誕生日会で出会ったRobloxから、2週間で作ったBedWarsへ
Jandelさんは、Robloxのゲームスタジオ「Splitting Point」の創業者です。呼び名はJandel、Janson、Jandleなどさまざまで、本人は特にこだわっていないと笑っています。
Splitting Pointは2017年に設立されたスタジオで、メンバーは30〜40人ほどです。Jandelさんによると、日々の仕事の中心は人気作「Grow a Garden」のアップデートだといいます。
JandelさんがRobloxに出会ったのは2017年、誕生日パーティーで子どもたちがNatural Disaster Survival ── Robloxの古参人気ゲームの1つ。竜巻や地震などランダムに発生する自然災害から生き延びることを目指すサバイバルゲームですを遊んでいるのを見たのがきっかけでした。あまりに面白くて翌日にRobloxをダウンロードし、2週間で最初のゲームを作ったそうです。
そのゲームが「BedWars」で、その後3年間、Jandelさんにとって最大のヒット作であり続けました。本人はこれを「完全な幸運」と振り返り、その後の3年間はひどいゲームばかり作っていたと語っています。
なぜMinecraftを離れ、Robloxを選んだのか
Jandelさんは高校時代から21歳ごろまで、Minecraftのサーバーを運営していました。しかしMinecraft側がかなり制限の強いポリシー変更を行い、サーバー上でビジネスを続けるのが難しくなったことが、プラットフォームを離れる理由になったといいます。
Robloxに移った理由として、Jandelさんはプラットフォーム自体が面白かったことに加えて、ユーザーを集めるうえで最良のプラットフォームだと考えたことを挙げています。当時は、自分のゲームを実際に遊んでもらえる唯一の場所に見えたそうです。
Jandelさんは、この集客のしやすさが今もRobloxの柱であり、自分がまだRobloxにいる理由だと話します。何百万ドルも使わなくてもゲームに人が来るからで、Grow a Gardenにかけた広告費はわずか40ドルだったといいます。
宮武さんが集客の仕組みを掘り下げると、Jandelさんは変化を説明しました。始めたころは同時接続ユーザー数の多いゲームが上位に並ぶ仕組みでしたが、今はアルゴリズムで決まり、Robloxはその中身についてかなり透明性があるといいます。
同時接続ユーザー数が多いゲームほど、並び順の上位に表示される
プレイ時間の質などを見るアルゴリズムで表示が決まる
それでもJandelさんは、アルゴリズムのことはほとんど考えていないと言います。Robloxの良いところは、良いゲームを作ることに集中すれば、集客の多くは自然にうまくいく点だという考えです。
宮武さんは、ほかのRobloxクリエイターから「最初に少し広告を出してユーザーを集め、ゲームの出来についてフィードバックを得る」のが定石だと聞いていました。Jandelさんは、自分は何を作っても人が見に来てくれる恵まれた立場だと認めつつ、初心者には5ドルや10ドル程度の少額でも広告を勧めています。
750万人規模のDiscordは何を支えたのか
宮武さんは、複数のコミュニティに告知を投稿してもユーザーはあまり流入しない、という過去のJandelさんの発言に触れ、Robloxで「オーディエンスを育てる」ことに意味はあるのかを尋ねました。
Jandelさんによると、Splitting PointのDiscordサーバーは750万人ほど、少なくとも600万人規模のユーザーを抱えています。本人はゲーム系Discordとしては世界最大級だと考えています。
Jandelさんの答えは、コミュニティは「本当に重要」というものでした。Splitting Pointは、コミュニティの声をよく聞くことで知られているといいます。
Grow a Gardenの初期には、JandelさんがDiscordで毎週ステージ配信を開き、1万〜2万人が集まりました。参加者は自由にゲームについて質問でき、ときにはかなり厳しい意見も出たそうです。
Jandelさんは、コミュニティとのつながりがGrow a Gardenの初期の成功にとって極めて重要で、今もそうだと話します。TikTok動画を作ったり、誰にも好かれない新機能を入れようとしたときには謝ったりすることでも知られているそうです。
ゲームの寿命は短いのか、物語は作れるのか
宮武さんは、Robloxのゲームは5年、7年と続くものもあるが、多くは寿命が長くないと指摘し、何年も続くゲームを目指すのか、数か月で終わってもよいのかを尋ねました。
Jandelさんは、それはRobloxに限らずゲーム業界全体の話だと答えます。Activisionが毎年新しいCall of Dutyを出し、FIFAも毎年新作が出るのと同じだという見方です。
Jandelさんの経験では、Splitting Pointのゲームは大きなピークを迎えたあと、ある基準のユーザー数に落ち着きます。例として挙げたのが「Dusty Trip」で、ピーク時は58万人が同時にプレイしていました。
Jandelさんは、Dusty Tripは今も1日あたり数百万人のアクティブユーザーがいるとみられる健全なゲームだと話します。ピークは目立ちますが、下がった後も、アップデートを続ける限りかなり持続可能な水準に戻るという見方です。
逆に、アップデートをやめればほとんどのゲームは誰にも遊ばれなくなるとJandelさんは言います。例外として、Bee Swarm Simulator ── ミツバチを育てて花粉を集め、ハチミツを作るRobloxの育成ゲーム。長く遊ばれ続けている人気作の1つですや「Work at a Pizza Place」を挙げ、プレイヤーの遊びから生まれる展開が多く、設計が優れていると評しています。
続いて宮武さんは、Robloxでは世界観づくりが難しい、という過去の発言について聞きました。Jandelさんは、YouTubeにたとえて説明します。YouTubeでは10分で世界観と物語を作る必要があり、2時間の映画ほど深くはできず、Robloxも同じだという考えです。
ただしJandelさんは、その意見は1〜2年前のもので、少し変わったと話します。Grow a Gardenには世界観づくりの要素はあまりないものの、Dusty Tripでは少し物語を作ったところ、プレイヤーがそれに愛着を持ったからです。とはいえ、とても深いストーリーを作るわけではないとも付け加えています。
ゲームの買収と、「コピー」ではなく反復で進化するRoblox
Grow a Gardenは、もともと別のユーザーが作り、プレイヤーも多くなかったゲームをSplitting Pointが引き継ぎ、大きく改良した作品として知られています。宮武さんは、自分で作る場合と買収する場合の違いを尋ねました。
Jandelさんの答えは「ただゲーム作りが好きだから」というものでした。ある人から「Grow a Gardenに関わらないか」と声をかけられて引き受けただけで、元の制作者は今も一緒に開発しているそうです。
Jandelさんは、ゲームを買収していくビジネス戦略を取っているわけではないと話します。自分はコミュニティの一員で、興味をひかれる面白いプロジェクトに出会うことがある、という感覚だといいます。Grow a Gardenのアップデートの中には、未公開の別のゲーム用に作った機能もあるそうです。
ゲーム作りのタイミングについては、Robloxには大きなトレンドがあり、特定のジャンルや機能が流行るとJandelさんは話します。たとえば、ゲームを離れている間も進行が続く仕組みはRobloxでは新しいものでしたが、今ではプラットフォーム中に広がっているといいます。
宮武さんが「流行りものを真似ることについてどう考えるか」と聞くと、Jandelさんは、Robloxの多くは反復的で、どのゲームもある意味で精神的な後継作だと答えました。Grow a Gardenにも、魚を釣るゲーム「Fish」の要素が入っているそうです。
Jandelさんは、それをクローンやコピーとは見ていません。前のゲームを何年もかけて少しずつ改良してきた結果として、外から見ると奇妙でマニアックなジャンルが生まれ、ほかのゲーム業界にはない独自のコンセプトが育つ、という見方です。
既存ゲーム
「Fish」のような先行作の要素がある
反復
要素を受け継いだ後継作が少しずつ改良を重ねる
積み重ね
何年もかけて改良が続く
独自ジャンル
ほかのゲーム業界にはないコンセプトが生まれる
ショート動画機能「Moments」はRobloxをどう変えるか
宮武さんは、Robloxが最近発表した、ゲーム内の場面を短い動画として切り取り、プラットフォーム上で共有できる機能「Moments」について尋ねました。
Jandelさんは「使うつもり」と即答します。自身もTikTokで頻繁に動画を作っていて、ただ座ってしゃべっているような動画だそうです。Robloxにはプラットフォームを超えて広がる文化的な瞬間があり、Momentsからもミームが生まれるのではないかと期待しています。
宮武さんは、YouTubeやTikTokではファンや業者が大量に切り抜き動画を投稿してフィードを埋める「クリップファーム」が見られることを説明し、Robloxでも同じことが起きるかを聞きました。
Jandelさんの見立ては「起きないと思う」でした。プレイヤーは面白い瞬間や好きな場面を撮るだけになりそうで、Momentsはゲーム内で撮影する必要があるため、外で切り抜いた動画をアップロードできるのかもわからないと話しています。
ブランドとのコラボで大事なのは自由さ
ブランドとのコラボについて聞かれると、Jandelさんは、難しいのはブランド側ではなく、かなりクリエイティブで少し自由奔放な自分のほうかもしれないと答えました。
一緒に仕事をしたセサミストリートは、基本的にJandelさんの好きにやらせてくれて、それがとても良かったそうです。宮武さんは、IPを持つ側がクリエイターに自由にやらせることこそがポイントなのかもしれない、と受けました。
Jandelさんは「やり方はいろいろある」としつつ、自分は多くのブランドとは組んでいないと話します。基準は、自分が好きなブランドや、かっこいいと思うブランドかどうかだけで、自分のことはクリエイター気質だと表現しています。
ヒットの後に変わった「失敗」の基準
今もRobloxをたくさん遊んでいるかと聞かれ、Jandelさんは「山ほど」と答えます。自分を天才やビジョナリーだとは思っておらず、誰よりもRobloxのゲームを遊び、誰よりも失敗してきたことが成功の理由だと考えているそうです。
何をもって失敗とするかについて、Jandelさんは、Grow a Gardenの成功以来よく考えていると話します。2019年なら100万回や2000万回のプレイで満足していたはずですが、今それで満足できるのかは、少し実存的な問いだといいます。宮武さんは「期待値が変わった」とまとめました。
自作以外で今好きなゲームとして、Jandelさんは「99 Nights」を挙げ、今まさに人気の最前線にいるのは当然だと評価しています。いつも戻ってくるのはBee Swarm Simulatorで、30時間ほど遊んだそうです。Steamのライブラリにある一部のゲームより長い時間だといいます。
宮武さんは、Robloxの1回あたりの平均プレイ時間は10分ほどと言われるため、30時間はかなりの長さだと驚きます。さらにJandelさんは、自作の障害物コースゲーム「Block of Hell」を、会議中に頭を空っぽにして遊べるように設計し、100時間ほど遊んでいるかもしれないと明かしました。
チームの規模は30〜40人で、3〜4か月前に立ち上げたときは15人ほどだったそうです。Jandelさんにとってゲーム作りは情熱そのものですが、Grow a Gardenをもっと大きなものにする責任も感じていて、今の主な焦点はGrow a Gardenだと話します。気分転換に、数時間で小さなプロジェクトを作ることもあるといいます。
開発の進め方も変わりつつあります。Jandelさんはこれまで、作り込まずに早くリリースするやり方をとってきましたが、ここ数か月は、次のプロジェクトは磨き込まれた状態で出したいと考えるようになったそうです。
作り込まずに早めにリリースする
次の作品は磨き込んだきれいな状態で出したい
宮武さんは、起業家の多くが最初から完璧に仕上げようとして行き過ぎる罠に陥ると指摘し、いつも難しいバランスだと応じています。
日本で好きな場所は宮島とコンビニ
Jandelさんは日本に4〜5回ほど訪れています。好きな場所は広島で、特に宮島が好きだといいます。瀬戸内海の景色が、育ったニュージーランドの風景を思い出させるそうです。
前回の来日では、ボートを借りて瀬戸内海を回ろうとしましたが、日本語があまり話せずうまくいかなかったといいます。宮武さんは、次回は連絡してくれれば手配すると申し出ました。
日本にあってアメリカやニュージーランドにないもので持ち帰りたいものは、コンビニだそうです。日本にいるときはほぼコンビニで生活していると笑って話し、インタビューは締めくくられました。
まとめ
Jandelさんの話からは、Robloxでの成功を広告や戦略よりも、良いゲーム作り、コミュニティとの対話、先行作の要素を受け継ぐ反復によって捉えている姿が見えてきます。一方で、Grow a Gardenのヒットを経て、失敗の基準やリリースの仕方を見直していることも語られました。
- JandelさんがRobloxを選んだのは集客のしやすさのためで、Grow a Gardenの広告費は40ドルだった
- Discordの毎週の配信で厳しい意見も受け止めたことが、初期の成功に欠かせなかった
- ゲームはピーク後に基準のユーザー数へ戻り、アップデートを続ければ持続できると考えている
- Robloxのゲームはコピーではなく反復で進化し、独自のジャンルが生まれると見ている
- ヒットを経て、失敗の基準と「早く出す」というリリースの考え方が変わりつつある





