ハロウィーン消費はなぜ歴代最高額に?
アメリカの10月は、ホリデーシーズンに向けた最終スパートの時期です。宮武さんによると、10月から12月の第4四半期は、特にリテール企業にとって最も重要な四半期になります。
会社によっては売り上げの半分ぐらいがこの四半期に出てくるっていうところなので。
ハロウィン、サンクスギビング、クリスマス、ニューイヤーとイベントが続くため、ハロウィン関連の会社のなかには、売り上げのほぼすべてがこの時期に集中するところもあるといいます。
草野さんは9月と10月初旬にアメリカを訪れ、9月の時点でハロウィンのお菓子やコスチュームをどこでも見かけたと振り返ります。
宮武さんは、今年のハロウィン消費は米国だけで130億ドル程度と歴代最高額になる見込みだと紹介しました。キャンディーが多いものの、コスチュームやデコレーションなど消費の幅は広いそうです。
草野さんが印象に残ったのは、あらゆるものがパンプキン味になっていたことです。パンプキンスパイスラテはスターバックスなど大手だけかと思いきや、ローカルのカフェにもさまざまな派生メニューがあったといいます。
パンプキンスパイス抹茶ラテとかパンプキンスパイスラベンダーラテみたいな、もう何でもそれをベースとしたものが成り立ってる。
K-POPデモンハンターズからシックスセブンまで、今年の人気コスチューム
収録はハロウィンの数日前の10月27日で、エピソード公開の翌日がハロウィン当日でした。そのため、今年の人気コスチュームの話は、各所で出ている予想記事をもとにしたものです。
最有力とされるのが、Netflixで大ヒットし、特に米国で人気の高い『K-POPデモンハンターズ』です。宮武さんは、友人と3人組で仮装するなら鉄板になると見ています。
我々の知り合いに聞いたら、なんかもうコスチュームが売り切れてたりとか、なんか間に合うのかみたいな話まで(なってたりする)。
その年の人気IPが仮装に反映されやすく、ほかには『ウェンズデー』や、11月に続編公開を控えてプロモーション中の『ウィケッド』も候補に挙がりました。ただ、話題性ではK-POPデモンハンターズほどではないかもしれないと宮武さんは話しています。
草野さんは、アニメ以外でアジア人女性のキャラクターがこれまであまりなかった点を挙げ、アジア系の子どもたちが自分を投影しやすいのではないかと指摘しました。
宮武さんは、コロナ期間中の『Among Us』、テック業界でのエリザベス・ホームズ、数年前のNVIDIAを思わせる黒のレザージャケットなど、その時々に話題になったものが仮装に反映されてきたと振り返ります。
テック系では、Twitterで見かけたAIウェアラブル「フレンド」のコスチュームが話題に上りました。また、『ストレンジャー・シングス』のスティーブ役の俳優が、仮装がコンセプトの結婚式で劇中のアイスクリーム店のセーラー服を着ていたという話も紹介されました。
若い世代で流行するミーム「シックスセブン」も候補です。ラッパーの曲から始まり、「シックスセブン」と言うとみんなが「シックスセブン」と返すというもので、サウスパークでも取り上げられたといいます。
最悪裸でもあの、マーカーで書けばいいので。
OpenAIの10月はなぜ「ニュースが多すぎる」のか
10月のニュースを振り返った宮武さんは、OpenAIの話題が多すぎて「今月のOpenAI」というコーナーを作ったほうがいいくらいだと話します。
まず、5000億ドルの時価総額でのテンダーオファーが完了しました。ハードウェアではジョニー・アイブ氏が登壇するなど動きがある一方、開発が遅れているという噂もあるそうです。
OpenAIは今年130億ドル程度の売り上げを見込む一方、今後5年間で1兆ドル規模のコストをかける予定です。そのため、コマース、動画、ハードウェア、コンピューティングの販売など、さまざまなマネタイズ方法を模索しているといいます。
インフラ面では、オラクル、NVIDIA、ソフトバンク、ブロードコム、AMDなどと超大型の提携を相次いで結びました。先月末に発表した動画生成のSora ── OpenAIの動画生成AI。テキストなどから動画を作れ、専用のSNS型アプリも提供されていますのアプリは、最初の5日間で100万ダウンロードとChatGPTを超えるペースだったそうです。
一方でSoraには、アニメ業界からの批判や、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの顔の使用がブロックされる件など、プライバシーや著作権への対応という課題も出ています。ほかにも、AIブラウザ「Atlas」のローンチや、元投資銀行の従業員を100人ほど採用して金融モデル向けのAIをトレーニングさせているという話も紹介されました。
10月この分(のニュース)働いてくださいって言ったらできる気がしないですけど、やってんのがすごいですね。
WalmartはなぜChatGPTの決済に乗ったのか
宮武さんが最も注目したのは、ChatGPT内で決済まで完結できるコマース連携です。EtsyやStripeから始まり、Shopifyも近く対応予定で、最近ではWalmartの商品も購入できるようになると発表されました。
宮武さんがWalmartとの提携を面白いと見るのは、Walmartが基本的に他社の決済サービスを入れない会社だからです。
基本的にもうWalmartに行く人はもうWalmartのエコシステムを受け入れなければいけないっていう状況になっていて。
宮武さんの推測では、WalmartはAmazonからシェアを奪う狙いがあると考えられます。ChatGPTで検索してWalmart商品にたどり着く人は、WalmartユーザーよりもAmazonユーザーである確率が高いと見ているのではないか、という見立てです。
しかもAmazonは、ChatGPTのような他社サービスをあまり受け入れていません。そのため、WalmartにとってはChatGPT上のコマースを取りに行く大きなチャンスになり得るといいます。
前提
Walmartは他社決済を基本的に入れない
推定
ChatGPT経由で商品に来る人はAmazonユーザーが多い
機会
AmazonはChatGPTと連携していない
狙い
Amazonに行くはずだった客のシェアを取る
OpenAIの自社研究によると、ChatGPTの会話のうち約2.1%が商品に関連するものです。そこで少しでもコンバージョンを取れれば、OpenAIにとって大きな売り上げになるかもしれません。
草野さんがグローサリーリストとの連携を挙げると、宮武さんはInstacartもおそらく連携すると予想しました。OpenAIのアプリ部門のトップが元InstacartのCEOであることも理由に挙げています。
宮武さんは、OpenAIの狙いは広告インフラのためのコンバージョンデータ集めと、購入履歴などにアクセスしてユーザーの記憶を握るOSレイヤーを獲得することにあると見ています。
AIブラウザAtlasで始まった「レイヤー争奪戦」とは?
OpenAIが立ち上げたAIブラウザ「Atlas」は、PerplexityのCometやThe Browser CompanyのDiaに続くものです。以前から噂されていたため驚きはないものの、AI時代のOSレイヤーの有力な答えの1つがブラウザになり得るという点で、重要な一手だと宮武さんは話します。
実際に少し触った宮武さんによると、Atlasは見た目は普通のブラウザで、どのページでもサイドバーにアシスタントが常駐します。コマースのタスクを頼めば購入ボタンの手前まで進め、最後に確認を求めるといった安全面の配慮もあるそうです。
宮武さんは、OpenAIの狙いはタブやセッションをまたいだ情報の収集にあると考えています。そのうえで、AI企業がさまざまなレイヤーで同じ機能を提供し、争い始めている状況を、メールの要約を例に説明しました。
| レイヤー | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| システム(OS) | iPhoneのApple Intelligence | アプリをまたいで好みを覚えられる |
| ブラウザ | Atlas、PerplexityのComet | ブラウザ上の情報をまたいで使える |
| アプリケーション | Gmail | UIが作り込まれ選ばれやすい |
(AI企業が)どのレイヤーで、どういうふうに情報を引っ張るのが正しいのかみたいな。なんかそこの戦争が今行われてるのかなっていう感じですね。
草野さんは、ユーザーとしては1つに集約したいと話します。宮武さんは、長期的にはシステムやブラウザのレベルのほうがユーザーにとってよい一方、UIが作り込まれたアプリケーション側が選ばれる可能性が高いと見ています。
Atlassianがブラウザ企業を買収したのもこうした理由かという草野さんの問いに、宮武さんはおそらくそうだと答えました。Chromeから乗り換えたくなったかと聞かれると、ワークフローを移す手間があるため、まだ乗り換えていないそうです。
操作感に違和感はなく、新しい操作を覚える必要があるDiaよりハードルは低いといいます。ただ、検索結果が少し違うことに違和感を覚える場面もあったと話しています。
ParamountはなぜThe Free Pressを買ったのか
メディアとしての関心から宮武さんが取り上げたのが、Paramountによる人気ニュースレター「The Free Press」の買収です。買収額は1億5000万ドルと見られ、創業者で元ニューヨーク・タイムズのライター、バリー・ワイス氏はParamount傘下のCBS Newsの編集長に任命されました。
しかもこれ3年ですからね。3年で一応ゼロから150ミリオンの買収額まで持っていけたのはすごいかなと思いますね。
宮武さん自身もThe Free Pressに課金しています。購読者は約150万人で、そのうち約17万人が有料会員です。売り上げは1500万〜2000万ドルと言われ、売上の10倍から12、13倍程度の評価で、従業員は約50人だといいます。
草野さんは、記事の濃さに加え、ホワイトハウスでのイベントやピーター・ティールとのイベントを開催していた点にも触れました。
一方で買収には批判もあります。ワイス氏は民主党派でも共和党派でもないとしていますが、共和党寄りではないかという見方があり、Paramountがトランプ政権に近づくための買収ではないかという声も出ているそうです。
それでも宮武さんは、ワイス氏がテック業界や著名人から支持されている点を挙げます。そして、ほぼクリエイター1人から始めた独立メディアがこうした形で結果を出したことを評価しました。The Free Press自体は、今のところSubstack上で続くといいます。
マスメディア不信ではなく「信頼の移動」?
宮武さんは、テック界隈で人気のメディア企業TBPNのジョンさんとの対話を紹介しました。マスメディアが信頼されなくなったという調査がある一方、ジョンさんの見方は少し違うそうです。
マスメディアを信頼してないっていうよりも、その、独立系のメディアの方を信頼してる。
マスメディアが信頼を集めていた
独立系メディアやクリエイターが登場し、信頼がそちらへシフト
草野さんは、今回の買収をワイス氏への信頼をParamountが吸収するものと捉えました。宮武さんはそれをCBS Newsに反映させたいのだろうとしつつ、本当に結果が出るのか、The Free Pressとどう並走させるのかはまだ明確ではないと話します。
TBPNが公開した新しいビジネス系メディアのマップにも話は広がりました。宮武さんは、レガシーメディアかニューメディアかという二分法はもう当てはまらないと指摘します。
オールドのところが、一人が独立して、でもなんか、その、もともといた場所とまだ連携してるとか。
元の媒体で一部配信しながら自分のニュースレターを持つといった形もあり、宮武さんは、さまざまな種類のメディアがあること自体が面白いと話しています。
米国政府シャットダウンはホリデーで何を招くのか
アメリカ政府は、エピソード公開時点で約30日間シャットダウンが続く見込みです。民主党、共和党ともに解決案を見つけられておらず、10月15日からは政府の従業員に給料が支払われなくなっています。
政府を再開する予算には100票中60票が必要です。一時的な解決策として、政府職員の一部または全員に給料を支払う案が両党から出されましたが、どちらも相手側にブロックされました。
草野さんが最長になりそうだと話すと、宮武さんは、最長は確か35日ほどだと応じました。さらに、11月以降のホリデーシーズンには飛行機の利用や国立公園への訪問が増えるため、影響が厳しくなる可能性があるといいます。
すでに無給で働く人がいるのに、ホリデーでさらにプレッシャーが増すのかという草野さんの問いに、宮武さんは、家族の会話やギフトの季節に家賃が払えない、ホームレスが増えるといった問題が起き得ると答えました。
低所得者向けに食事の支援を行うスナッププログラム ── SNAP(補助的栄養支援プログラム)。米国の低所得世帯向けに食料購入を支援する連邦政府の制度ですも、予算切れになる可能性があるそうです。
そういうプログラムの対象者が多い人口の州に関しては、そこの政治家は当然ながら民主党だろうが、共和党派であろうが、すごいプレッシャーを感じるので。
宮武さんは、場合によっては相手側の提案を受け入れざるを得ない状況も起こり得るとして、早めの解決を願っていました。
まとめ
10月の回では、季節の消費から生成AIの覇権争い、メディアの再編、政治の停滞まで、アメリカの今が幅広く語られました。なかでもOpenAIの動きは、決済やブラウザを通じてユーザーの情報を握るレイヤーの争いとして読み解かれています。
- ハロウィン消費は米国だけで130億ドル程度と歴代最高額の見込みで、K-POPデモンハンターズが人気仮装の最有力
- Walmartは他社決済を入れない方針を曲げてChatGPTと提携し、Amazonのシェアを狙っていると宮武さんは見ている
- Atlasの登場で、OS・ブラウザ・アプリのどのレイヤーがユーザーの記憶を握るかという争いが激しくなっている
- The Free Pressは約3年で1億5000万ドルと見られる買収に至り、信頼はマスメディアから独立系メディアへ移っているという見方もある
- 政府シャットダウンが続くと、ホリデーシーズンや食料支援への影響から政治家への圧力が強まる可能性がある





