名な「1984」のCMのパロディを出し、30%は高いのではという議論を呼びました。ただ宮武さんによると、Epicの指摘の中心は手数料の高さ以上に、iPhone上でAppleに競合がいないことでした。
比較として宮武さんが挙げたのがクレジットカード業界です。American Express、Mastercard、VISAなどは加盟店から1.5〜2.5%を取ります。競合が多いので、たとえばVISAが急に20%を課せば加盟店はVISAを使わなくなるだけだからです。
アプリストア運営の実際のコストについては、PCゲームストアで2番手のEpic Games Storeのコストを、ティム・スウィーニーさんが説明しています。
宮武さんは、AppleのストアはEpicの100倍ほどのスケールがあり、コストはさらに低い可能性があると指摘します。そうでなくても、Appleはコストの5〜6倍ほどを課していることになります。
宮武さんが強調するのは、Appleに「下げろ」と言いたいのではなく、競合が出れば値下げや価値向上の圧力が働くという点です。初期のApp Storeはランキングなどでユーザー獲得につながり、30%分の価値があったと宮武さんは認めています。
ゲーム開発者としてはAppleの30パー分のバリューがあればApple選びますし、なければ他社に行くじゃないですか。
仮にAppleの手数料が30%から10%になれば、残る20%分は開発者やユーザーに回ります。開発者が安く提供したり利益を増やしたりしてゲームが大きくなり、最終的にはAppleも儲かるはず、というのがティム・スウィーニーさんらオープン市場を支持する人たちの主張だと宮武さんは紹介しています。
Robloxのクリエイター還元24.5%とSubstackの90%
Appleの30%の手数料に直面している例として、宮武さんはRobloxを挙げます。Robloxではゲームを作るのはユーザーですが、クリエイターに支払えるのは全体の売上の24.5%です。100ドル売れたスキンなら、クリエイターに入るのは24.5ドルです。
宮武さんによると、それでもRobloxは大きな赤字です。インフラコストもありますが、Appleに払う30%が大きく、Robloxは投資家向けのアップデートで、30%のコストが下がればそれを全部クリエイターへの支払いに回すと述べたそうです。
草野さんは、比較すると意外と払っていないとわかり、Appleの比率は高いと感じたと話しています。
ただしRobloxはAppleと戦えない、と宮武さんは見ています。Robloxの売上の推定75〜80%がiOSから来ており、BANされれば上場もできなくなるからです。
Androidは本当にオープンなのか
宮武さんは、GoogleもAppleも、アプリストアに限らず「オープンに見せながらオープンではない部分」が多いと指摘します。
AndroidではGoogle Play以外のアプリストアも許されています。EpicはGoogle Playの30%を避けるため、FortniteをEpicから直接配布していました。しかしGoogle Playなら簡単なダウンロードが、Epicから直接だと12〜20ステップほどかかるそうです。
宮武さんによると、途中には「セキュリティ的に大丈夫ですか」という怖いポップアップも出ます。草野さんは、Googleとしては自社の管理下ではないからという理由だろうと受け止めましたが、宮武さんはユーザーにダウンロードさせない作戦にも見えると話しています。
宮武さんは、PCと比べるとスマホの特殊さがわかると話します。WindowsもMacもストアを通さずブラウザから簡単にアプリをダウンロードできます。PCゲームではMicrosoftのストアがEpicやSteamに圧倒的に負けていますが、Microsoftは制限をかけていません。
どのソースからも簡単にダウンロードでき、EpicやSteamがMicrosoftのストアに勝てるほど競争がある
iOSは自社ストアのみ。Androidも直接配布は手順が多く、警告が出る
さらに宮武さんは、GoogleがiPhoneのデフォルト検索エンジンになるため、Appleに広告のレベニューシェアを払っていると紹介しました。最初の5年間は50%、その後は40%だそうです。アメリカ政府の調査で明らかになった情報として、Googleがキャリアにもデフォルト検索に指定し、BingやYahooを入れないよう求めていた例も挙げています。
宮武さんは、検索の品質の差はあるとしたうえで、品質で勝負するのではなくアクセス権の段階から押さえることが正しいのか、と問いかけています。
iPhoneのChromeは実はSafari?
宮武さんによると、iPhoneでは発売から最初の5年間、ブラウザはSafariしか使えませんでした。草野さんは、最近はChromeやGoogle日本語入力なども使えるようになり、ややオープンになってきたと感じていたといいます。
(iOS版のChromeは)実はChromeじゃないんですよ。
宮武さんの説明では、iOS版のChromeはAppleのWebKit ── Appleが開発するブラウザエンジン。iOSではすべてのブラウザがこのエンジンを使う必要がありますを使っており、Chromeのレンダリングは使えません。UIをChromeのように見せ、Gmailと連携しているだけで、中身はSafariだといいます。Macはよりオープンなので事情が違うはず、とも話しています。
宮武さんは、Appleが競合に古いバージョンのWebKitを出すため、機能的にはSafariのほうが上かもしれないとも述べています。
さらにSafari自体にも、2D・3Dのレンダリングを扱うWebGL ── ブラウザ上で2D・3Dグラフィックスを描画するための技術です、カメラアクセス、NFC決済などの制限がかけられているそうです。
宮武さんはその理由を、SafariがiPhone上で唯一オープンな場所だからだと見ています。NFC決済などを許せば、ブラウザ上で決済まで済ませてアプリストアをバイパスできてしまうからです。
PebbleとAirPodsに見るハードウェアの囲い込み
宮武さんは、Appleはハードウェアでも同様のことをしていると話します。例に挙げたのが、スマートウォッチを手がけたPebble ── クラウドファンディングで話題になったスマートウォッチのメーカー。のちに事業を終了していますです。PebbleのCEOは、AndroidとiPhoneとの連携には圧倒的な差があったと語っているそうです。
宮武さんによると、AppleにはプライベートAPIがあり、第三者には提供していません。そのためApple WatchとiPhoneの連携は、Appleの製品同士だけでできたといいます。
AirPods以外のワイヤレスイヤホンをiPhoneにつなぐ時って、ちょっと時間かかるじゃないですか。
宮武さんは、AirPodsがシームレスにつながるのはネイティブ連携、つまりプライベートAPIの有無の差だと説明します。自社でハードを作ったからこその権利という見方もある一方、AirPodsしか使えない世界を作っているとも見える、という立場です。
Androidでは、こうした部分でオープンなAPIが提供されている例もあります。たとえばAndroidではデフォルトのSMSアプリをFacebook Messengerに変えられますが、iPhoneではできないと、マーク・ザッカーバーグが不満を述べていたそうです。
宮武さんは、今のiPhoneはハードだけでなく、OS、配信網、決済システム、他のサービスをまとめたバンドルになっていると指摘します。そのため、ハードの部分だけが自由市場で戦っているという整理が正しいのか、議論が必要だと考えています。
Appleに求める3つのことと後半への予告
宮武さんによると、Epicですら、Appleに対抗するのは難しく、Appleは一時期Unreal Engineへのアクセス権を切るなどの対応も取ったそうです。草野さんは、Appleが動かなければオープンなメタバースは成り立たないと応じました。
宮武さんは、今のままならAppleがクローズドなプラットフォームで一部のメタバースの支配権を持つ形になると見ています。スティーブ・ジョブズがFlashを止めた理由の一部も、iPhoneなど専用ではなくクロスプラットフォームで作られるツールだから、という話でした。
一方で宮武さんは、クロスプラットフォームはAppleにも利益をもたらしていると話します。Unityが伸びたのはApple以外のユーザーにも対応していたからで、それがゲーム市場を伸ばしたといいます。
一人でプレイ
基準となるエンゲージ時間
友達とプレイ
エンゲージ時間が2倍
別のデバイスの友達とプレイ
さらに2倍になる
課金とAppleの利益
滞在時間が延びれば課金も増え、Appleの利益にもつながる
そのうえで宮武さんは、本来は規制当局や政府が言うべきことだとしつつ、Appleに求める3つのことを挙げました。
草野さんは、第三者のプラットフォームを許すのは難しく、規模のあるプラットフォームを作れるプレイヤーがどれだけいるかもわからないと話しつつ、制限があったからこそ今の状況が生まれていると受け止めました。
小さくても別にいいと思っていて、いろんなプレイヤーが。ただいろんなオプションがあるっていうのが自由だと思ってます。
宮武さんは、Pebbleがアプリストアを作れなかったことや、Robloxが本来は許されないはずのゲームストアを持っていることにも触れました。そして前半は、オープンなメタバースを作るうえでの壁を話す回だったとし、後半でオープンなメタバースそのものを話すと予告しています。
まとめ
この回では、メタバースにはクローズドとオープンの2つの方向性があり、オープンなメタバースを阻む最大の壁はAppleのクローズドなエコシステムだという宮武さんの見方が語られました。初期インターネットの成り立ちや、Epic・Robloxの事例を通じて、競合のない市場がもたらす影響が具体的に示されています。
- Robloxは現状メタバースに最も近い体験だが、横断できるのはRobloxの中だけの「マイクロバース」とされる
- 初期インターネットは経済インパクトを意識しない研究者らがオープンに作ったが、メタバースは利益を理解した企業が作る
- Appleはアプリ配信・承認・決済を握り、クラウドゲーミングなどの成長を止めていると宮武さんは指摘する
- Epicの20%割引や、Robloxのクリエイター還元24.5%は、30%の手数料と競合不在の影響を示す例として挙がった
- 宮武さんは、ダウンロード元の自由化、外部ストアの容認、決済の選択肢の3つをAppleに求めている



