アメリカの若者には有名、シリコンバレーでは無名だったSHEIN
今回のOff Topicが取り上げたのは、中国発のECサイト「SHEIN(シーイン)」です。番組でTikTok以外の中国企業を本格的に扱うのは初めてだと宮武さんは話しています。
宮武さんによると、SHEINはアメリカの女子高生や女子大生の間では2年ほど前から知られていた一方、年配の男性が多いシリコンバレーでは最近の大型調達で初めて知った人が多いといいます。
逆にシリコンバレー、特に男性が、男性でちょっと年寄りの人たちが多いシリコンバレーの中では、やっぱり初めて知った人も多いです。
SHEINはリル・ナズ・X ── アメリカのラッパー・シンガー。2019年の「Old Town Road」の大ヒットで知られますやアディソン・レイ ── TikTokで人気を集めたアメリカのインフルエンサー・俳優といったアメリカのセレブとも提携しています。
ただしSHEINは中国では販売しておらず、中国国内ではあまり知られていない会社だと宮武さんは説明します。販売先は欧米や日本など中国以外の国です。
中国ブランドはなぜ「数日おきの新商品」を出せるのか?
SHEINの前提として宮武さんが挙げたのは、中国のC向けブランドの増加です。アメリカのAmazonのマーケットプレイスには中国ブランドが実はとても多く、中国のサプライヤーに頼めばブランドを簡単に作れるようになっているといいます。
場合によってはその中国のその工場、サプライチェーンのプロバイダーがマーケティングまでやってくれるとか。
例として紹介されたのが、炭酸水などを売る飲料ブランドGENKI FOREST ── 中国の飲料ブランド「元気森林」。無糖の炭酸水などで急成長し、日本風のネーミングでも知られますです。宮武さんによると、時価総額は最近6000億円ほどになり、中国版のコカ・コーラを目指しています。
GENKI FORESTの2020年の売上は400億円弱で、2019年から4倍ほど伸びたといいます。売上は当時中国国内だけで、今年は1.2ビリオンドルほどを想定しているそうです。
GENKI FORESTの強みは、中国のサプライチェーンを使って多くのSKUを小ロットで検証することです。検証した商品のうちマスに送り込むのは5%だけで、数日ごとにいくつかの新商品を出しているといいます。
小ロットで試作
多くのSKUをスモールバッチで作り、市場で検証する
ABテスト
反応を見て有望な商品を見極める
マスへ展開
検証した商品の5%だけを大量生産に回す
繰り返し
数日ごとにいくつかの新商品を出し続ける
コスメブランドのパーフェクトダイアリーも同じ流れにあります。宮武さんによると、2020年の売上は800億円ほどで、毎週新商品を出しているそうです。
草野さんは、PLAZAやLOFTで中国コスメの新作が出るスパンの短さを実感していると話します。日本では新作が3か月に1回や1か月に1回程度という印象だといいます。
宮武さんは、パーフェクトダイアリーもGENKI FORESTも、元々は自社工場を持たないまま、このスピードで戦えていた点を強調します。
持ってなくてもこれだけのスピード感で戦えるっていうのが今の中国のC向けのブランドかなと思いますね。
「iPhoneを並んで作る工場」はもう古い?中国サプライチェーンの今
中国でこのスピードが実現できる一番の理由として、宮武さんは中国のサプライチェーンの強さを挙げます。
宮武さん自身、中国の工場といえばフォックスコン ── 台湾の鴻海精密工業グループ。中国に大規模工場を持ち、AppleのiPhoneなどの製造受託で知られますのように多くの従業員が列に並んでiPhoneを作るイメージを持っていたといいます。実際には自動化された工場が多く、ソフトウェア活用も進み、社内にデザイナーを抱える工場もあるそうです。
多くの従業員が列に並んでiPhoneを組み立てる労働集約型の工場
自動化やソフトウェア活用が進み、工場内にデザイナーも抱える
草野さんは、中国でブランドまで作れるならアメリカのAmazonの商品はすべて中国でできそうだと反応しました。宮武さんは、この背景の中からSHEINが生まれてきたと位置づけます。
Instagramフォロワー2000万人、中国企業として異例の存在感
SHEINは中国で作った商品をECサイトで世界各国に届ける会社です。宮武さんがまず挙げたのは、Instagramのフォロワーが2000万人ほどいるという点でした。
中国の会社であればWeiboなど中国のSNSでフォロワーが多いのが普通です。中国では使えないInstagramでSHEINがこれだけのフォロワーを持つのは、とても珍しいと宮武さんは話します。
宮武さんによると、SHEINは最近の資金調達で評価額が47ビリオンドルほどになりました。2020年の売上は10ビリオンドル、約1兆円ほどで、過去8年間、売上は毎年少なくとも2倍以上になってきたといいます。
最近は中国系のブランドが資金調達の際にSHEINをベンチマークにし始めているそうです。中国国内でもSHEINが注目され始めている表れだと宮武さんは見ています。
販売しない国の例外として挙げられたのがインドです。インドは政府が中国アプリに厳しく、TikTokも使えないためだと説明されています。
Z世代がZARAからSHEINに乗り換える理由
宮武さんによれば、消費者から見たSHEINの一番の強みは値段の安さです。草野さんも、服は数千円、アクセサリーなら1000円以下という感覚だと補足します。
特にお金をたくさん持っていないZ世代にとって、SHEINはZARAのようなファストファッションを置き換える存在になっていると宮武さんは話します。
SHEINのアプリは50か国でアプリランキング1位、120か国でトップ5に入っているそうです。アメリカでは最近、アプリのダウンロード数でiOS・Androidの両方でAmazonを超えました。
あのアプリのダウンロード数でいうと、Amazon超えたんですよ。
ほかにも、調査会社Piper SandlerのZ世代調査ではSHEINがAmazonに次ぐ人気サイトとされ、サイトランキングではファッション・アパレルカテゴリーで世界1位だといいます。平均滞在時間も8分以上で、どのアメリカのファッションブランドよりも長いそうです。
TikTokで最も話題になったブランドもSHEINで、H&MやZARAを上回ったといいます。宮武さんは、インフルエンサーにマーケティング費用をかけるSHEINの戦略の結果だと説明します。
草野さんは、一度SHEINを検索してからSHEINのアウトフィット動画がたくさん流れてくるようになり、ターゲティングされていると感じたと話しています。
謎の創業者と「ファストファッション2.0」
SHEINの資金調達について、宮武さんは2019年にセコイア・チャイナ ── アメリカの著名VCセコイア・キャピタルの中国部門から500ミリオンドルほど、2020年8月にタイガー・グローバルのリードで評価額15ビリオンドルの調達があったと紹介しました。初期にはジャフコ・アジアも投資家だったといいます。
直近と前回のラウンドの投資家は公表されておらず、ソフトバンクという噂もあるものの、正直わからないと宮武さんは話しています。
宮武さんはSHEINを「ファストファッション2.0」と位置づけます。ZARAやユニクロがレガシープレイヤーと見られ始め、その次の世代がSHEINだという見方です。
最短3日、平均5日間ほど
3週間ほど
草野さんは「3週間でも全然早い」と驚きます。宮武さんによると、そもそも中国の工場には7日間で作れるところも多く、中国全体のレベルが高いといいます。
SHEINという会社自体があまり知られていない理由として、創業者がほとんどインタビューに応じず、写真も10枚出てくるかどうかという点が挙げられました。宮武さんは、おそらく意図的だと見ています。
創業者については、アメリカ生まれでアメリカの大学に通ったというインタビュー記事がある一方、中国のメディアでは違うことが書かれているそうで、どちらが本当かはわからないとしています。
宮武さんは、SHEINが中国企業だと強く打ち出したくないのではないかと推測します。中国というブランディングは、特にアメリカでネガティブな印象につながるためです。
昔あのSHEINのアバウトアスのページで、あの、ニュージャージーの会社だっていうのを書いてあったんですよね。
ウェディングドレスの越境ECから始まった創業物語
SHEINは2008年に創業し、最初の4年ほどはウェディングドレスを売る会社でした。しかも中国からの越境EC ── 国境を越えて海外の消費者に商品を販売するネット通販です。
ウェディングドレスを選んだ理由について宮武さんは、中国からアメリカへの越境ECで、電気製品の次に人気の商品がウェディングドレスだったからだと説明します。
だいたい10万円ほど
200ドル。それでもSHEINは利益が出る
なんでSHEINからすると、あの、高く売れる。で、USからすると安く買えるっていうところで。
宮武さんによると、当時のSHEINの競合はこのウェディングドレスの越境ECモデルだけで上場まで果たしており、それだけ大きな市場だったといいます。
SHEINはその後、ピボットというより商品を広げていきました。当初は卸で、買った商品をそのまま売るだけで、自社生産はしていなかったそうです。
SHEINは2010〜2011年という早い段階からSNSのインフルエンサーを活用していました。2013年と2014年の一番のトラフィック元はPinterestだったといいます。
草野さんは、ウェディングドレスは検索して探すものであり、初期のInstagramはブランドのアカウントも少なかったので、Pinterestで見るのは納得だと話します。
SHEINはTikTokでも初期からマーケティングを始めていました。最終的に卸から自社生産へとピボットし、数百人のインハウスデザイナーを雇ったと宮武さんは説明しています。
サプライヤーを味方にしたSHEINのバックエンド戦略
宮武さんはSHEINの強さを、バックエンドとフロントエンドに分けて説明します。バックエンドはサプライチェーン周りの取り組みで、日本では普通でも中国では異例なことをしていたといいます。
- サプライヤーへの支払いを期日通りに行う
- 支払いを通常の90日以内から30日以内に早める
- サプライヤーにトレーニングやサポートを提供する
- サプライヤーへの借入れを支援する
- 各サプライヤーのKPIを双方が見えるよう可視化する
宮武さんが最もすごいと評価するのはソフトウェアの活用です。2012年頃の中国のサプライヤーはソフトウェアをあまり使っていませんでした。
SHEINはサプライヤーとの良好な関係を土台に、自社のサプライチェーン管理ソフトウェアを無償で提供し、必ず導入してもらうよう求めたといいます。
で、えっと、それによってSHEINのオーダーをそこで見えたりとか、SHEINとコミュニケーションができたりとか。で、逆に言うと、SHEINからすると全部トラッキングできるようになったんですよね。
草野さんは、サプライヤー側も効率化でき、関係性も良くなる仕組みだと受け止めています。宮武さんによると、取引先の全員にこのソフトウェアを導入した点が、後の話につながる重要なポイントだといいます。
ソーシャルゲームのようなアプリはどう設計されているのか?
SHEINはフロントエンドでも改善を重ねました。質の低い画像しか出さないサプライヤーとは取引を切り、サイトデザインを変え、メンズやキッズにもカテゴリを広げ、アプリに力を入れたと宮武さんは説明します。
草野さんはSHEINのアプリを「ソーシャルゲームみたい」と表現しました。宮武さんによると、中国のC向けアプリにはゲームデザイナーが入ってデザインすることが多く、GENKI FORESTのCEOも元ゲーム会社の出身だといいます。
なんであの中国のECアプリとかC向けアプリってすごいゲーミフィケーションされてて、そこが多分中国の圧倒的な強さっていうところかなと思いますね。
宮武さんは、アメリカが最近その手法をコピーしていると見ています。例に挙げたのはメールアプリSuperhuman ── 高速な操作性を売りにしたアメリカの有料メールアプリで、社長がゲームデザインの考えをもとに作ったと自ら語っているそうです。
草野さんは、アメリカのECサイトにはゲーム要素がなく、シンプルなほうが好まれると思っていたと話します。宮武さんは、実際にSHEINがアメリカでも機能していると応じました。
宮武さんが紹介したSHEINアプリの仕掛けは、順を追って体験するように設計されています。
検索ドリブンの米国、レコメンデーションドリブンの中国
宮武さんは、中国系ECとアメリカのECの大きな違いを「探し方」に見ています。
欲しいカテゴリーや商品を自分で検索するのがメイン
アプリにフィードがあり、おすすめから商品と出会う
宮武さんは、TikTokも完全にフィード型だと指摘します。ディスカバリーをレコメンデーションで行うことが中国勢の強みで、それにはユーザーのコンテンツが必要になるといいます。
だからユーザーのUGCコンテンツをインセンティブ付けするためにレビューを書いてもらうとか、そういうのをやってるっていうのが今の現状ですよね。
草野さんは、アメリカのWishやAliExpressも近い存在ではないかと話します。宮武さんは、Wishも中国系で、そうした会社を見て改善していると見ており、中国では拼多多 ── 中国の大手EC「Pinduoduo」。共同購入やゲーム要素で急成長しましたもこの系統だと話しました。
もう1つの違いが、パーソナライズされたコンテンツとプロモーションです。宮武さんによると、中国の企業はたいてい大規模なプロモーション専任のオペレーションチームを持ち、ユーザーごとに毎日違うプロモーションやコンテンツを見せています。
例として挙がったのが、ニコニコ動画のようにコメントが画面上を流れる中国の動画サービスビリビリ ── 中国の動画共有サイト「bilibili」。若者向けのアニメやゲームのコンテンツが中心です。宮武さんによると、そのコメントを入力している一部はビリビリのオペレーターだといいます。
サクラってことですか?
サクラです。
「EC版TikTok」の正体はファッションAIカンパニー?
SHEINは「EC版のTikTok」と呼ばれることがありますが、宮武さんは個人的に、SHEINを一番のファッションAIカンパニーだと見ています。
SHEINはまずサードパーティーデータを徹底的に活用しています。宮武さんによると、SHEINはGoogleにとって中国の非常に大きなクライアントで、国単位で検索のトレンドを追える「TrendFinder」を使い、どの国でどんな服が求められているかを追跡しているといいます。
事例として、2018年夏にアメリカでレース系の商品が流行した際、SHEINはそれを予測できていたそうです。Google以外にも競合サイトのスクレイピングやTikTokの観察、自社サイトのファーストパーティーデータも見ているといいます。
集めたデータの使い道について、宮武さんは一連の流れとして説明しています。
データ収集
Googleの検索トレンド、競合サイト、TikTok、自社サイトのデータ
インハウスデザイン
データを社内デザインチームに直接渡し、トレンドに合う服を素早く設計
自動発注
デザインをSHEINのソフトに入れると、そのままサプライヤーにつながる
スモールバッチで検証
少量生産で売れ行きを見る
需要に応じて増産
人気が出た商品を時間のロスなく追加発注し、AIで予測も始める
デザインしたものをそのままSHEINのソフトウェアに入れると、それが自動的にサプライヤーにつながるんですよ。
草野さんは「怖いですね、これ本当に」と反応しつつ、買う側からすればトレンドアイテムが激安で買えるのはとても魅力的だと話します。
宮武さんによると、SHEINの採用状況を見ると機械学習やアルゴリズムを理解するエンジニアを大量に採用しており、エンジニアの数は相当多いはずだといいます。
EC通販でたまたまマネタイしてますけど。
データがあれば文化を知らなくても国を越えられる
宮武さんは、SHEINがすべてをデータに基づいて行っているからこそ国をまたげると話します。各国にスタイルや好みの違いはあっても、データに基づけば文化を理解しなくても物は作れるという考え方です。
データを全部基づいてやれば、あの、基本的にその文化を理解しなくても、物って作れちゃうんですよね。
その一例がサウジアラビアです。SHEINはサウジアラビアでとても人気ですが、経営陣や開発メンバーがサウジアラビアの文化的ノウハウを豊富に持っているとはおそらく言えず、データに基づくローカライズの結果だと宮武さんは見ています。
SHEINが中国で売れない理由について、宮武さんは中国のほうが物価が安すぎるためだと説明します。SHEINの価格は越境ECだからこそ安く感じられるのです。
宮武さんによると、中国のD2Cブランドは利益率30〜40%程度に抑えないと高すぎると思われてしまいます。さらに大手が参入すると価格競争になり、利益率が5%ほどに落ちて多くのブランドが潰れてしまうといいます。
宮武さんは、SHEINもこの構造を理解しているからこそ、中国で戦うより外に出るほうがよいと判断したのではないかと見ています。
アプリ内ライブはAmazon Primeの手法?インフルエンサー戦略
SHEINはAmazonでも商品を販売し、インフルエンサーマーケティングにも力を入れています。宮武さんは、特にアメリカのインフルエンサーマーケティングでは文化を理解して取り組んでいると評価します。
宮武さんによると、SHEINはアディソン・レイさん、あるいはリル・ナズ・Xさんも含めて、アプリ内でライブコンサートを開催したことがあるといいます。
草野さんは、ECの会員を集めるために質の高いコンテンツを用意する点がAmazonに似ていると指摘し、宮武さんも「Amazon Primeのやり方」だと応じました。
ジェフ・ベゾスさんも言ってましたからね。あのゴールデングローブはあのを取ると靴が売れるんだ。
SHEINはYouTuberとの相性も良いと宮武さんは話します。たとえば2万円でGUCCIなら商品を1つしか買えないかもしれませんが、SHEINなら10個買える場合もあり、紹介動画の中身を充実させられるからです。
データドリブンすぎる弱点と配送の遅さ
一方で宮武さんは、SHEINのリスクも挙げています。データドリブンすぎて文化を無視し、問題のある商品を出してしまうケースがあるといいます。
例として宮武さんが挙げたのは、ドイツで一時期ナチスのシンボルの入ったネックレスを出してしまった件です。草野さんは、自動化されすぎてチェックが効いていないと受け止めています。
SHEINの課題として宮武さんが挙げたのが配送です。商品を作るまでは5日間しかかからないのに、届くのは3週間後ということもあるといいます。
草野さんは、Wishと同じで、いつ届くか、無事に届くかが不安になると話します。クオリティの低さやすぐ壊れるといったクレームもちょこちょこ入っているそうです。
でもなんかまあ安いから許容範囲っていうのはちょっとわかります。
工場がそのままブランドになる時代、D2Cはミドルマンになるのか?
宮武さんがSHEINの話から最も面白いと感じたトレンドは、工場からダイレクトにブランドが生まれることが可能になっている点です。
これまでのD2Cブランドは、OEMで商品開発をしてきました。中国の工場がブランドまで作れるようになれば、その仕組み自体が要らなくなるかもしれないと宮武さんは話します。
D2CブランドがOEMで工場に製造を委託し、ブランドを作る
中国の工場がブランドまで作り、D2Cがミドルマンになる可能性がある
宮武さんは、間に入って何らかの価値を提供できるのであれば話は別だとも付け加えています。
草野さんは、日本でも人気のディーホリックやQoo10のようなアジア系ECを、ブランドというより一番コスパよく買える場所だと捉えていたといいます。
ところがSHEINのサイトには、デザイナーとコラボして新しい服を作る「SHEIN X」という企画があります。草野さんは、5月のテーマが「ボディポジティブ」であることや新人デザイナーを支援する姿勢に、ただのECサイトではない哲学を感じたと話しています。
デザイナーと直接やってしまうと、もう自社ブランド作ると同じことになるので。
宮武さんは、SHEIN Xが裏側をすべて担えることを「怖い動き」だと表現します。草野さんは、デザイナーの選定すらデータに基づいているのかもしれないと話し、宮武さんは一部データを提供しつつ、デザイナー自身のファンも生かしているのだろうと見ています。
宮武さんは今後、SHEINがセレブと提携してD2Cブランドを作ったり、アメリカのクリエイターのグッズ販売を置き換えたりする可能性もあると指摘します。マーケティングのノウハウもあり、Amazonなど多くの場所で販売しているため、ブランドの裏側のインフラになり得るというのが宮武さんの見立てです。
H&Mやアメリカンイーグルの次、Italicという対抗馬
草野さんは、日本ではFOREVER21も撤退したことに触れ、アメリカのティーンはこれまでどこで服を買っていたのかと尋ねました。
宮武さんによると、H&MやZARAのほか、アメリカンイーグルやパクサン、ホリスターなどのECサイトで買うケースが多く、今も人気は続いているといいます。それでもSHEINの登場で状況が変わるかもしれないと宮武さんは話しています。
宮武さんはアメリカでSHEINに対抗し得る会社として、Italic ── 工場と直接提携し、高級ブランド並みの品質の商品を手頃な価格で販売するアメリカのECを挙げました。草野さんは、ハイブランド級の品物を安く買えるサービスという印象を持っています。
自社で全部やるケースが多い。Amazonにたとえられる
工場が出店できる形。Shopify的な立ち位置を取れる可能性があると語られる
ただし宮武さんは、Italicはまだそこまでの規模ではなく、正直どうなるかはわからないとしています。
最後に宮武さんは、SHEINの47ビリオンドルの価値は単なるECサイトとしての評価ではなく、裏側のインフラが手強いことにあると話します。SHEIN Xのようにさまざまな人とコラボして商品開発できるプラットフォームを作ったため、SHEIN上からどれだけブランドが生まれるかが気になると締めくくりました。
まとめ
SHEINの強さは安さだけではありません。中国のサプライチェーンを自社ソフトウェアで束ね、データとAIで需要を読み、ゲームのようなアプリでユーザーを引きつける仕組みにあります。その延長として、工場がそのままブランドになり、SHEIN自体がブランドの裏側のインフラになる可能性が語られました。
- SHEINは中国以外で販売する越境ECで、アメリカではアプリのダウンロード数でAmazonを超えた
- ウェディングドレスの越境ECとして始まり、卸から自社生産へピボットした
- サプライヤーを厚遇しつつ管理ソフトを無償導入させ、デザインから製作まで平均5日ほどで回す
- レコメンデーション型のアプリ設計とデータ活用で、文化を知らなくても国を越えて売れる一方、文化の無視や配送の遅さという弱点もある
- 工場が直接ブランドになる時代に、D2Cがミドルマン化する可能性と、SHEIN Xによるプラットフォーム化が注目される


