熊本の牡蠣と近所の散歩、そして草野さんのブッククラブ構想
この回はニュース回が続いた後の、久しぶりの雑談回です。冒頭で宮武さんは、休みを取って熊本や糸島へ出かけた話をします。
草野さんから「半導体の調査ですか?」と振られた宮武さんは、TSMCにも行きたかったと笑いつつ、糸島で牡蠣やハマグリを自分で焼いて食べてきたと話しています。
半導体調査ではないですね。残念ながら。
一方の草野さんは、近所や電車で10分、15分ほどの場所を散歩しながら、ゆるやかに過ごしているといいます。そして散歩と並ぶ日課の読書から、この回の本題である本の話へ入っていきます。
草野さんは去年、番組で「ブッククラブを作りたい」と話していました。その後、今年の1月からニュースレターを始め、読み終えた本やこれから読みたい本、ドラマ『セヴランス』など気になるコンテンツについて書いているそうです。
ニュースレターに本以外の話も入れたいという草野さんに、宮武さんは、ブッククラブはコミュニティを作る話なのだから、本がメインで他の話題があってもいいのではないかと返します。
あ、許されるなら、じゃあそれ(ニュースレター)でブッククラブと認定させてください。
『バベル』はなぜ翻訳を魔法として描くのか
草野さんが最初に紹介したのは、R・F・クアンさんの小説『バベル オックスフォード翻訳家革命秘史』です。アメリカではベストセラーになった作品で、クアンさんは以前番組でも触れた『イエロー・フェイス』の著者でもあります。
『イエロー・フェイス』は、亡くなったアジア系の有名作家の未発表原稿を、親友を自称する白人の作家志望の女性が盗み、自分の作品として発表してしまう話です。草野さんは、アジア系の作家だからこそ書ける面白さがあると話しています。
『バベル』の主人公も、アジア系の男の子です。中国で「才能がある」と見出された主人公のロビンが、イギリスの一流翻訳研究所に入学させられる物語で、オックスフォードが舞台であることから、草野さんは「ハリーポッターっぽい」歴史ファンタジーSFだと表現します。
草野さんが宮武さんと話したかったのは、この世界観の中で翻訳することが魔法の力になっているという設定でした。
その何が魔法かっていうと、翻訳することが魔法使いのパワーみたいになってるんですよね、この世界観でいうと。
ロビンは中国語を話せるうえに、幼い頃から家政婦のような人に英語を叩き込まれ、謎の人物から英語の本が送られてきていました。19世紀のこの世界では、アジアの言語と英語の両方を話せる人は稀有で、だからこそ重宝されるという設定です。
なぜ翻訳が魔法になるのかについて、草野さんは「完璧な翻訳はない」という点を挙げます。物語では、銀の板に中国語と英語の言葉を書いて唱えると魔法が起きる、という要素もあります。
絶対同じ意味だっていうものがないからこそ、そこの言葉の差分を駆使して、ヨーロッパ、イギリスにとって有利な条件で貿易をするっていうみたいな感じの話なんですね。
完璧な翻訳はない
言語の間には、まったく同じ意味の言葉が存在しない
言葉の差分が生まれる
2つの言語の意味のずれが「余白」として残る
差分を駆使する
ずれを利用して、自分にとって優位な文脈を作り出す
イギリスに有利な貿易
言葉の力が、国家の利益に結びつけられる
草野さんはこの設定を、SFでありながら現実にも少し起こり得るシチュエーションだと受け止めています。テクノロジーで言語の壁は低くなっても、翻訳が完全に置き換わることはないのではないか、とも話しています。
その時感じてるものが3年後そう同じ意味になってるかって違うじゃないですか。
ラテン語から派生した英語のように、言葉の意味は時代とともに変わっていきます。草野さんはそこから、言語は生き物だという感想を持ったといいます。
通訳者は場の空気まで訳すべきか
草野さんの話を受けて、宮武さんは自身の経験から、ミーティングでの通訳の難しさを語ります。直訳で済むものもあれば、言われていない言葉を補うか、場の雰囲気まで伝えるべきかを判断しなければならない場面もあるそうです。
そこら辺をなんか決めるのって、やっぱりその翻訳者の、あの、役割でもありますし。なんかそれによってだいぶ翻訳者側がすごい影響力持つことも多いと思うので。
宮武さんによると、ただ訳すだけの翻訳者を雇って、そうした文脈を汲み取ってくれないことに課題を感じる人も多いといいます。
草野さんは、『バベル』にも似た場面があると紹介します。英語話者がひどく無礼なことを言って中国人と口論になった際、ロビンは直訳してはいけないと考え、やんわり違うことを言って場を収めるのです。
でもこれ普通にありますからね。交渉の話とかで全然ありますね。僕もやったことはありますし。
宮武さん自身も、違う言い方をしたり、気持ちだけを伝えて直訳しなかったりしたことがあるそうです。ただし、その判断には危うさもあると付け加えます。
ただそれ、それってすごい危険性を持つ判断でもあるので、あの、間違えたら完全コミュニケーション、コミュニケーションのミスになっちゃうので。
『バベル』の中でも、通訳で一番大事なのは誰の気分も害さずに要点を伝えることであり、言語の複雑さをいじくり回すのは良くないけれど、そこにこそ言語の面白さがある、と語られているそうです。
日本人の「頷き」はなぜアメリカで誤解されるのか
宮武さんは、通訳の難しさは文化の違いでさらに大きくなると話します。アメリカ人同士で通じる言い方と、アメリカと中国、アメリカと日本の間で通じる言い方は違い、一種のローカライズが必要になるためです。
草野さんは、文化によっては直接的に話すことが礼儀正しくもあり、失礼にも感じられると返します。宮武さんは、日本ではストレートに言わないケースが多いと続け、草野さんはそれが優しさでもあると添えています。
直接的に話すことが礼儀正しいとされる場面がある。頷きは同意と受け取られやすい
ストレートに言わないことが多く、それが優しさでもある。頷きは「話はわかりました」という敬意を含む
宮武さんが挙げる具体例は、アメリカ企業が日本企業と会う場面です。日本側はリスペクトも兼ねて「話していることはわかりました」と頷きますが、アメリカ人にはそれが同意に見えてしまうことがあるといいます。
なんかミーティングがすごい上手くいったってなるんですけど、実はあんまり上手くいってなかったり。ただ、それを翻訳、通訳の人が読み取らないといけないんですよ、多分。
宮武さんは、そのずれを読み取るには双方のビジネスや、さまざまな意味でのコンテクストを理解しなければならず、そこが難しいと考えています。
草野さんは『バベル』のもう1つの論点として、インド系などさまざまな出身の学生がイギリスの名門研究所で学ぶことで、自国に不利なことをしているのではないかと揺れる文化的な葛藤も紹介します。研修で故郷に戻ったロビンが、どちらの立場で話すべきか戸惑う場面もあるそうです。
なお、草野さんは『バベル』を日本語訳で読んだそうです。英語では複雑すぎると感じたためですが、日本語で読むと、漢字の意味が英語ではこうなるといった話がすっと入ってくるのが嬉しかったと話しています。
金融商品として最適化された建築はどんな形になるのか
草野さんが2冊目に紹介したのは『建築のかたちと金融資本主義』です。建築が金融資本主義によってデザインされ、金融商品として最適化された建物が増え続けたら何が起きるのか、を論じた本です。
本で紹介されている事例として、草野さんはいくつかの建築を挙げます。
- ゾンビ建築: 投資目的で購入され、実際には誰も住まないマンション
- オーナーはいるのに人がほとんどいない、別荘だらけの街
- 床面積を最大化するために建てられる極端に細いビル
- 氷山建築: 規制の緩いロンドンの地下に掘られる深いベースメント
宮武さんが「フィクションなのか」と尋ねると、草野さんは実在の事例を扱ったノンフィクションでありながら、フィクション的でもあるという観点で語られていると説明します。
宮武さんは、資本主義が行き過ぎるとインセンティブ設計によって市場が変わり、面積という指標にとらわれた小細工が生まれる、そのエクストリームなユースケースを集めた本だと受け止めています。
草野さんが特に新鮮だったのは、投資家の注目を集めるために、あえてユニークな形にした建築があるという話でした。有名建築家の作品はクリエイティブな動機で作られたと思っていた草野さんにとって、唯一無二の形で注目を集めるという金融的な見方は「なるほど」と思うものだったそうです。
なんかそういう風に見たことなかったなと思って。
ただし草野さんによると、この本が扱うのはヨーロッパとアメリカの住宅に限った話で、アジアの事例はあまり出てこないそうです。
誰も住まない街は迷惑か、恩恵か
宮武さんは、この本の話を他の業界にも重ねます。住む場所はある程度コモディティ化されていて、場所や部屋の数、組み合わせによって価値が付いたり付かなかったりします。リテール業界でTシャツにデザインを入れて付加価値をつけるのと似ているけれど、住まいについてはあまりそう考えない、という指摘です。
草野さんは、ヨーロッパのアイルランドのように、作ったのに誰も住まない街があると挙げます。宮武さんは、家はたくさん建っているのに誰も住んでおらず、夏の間だけ人が来る街がいちばん面白いと応じます。
もともと住んでいる人には迷惑だろうという草野さんに、宮武さんは「めちゃくちゃ迷惑です」と同意しつつ、別の面もあると話します。
なんか、なんか嫌いな部分もある、あるんですけど、好きな部分もあるっていう。
草野さんは、3Dなどで建築が作りやすくなりつつある今、本の中で語られる「建築はフィンテックだ」という主張を、極論としながらも、俯瞰すると家を建てて家賃を取る運営はゲームのようにも見えると話します。
宮武さんは、サービスは人々の暮らしを良くするためのものでも、スケールし続けるプレッシャーの中ではさまざまなトレードオフが生まれると指摘します。草野さんは、以前宮武さんが話したパリのように伝統を固定する価値もあり、街づくりには変わらないことの価値と変わることの価値の両方がある、と難しさを語っています。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』はなぜ「愛着」の話になるのか
3冊目は、マット・デイモン主演で映画化された『火星の人』の著者による宇宙SF『プロジェクト・ヘイル・メアリー』です。草野さんは、序盤のネタバレを含むと断ったうえで紹介します。
主人公のグレースは、気づくと宇宙船の中にいて、やがて未確認生物と出会います。言語がまったく違うため、最初はボディランゲージで意思疎通し、次にグレースが音声認識で相手の言葉を翻訳するプログラムを作り、お互いに言葉を学んでいきます。
草野さんがこの小説を思い出したのは、以前宮武さんと「人型ロボットが人の形である理由はあるのか」という雑談をしたからでした。相手は可愛くもなく人の形でもない宇宙人ですが、草野さんはそこに惹かれたといいます。
言語をお互い習得していくみたいなのってめっちゃ愛着湧くだろうなと思ったんですよね。
お互い言語を学んでいくうちに友達になってる、気づいたら友達になってるみたいな。ああ、そういうAIのなんかペットがいたらちょっと好きになるかもって思いました。
宮武さんは、犬や猫が自分の名前を覚えたり、「散歩」という言葉に反応したりするのも、繰り返しの中で徐々に共通言語になっていくからだと応じます。
さらに宮武さんは、以前草野さんが話していた「チームを強化するポイントの1つは共通言語を作ること」という話を引きます。共通言語は最初から作れるものではなく、話し合ううちに同じ言葉を使うようになるものだという指摘です。
草野さんは、ここに『バベル』とのつながりを見ています。完全な一致はなくても、お互いにチューニングし合うことに楽しさがあるのではないか、という見方です。
AIだと合わせに来てくれるし、知ってる前提だけど、なんかそこをチューニングし合うみたいな。お互い相互でチューニングし合うみたいなのはあったら楽しそうだなって思いました。
宇宙人と出会ったら、どう意思疎通するのか
宮武さんが「若干ハードルがあった方がいいということか」と尋ねると、草野さんは「あった方がいいんじゃないですか」と答えます。
だってなんかその全く通じ合わないみたいなことってあんまないじゃないですか。
草野さんは、言語が違っても身振りで言いたいことはわかってくるもので、自分とまったく違うものに出会う体験は生きていてあまりないと続けます。宇宙人に会いたいという気持ちは、そういう体験への憧れではないかという考えです。
宮武さんはそこから一歩踏み込み、そもそもボディランゲージが通じるのかと問いかけます。指を差しても、指差しの意味がわからない相手かもしれないからです。
だって自分って指差しても、指差してることの意味合いがわかんなければ。
宮武さんは、相手の生態による制限の中で共通点を探す話になるのかもしれないと考えます。草野さんによると、小説の中でもグレースが相手の呼吸や生きるサイクルを観察し、大事なものを見つけてからコミュニケーションしていくそうです。
草野さんは、『火星の人』と同じくこの著者の宇宙SFは、過酷すぎる状況でも驚くほどポジティブだと話し、「元気が出るSF」だと締めくくっています。
NYのイマーシブシアター『Sleep No More』とは何か
後半は宮武さんの話題です。宮武さんが去年いちばん良かったという体験は、ニューヨークのイマーシブシアター『Sleep No More』でした。今年の初めに残念ながら終了しています。
宮武さんによると、ベースのストーリーはシェイクスピアの『マクベス』で、タイトルの「Sleep No More」もその作中の言葉に由来すると考えられるそうです。会場はマンハッタンのど真ん中にあるホテルで、6つほどのフロアを上下に移動しながら、さまざまな部屋で劇が進みます。
ストーリーは毎回同じで、1時間ごとにループします。最大3時間参加できるため、同じ物語を3回見ることができ、途中休憩や途中参加もできるといいます。
20人ほどのキャラクターがそれぞれ別の動きをしていて、どこで何のシーンが起きているかは最初誰にもわかりません。衣装もシェイクスピア風ではなく、1930年代風のドレスアップした装いだそうです。
宮武さんは『マクベス』を昔読んだことはあったもののあまり覚えておらず、事前に調べずに参加しました。部屋に入ると本屋になっていたりメモが置いてあったりして、そこへ急にキャラクターが入ってくるといいます。
しかもセリフほぼ言わないんですよ、誰も。
宮武さんは、日本の「イマーシブ・フォート東京」にはセリフがあるのに対し、『Sleep No More』は基本的にダンスと動きだけですべてを表現している点が違うと話しています。
マスクとエレベーターで、どう没入感を作るのか
草野さんが一番面白かった点を尋ねると、宮武さんは没入感の出し方のうまさを挙げます。全員に共通の面白い体験をさせながら、一人ひとりの個別の体験も作っているというのです。
参加者には全員、プラスチック製のマスクが配られます。宮武さんは実際に持ち帰ったマスクを収録中に着けて見せ、このマスクが重要な役割を果たしていると話します。
なんかすぐに誰が役者か、だる--誰がサ--そのオーディエンスかがめちゃくちゃはっきりわかるんですよ。
入場の流れも、没入感を高めるように作られています。宮武さんの説明を順に追うと、次のようになります。
あの、あの、一緒に行動するなっていう指示なんですよね。
しかもまあまあ暗いところに放置されるんで。
草野さんは「ディズニーランドより攻めてますね」と驚きます。中では観客同士も話してはいけないそうです。
役者は観客がいない体で動きますが、宮武さんによると、邪魔な位置にいる観客は軽く「どけ」と押しのけられ、その捌き方がとてもうまいといいます。殺人など血が出る場面もあり、宮武さんは白いパーカーに血がついたこともあったそうです。
で、後々気づい-気づいたんですけど、あの血はチョコレートだったっていう。
3時間の中で、何を追いかけて楽しむのか
会場では携帯電話も使えず、時間の感覚がずれるため、時計を持っていくように勧められるそうです。3時間の体験は疲れるほどだと宮武さんは話します。
宮武さんは、楽しみ方がいくつもあることを重要なポイントに挙げています。気になるキャラクターを追い続けることもできれば、自由に部屋に入り、引き出しを開けたりメモを読んだりしてサイドストーリーを探すこともできます。
キャラクターの動き方もさまざまです。マクベスは派手なアクションを見せますが、5階のナースは別の階へは行かず、ベッドを整えたり小屋で作業をしたりするだけだといいます。
キャラクターを追うのも大変で、キャストも観客も走り、暗いうえに、演者が秘密の扉やスタッフ専用の場所へ消えてしまうこともあるそうです。
さらに『Sleep No More』には、ワンオンワンという1対1の体験があります。20数人のキャラクターがそれぞれ少なくとも1時間に1回、ずっと付き添っていた観客を1人選び、別の部屋へ連れていくのです。
で、場合によってはその時だけにセリフを言われたり、なんか特別な体験をすることができて。
宮武さんが聞いた話では、ナースに秘密の上の階へ連れていかれた人もいたそうです。ワンオンワンを求めて何度も通う人、全体を体験するために何十回、何百回と戻ってくる人もいたといいます。
ストーリーがわからなくても楽しめる理由
草野さんは、『マクベス』を知らない人のためにあらすじを補足します。野心に駆られ、妻に唆されたマクベスがダンカン王を殺して王になり、罪悪感や妄想で暴走した末に復讐で殺される物語です。
宮武さんによると、体験の中ではそのあらすじの雰囲気はあっても、誰がどの役なのか明確にわからないことも多いそうです。6フロアのどこで何が起きているかもわかりにくく、宮武さんは音楽をたどれば大体何かのアクションがある、と経験から気づいたといいます。
ホテルが会場でありながら、中にはホテル感がまったくありません。下のバーもキャバレー風に見せていて、5階には森のような空間まで作られているそうです。
宮武さんは、わかりやすいストーリーやセリフのあるイマーシブ・フォート東京とは違い、『Sleep No More』は複雑でわからないものが多すぎて、日本で同じことをするのは難しいのではないかと感じたと話します。
草野さんはこの話を聞いて、来場者に委ねられた予測できないカオスこそが特徴だと受け止めます。
シャーロック・ホームズなどわかりやすいストーリーで、セリフもある
ストーリーは『マクベス』がベースだがほぼセリフがなく、ダンスと動きで表現。何が起きているかを来場者が探す
一度も同じ体験はない、という設計の強さ
宮武さんは3時間で物語のループを3回体験しましたが、同じシーンに戻ってきて「もう一度見るべきか」と迷う場面もあったそうです。そもそも1回ですべてを見ることはできず、見ていないシーンのほうがほとんどだろうと話しています。
それが多分良さでもあり、あの、あの難しさでもあり、そのいわゆるグループで行っても同じように体験できるんですけど、できない。
観客は全員違う場所にいるため、全員が集まるフィナーレを見られるかどうかも人によって違います。宮武さんは最初の2回のフィナーレを見逃し、最後になって「ここまで下に行けるんだ」と気づいたそうです。
ニューヨーク公演は終了しましたが、宮武さんによると中国の上海ではまだ上演されているそうです。ニューヨーク公演の終了時には備品のオークションもあり、宮武さんは買うか迷ったものの、値段が高くなりすぎて諦めたといいます。
写真や記録がほとんど残らない体験ですが、宮武さんは、ワンオンワンを体験した人がブログに書くなど、それ自体がステータスになる作りも見事だと評価しています。
でもなんかそういう、ああいうワンオンワンの体験をした人とか、結構ブログで書いたりとか、あの、ちょっとステータスになるじゃないですか。
草野さんが「マーケティング的にはコミュニティが盛り上がりますね」と返すと、宮武さんは「絶対盛り上がるんですよ」と強く同意します。宮武さんは再演を望み、少なくともあと2回は行きたいと話しています。
『チ。-地球の運動について-』を起業家が見るべき理由
最後の話題は、宮武さんが最近見始めたアニメ『チ。-地球の運動について-』です。地動説をめぐる物語で、宮武さんは1話目から「これはOff Topicで話した話だ」と思いながら見たそうです。
草野さんが「宗教と科学の話ですか」と尋ねると、宮武さんはそうだと答え、起業家こそ見るべき作品だと話します。
宮武さんが挙げる理由は、自分なりの真理を探しに行くこと、エビデンスを見つける難しさ、そして圧倒的な勢力に対して反抗するのかという問いです。番組で以前「宗教OS」を扱った際の、科学自体が宗教化するという話にも触れています。
草野さんは、それが正解となればすべてが変わってしまうため、そのリスクを取れない世の中だったと補います。宮武さんは、それを必死に、さまざまな切り口から止めようとする人々がいる構図に、起業家の姿が思い浮かぶと語って、この雑談回を締めくくりました。
まとめ
この雑談回では、翻訳の不完全さを魔法として描く『バベル』、金融商品化する建築、言葉を学び合って友達になる宇宙SF、そして来場者ごとに体験が変わる『Sleep No More』と、話題は多岐にわたりました。どの話題にも、完全には一致しない相手や世界とどう向き合うか、という視点が通っています。
- 『バベル』では、完璧な翻訳がないからこそ生まれる言葉の差分が、魔法と国家の利益に結びつけられている
- 現実の通訳でも、直訳しない判断や頷きのような文化差の読み取りが求められ、通訳者の影響力は大きい
- 『建築のかたちと金融資本主義』は、金融商品として最適化された建築が街の姿を変える事例を紹介している
- 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』から、完全一致ではなくお互いにチューニングし合う関係に愛着が生まれるという見方が語られた
- 『Sleep No More』は、セリフのほぼない演出、仲間と引き離す導入、ワンオンワンなどで「設計されていないのが設計されている」体験を作っていた




