下北沢のPodcast Weekendに初グッズを持って出展
Off Topicは、アメリカを中心にテックニュースやスタートアップ、ビジネス情報をゆるく深掘りする番組です。この回のテーマは「SNSが生み出したモノカルチャー」です。
本編の前に、草野さんから告知がありました。Off Topicは、10月1日の土曜日に下北沢で開催されるイベント「Podcast Weekend」に出展する予定です。
(Podcast Weekendは)一回目は出たいなと思いつつ出れなかったので、今回は。いろんなポッドキャスターの方もいらっしゃっているので、自分でもポッドキャストやられてるよっていう方とかも来ると、いろんな人に会えるので面白いのかなと思いますね。
Podcast Weekendは今回が2回目の開催です。宮武さんは前回、来場者として足を運び、いろいろなポッドキャスターとお互いの番組を聴き合っていた話などをしたそうです。
今回のOffTopicの出展では、番組として初めてのグッズを用意しているとのことです。草野さんは「ハードルは上げないで」と笑いつつ、可愛いものを作っていると話しています。
ちょっと誰も来ないとちょっと寂しくなるんで。
YouTube視聴の7割はレコメンド?日常に溶け込むアルゴリズム
宮武さんは前回、SNSが食物連鎖のように進化してレコメンデーションメディア ── フォロー関係ではなく、アルゴリズムがユーザーの好みを推測してコンテンツを届けるメディア。TikTokの「おすすめ」フィードが代表例ですが生まれ、MetaはTikTokと全面的に対抗しなければならない、という話をしました。今回はその続きとして、アルゴリズムが文化にどう影響しているかを考えます。
宮武さんはまず、アルゴリズムがどれほど世界に浸透しているかを挙げていきます。Facebook、Twitter、Instagramはいずれも時系列のタイムラインからアルゴリズム的なフィードに変わり、SpotifyやNetflixもパーソナライズされたインターフェースになっています。
草野さんは、Netflixでは人によって作品のポスター画像が変わることに触れました。宮武さんはさらに、YouTubeの視聴時間の7割はレコメンドから来ているという数字を紹介しています。
あとおすすめのページ見ちゃいますよね、やっぱり。
アルゴリズムはメディアの外にもあります。Google MapsはA地点からB地点への最適なルートを渋滞予測込みで示し、Uber Eatsなどのフードデリバリーアプリはレストランやメニューの並び順を決めています。
もう自分の意思ではないことばかりですね。
宮武さんは究極の例として、メールやLINEの予測変換を挙げます。草野さんの友人が使うMicrosoft Teamsでは「承知しました」のような返信が自動で提案され、宮武さんもGmailで英語の返信を書くと、最初の2単語ほどで続きが全部出てくることがあるそうです。
どんなアプリも、いわゆる脳がその答えを出す前に答えを出そうとしてくれてる状況にあって。
なぜこの投稿が表示されたのか、誰にもわからない
宮武さんが問題にするのは、アルゴリズムの裏側が見えないことです。なぜその投稿がFacebookのフィードに表示されたのかは、機械学習を回しているため、Facebookのエンジニアですら個別には説明できないケースが多いといいます。
一方でFacebook広告には「この広告が表示されている理由」というボタンがあり、「このオーディエンスグループに入っているから」といった理由を示してくれます。ところが普通の投稿にはこのボタンがなく、宮武さんはその差が何なのか気になっていると話します。
アルゴリズムを避けたい人は、SlackやDiscordに信頼できる人を集め、そこでコンテンツをキュレーションし合うこともあります。ただ宮武さんは、そこで共有されるコンテンツ自体がTwitterやFacebookで見つけたものなので、結局はアルゴリズムの影響から逃れられていない場合がほとんどだと指摘しています。
TikTokはカルチャーアイコンを消しているのか
宮武さんの最初の論点は、TikTokをはじめとするレコメンデーションメディアがカルチャーアイコンをなくしているのではないか、というものです。最近生まれたカルチャーアイコンを考えても、エアジョーダンのような存在はあまり思い浮かびません。
宮武さんは、その理由をトレンドサイクルの速さに求めます。TikTokのトレンドは週ごと、草野さんの言葉では下手をすれば数日ごとに入れ替わります。
下手したら数日以内にトレンドが変わったりしているので。で、逆にそのカルチャーアイコンって、その伝統を作らないといけないので。なんで時間がかかるんですよね、どうしても。
トレンドが数日〜週単位で変わる
TikTokでは流行の入れ替わりが極端に速い
伝統が積み上がらない
カルチャーアイコンには時間をかけた伝統が必要
アイコンが生まれにくい
エアジョーダンのような象徴的存在が出てこない
例として挙がったのが、TikTokで流行した「Night Luxe(ナイトラクス)」です。宮武さんは収録時点で数週間遅れの話題だと断り、草野さんは最初にウェブで記事を見たのは4月ごろだったと振り返ります。
宮武さんによると、Night Luxeはナイトライフを一部表現しているものの、ウェルネスカルチャーへの反動でも、パーティー環境がなくなった世代の反応でもありません。インターネット上でバズるために名前をつけたものではないか、という見方もあるそうです。
サブカルがコモディティ化すると、すべてがメインストリームになる
宮武さんは、トレンドとカルチャーには大きな違いがあると話します。TikTokはカルチャーを作るには速すぎて、カウンターカルチャー ── 主流の価値観や体制に対抗する文化。1960年代のヒッピー文化などが代表的で、サブカルチャーよりも反主流の性格が強い言葉ですを生みにくい環境だといいます。
ヒッピー、パンク、ゴスのように、これまでのサブカルやカウンターカルチャーはメインストリームに反するものでした。ところがレコメンデーションメディアは、サブカルのアイデアやイメージをすべてコモディティ化しています。
いろんなテイストのコミュニティが作られるんですけど、どれもいわゆる何かに対しての反するカルチャーではなくなる。で、なんか全部統合されて、全部がなんかメインストリーム化されてしまう。
ヒッピー、パンク、ゴスのように、メインストリームに反するものとして存在した
アイデアやイメージがコモディティ化され、反する対象を失ってメインストリームに統合される
宮武さんは、この結果として起こりやすいのが「モノカルチャー」、つまり1つに統制されたようなカルチャーだと考えています。
草野さんは、以前番組で紹介したVoxの記事を思い出します。かつてTumblr ── 画像や短文を気軽に投稿できるブログ型SNS。2010年代前半に、ファッションやアートの雰囲気を集めたムードボード文化の拠点になりましたでムードボードを作っていたようなクリエイターが、インスピレーションの発信先をTikTokに移しているという内容です。
そこの美学というか、そういうものを表現するには、これを買えばいいっていうのがより分かりやすくなったのと、そのムードをやることによってトレンドになれるという、なんか面白い現象になってますよね。
宮武さんは、ムードボードがTikTokで人気になると、ユーザーは似たものを作り出してミーム化すると付け加えます。その結果、元のカルチャーグループの人たちは、自分たちの文化を利用されたと感じやすくなります。
オーセンティックであること自体が、なんかすごいコモディティ化されてコマーシャライズされてるなっていう。
草野さんは、Bloombergのようなビジネス系ウェブサイトがDtoC ── Direct to Consumerの略。メーカーが小売店を通さず、自社サイトなどで消費者に直接販売するビジネスモデルですのデザイントレンドを分析していたことにも触れました。経済メディアがトレンドを語るほどになった瞬間こそ、かっこよかったものがかっこよくなくなった瞬間かもしれない、という見立てです。
「アルゴリズムが言ったから好き」と悩むZ世代
一般化するとかっこよくなくなるという繰り返しが、どんどん速くなっていると宮武さんは話します。サブカルを本当に信じていた人は利用されたまま終わり、トレンドに乗るZ世代やアルファ世代は次から次へとトレンドを移らなければなりません。
自分が誰なのかって、やっぱり結構分かりにくくなると思うんですよ。
宮武さんによると、Z世代やアルファ世代の間では、本当に自分が好きなのか、アルゴリズムが言ったから好きなのかがわからなくなってきている、という声が出始めています。
宮武さんは、こうしたことが以前の社会で起きていなかったわけではなく、それが強調されているのだと補足します。草野さんも、ファッション雑誌の時代から大きなトレンドの流れはあったと応じました。
絶対聞かないだろうなみたいな人がAC/DCのTシャツ、バンドTシャツ着てるみたいな瞬間見た時は、やっぱバンドTシャツトレンドみたいなのってあるから。
宮武さんは、トレンドに乗ること自体を批判しているわけではないと断ります。そのうえで、Z世代がTikTokを使い始めたのはインスタ映え文化のInstagramへのカウンターで、より自己表現できる場だったはずなのに、実際にはトレンドに囚われているのではないか、という見方を紹介しています。
Netflixに与えられた時間は90秒、サムネイルは1.8秒
宮武さんは、プラットフォームがアルゴリズム化したのは一部仕方ないとも話します。インターネットが大量のクリエイターを生み出した以上、アテンションと時間の奪い合いの中で、そうするしかなかったという見方です。
象徴的な例がNetflixです。宮武さんによると、Netflixの自社調査では、ユーザーはアプリを開いてから90秒以内に見たいものを決めないと離脱してしまうといいます。
めちゃくちゃわかります。ウォッチリストだけめちゃくちゃ溜まっていくっていう。結局何見たかったんだっけ?って言って、またアプリ閉じるみたいな。
さらに、平均的なユーザーが1つのサムネイルを見るのは約1.8秒です。90秒以内に離脱されると、ユーザーはフォートナイトやTikTokに流れてしまいます。
そこでNetflixは、たとえば『ストレンジャー・シングス』を1フレームごとに切り分け、明るさや顔が写っているかといったメタデータをタグ付けし、ランキングしたうえでABテスト ── 2つ以上の案をユーザーに出し分け、どちらがより反応を得られるかを比べる検証手法ですをしています。
ただ宮武さんは、どれだけ工夫しても、より人気の番組を出したほうが全体ではクリックされやすいと指摘します。その結果、人気の番組がさらに人気になっていきます。
ヒット映画の大半はマーベルと続編。テレビも同じ構図に
宮武さんによると、エンタメでは新しいアーティストやコンテンツが出るチャンスはあるものの、一番儲かっているのはすでに存在していたコンテンツです。映画では、ここ5〜10年ほど、続編やスピンオフ、マーベルに代表されるシネマティックユニバース、リメイクやリブートが非常に多くなっています。
宮武さんが挙げた全世界の映画興行収入ランキングの数字は、その傾向をはっきり示しています。
2021年に唯一入ったオリジナル作品は、ライアン・レイノルズ主演の『フリー・ガイ』で、10位でした。草野さんは、デッドプール役の俳優が主演するアクション作品で、マーベルに近い雰囲気があると指摘し、宮武さんもマーベル的な要素が入っていると認めています。
宮武さんはさらに、トップ10のうち8.5作品がディズニーだったことにも驚きを示しました。草野さんが見た日本のランキングでも、『トイ・ストーリー4』や『アナと雪の女王』の続編などディズニー作品が強かったそうです。
テレビ番組でも同じことが起きていると宮武さんは話します。アメリカでは、1905年年代から2019年にかけて、最も見られた番組のトップ30にランクインするIPの数が減り続けています。オーディション番組『アメリカン・アイドル』は月曜と水曜の週2回放送されることもあるそうです。
ビルボードもベストセラーも、人気の人がさらに人気に
音楽でも同じ傾向があります。宮武さんによると、ビルボード・ホット100 ── アメリカの音楽業界誌ビルボードが毎週発表するシングルチャート。売上やストリーミング、ラジオでの再生などを合算して順位を決めますにランクインするアーティストの数は年々減っています。
1年で約450アーティストがランクイン
約300人に減少
草野さんの質問に対し、宮武さんは、かつては同じ人がずっとランクインし続けていなかったという意味だと説明しました。逆に2000年以降は、ドレイクやテイラー・スウィフトのように1人のアーティストが複数曲をランクインさせる例が増えています。
本でも同じことが起きています。ニューヨーク・タイムズのベストセラーのトップ10では、かつては同じ著者が同じ年に2回入ることはあまりありませんでしたが、1990年以降は毎年少なくとも1人が2回ランクインしているそうです。宮武さんはビデオゲームでも似た状況だと話します。
ファッションでは、どの店舗に行っても同じような服が置いてあると批判されがちです。宮武さんは、AIなどを使ってトレンドを予測するブランドが増えた結果だと見ていて、それを最もうまく事業化したのがSHEINだろうと話します。
どんどん人気になるものが人気になっていくっていうところで、いわゆるそのカルチャーがどんどんそこの人気アーティストとか人気なものにどんどん統一されていく。
一方で、レコメンデーションメディアのおかげで新人も多少は人気になれます。2020年には約1500曲がバイラル化し、TikTokの影響で100人以上の新しいアーティストがある程度ブレイクしました。ただ宮武さんは、そこから大人気の領域へ行くハードルは高く、みんなが同じフィルターや音声を使う中で新しいカルチャーが生まれるのかは疑問だと話しています。
CD棚からSpotifyへ。受け身になったカルチャーとの関係
草野さんが「今はどういう関係性だと思っているか」と尋ねると、宮武さんは、レコメンデーションメディアによって人とカルチャーの関係がどんどんパッシブになり、ただ受け入れるだけになっていると答えました。
宮武さんによれば、昔は本棚にCDを飾り、聴きたい曲を自分でCDから選ばなければなりませんでした。今は音楽のコレクションがCDではなくSpotifyにあります。
「好きな音楽何?」って聞いて、「ジャスティン・ビーバーとか」って言って、「ジャスティン・ビーバーの何の曲が好きなの?」って言われて、「曲名わかんないけど聴いてる」みたいな。
草野さんは、それがいい悪いではなく自分にもあることだと話し、宮武さんも、いろいろなところで聴いたのに曲名もアーティスト名も知らない曲があると同意しました。
宮武さんは、フィジカルなコレクションとデジタルのコレクションでは意味合いが違うと考えています。かつては体験を自分から求めに行き、保管の仕方や飾り方、消費の仕方も人それぞれでしたが、デジタルではそれが全部統一されてしまいます。
場合によってはその、例えばその買ったCDとか買った本とかを一生読まなくても、それを飾ってあるだけで自分の自己表現になるんですよね。
草野さんは、K-POPやハリー・スタイルズのようにアイドル的な要素のあるアーティストではこの傾向が強いと話します。ハリー・スタイルズのレコードはよく売れましたが、宮武さんは、買った人の中にレコードプレーヤーを持っている人は少ないだろうとしつつ、持つこと自体が彼らにとって大事なのだと応じました。
セレブの香水は「超ポップアイコン」の分岐点?
草野さんは、アメリカで超ポップアイコンになる分岐点は、自分の香水ブランドを出しているかどうかではないか、という見方を出しました。アリアナ・グランデ、レディー・ガガ、ビリー・アイリッシュなどが香水を出しています。
曲でもないし、その人の顔がないのに、その人の香りに包まれたいとか、その人の香りになりたいっていう、結構なんか深いファンのニーズを埋める商品だなっていうのを思いました。
草野さんは、昔海外のドラッグストアでセレブの香水が売られているのを見て驚いたそうです。宮武さんは「分岐点という考え方は面白い」と反応し、香水はファンの深さが他より圧倒的に深い証拠でもあると話しています。
対照的に、Spotifyのような月額課金の音楽体験では、アーティストとの関係性が深くなりにくいと宮武さんは指摘します。Spotifyはミドルウェアとして聴く曲や聴き方を選んでおり、仮に特定のアーティストをブロックすれば、ユーザーは気づかないまま一生聴かなくなるかもしれません。宮武さんは、実際にそうしているとは思わないと断っています。
リールズやTikTokも同じで、見たいから見ているのか、与えられたものを判断しているだけなのかには大きな違いがあります。前回話した、友達の写真を見たくて開くInstagramとは使い方が異なり、Twitterはユーザー側でも調整できるため、その中間に位置すると宮武さんは見ています。
コレクションを作る責任は誰にあるのか
宮武さんは、コレクションを作る責任がユーザーから離れていってしまっていることが、カルチャー的にいいのかを問いかけます。
結局人がカルチャーを選ばなくなって、アルゴリズムがカルチャーを選んでしまうと、それをマスに届けるのはアルゴリズムなので。そうするとよりそのモノカルチャーっていうものが生まれやすいんじゃないかとか。
宮武さんは、YouTubeの使い方が世代によって違うことも紹介しました。どの年齢からが上の層かは言わず、例外は両側にいると断ったうえでの、おおまかな分け方です。
検索のメンタリティー。特定の曲や動画を見つけるために使う
ディスカバリーのメンタリティー。とりあえずYouTubeのおすすめで面白いものを探す
不思議なことに、テレビではこれが逆になります。チャンネルを切り替えて面白いものを探す「チャンネルサーフィン」は上の世代がすることで、草野さんは日本語では「ザッピング」と言うと補足しました。若者はむしろ『ストレンジャー・シングス』を見たいからNetflixを開くといった、特定のものを求める使い方をしつつも、最近はパッシブに受け入れる方が多いと宮武さんは話しています。
本は「チームワーク」、TikTokは選ぶだけ
宮武さんは、エンタメの消費方法そのものも変わってきていると考えています。本を読むことは、実はパッシブな行為ではありません。
本を読むのって、その本を書いた人と、その本と、あとそのユーザーがチームワークをかけて、本を消費する。
本は読みたいものを選び、想像しながら読み進めなければならず、友達と話している間にストーリーが勝手に進むこともありません。草野さんは「受け身の趣味だと思っていた」と驚き、宮武さんも昔はそう見ていたが、より受け身のものが出てきたという話かもしれないと応じています。
宮武さんは、この消費方法はマスの消費者にとってはいいことで、特定の消費者にとっては悪いことだと話します。音楽で考えるとわかりやすいとして、ある記事の3つのリスナータイプを紹介しました。
| タイプ | 特徴 | Spotify・アルゴリズムとの関係 |
|---|---|---|
| パッシブ | スーパーで流れる音楽のように、特に気にしない | 恩恵を受ける |
| 補助的(auxiliary) | ジムやリラックスなど、別の体験を楽しくするために聴く | ジム用プレイリストなどで恩恵を受ける |
| 意図的(intentional listener) | アルバムを通して聴き、自分なりのプレイリストを作る | 人気曲ばかり勧められ、最も悪影響を受ける |
意図的なリスナーは全体の中では少数です。彼らはもっと面白いものを見つけたいのに、アルゴリズムは人気の曲、つまりモノカルチャー的な真ん中の層を勧めてしまうため、批判が生まれると宮武さんは説明します。
(Amazonの本のレコメンドより)本屋に行く方が面白い出会いがあるから、本屋さんに行くのが好きなんですけど。なんかそれとちょっと近いのかなっていうのは思いました。
草野さんは、昔ならCDショップやレコード屋で自分で探せたが、ストリーミングではそれがしにくいと話します。宮武さんも、TSUTAYAには店員のおすすめもあるが自ら探しに行けた、ストリーミングではレコメンドから逃れられないと応じました。
アルゴリズムがなくても、人は自分で選んでいたのか
ここで宮武さんは、個人的な疑問を投げかけます。仮にアルゴリズムがなかったとしても、人は本当に自分の意思で選んでいるのか、という問いです。
結局、「あの人これいいって言ってたからこれにしよう」っていうのもあるし。
草野さんは、今有名な人も才能だけでなく多くの人の力でプッシュされていて、自分が好きになったのは大きい事務所にいたからでは、ということもあると話します。一方で、友達が勧めても刺さらないこともあり、誰のセンスを信じるかも自分次第だと付け加えました。
宮武さんは答えのない話だと断ったうえで、ある曲が好きなのは自分が本当に好きだからか、世間で好きだと言われているからか、友達が好きだからかと問いを分けます。わかりやすい例として、恋愛対象として見ていなかった人が、友達と付き合い始めた途端に魅力的に見えるケースを挙げました。
人間って、どの動物よりも真似する能力を持ってる動物なので。
宮武さんによると、赤ちゃんは生まれた瞬間から親の真似をし始めます。草野さんが「生存戦略ですもんね」と言うと、宮武さんはそれだけではないと続けました。母親が別のものを見ていると、赤ちゃんはそのものと母親の関係を考え始め、母親が欲しがっているなら自分も欲しくなるといいます。
つまり、友達が好きだからこの曲を好きになるという構造の「友達」が、アルゴリズムに置き換わっただけかもしれない、という考え方です。宮武さんは、これを言い始めると何も自分で判断していない感じになってしまうと笑いつつ、アルゴリズムには危険性もあるとしたうえで、人間がどこまで自分で好きなものを判断しているのかという課題を示しました。
AIが文化を作る時代へ。DALL·E 2とAIグリーンスクリーン
宮武さんが最後に取り上げたのは、レコメンデーションメディアの次に来るソーシャルメディアの進化です。これまではアルゴリズムが文化に影響していましたが、次はAIがコンテンツ、そして文化そのものを作れる時代になるのではないか、という見立てです。
宮武さんは、全員がAIでコンテンツを作れるようになれば、今のレコメンデーションメディアを倒せるのではないかと話します。わかりやすい例が、テキストから画像を生成するDALL·E 2 ── OpenAIが2022年に発表した画像生成AI。文章で指示を出すと、その内容に沿った画像を生成しますです。
TikTokもすでに、グリーンスクリーン機能の背景をテキストの説明から自動生成する「AIグリーンスクリーン」を出しています。宮武さんは、これによって誰でもクリエイターになりやすくなると評価しています。
誰でもテキストを入力するだけで映画が作れるとか。
今は画像生成だけでも、後々は必ず動画生成になると宮武さんは見ています。草野さんは、アニメーションならさらに実現が近そうだと反応し、宮武さんも台本を書くだけで映画やアニメが作られるような未来を思い描きました。
さらに、Metaは音声コマンドでバーチャル空間を作るAIを手がけ、OpenAIやGoogleは機械が人間のように音声や音楽を聞き取れるようにするトレーニングを進めています。音楽を理解できれば、機械が音楽を作りやすくなるかもしれません。
誰でもヒットソングを作れちゃうみたいな。まあそれによって何もヒットソングではなくなっちゃうんですけど。
GPT-3でモンスターを戦わせるBattlePrompts
宮武さんは、テキスト版のDALL·E 2ともいえるGPT-3 ── OpenAIが開発した大規模言語モデル。入力した文章の続きを生成でき、物語や説明文などさまざまなテキストを書けますを、DALL·E 2と組み合わせて遊ぶ人が増えていると紹介しました。その例が、Twitter上のゲーム「BattlePrompts」です。
宮武さんは、これはシンプルなバージョンだが、動画やアニメーションにも広がれば誰でもそういうものを作れると話します。たとえばOff TopicのフェイクのYouTuberを作り、GPT-3に毎週アイデアを考えさせ、DALL·E 2の動画版で動画化すれば、AIが全部作ってくれる時代も可能になるといいます。
動画版はまだありませんが、GPT-3にゲームのアイデアを考えさせ、DALL·E 2でデモ画像を作り、それを人にピッチして実際の制作につなげるといった使い方はすでにできるそうです。
ジャズが存在しない世界で、AIはジャズを生み出せるか
一方で、それは何も考えなくなってしまうことでもあります。最初のテキストは人間が書く必要があり、アメリカの単語ベースの音声コマンドと違って、DALL·E 2やGPT-3では詳しく説明しなければなりません。宮武さんは、書き方のガイドラインやコンサルが生まれるかもしれないと話します。
ただ、DALL·E 2に入力する文章さえGPT-3に考えてもらえるかもしれません。そうなると、人はどんどんパッシブなコンテンツ消費者になり、AIがコンテンツ制作を担うようになっていきます。
例えばですけど、音楽で例えばジャズっていうジャンルが今まで存在しなかった時に、AIってそれを作れるのか。
宮武さんは、過去のデータから見ると難しいと判断されがちだと話します。そもそもアルゴリズムやトレンド予測がモノカルチャーを作っている以上、同じようなものしか出てこないからです。
ただし反論もあります。宮武さんによれば、イノベーションはイミテーション、つまり真似から始まるもので、各国の歴史もそれを示しています。
この流れを踏まえると、AIも今は真似しかできなくても、真似を重ねることでいずれ新しいものを作れるのではないか、という説もあると宮武さんは紹介しました。
宮武さんが「その中で人間の役割は何なのか、物を消費するだけになるのか」と問うと、草野さんは、創作したい人とそうでない人がいて、その間にグラデーションもあると答えます。ここは任せたいが、ここはこだわりたいという選択ができるなら、いいことかもしれないという見方です。
でもなんか自分がこだわってやったけど、100パーアルゴリズムによって作れたものがめちゃくちゃ売れたとか人気になったとかなると、ちょっと悲しくなっちゃいますね。
宮武さんは、出した瞬間にいろいろなAIがコピーし始めることもあり得ると付け加え、二人は「オリジナルが死んでいく」と声をそろえました。
AIネイティブ世代と、テイストメーカーのいない未来
宮武さんは、ディストピア的な話になったと断りつつ、こうした変化はすでに始まっていて、最も影響を受けているのはZ世代と、その次のアルファ世代だと話します。
Z世代が、まあモバイルネイティブであれば、アルファ世代ってメタバースネイティブなんですけど。ただ、ただメタバースネイティブだけじゃなくなるんですよ。
ミレニアル世代
インターネットネイティブ
Z世代
モバイルネイティブ
アルファ世代
メタバースネイティブ、さらにAIでコンテンツを自動生成するのが当たり前の「AIネイティブ」
宮武さんは、アルファ世代ではコンテンツとの関係や作り方がこれまでの世代と圧倒的に変わるはずで、それがビジネス、テクノロジー、カルチャーにどう影響するかを考えなければならないと話します。
草野さんが、宮武さん自身もモノカルチャーを感じるかと尋ねると、宮武さんは感じると答えました。仕事中にYouTubeで音楽を流すと似た曲ばかり流れ、TikTokをリセットしたくなる時もあるそうです。
(音楽は)自ら選びたいタイプではあるので、そこはなんかもっと、何ですかね、なんかレコメンドでしか出てないものに頼っちゃってるなっていう部分はありますね。
宮武さんは、YouTubeの自動再生をたまに止めて自分で曲を選ぶこともあるものの、昔より減ったと振り返ります。新しい曲を聴く数は過去より増えたかもしれないが、自分から選んでいる曲は圧倒的に減った、という実感です。
宮武さんは、レコメンデーションメディアが悪いという話ではないと強調します。そうではない世の中に住みたい人は、自分から選びに行くことを意識するべきですが、アルゴリズムカルチャーが広がる中でそれが難しくなっているのも事実だと話しています。
今後はトレンドの速さとアルゴリズムの選択によって、テイストメーカー ── 独自のセンスで流行や評価の基準をつくり、人々の好みに影響を与える人や存在のことですという概念が減るかもしれない、と宮武さんは見ています。それが社会や次の世代の行動・価値観にどう影響するのか、Off Topicとして引き続きモニタリングしていくと締めくくりました。
でもレコメンデーションをしている企業がさらに強くなるっていうのはありそうですね。
まとめ
この回では、アルゴリズムが日常のあらゆる選択に入り込み、サブカルをコモディティ化してモノカルチャーを生みやすくしている構造が、映画・音楽・本のランキングやエンタメの消費方法の変化から語られました。同時に、人はもともと真似によって好みを決めてきたという視点や、AIが文化を作る時代に人間の役割は何かという問いも示されています。
- TikTokのトレンドサイクルは数日〜週単位と速く、伝統が必要なカルチャーアイコンやカウンターカルチャーが生まれにくくなっている
- 映画の興収上位は続編やマーベル作品が占め、ビルボードやベストセラーでも人気の人がさらに人気になる傾向が強まっている
- CD棚からSpotifyへの移行で、コレクションを作る責任がユーザーから離れ、意図的なリスナーほどアルゴリズムの悪影響を受けやすい
- アルゴリズムは「友達が好きだから好きになる」という人間の真似の構造を置き換えただけかもしれない、という見方もある
- AIネイティブとなるアルファ世代では、コンテンツの作り方や文化との関係が大きく変わる可能性がある





