Web3の「ラビットホール」にはどこから落ちるのか
Off Topicが再びWeb3を取り上げたこの回は、宮武さんがWeb3にどうハマったかという話から始まります。宮武さんによると、Web3業界の人へのポッドキャストやYouTubeのインタビューは、たいてい「どうハマったか」から始まるそうです。
宮武さんがいろいろなインタビューを見て整理すると、人がWeb3に入ってくるタイミングはおおむね3つあるといいます。
2018年の盛り上がりがDeFiサマー ── DeFi(分散型金融)関連のサービスや取引量が急拡大した時期を指すクリプト業界の呼び名。夏に起きたことからこう呼ばれますと呼ばれるのは、夏に起きたからです。反対に不況のタイミングはクリプトウィンターと呼ばれ、草野さんは「かっこいい」「可愛い」と反応していました。
宮武さん個人は、3つ目のNFTブームで入ってきた一人です。二人の前職であるDigitalGarageはクリプト業界に踏み込んでいましたが、当時の二人はむしろ距離を置いていたといいます。
ちょっと、こう私は難しそうすぎて、ちょっと理解しようっていうのがまだできてなかったですね、準備が。
宮武さんのきっかけはメタバースの研究でした。のちに投資先になるArtefactというデジタルファッション企業から、ユーザーがどのゲームでもデジタルアパレルを着られる世界を目指していると聞き、オープンメタバースを可能にするのがNFTだと知ったのが始まりです。
さらに別のメタバース系の会社と話していた時、宮武さんは初めてDAOという言葉に出会います。
「うちのDAOになんか入りなよ」みたいなことを言われて。なんか何の意味か全くわかってなくて。「とりあえずなんか入りまーす」みたいなことを言っちゃって、適当に返しちゃったんですけど。
そこからDAOについてのリサーチを始め、NFTブームやNBAトップショット ── NBAの試合の名場面をデジタルコレクションとして売買できるサービス。NFTブームを象徴するプロダクトの一つですの流行もあって、宮武さんは業界の中へ入り込んでいきました。
Web2.0に慣れた投資家ほどWeb3投資に苦しむのはなぜか
宮武さんによると、Web3への入り口はNFTブームが一般的には最も多いものの、業界の中の人ほど2018年のDeFiから見ている人が多いそうです。一方で、今年の初めから入って大きく儲けている人もいるといいます。
アメリカのVC業界も、この年にWeb3領域へ急速にのめり込みました。宮武さんが例に挙げるのが、アンドリーセン・ホロウィッツ ── シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタル。クリプト分野への大型投資でも知られ、a16zとも呼ばれます出身のLi Jinさんが立ち上げた、クリエイターエコノミー特化のファンドAtelier Venturesです。
Atelier VenturesはSubstackやPatreonのような投資先に目が行きがちですが、実はMirror、Foundation、YGG、Syndicate Protocolといったクリプト系企業や、非公開の複数のDAOにも投資しています。宮武さんは、ファンドの価値の大部分は今やクリプトにあるのではないかと見ています。
そのうえで宮武さんは、投資家側に生まれている大きな課題を指摘します。Web2.0の投資に慣れている人ほどWeb3の投資が難しくなっているという課題です。
(Web2.0に慣れている人たちは)その市場を独占するっていう考え方、そういう会社に投資したいっていう、で、それに関わる優位性に投資したいっていうのが、Web3だとそれがやりにくいっていうところもあって。
理由は、サービスの優位性の作り方がWeb2.0とWeb3で違うからです。Web2.0では規模の経済、ネットワーク効果、スイッチングコスト、ブランディング、限られたリソースへのアクセスなどが優位性になり、その中にも強い弱いがあります。
宮武さんによれば、ブランディングはコントロールや予測がしにくいため弱い優位性で、ネットワーク効果はわかりやすい強い優位性です。そしてWeb3のサービスが持つ優位性は、Web2.0の目から見ると弱く見えてしまうものが多いといいます。
流動性・コミュニティ・コンポーザビリティという「弱く見える」堀
Web3のサービスの優位性として、宮武さんは流動性、コミュニティ、コンポーザビリティの3つを挙げます。
| 優位性 | 中身 | Web2.0の目で見た難しさ |
|---|---|---|
| 流動性 | マーケットプレイスでの取引頻度や取引額 | ユーザーが商品を持つので、別のマーケットプレイスへ簡単に移れる |
| コミュニティ | 技術はコピーできても人はコピーできない | 誰がいるかに依存するので、その人が抜けたらどうなるかが怖い |
| コンポーザビリティ | レゴのように、自社のプロダクトの上にユーザーが別のプロダクトを作る | データベースがオープンなので、同じ体験を他社も作れる |
流動性について、宮武さんはサプライのオンボーディングの仕方がWeb2.0と違うと説明します。NFTのマーケットプレイスでは、ユーザーが自分の商品を持っているため、誰でも別のマーケットプレイスへ自分のNFTを移せます。
草野さんが「インターネットはミドルマンで今までできてきた」と返すと、宮武さんも同意します。Web3ではミドルマンの価値が小さくなり、価値は売り手と買い手に向かい、間に立つサービスはプロトコルに近いものになるといいます。
宮武さんはこの構造をメールサービスにたとえます。GmailはGoogleが基本的に無償で提供していますが、メールのプロトコルには誰でもアクセスできるため、他の会社も同じようなメールサービスを立ち上げられます。だからこそマネタイズや優位性づくりが難しいというわけです。
(コミュニティの優位性は)もう誰がいるって結構、その優位性って結構怖いじゃないですか。その人が抜けたらどうするの?とか。
コンポーザビリティの例として宮武さんが挙げるのが、ゲームのMOD ── 既存のゲームをユーザーが改造して作る追加データや派生作品。見た目の変更からゲーム性の根本的な作り替えまで幅がありますです。ハーフライフをMODしたユーザーがCounter-Strikeを作り、別のゲームとして人気になりました。PUBGも元は別のゲームのMODだったといいます。
Web2.0の企業は自社のデータベースを抱え込むことで、誰も同じ体験を作れない状況を作ってきました。宮武さんは、Web3ではそのデータベースがオープンになると話します。
例えばですけど、UberがWeb3化していたら、Uberの全取引を誰でもアクセスして誰でも見れるようになるんですよ。そうするとUberとほぼ同じアルゴリズムを作れるっていうことになるんですよね。
では、どうやって勝つのか。宮武さんの答えは、ユーザーにとって最もベネフィットのあるサービスに人が集まり、問題があれば簡単に別のサービスへ移れる状態、つまりロックインさせないことがWeb3特有のポイントだというものです。
Web2.0企業はWeb3化をどう迫られるのか
宮武さんによると、YouTubeやSpotifyのような今のWeb2.0企業も、ユーザーにオーナーシップっぽさを与えたり、ファンダムを見せる機能を付けたりと、NFT「っぽい」体験は提供できるといいます。ただ最終的には分散化の流れに向かうと見ています。
理由は価値の偏りです。今の価値はプラットフォーム側に集まっていますが、価値を生んでいるのはクリエイターです。宮武さんは、価値がクリエイター側に移らなければ、クリエイターはどんどん離れていくと話します。
その兆しはすでにあり、YouTuberやTikTokerは複数のプラットフォームを使い分け、1つのプラットフォームに依存しない考え方になっています。宮武さんは、Web2.0の会社はもっと危機感を持つべきだといいます。
ビッグテックの中で最も危機感を持っているのは、Facebookのマーク・ザッカーバーグさんだろうと宮武さんは見ています。AppleはiPhoneとiOSでロックインができており、Z世代の88%がiPhoneを持っています。一方のFacebookは、Instagramを含めてもSNSには競合が多く、ロックインがしにくいのです。
そこでザッカーバーグさんは、メタバースという新しい領域でハードやOSのレイヤーでロックインしつつ、Web3的なユーザーファーストの発想で経済を作ろうとしている、と宮武さんは解釈しています。
Web2.0の会社がWeb3化するうえで最も重要なのは、クリエイターやネットワークの参加者にどう価値とアップサイドを提供するかです。草野さんの「プラットフォームはあり続ける」という問いに、宮武さんは「あり続けても全然いい」と答え、オーナーシップとアップサイドの提供をエコノミクスとガバナンスの2軸で考えるべきだと話しました。
会社ではなく「国」を作るとはどういうことか
宮武さんによれば、これからは新しくWeb3サービスを作る場合も、Web2.0企業がWeb3化する場合も、「会社を作る」という概念ではなくなるといいます。会社は限られた株主のために株価を上げる存在なので、どこかのタイミングでネットワークのユーザーが損をしてしまうからです。
会社作りではなくて国を作るっていう多分概念になるんですよね。
草野さんが「やっぱ国」と応じると、宮武さんも「やっぱ国ですね」と返します。国を作るには経済と政府が必要で、宮武さんはWeb3サービスの構成要素を国の要素に一つずつ対応させて説明しました。
| 国の要素 | Web3での対応 |
|---|---|
| 最初の土地 | 初期のプロダクト |
| ルールを従わせる政府 | DAO、DAOのガバナンス |
| お金の動き | トークン |
| 売買される商品 | NFT |
| 土地の上のビルや街 | コンポーザビリティで生まれるサービスや組織 |
草野さんが具体例を尋ねると、宮武さんはWeb2.0で最も近いものとしてアプリエコシステムを挙げます。SalesforceやDiscordという「土地」の上に、第三者がSalesforceを良くするアプリやDiscordのBOTを開発する構図です。
Axie Infinity ── NFTのキャラクターを育てて対戦するブロックチェーンゲーム。プレイで得たトークンを収入にする「Play to Earn」で注目されましたの場合は、ベースのゲームが土地にあたります。その上に立ち上がったのが、プレイヤーにキャラクターを貸し出すコーチやスポンサーのような役割を担うYGGで、Axieの経済の上に生まれたものだといいます。
さらに宮武さんは、Digg ── ユーザーの投票でニュースのランキングが決まるソーシャルニュースサイト。Web2.0初期を代表するサービスの一つですを作ったケビン・ローズさんの考えを紹介します。Web2.0のプラットフォームはクローズドな役員会議で将来を決めるのではなく、一部でもいいからコミュニティに開き、ユーザーが土地の上にビルを建てたくなるインセンティブを与えるべきだ、というものです。
集権型サービスは消えるのか、ハイブリッドで残るのか
とはいえ宮武さんは、Web3はまだ早い段階で、ハイブリッドなアプローチがどんどん出てくると見ています。ほとんどの人は仮想通貨を持ちたくないし、持っていてもリテラシーがなかったり調べるのが面倒だったりするので、集権型のサービス経由で扱いたい人が多いはずだからです。
宮武さんは、こうしたハイブリッドモデルが今後5〜10年でどんどん出てくると予想します。いずれすべてWeb3化されるとしても、集権型のサービスは必要であり続けると考えています。
DAOを見ても結局ある程度限られた人数の人が判断をしたりとか。判断というか、そこの導きですよね。をやったりとかするので。なので別に集権型が全部悪いっていう話ではないと思います。
ハイブリッドの例として宮武さんが挙げるのが、フリーランスのマーケットプレイスのBraintrustです。企業は米ドルや日本円でフリーランサーを採用する普通の仕組みですが、ネットワークでアクティブな人には追加でトークンが配られます。ネットワークが大きくなればトークンの価値が上がるという仮説です。
宮武さんはこれを「ロイヤルティプログラムに株価がついたもの」と表現します。フリーランスのマーケットプレイスはどこも似ていて、今は1社に依存する理由がありません。しかし使っているだけで儲かるかもしれないとなれば、そこに残る理由になるといいます。
宮武さんはもう一つの発想として、サービスをどうゲーム化するかを挙げます。Web3では、トークンをどれだけ集められるかといったゲーミフィケーションを取り入れたサービスのほうが成功しやすく、DeFiもゲームのメカニズムを使い、NFTアバターも「トライブ」同士が戦い合うような発想があるといいます。
コンテンツがオンチェーンになると、引用はどう変わるか
宮武さんは、Web3でこれから出てくる領域としてSNSを挙げます。コンテンツがすべてオンチェーンになりNFT化されれば、Web3メディアのMirrorのように、自分のアイデアを誰が使っているかを追跡できるようになり、場合によっては元のアイデアの持ち主が支払いを受けられるといいます。
草野さんは、それこそが「あるべき姿」だと共感します。記事にはいい引用と悪い引用があり、元の作品に紐付いているほうが作者にとってうれしいからです。
宮武さんは、Off Topic自身の経験を例に出します。noteの有料記事にOff Topicの過去記事が引用されているのを見かけることがありますが、有料なので中身が見えません。
それでも、でもその人はそれで儲かってるっていうわけなので、なぜオフトピックも一部そこでもらえないのかっていう。
宮武さんは、半分もらうといった話ではないと断りつつ、アイデアの追跡ができること自体が重要だと話しました。
DAOは株式会社と何が違うのか
話題はDAOに移ります。宮武さんはまず、DAOが株式会社とどう違うのかから話すべきだと切り出します。株式会社はアメリカならデラウェア、日本なら日本の法律というように、どこかの国の法をベースに作られた組織形態です。
一方のDAO ── Decentralized Autonomous Organizationの略で、分散型自律組織と訳されます。ルールをブロックチェーン上のコードで定め、参加者がトークンなどを通じて運営に関わる組織ですは、ルールをスマートコントラクト ── ブロックチェーン上で、あらかじめ決めた条件を満たすと自動で実行されるプログラムなどのコードに埋め込みます。そのため国ごとの株式会社という概念を無視でき、世界中の人が参加できます。
日本で株式会社を作るなら1日では作れず、作った翌週に世界中の人が参加することもできません。宮武さんは、それが可能になった点でDAOをインターネットネイティブな組織構成だと説明します。
国の法律がベース。雇用契約が必要で、採用に個人情報がいる。作るチームと使うユーザーが分かれている
コードがベース。世界中から出入り自由で、匿名でも参加できる。チームとユーザーの区別がなくなる
もう一つの違いは流動性です。DAOはチームの出入りが自由で、社員としての雇用契約が必要ありません。また、サービスを作るチームと使うユーザーの区別がなくなり、DAOの参加者全員で一緒にサービスを作ることもできます。
さらに、契約という概念自体が同じ形では存在しないため、DAOには匿名のまま参加できます。宮武さんは、VCもいずれ匿名の起業家に投資しなければならない時代になると話し、印象的な例を紹介しました。
オウムの人形の創業者と、メリットベースの組織
アンドリーセン・ホロウィッツはYield Guild Games(YGG)に投資した際、いつものように創業メンバーの写真付きでブログを出しました。ところが写真に写っているのは2人で、そのうち1人がオウムの人形を抱えていたそうです。
で、YGGって3人創業者がいるんですよ。そのオウムがその一人なんですよ。写真で出れないので。
草野さんは「それめっちゃいいですね」「できることならそうしたかった」と笑い、宮武さんは「人形を持ってオフトピックですって言えばいいんですかね」と応じました。
宮武さんによれば、匿名であれば人種もわからず、評判もネット上のもの以外はわかりません。そのためDAOは、よりメリトクラシー、つまり能力や貢献をベースにした組織になるといいます。
草野さんは、身元がわからないと、ものすごく悪いことをしている人だったら怖いのではないかと疑問をぶつけます。宮武さんは、ブロックチェーン上で何をしたかは基本的にオープンなのでそこはわかるとし、あとはDAOとしてどう考えるかだと答えました。
過去何をやったとしても、貢献してるかしてないかっていうところでジャッジするっていうのがDAOかなと思うんですよね。
「めちゃめちゃ犯罪してる人だったら怖くないですか?」と食い下がる草野さんに、宮武さんは、DAOの中でそれが表に出ていないのなら問題ないのではないかと返します。リスクとのバランスはあるとしながらも、貢献の有無が主な判断基準になる点が、DAOの大きな違いだと話しています。
DAOのリーダーは「次に何をするか理解している人」
宮武さんによれば、DAOはたいてい1〜2人がDiscordなどで立ち上げ、大きくなると委員会のような形になります。委員会がさまざまな提案をまとめ、全員や数名で投票し、コミュニティに判断させるのがDAOの最終形態だといいます。
立ち上げ期は1〜2人がDiscordなどで運営し、判断も少人数で行う
委員会が提案をまとめ、投票などを通じてコミュニティが判断する。CEOのような人が全部を決めない
ただし、それはヒエラルキーがないという意味ではありません。草野さんも「導く人がいますもんね」と応じています。宮武さんが強調するのは、株式会社ではCEOの交代がなかなか起きずヒエラルキーが固定されがちなのに対し、DAOではリーダーの立場を貢献ベースで流動的にできる点です。
宮武さんは、DAOのYearnによるリーダーの定義を紹介します。
(Yearnが)言ってるのはそのリーダーっていうのは次に何をするのを理解してる人っていう定義をしていて、それが別に明日別の人かもしれないし、同じ人かもしれないし。
そのリーダーを決めるのも、コミュニティのメンバーです。
宮武さんは、DAOによって働き方も変わると見ています。1つの会社に一生を捧げるのではなく、複数のプロジェクトから収入を得る「収入のポートフォリオ」が可能になるといいます。
草野さんは、インターネット業界の人なら仕事をいくつも持つのはスムーズだが、お店で働いている人などがWeb3にどう巻き込まれていくのかは気になると話します。宮武さんは、ミックスになるだろうと答えました。
宮武さんによれば、DAOは必ずしも収入を得る場ではありません。もらうトークンがお金になることもあれば、ガバナンストークンやソーシャルキャピタルにつながることもあります。たとえば本好きが100人でブッククラブのDAOを作り、毎週読む本を投票で決めるのもDAOです。
ソーシャル、投資、プロトコル、パーティー。DAOの4つの型
宮武さんによると、DAOは今とても人気で、毎週数百個が立ち上がっている状況だといいます。宮武さんは、そのカテゴリーを4つに分けて紹介しました。
| カテゴリー | 目的 | 例 |
|---|---|---|
| ソーシャルDAO | 人を集めて新しい出会いを作る | FWB |
| 投資DAO | お金をプールして購入や投資をする | ConstitutionDAO、Krause House、PleasrDAO |
| プロトコルDAO | 一緒にソフトウェアを開発する | Uniswap |
| パーティーDAO | 共同購入の仕組みを作る | PartyDAO |
ソーシャルDAOがどう人気になるのかという草野さんの問いに、宮武さんは、有名な人がいるかに加え、どんなイベントをするか、どれだけ限定的かも大きいと答えます。普通のソーシャルグループに近く、NFTアバターも似た性質を持つといいます。
投資DAOには、アメリカ合衆国憲法の原本の購入を目指したConstitutionDAO ── 2021年、オークションに出たアメリカ合衆国憲法の初版写本を落札するため、オンラインで資金を集めたDAOや、NBAチームの購入を目指すKrause Houseがあります。PleasrDAOはお金をプールしてNFTのポートフォリオを作り、柴犬のミームのDogeも購入しているそうです。
最近はDAO経由でVC投資をしたり、VCがDAOに投資したりする例も出てきているといいます。
宮武さんが特に面白いと語るのがPartyDAOです。Mirrorのクラウドファンディングで約1000万を集め、参加者はトークンを受け取りました。そのトークンがないと入れないDiscordで、何を作るか、誰がどの役割を担うかを話し合って生まれたのが、共同購入サービスのPartyBidです。
資金調達
Mirrorのクラウドファンディングで約1000万を集め、参加者にトークンを配る
話し合い
トークン保有者だけが入れるDiscordで、方向性と役割を決める
開発
共同購入サービスPartyBidを作る
還元
手数料の一部がトレジャリーに入り、給料や次の開発を投票で決める
PartyBidでは、たとえばBored Apeを1000人で共同購入するといったことができます。手数料の一部はトレジャリー ── DAOが共同で管理する資金のプール。宮武さんは「銀行みたいなところ」と表現していますに入り、誰にどんな給料を払うか、次に何を開発するかをメンバーが投票で決めます。宮武さんはこれを、コミュニティドリブンなプロダクトづくりだと表現しました。
アベンジャーズのように集まる働き方は何を変えるか
DAOに入りたい人は何から始めればいいかという草野さんの問いに、宮武さんは、まずいろいろなDAOに参加して雰囲気を見ることを勧めます。また、目的がないとDAOは始まらないので、目的を明確にする必要があるといいます。
宮武さんは、DAOが働き方を大きく変えると話します。VCがリスク分散のために複数の会社に投資するように、働く人も同じことをしてよいのではないか、という発想です。
でもこういうアベンジャーズとして集まるタイミングって、何か大きな敵が、まあいわゆる大きなプロジェクトがある時に集まって、一人一人の役割をうまく果たして、何か成し遂げると。
でもそれが終わったら戻るみたいな。なのでフレキシブルに個々の仕事からアベンジャーズに行き来してると。
宮武さんは、過去に番組で扱ったDream SMPも同じ構図だと話します。MinecraftのYouTuberたちがそれぞれ活動しながら、Dream SMPという1つの物語のために集まってコラボしているのです。エンジェル投資家や小さなファンドが一緒に投資する文化も、似た考え方だといいます。
ただし、Web2.0の会社から見ると怖い面もあります。出入りが自由なので、社長が「これをやれ」と言ってもやりたくなければやらず、出ていってしまいます。逆に、モチベーションのある人だけが入ってくるという利点もあります。
例えば、まあ今のリアルな世界でいうと、例えばAppleの従業員の半分がMicrosoftでも所属してたらどうするの?とか。
今は契約上できないことですが、DAOでは競合のサービスに同時に所属することも可能になります。宮武さんは、才能のある人材ほど1社に依存したくないので、DAOのような流れが来るのだと話しました。
全員投票は嫌だ。DAOのガバナンスはどう設計するか
宮武さんは、DAOのガバナンスモデルを作るのはとても難しいと話します。投票を使うのか、レビュー委員会を使うのか、評判や影響力を使うのか、どういう民主主義を作るかを決めなければなりません。
宮武さんの指摘は、すべてのアクションに投票させるのは嫌がられるということです。アメリカの大統領選挙ですら半分ほどの人しか投票しないことがあり、だからこそアメリカや日本は政府という仕組みを作ってきました。ただ、国の仕組みにも課題はあります。
MakerDAOやFWBでは、誰かが提案し、メインのメンバーやそれ以外の人も参加してその提案に投票する形が多いそうです。特定の目的に集中するサブDAOを作るという方法もあり、宮武さんはこれを部署を作るようなものだと説明しました。
既存の会社との違いとして、宮武さんはIPや企業秘密がなくなる点も挙げます。ガバナンスが間違っていれば、多くの人が集まってほぼ同じDAOを別に立ち上げることができます。
なんか変なことがあると、それ(DAO)の元々のメンバーをコピペして、で、また新しく試してみるっていうのがどんどん繰り返し行われてるんですよね。
DAOという概念自体は5年ほど前からありますが、宮武さんは今ようやくさまざまなものが立ち上がった検証フェーズだと見ています。DAOを立ち上げる時と成功させる時、それぞれに必要な3つの要素も示しました。
ルール、ルールを従わせるコミット(悪いことをしたらBANするなど)、ルールが守られているかのモニタリング
パーパス(何をやるか)、プリンシパル(どんな価値観の人が集まるか)、プロセス(どうやるか)
宮武さんによれば、いいDAOほどパーパスとプリンシパルを明確に語っており、本当の課題はプロセスです。どう判断するか、委員会メンバーをどう選ぶか、問題のある人にどう対応するかを作るのが難しく、ツールも人材もまだ足りていないといいます。
このプロダクトかけるコミュニティではなくて、コミュニティかけるプロダクト。っていうものが、えっとこのDAOの根本の概念かなと思いますね。
ニューヨーク・タイムズをトークン化したら何が起きるか
次の話題は、参加者がメリットを得るための経済の作り方、トークンエコノミクス ── トークンの発行量、配り方、使い道、価値の変動などを設計し、参加者の行動を促す経済の仕組みです。宮武さんは、実際に「ニューヨーク・タイムズはトークン化すべきだ」と論じた記事のアイデアを例に説明します。
仮に1トークン1ドルのNYTトークンを作り、ニューヨーク・タイムズを読むには100ドル分のトークンが必要で、スマートコントラクトによって毎年100ドル分のトークンが削られるとします。ここまでは普通のサブスクと同じです。
面白いのは、トークンの価値が上がった場合です。宮武さんの例では、1年目に200ドルで200トークンを買い、1年目の終わりに100トークンが削られます。2年目に人が集まって1トークン2ドルになれば、1年分の100ドルにあたるのは50トークンだけです。
宮武さんは、トークン化によって初期に買った人ほど報われる仕組みが作れると話します。草野さんの「株の要素が」という言葉に宮武さんもうなずき、PMFを達成するまでの初期メンバー集めにも使えるビジネスモデルだと説明しました。
宮武さんによれば、Web3のビジネスモデルはビットコインのようにインフレの概念を入れるなど複雑になり、本物の経済に近づいています。だからこそ、最初に話した「国を作る」ことと同じく、ガバナンスと経済ポリシーの両方を作ることになるのです。
DAOは民主主義のABテスト場になるか
宮武さんがこの流れを面白いと考える理由の一つは、DAOやWeb3のサービスがたくさん立ち上がることで、さまざまな経済やガバナンスを試せる点です。
たとえばUBI ── ユニバーサル・ベーシックインカムの略。すべての人に、何をしていても一定額を無条件で給付する制度構想を試すDAOが出てきて、1000人のDAOでうまくいけば、現実のある町でやってみようという話になるかもしれません。草野さんの「みんな引っ越してそこに」に、宮武さんも同意します。
いわゆるそのクリプトゲームとかDAOっていうのが、えー、後々、えー、民主主義の研究施設になるんですよ。
宮武さんは、DAOが経済ポリシーやガバナンスポリシーをABテストできる場所になると考えています。そのためビジネスモデルを考えるうえでも、エコノミストの視点が必要になってくるといいます。
デジタルの世界ほど新しいことを試せるので、その成果が現実の世界にも影響していく可能性があります。宮武さんは、膨大な話だと断りつつ、20年後、30年後に日本の経済ポリシーやガバナンスのあり方があるDAOから大きく影響を受ける可能性もあると話しました。
初期参加者はどこまで得をしてよいのか
インセンティブ設計には課題もあります。ニューヨーク・タイムズのトークンの例のように初期の人がアドバンテージを持つ設計が、果たしてどこまでよいのか。宮武さんによると、アメリカのクリプト業界では今それが議論されているそうです。
クリプトのインサイダーが先にプロジェクトへ入って儲けている構図は、お金持ちがさらにお金持ちになることにつながります。世界の99%の人はクリプトに詳しくないので、後から入るといいアセットがすべて取られていて勝てない、という懸念があるといいます。
宮武さんはここでも国のたとえを使います。宮武さんと草野さんが新しい国を作れば、入ってきた人はまず土地を取りに行き、土地は限られているので、後から来た人はその土地の上で働くことになります。
宮武さんによれば、同じことはDecentralandやSandboxといったバーチャル世界でも、バーチャルの土地をめぐって実際に起きています。現実の世界では港を作れる場所や石油が出る場所が限られますが、バーチャル世界は無限に作れるぶん、解決の余地はあるといいます。ただ、いい体験は真似しにくく、初期に入った人ほど儲かりやすい構図は残ります。
解決策のアイデアも出ています。Mirrorは、コード化された仕組みによって一部の新しいユーザーにもトークンを自動で配っているそうです。草野さんが「税金みたいな制度を作るとか」と提案すると、宮武さんは、トークンを多く持つ人ほど税金が高くなるといった経済ポリシーも出てくるだろうと応じました。
それでも宮武さんは、Web3には全体としてWeb2.0より大きなファーストムーバー・アドバンテージがあると見ています。土地を先に作れば、いい人を早く集められるからです。日本企業もWeb3化を考えるなら、早めに考えたほうがいいかもしれないといいます。
人のアテンションは限られており、いくつものSlackやDiscordに入っていても、本当にアクティブなのは2〜3個です。DAOはアクティブなほど価値が上がり、参加者もアクティブなほどトークンを得られるため、早めにアクティブなコミュニティを作ることがアドバンテージになる可能性があるといいます。
Off TopicをWeb3化するならどう設計するか
最後の思考実験として、宮武さんはOff Topic自体をWeb3化するならどうするかを考えます。まず、NFTやMirrorのクラウドファンディング機能を使って資金を集め、トークンやNFTを持つ人がDAOとしてのDiscordコミュニティに入れるようにします。
サブスク型にするなら、トークンが毎年一定額分消える仕組みも考えられます。ただし、それだけではお金を持っている人がいいティアを買って終わりになってしまいます。
そこで宮武さんは、DAOの中で貢献した人、新しいユーザーを連れてきた人、SNSでシェアした人など、アクティブなファンほどトークンをもらえる仕組みを提案します。毎年「Off Topic 2021年版聞いてくれました」のようなコレクタブルNFTを配る案も挙げました。
コレクタブルの発想は、Glossier ── アメリカ発のコスメブランド。SNSを通じたコミュニティづくりで成長したD2Cブランドとして知られますがすでに似たことをしているそうです。Glossierは定期的にステッカーのデザインを変え、ファンは新しいステッカーが欲しくて毎回買います。ステッカーはファンである証拠になり、二次流通でも売買されるといいます。
DAOの中では、二人だけではできないことにも取り組めます。誰かが「Off Topicのグッズを作りたい」と提案し、投票で決まれば担当者をアサインし、担当者が売上の一部とトークンを受け取る、という形です。ポッドキャストをインフォグラフィック化した人がトークンをもらう、といった例も挙がりました。
投資のDAO化や、Off Topicのために記事を書くライターを一緒に集めることもできるかもしれません。ただし宮武さんは、実際にやるかどうかは別で、規制や税金の問題もあると断っています。
なぜOff TopicはWeb3にたどり着いたのか
締めくくりに宮武さんは、この年Off TopicがWeb3を扱うのは6回目くらいだとしたうえで、3年間の番組の流れを振り返ると、Web3の話に行き着くのは自然だったと話します。
宮武さんが面白いと感じるのは、番組で話してきた業界がどんどん統合していることです。コマースとソーシャルがソーシャルコマースに、コマースとメディアがクリエイターエコノミーに、ソーシャルとゲーミングがFortniteの人気につながりました。メタバースはソーシャル、ゲーミング、メディア、コマースが合わさったもので、そこにクリエイターエコノミーを入れるとWeb3の話が出てくるといいます。
なんか今までそのOffTopicって、そのなんか特定の業界について話したいっていうよりは、その複数の業界がまたぐそのユーザーの行動?とインターネットの歴史をたどっていると思っていて。
過去の回を振り返っても、独占禁止法は集権型の勢力の話に、バイオテックは政府の役割の話に、Shopifyや Salesforceはビッグテックへの対抗の仕方に、Dream SMPはボトムアップの話に、D2Cはコミュニティから始まるブランドの話につながっていると宮武さんは話します。
Web3を理解するには、クリエイターエコノミー、ゲーミング、フィンテック、コミュニティサービスに加え、カルチャー、経済学、ガバナンス、心理学、社会学まで必要になります。宮武さんは、業界をまたぐつながりを理解することがOff Topicの優位性だったと、この年を振り返りました。
草野さんは、来年はもっといろいろな人とのコラボレーションを増やしたいと話します。肩書も会社も組織もなく、名前もわからないような人たちが活躍する様子に、新しいクリエイターの時代を感じるといいます。
宮武さんも、NFTの影響でアート業界や音楽業界が盛り上がっており、NFTはカルチャーの要素が強いと応じます。なぜ音楽NFTが流行るのか、どんなビジネスモデルが必要なのかを理解するために、テック業界だけでなく音楽業界やアーティストともつながることが、今後Off Topicのやるべきことだと話しました。
まとめ
Web3では、データやユーザーを抱え込むWeb2.0型の優位性が通用しにくく、宮武さんはサービスづくりを「会社ではなく国を作る」ことにたとえて説明しました。DAOというガバナンスとトークンという経済をどう設計するかは、まだ検証フェーズにあり、その試行錯誤が現実の社会にも影響していく可能性があると語られています。
- Web3の優位性は流動性・コミュニティ・コンポーザビリティで、Web2.0の目には弱く見えるため、投資家ほど評価に苦しむ
- Web3サービスは、土地=プロダクト、政府=DAO、お金=トークン、街=コンポーザビリティという「国づくり」として捉えられる
- DAOは国の法に縛られず、出入り自由で匿名でも参加でき、貢献をベースに判断する組織になる
- NYTトークンの例のように、トークン設計で初期参加者に報いられる一方、先行者だけが得をしない仕組みも求められている
- 多数のDAOが立ち上がることで、経済やガバナンスのポリシーをABテストできる「民主主義の研究施設」になる可能性がある




