なぜ今、政治の話をするのか?
2024年7月22日収録のこの回で、宮武さんが取り上げたのは、テック業界の一部が保守寄り、つまり共和党やトランプ寄りに傾いているという話題です。宮武さんは以前から政治の話をしたいと考えていたものの、良い切り口がなかったと振り返ります。
草野さんは、日本と比べてアメリカではテック業界と政治が密接だと指摘します。宮武さんも、世界の時価総額上位の多くをテック企業が占める勢いのある産業だからこそ、政治との距離が近いと応じます。日本でも東京都知事選に安野さんが出馬するなど、テックの影響が政治に出始めていると話されています。
一方で宮武さんは、アメリカの政治の分裂の激しさに疲れを感じていると明かします。共和党派か民主党派かでメディアも人も語るナラティブが違い、同じ出来事を真逆の視点から見ているといいます。
ここ8年ぐらいは、ちょっと呆れてきたっていうのは少なからずあるので。やっぱり分裂が激しすぎて。
草野さんも、トランプ支持者が「神様が彼を守ってくれた」と語る様子や、聖書を一緒に売るキャンペーンを例に、日本とは違う文脈を感じると話します。分裂によって暴力的なことが加速するのを見るのは悲しい、とも語っています。
話す前の2つの注意事項
宮武さんは本題の前に、2つの注意事項を示します。1つ目はタイミングです。収録当日の日本時間の朝に、バイデン大統領が大統領選からの撤退を発表したばかりで、民主党の候補者はまだ正式に決まっていませんでした。ハリス副大統領が有力視されているものの、プロセスによっては8月中旬から下旬まで決まらない可能性もあるといいます。
2つ目は立場の問題です。宮武さん自身も選挙や候補者に強い思いはあるものの、この回では語らず、テック業界の人たちがなぜトランプ寄りになったのかに焦点を当てると説明します。
別に(彼らの考えを)言ってるからといって、我々が別にそれを支持してるわけではないっていうことだけ、そこの注意事項だけで話したいっていうところですね。
また、アメリカ政治でいう「右寄り」は保守的で共和党派、「左寄り」はリベラルで民主党派を指す、という前提も共有されました。
トランプ支持を表明したテック業界人は誰か
宮武さんによれば、7月22日時点で、テック業界の著名人の何人かがトランプ支持を公にしています。2016年から支持してきたのがピーター・ティール ── PayPal共同創業者で、Palantirの創業にも関わった投資家。シリコンバレーでは早くからトランプ支持を表明したことで知られていますさんです。
ただし宮武さんは、ピーター・ティールさんは今はそこまでトランプを支持していないようだと付け加えます。銃を向けられたらバイデンよりトランプに投票する、という程度の発言だったといい、理由は翌週に話すとしています。
ほかに名前が挙がったのは、セコイアのダグ・リーオーニーさんとシャーマ・グアイヤーさん、アンドリーセン・ホロウィッツ創業者のマーク・アンドリーセンさんとベン・ホロウィッツさん、テスラやスペースXのイーロン・マスクさんなどです。マスクさんの支持はウォール・ストリート・ジャーナルの報道によるもので、本人は正しいとは言っていない一方、アンドリーセンさんとホロウィッツさんは寄付も表明しているといいます。
さらに、PayPal創業メンバーのケビン・ハワリーさん、Intercom創業者のオーウェン・マッケイルさん、ヘッジファンドマネージャーのビル・アックマンさん、アンドリルのパルマー・ラッキーさん、Palantirのジョー・ロンズデールさん、キース・ラボイさんらも挙げられました。一部の表記は人名の正式表記です。
なぜ「今」公言されるようになったのか?
宮武さんは、支持表明が今相次いでいる背景として、大統領討論会でのバイデン氏のパフォーマンスへの懸念と、トランプ氏の暗殺未遂事件を挙げます。これらが重なったことで、トランプ支持をオープンに言えるようになったといいます。
ただし宮武さんは、テック業界が共和党寄りになるシフト自体は10年ほど前から徐々に起きていて、今ようやく大きくエスカレートしている状況だと見ています。
シリコンバレーではトランプ陣営のための資金集めイベントも開かれています。宮武さんがよく聴くポッドキャスト「All-In」のメンバーであるチャマス・パリハピティヤさんとデビッド・サックスさんが業界人を集め、約1200万ドルを集めたといいます。
バイデン派の人たちから見ると、急にクレイジーになったみたいな話とかではなくて、割と合理的な形で、より右寄りになってるのかなっていうところで。
草野さんが、テック以外でもディズニーがバイデン氏の出馬なら寄付しないと示したことに触れると、宮武さんは2択の選挙の構造を指摘します。この人がいいから選ぶのではなく、この人ではダメだから相手を選ぶ、という選択が多いといいます。
保守派は本当に増えているのか?
宮武さんはまず、保守化のシフトが本当に起きているのかを問い直します。著名人のトランプ支持者は増えているものの、テック業界全体で見ればほとんどの人がいまだに民主党派で、トランプ支持者はまだ小さなマイノリティだといいます。
宮武さんによれば、増えているのは「見た目上」の部分です。トランプ氏が大統領だった時期は、支持を口にすればテック業界から切り離されるような空気があり、支持者は声を上げられませんでした。それが今は言えるようになり、しかもアグレッシブに発信されているため、声が拡散されているといいます。
トランプ政権期は、支持を口にすると業界から切り離されるような空気があり、支持者が声を上げられなかった
討論会や暗殺未遂事件を経て公言できるようになり、勢いもあって声が拡散されている。ただし業界全体ではまだ少数派
もう1つの理由として宮武さんが挙げるのが、インセンティブです。トランプ氏が勝つと言われる中で、勝者を公の場で持ち上げておけば見返りがあるのではないか、と考える人もいるといいます。
勝ち馬に乗ろうとしてる人たちがいっぱいいるみたいな。
基本的にテック業界の人たちもビジネスマンなので。
宮武さんは、トランプ氏は根に持つ人なので、勝ちそうな相手を批判すると後で不利になると恐れる人もいる、と続けます。草野さんはこれを「恩を作っておく」「もともとそっち側でしたと明言しておく」と言い換えました。
トランプ支持というより「バイデン政権反対派」?
宮武さんの見立てでは、全体として増えたのはトランプ支持者というより、バイデン政権に反対する人たちです。その理由は、民主党がバイデン氏を守ろうとしたこと、政策、そしてテック業界の感情論の3つが混ざっているといいます。
1つ目の「守ろうとした」点について、宮武さんは討論会での失敗は新しいことではなかったと話します。過去1〜2年のバイデン氏にはそうしたミスがちょこちょこあったのに、民主党や一部メディアは「バイデンは今もキレッキレだ」と主張していたといいます。
「いや、それ嘘じゃん」っていう、単純に、多分思う人たちがいっぱいいて。
草野さんも、AOC ── 民主党の下院議員アレクサンドリア・オカシオ=コルテスの略称。党内の進歩派を代表する若手政治家として知られていますがバイデン氏は過小評価されていると発言していたことを挙げます。宮武さんは、真偽はともかく、そう見えてしまったことで民主党が信頼できなくなった人がいると説明しました。
VCとスタートアップを悩ませる税制とAI規制
2つ目の政策面で、宮武さんがまず挙げるのが税金です。VCは投資先の買収や上場で得た利益の約20%を受け取り、その税率はアメリカでは約20%で上限が決まっています。このキャピタルゲイン税 ── 株式などの資産を売却して得た利益にかかる税金。VCの成功報酬にあたるキャリードインタレストもこの扱いを受けることが議論の的になってきましたを上げようという話が出ているといいます。
さらに富裕層向けには、保有株が1年で大きく値上がりしただけで、売却前の未実現利益に課税する法案も出ているそうです。VCや一部の起業家が不満を抱えるのは当然だ、と宮武さんは話します。
規制面では、バイデン政権のAIに関するルールやガイドラインへの懸念があります。イノベーションを止めかねないうえ、ルールを書くのが政府と大手AI企業である以上、新興サービスではなくOpenAIのような既存大手を助ける結果になる、という不信感です。
宮武さんは、EUでも似た動きがあり、MetaがAIサービスをEUでローンチしない、Threadsの提供を遅らせたといった例を挙げます。そのうえで、パソコンが登場したときに仕事が奪われるからと禁止していたらイノベーションは遅れていたはずだ、と例えました。
多少なりの規制がないと、無限に変な利用とかもできてしまうので、そこら辺の規制の度合いっていうところを結構テック業界(は)懸念している。
具体例として紹介されたのが、カリフォルニア州で出ている法案です。AIモデルが悪用されて多くの人に被害が出た場合、悪いことをしたのがユーザーでも、AI企業が刑事罰の対象になりうる内容だといいます。
宮武さんは、Facebookでデマを流せるからといってFacebookが責任を負うべきか、という議論はあってよいとしつつ、AIがまだ未知の領域である今の段階では早すぎる、という指摘があると紹介しました。
独禁法とジェイディ・バンスへの期待
草野さんが、規制は大手テック企業が力を持ちすぎたことへの政府の対応ではないかと尋ねると、宮武さんは、大手テックへの懸念は共和党も民主党も持っていると答えます。今権力を持っているのが民主党だから目立つだけかもしれない、という見方です。
テック企業の分割論については、民主党のエリザベス・ウォーレン氏がGoogleの分割などを唱えていたと宮武さんは補足します。そのうえで独占禁止法への懸念が大きいと続けます。
連邦取引委員会のリナ・カーン ── バイデン政権で連邦取引委員会(FTC)の委員長に就いた法学者。巨大テック企業への厳しい独禁法運用で知られています委員長と司法省は、Amazon、Google、Meta、Appleを独禁法で訴え、NVIDIA、Microsoft、OpenAIも調査しているといいます。さらに、小さなVR企業やロボット掃除機の買収まで止めようとしていると宮武さんは話します。
すごい小さい案件に関しては、結構テック業界のエコシステムを結構ブロックしてしまうことでもあるので、そこに対して懸念する人は多いですと。
草野さんもFigmaの買収が結局断念されたことに触れました。普通に考えれば、ビジネス寄りとされるトランプ氏の共和党のほうが、独禁法ではテック業界に近いと宮武さんは言います。
ただし、トランプ氏が副大統領候補に選んだジェイディ・バンス氏は、リナ・カーン氏に強く同意していると発言しており、共和党としては珍しい存在です。草野さんは、バンス氏が『ヒルビリー・エレジー』の著者であることに触れました。
それでもバンス氏は元VCでテック業界の人でもあるため、たとえば買収の承認を求める場面で「通してくださいよ」と交渉の余地があるのではないか、と業界は感じているかもしれないと宮武さんは話します。トランプ氏自身については、大手SNSに発言をブロックされたことへの怒りがあるとも付け加えました。
クリプトとカマラ・ハリスの立ち位置
クリプトについては、バイデン政権がより厳しく見ているとよく言われていると宮武さんは話します。トランプ氏は過去に両方の意見を言ってきたものの、最近はビットコインやクリプトを良いものだと発言しているそうです。寄付金を集められるからだ、という指摘もあるといいます。
(トランプは意見が)めちゃくちゃ変わる人なので。明日変わってもおかしくないと思います。
民主党の最有力候補とされるハリス副大統領については、ベイエリアのオークランド出身で、長年テック業界と付き合いがある人物だと宮武さんは紹介します。政治家になりたての頃からVCのジョン・ドーア氏やロン・コンウェイ氏の支持を受け、現在はリード・ホフマン氏が支持を公にしているといいます。
一方でハリス氏はテック業界に厳しく物を言う人でもあり、AI規制ではバイデン政権と同じ立場です。TikTokについては、アプリ自体よりも親会社のバイトダンスを強く懸念していると話しているそうです。
パレスチナ問題とアジア系ヘイトクライムが動かした票
宮武さんは、日本ではあまり語られない論点として、人種や民族にまつわるポリシーを挙げます。その大きな1つがパレスチナとイスラエルの問題で、この問題をきっかけに民主党から共和党に移ったテック業界人がいるといいます。
代表例が、長年民主党に寄付してきたビル・アックマンさんです。ハーバード大学出身のアックマンさんは、アメリカの大学キャンパスでパレスチナを支持する運動、とくにその中の反ユダヤ主義 ── ユダヤ人に対する偏見や差別、敵意を指す言葉。英語ではアンチセミティズムと呼ばれますの動きが盛んになっていることを強く懸念し、保守寄りになったといいます。
宮武さんは、大学とバイデン政権はイコールではなく、政権が運動を支援しているわけでもないと断ります。そのうえで、リベラルな大学キャンパスが民主党側の動きを代表するものと見られ、反対側に移ったという構図だと説明しました。
(共和党に行けば)解決してくれるっていうのは多少なりありますと。(ただ同時に)いわゆる民主党派の人たちといたくないっていう、多分話の方がでかいと思います。
もう1つが、シリコンバレーのアジア系アメリカ人の変化です。完全に共和党派になったわけではないものの、以前ほど民主党派ではなくなっていて、数年前から続くアジア系へのヘイトクライムが大きく影響しているといいます。
宮武さんによれば、ある調査ではテック業界の約2割、Googleでは約3割がアジア系とされ、その多くがシリコンバレーに住んでいます。暴力が増えているのに、カリフォルニア州知事やサンフランシスコ、LAの政治家は警察強化と逆の方向に動こうとしている、という不満があるそうです。その代表格としてギャリー・タンギャリー・タンさんの名前が挙がりました。
パレスチナ問題
大学キャンパスで反ユダヤ主義の動きが盛んに
アジア系への暴力
ヘイトクライムが増えても警察強化が進まない
リベラルへの警戒
大学や地元政治家が民主党側の象徴と見られる
保守寄りへ
民主党派から離れる人が出る
バイデン政権が評価された点はあるのか?
草野さんは、不満がある一方で、テック業界から見てバイデン政権で良かった点はないのかと尋ねます。宮武さんは、一部の環境政策と、半導体などのインフラ政策を挙げました。
とくに、アリゾナ州でTSMCと組んで工場を建てるといったインフラ系のプロジェクトには、賛同する業界人が多いといいます。
別にバイデン政権が全部が全部悪いっていう話ではなくて、ただやってることが結構テック業界がやろうとしてることと反する。
エリート、Woke、フェミナイゼーションへの反発
3つ目の要素として宮武さんが挙げるのは、バイブスやカルチャーシフトとも呼べる感情面の変化です。まず、リベラルの場所であった大学そのものの信頼度が下がっているといいます。
次に、Woke ── もとは社会的な不正義に「目覚めている」ことを指す言葉。近年は過度な社会正義の押し付けを揶揄する文脈で使われることも多い言葉ですの動きや、DEI ── Diversity, Equity and Inclusionの略で、多様性・公平性・包摂性を指す。企業の採用や人事施策として広がりましたが、全国的には思ったほど人気がなかったうえ、都合よく使われたのではという声も出ているといいます。実際にMicrosoft、Zoom、Google、MetaはDEIプログラムを廃止または大幅に縮小しているそうです。
さらに宮武さんは、2008年のオバマ氏当選が、実態はともかく「エリート層が選ばれた」と見られ、民主党が頭のいい人たちの場所になったという見え方への反発があったと話します。これはテック業界に限らない全般的な流れです。
もう1つが、アメリカ社会のフェミナイゼーション、つまり女性化です。LGBTQの人たちが前に出てきたり、男性が体育会系でなくてもいいとされたりする流れを嫌う人が一部にいて、多くの男性が共和党派になったと宮武さんは見ています。
それ自体はより人気になっていますと。ただ、それを押し付けすぎな部分があって、全員がこう絶対しないといけないですよみたいな話になった瞬間、自分の自由度が失われるので。
やらなかったら、攻撃されてますっていう。
草野さんが「被害者」と言葉を添えると、宮武さんは、やらない人が加害者扱いされ、相手が被害者扱いになってしまう構図が良くなかったと応じます。草野さんも、あらゆる分断でそうしたことは起きると話しました。
アクティビズムへの対抗心はどう生まれたか
これに関連して宮武さんが挙げるのが、アクティビズム文化と、その過激化としてのキャンセルカルチャー ── 著名人や企業の過去の言動を問題視し、SNSなどで不買や排斥を呼びかける動きです。こうした文化はテック業界にもかなり広がったといいます。
有名な例が2018年のGoogleです。アメリカ軍との提携の話を知った一部の従業員がストライキを起こし、経営陣はそうした契約をしないと表明しました。
しかし宮武さんは、ここ1〜2年で対処の仕方が変わってきたと話します。最近では、パレスチナ問題をめぐって抗議したGoogleの社員がGoogle Cloudトップのオフィスに立てこもり、全員解雇されたといいます。5〜6年前ならありえなかった話だそうです。
2018年、軍との提携に反発した社員のストライキを受け、経営陣が契約しないと表明
最近は、パレスチナ問題で抗議しオフィスに立てこもった社員が全員解雇された
こうして経営者の側にWokeやキャンセルカルチャー、アクティビズムへの対抗心が生まれた、と宮武さんは説明します。保守派もアクティビズムを行うものの、どちらかといえば左寄りの考えと見られがちなため、民主党がより嫌われる結果になったといいます。
トランプの「勝者の振る舞い」
トランプ氏自身については、振る舞いが「勝者っぽい」ことが大きいと宮武さんは話します。最もわかりやすいのは、暗殺未遂事件の直後にガッツポーズをした場面だといいます。
自分が負けたって、認めない人じゃないですか。
宮武さんは、トランプ氏はバカにする側にとっても慕う側にとっても、違う意味で面白いショーマンだと話します。宮武さん自身はその発言をあまり信じていないとしつつ、アメリカの政治にはエンタメ性があり、そこはうまくやっていたと評価します。
2016年の選挙戦で過激な発言をした理由の一部も、常にメディアに取り上げられたからだと宮武さんは言います。草野さんは、メディアコンテンツを生み出し大衆を動かす力という意味では政治家に向いているのかもしれない、と受け止めました。
真ん中の有権者はなぜ揺れるのか?
宮武さんは、左に民主党、右に共和党を置いた1本の線で考えると、ほとんどの人は真ん中あたりにいると話します。それは深く考えた結果ではなく、単純に考えたくないからだといいます。
別に誰が次の首相になるとか、誰が次の大統領になるかって、別にそんな考えたくないじゃないですか。
大統領選は4年ごとで、日常生活への影響もそこまで大きくありません。アメリカで関心が高く見えるのは、広告が流れ、メディアが常に話題にしているからではないか、と宮武さんは見ています。
宮武さんの仮説では、どちらかの党に過激派が増えると、真ん中の人たちが「引いて」逆側に移ります。2008年や2013年頃は共和党の権力者に過激派が多く、全体がやや左寄りでした。
ところがオバマ氏が勝って民主党が権力を得ると、権力を持つとさらに欲しくなるため、民主党側が過激になり始めます。その結果、真ん中の人たちが少しずつ右に傾き、トランプ氏の勝利につながったと宮武さんは整理します。本人も、ざっくりした話で実際には多くの要因があると断っています。
過激派が増える
権力を持つ側の党で過激な主張が強まる
真ん中が引く
大半を占める中間層が「クレイジーな人たちがいる」と嫌がる
逆側へ移る
中間層が反対側の党に傾く
権力が移る
今度は新たに権力を得た党で過激派が増える
党のプレッシャーと「一周回った」トランプ
草野さんは、元国連大使のヘイリー氏が「トランプのことを全部賛成しなくていい」と受け皿を作ろうとしていることや、女性問題を一周回ってもう話さない空気になっていることに触れ、見え方が変わってきたと話します。
宮武さんは、相手に勝たせたくない気持ちが大きすぎて、自分の党の人を信じるしかない状態だと説明します。政治家は党から資金提供を受けているため、支持しなければ資金を切られ、次の選挙で同じ党の対立候補に資金と広告を投入されることもあるといいます。
ヘイリーさんがトランプを支持するっていうことは、めちゃくちゃ矛盾してる部分はあるんですけど。そこを支持するっていうのは正直、想定内っていうところですよね。残念ながら。
宮武さんは過去回で話したカルトや宗教の話にも触れます。銃に賛成する人と反対する人を別々の部屋に3時間入れると、どちら側もより過激になるといい、同じことが政治でも起き、人の立場がどんどん不安定になって分裂が生まれていると話しました。
経済の評価は誰が大統領かで逆転する
分裂を示す例として、宮武さんはアメリカ人に「今の経済の状況」を尋ねたアンケートを紹介します。2000年代から、支持政党によって回答が大きく変わるようになったといいます。
草野さんが、客観的にはどちらの政権の経済が良かったのかと尋ねると、宮武さんは、マクロ要因が大きく計算しづらいと答えます。トランプ政権期にはコロナで経済が一時大きく落ち込む一方、株式市場は大きく上がっていました。
S&P500だけで見ればトランプ政権のほうがバイデン政権より良かったかもしれないものの、市場全体が上がっていた時期を含むため単純には比べられないといいます。草野さんが2000年代から貧富の差が広がり続けていることに触れると、宮武さんはそれも絶対に影響していると応じました。
保守化は「リアルでありリアルじゃない」
最後に宮武さんは、テック業界の保守化をリアルでありリアルじゃないと表現します。リアルな面は、これまで民主党派だった一部の経営者やVCが実際にトランプ支持に回り、バイデン政権や民主党全体への不満から保守寄りになっていることです。
一方で、テック業界全体ではいまだに民主党派が多数です。この二面性こそが、今回のシフトの実像だと宮武さんはまとめます。
翌週は、イーロン・マスクさんやマーク・アンドリーセンさん、ベン・ホロウィッツさんがなぜ支持したのか、テック業界がなぜ政治に深く関わるようになったのかを具体的に話す予定です。草野さんは、支持によって何を得ようとしているのか、利害関係を知りたいと締めくくりました。
まとめ
テック業界のトランプ支持は、突然の変心ではなく、政策・文化・政治構造が重なった合理的な動きとして語られました。ただし業界の多数派は今も民主党派で、目立つ声と全体の実態は分けて見る必要があります。
- トランプ支持の公言は討論会と暗殺未遂事件を機に増えたが、シフト自体は約10年前から続いている
- キャピタルゲイン税や未実現利益課税、AI規制、独禁法の強化が、VCや起業家の不満を招いている
- Wokeやキャンセルカルチャーへの反発、大学への信頼低下などの文化面も民主党離れを後押ししている
- 両党で過激派が増えるたびに真ん中の有権者が反対側へ揺れ、分裂が深まっていると宮武さんは見ている
- 業界全体ではまだ民主党派が多く、保守化は「リアルでありリアルじゃない」現象といえる


